『デーモンを殺す者』の帰還 ~SAO・偽伝~   作:ネイキッド無駄八

4 / 7
勇気と孤高の証明

 「はは……ずいぶん勿体ぶってくれるじゃないか。寝坊が過ぎるんじゃないか?」

 

 口では憎まれ口を叩きながらも、どこか安堵と嬉しさを滲ませた調子でキリトはベルモンドを呼ばわった。

 

 「うるせぇな。ヒーローは一度ピンチを迎えて、そこから復活するからカッコイイんじゃねぇか。オレの二つ名を教えてやろうか。『不撓の不死鳥神話(ネバーエンディングストーリー)』とは、このオレのことだぞ?」

 

 「0点だな」

 

 「センスの欠片もないわ」

 

 手厳しいコメントを放つエギルとアスナの顔も、隠しきれない笑みで染まっていた。

 見れば、ベルモンドの纏ったプレートメイルは見る影もなくズタズタであり、ファランクスの槍雨がどれだけ尋常ならざる威力をもたらしたかを雄弁に物語っている。

 一発で昇天しなかったのはひとえに彼の技量と悪運ゆえだろうが、それにつけても妙なのはそのHPゲージだった。 

 今の今まで倒れていたベルモンドには回復のためにポーション瓶を取り出す挙動も暇も無かったはずだが、残り僅かだったそのHPゲージは小康状態どころか既に半分を越えて、十分戦闘安全圏まで回復していたのだ。

 これはいかなるカラクリかと様子を窺ったキリトに向けて、ベルモンドはひらひらとその手を振った。

 

 「お前らが時間を稼いでくれたおかげで、しっかり回復できたんだ。伊達に寝坊してない」

 

 その手で輝くのは、奇妙な形状の指輪だった。

 奇怪な意匠のその指輪は、内部に正体不明のどろりとした液体を封じたモチーフで、表面からは淡く生命力の波動を発している。

 

 「なるほど、自動回復か……」

 

 『再生者の指輪』と名付けられているそれも、やはりキリトの知識にない未知のアイテムだった。 

 戦闘時回復能力を備えたその指輪を嵌めた手を、ベルモンドは掌を上向けてそれだけじゃない、と続ける。

 

 「アンバサ戦士どもがよく使ってたやり方を再現させてもらったのさ。面白くないことに、たいへん効果的だな、これは」

 

 ベルモンドの眼前で現出し、落下して地面に突き刺さったそれは彼が展開した武装群の中にあったひとつ、ファルシオンのひと振りだった。

 先ほど振るわれていた時には気づかなかったが、そのファルシオンもまた指輪と同じく薄光を纏って輝いていたのだ。

 

 「再生者の指輪プラス、『祝福されたファルシオン』の二重自動回復ってことだ。ここにもう一味加えれば完璧なんだが、あいにくと今は持ち合わせてなくてな。おかげでこんだけかかっちまった」

 

 軽薄な調子は崩さぬままに、ベルモンドは気のせいかと思うほどの僅かにではあったが台詞に申し訳なさを滲ませて、キリトやアスナを、攻略組のプレイヤーたちを見回す。

 

 「オレに任せろと息巻いておいて、結局はあんた方を巻き込んで力を借りちまった。情けない限りさ、戦士の名折れだ。救世主を気取るつもりはなかったが、ここまで格好がつかないなんてな」

 

 自嘲するような調子で続けるベルモンドはプレイヤーたちから視線を外し、ファランクスへと向き直った。

 

 「しまいには同郷の友人からも叱られる始末。甲斐性なしここに極まれりだ、笑えねぇよ。いや、一周回って逆に笑えるな?」

 

 クスリ、と静かに微笑んだオストラヴァは、しかし彼に対して何かを言うことはしなかった。

 

 「ここまでくれば、もう何をしたって恥じゃあねぇ。だから、恥の上塗りをもう一度させてくれ」

 

 さながら二挺拳銃を構えるように、双のハルバードをファランクスへと向けたベルモンドは、決然とした様で大きく叫んだ。

 

 

 

 「このクソデーモンを血祭りに上げるのを、アンタらにも手伝って欲しい!! 今ここに、人間の手による勝利を!!!」

 

 

 

 応、と力強く答える声は、実に四十三。

 しかし、その場に居た誰もが、ここには居ない彼らの指揮官、彼らを導いた青髪の騎士の声が、たしかに耳朶を震わせたのを感じた。

 ベルモンドは、オストラヴァは、キリトは、アスナは、エギルは、キバオウは、攻略組のプレイヤーたちは。

 アインクラッド迷宮区第一層攻略隊は、今こそ天壤を震わす雄叫びを上げて、死の軍隊に高らかに宣戦した。

 

 

 

 

 

 「「「「「「勝とうぜ!!!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 四十三の、否、四十六のウォークライが戦場に轟々と木霊し、自由を求める生者のたちの行進の関が切られた。

 雪崩を打つ戦士たちの中、キリトは先頭を行くベルモンドへと問いを投げた。

 

 「勢いがあるのは結構だけど、ちゃんと勝算はあるんだろうな!?」

 

 「オーライオーライ。そりゃあもちろんアリアリだ!」

 

 答えと共に掲げられたのは、先ほどソードスキルを放つのに用いられた右のハルバード。

 近くに居る今だからこそ分かったが、その斧槍はほのかに熱を帯びていた。

 

 「ファランクスには弱点がある! ひとつ、盾のない側面や背後を突け! こいつは当たり前だな、猿でも分かる。ふたつ、魔法や奇蹟を使え! まぁもっとも、この方法はこの世界だと使えないみたいだから、除外だ。そしてみっつ、これが今現在切れる最高の、そして最強の手札だ!」

 

 言い様、戦士たちの先頭に躍り出たベルモンドは右のハルバードに青白い光輝を漲らせた。

ソードスキルのアジャストの構えだ。

 

 「第三の弱点! それは………!!」

 

 のみならず、なんと斧槍は赤き炎熱を吹き上げて燃え盛り始めた。

 赤と青の螺旋を纏ったハルバードを翳し、ベルモンドはファランクスへと、突撃槍の如くに進撃した。

 

 

 「こいつらは、炎に極めて弱い!!!!」

 

 

 炎を帯びたハルバードによる突進ソードスキル『レイジスパイク』が、ファランクスたちを一挙に炎上させた。

 その言どおりに、黒きスライムたちはその身を大きく悶えさせて次々と消滅していった。

 ベルモンドはダッシュの速度は緩めないまま、ハルバードを豪快に旋回させてファランクスの包囲網をまるで砂の楼閣を崩すようにあっさりと破城していった。

 

 「この『竜のハルバード』ならば、効果は覿面! さらに、ソードスキル? ってんだっけか? この世界にはずいぶんといい技があるんだな! どんなデーモンだって楽勝で殺せそうだ!!」

 

 「あ、ああ…… ていうか、なんでハルバードで『レイジスパイク』が撃てるんだ? それ、片手剣用のソードスキルなんだが…」

 

 「さあな! 打ってよし、突いてよし、切ってよしの三拍子揃った武器ってのが、こいつの素晴らしいところだからな、そういうことじゃねぇのか! んなことより構えろ! もうそろそろ楽しいパーティもお開きだ!」

 

 背後に攻略組のプレイヤーたちがファランクスの残党とやり合う音を聞きながら、ベルモンドとキリト、それにアスナとオストラヴァの4人はファランクスの包囲網の、その中心へと至った。

 

 「オストラヴァ! やっちまえ!」

 

 「言われなくとも!」

 

 進み出たオストラヴァによる左薙ぎ払いから突きまで繋げる三連コンビネーションの前に最後の黒スライムたちが崩れ去り、ファランクスはついにその正体を晒した。

 

 「これが……ファランクスの本体………!?」

 

 息を飲んだアスナの台詞には、どこか拍子抜けするような響きがあった。

 

 「ああ。これが、こいつらの司令塔、本体ってわけだな」

 

 ベルモンドの頷きにも、やはりどこか軽んじるようなニュアンスが含まれている。

 それもそのはず。

 

 黒スライムたちが敷いていた堅牢極まりない密集陣形、その中心に座していたのは、仄白い光を放つ身体を蔦状の物質で覆った、一体の大きなスライムだった。

 配下の黒スライムたちよりもふた回りほど大きな、小山のようなそのスライムは、しかし武装らしきものを何一つ装備していなかった。

 ベルモンドが、うりうりとハルバードの先端で小突くと、仄白き親玉スライムは怯えるように巨体を引きずってキリトたち一行から距離を取ろうというのか、のっそりと逃走を開始した。

 

 「……なんか、哀れだな。これが、あいつらの大将なのか」

 

 「なんだぁ? 敵に情でも移ったか? やめとけ。こいつはデーモンだ、情けは要らねぇ」

 

 「分かってるよ、それくらい。現にこいつは、ディアベルの仇だ。容赦をするつもりも、ない……!」

 

 手にした『アニールブレード』を構えるキリトを見て、そいつは重畳、とベルモンドは肩をすくめた。

 彼もまたキリトに倣い、双のハルバードをファランクスの親玉目掛けて構える。

 

 「あーっと、そこの女形の……」

 

 「キリト、だ。あと、俺の顔のことはほっといてくれ」

 

 「悪い悪い。んじゃま、キリト? いい加減、幕引きと行こうぜ」

 

 「ああ……!」

 

 ベルモンドのハルバードには炎をまとった青と黄緑。

 

 キリトのアニールブレードには空色。

 

 アスナのレイピアには薄紅色。

 

 オストラヴァのルーンソードには青。

 

 4人の戦士が掲げた武器に、ソードスキルのライトエフェクトが輝いた。

 

 「決め台詞は、あれだな?」

 

 「ええ、あれでしょう」

 

 「あれしかないな」

 

 「あれでいくわよ」

 

 すうっと一息の深呼吸の後、終戦を告げる鬨が勇ましく響いた。

 

 

 

 

 

 「「「「勝利を!!!!!!!!!」」」」

 

 

 

 

 オストラヴァの『ホリゾンタル』が切り裂き、アスナの『リニアー』が雨あられと降り注ぎ、キリトの『バーチカル・アーク』が縦に二連の斬痕を刻み、ベルモンドの『ソニックリープ』、『ヘリカル・トワイス』が叩き込まれ―――――

 

 

 『THE DEMON WAS DESTROYED』

 

 

 メッセージがポップされると共に、ファランクスは断末魔の叫びを上げて、光へと還っていった。

 

 「っはー………勝った、な」

 

 「ああ………勝ったんだ」

 

 どちらからともなく迷宮区の冷たい床に倒れ込みながら、ベルモンドとキリトは、誰とはなしに己たちが成し遂げた戦果をぽつりと呟いた。

 

 

 次第に大きくなっていく歓声を耳にしながら、ベルモンドは静かに目を閉じた。

 

 

 ――――――――――――――

 

 「おら、キリト。これ、お前が取っとけ」

 

 無造作に放り投げられたアイテムを慌ててキャッチしたキリトは、たたらを踏みながらベルモンドの方を見やった。

 散らばっていた武器を拾い集め、形骸でしかない状態で張り付いていたプレートメイルを鬱陶しそうに引っペがしながら、彼は身支度を済ませようとしていた。

 展開したそれが、本来の第一層フロアボスのコボルドロードのラストアタックボーナスアイテム『コートオブミッドナイト』であるのを尻目に、キリトはベルモンドの元へと駆け寄った。

 

 「ん? なんだよ、そんなにジロジロ見やがって。ちょっと可愛いナリしてるからって、オレにそんな趣味はねぇぞ」

 

 「礼をまだ言っていなかっただろ。俺を、そしてみんなを助けてくれて、ありがとう」

 

 キリトの真っ直ぐな視線と言葉に、居心地が悪そうな顔をしてベルモンドは適当に返す。

 

 「いいってこった。デーモンを狩るのがオレの仕事、というか使命みたいなもんだからな。当然の義務を果たしたまでよ」

 

 「それなんだが、ずっと気になってたんだ。おたくがさっきから口にしてる『デーモン』って、いったいなんなんだ? あいつらみたいな異常なのが、もっと他に居るのか?」

 

 「さあなぁ。ここはどうだか分からんが、世界には実にたくさんのデーモンが巣食ってやがる。あれは、そんな中のたった一匹だ」

 

 「質問に答えろ。デーモンが何なのか、って聞いてるんだ」

 

 焦れたように問いを投げるキリトの声に、ベルモンドは露骨に面倒そうな顔を作った。

 彼が大義そうに鼻を掻いていると、

 

 「せやせや! そこの坊主の言うとおりや! 知っとること、全部吐いてもらおうかい!」

 

 便乗するようにイガグリ頭の戦士、キバオウがベルモンドへと食ってかかってきた。

 ベータテスト組が気に入らない彼のことであるから、ベルモンドが握っているであろう既得権益が我慢ならなかったのだろう。

 詰め寄ってくるイガグリ頭にやれやれと嘆息しつつ、ベルモンドは唐突にキバオウに向けてハルバードを構えた。

 

 「ひぃっ………!?」

 

 一気に場の緊張感が高まる中、仕手であるベルモンドだけが暢気そうにあくびを噛み殺している。

 気だるげな態度はそのままに、ハルバードを更にキバオウへと押し付けてベルモンドは宣う。

 

 「るっせぇぞ。このチンチクリンが。オレはお前らの命の恩人、並びに救いの神様だろうが。素直に敬って、黙ってありがたがってればいいんだよ。余計なことに首突っ込むもんじゃねぇ。でなけりゃその首、永遠に体とハイサヨウナラさせてやってもいいんだぜ?」

 

 「ふ、ふざけたこと抜かしよって………やれるもんならやってみいや! PKなんぞしたらどんな目に遭うのか、知っててこんなマネしよるんやろなぁ!?」

 

 「P……なんだって? 知らねぇな、食い物か? よく分かんねぇけど、ここでチンチクリン一匹の首塚作ることに、別段抵抗なんかねぇよ。気になるのは減っちまうだろう武器の耐久値だが、それもお前の死体から失敬した財布で賄えばいいだけだ。ふざけたこと言ってんのはどっちか、もう一度よく考えるこったな」

 

 「チィッ………」

 

 ハルバードがなければ罵詈雑言の嵐でも飛ばしたげな様子で、悪態をつきながらキバオウは渋々といった様子で引き下がり、ベルモンドはそれをニヤニヤ笑って眺めていた。

 

 「行儀がなっていませんね、ベルモンド?」

 

 「いでぇっ!? ………っつー……! なにしやがんだオストラヴァ!!」

 

 「なにしやがんだはあなたのほうです。同じボーレタリア人として大変恥ずかしい振る舞い、少しは自重してください」

 

 ベルモンドの脳天に拳骨による制裁を加えながら、オストラヴァは彼を促すように背を向けた。

 ぶつぶつ言いながらベルモンドも彼に倣ってボスフロアを辞そうと、2階への扉へと足を向けた。

 

 「つくづく破天荒な奴だぜ、まったく。また会おうぜ! ベルモンドとやら!」

 

 威勢のいい声を張り上げて手を振るエギルに応え、背を向けながらベルモンドはひらひらと手を振った。

 

 「ワレェ!! この借りはキッチリ返させてもらうで!! 覚えとけやコラァ!!」

 

 ダミ声を飛ばして後ろ姿にぶつけてきたキバオウの声に、ベルモンドは背を向けながら中指を突き出して挑発を置いていった。

 

 

 

 

 そうして扉をくぐり、第二層へと登る階段を踏みしめながらベルモンドはオストラヴァに向けて声を掛けた。

 

 「『この世界の人間には、デーモンのことは可能な限り伏せておいたほうがいい』、か。確かにその通りかもしれないな。あいつらは、命のやり取りにまるで慣れていなさすぎる」

 

 答えるオストラヴァの声にも、同意の意がにじみ出ていた。

 

 「無理からぬことです。我々の世界のように常に人々が争い合う世界もあれば、彼らのように命のやりとりにさっぱり触れないまま、生きていける世界もある。どちらが正しい世界のあり方かなんて、我々には論じる資格すらないでしょう」

 

 「だな。どっち道、あいつらはその目でデーモンを目の当たりにしちまったんだ。もはや関わらないで生きていくほうが、よっぽど難しいか。やーれやれって感じだな………お?」

 

 驚きの音を洩らしたベルモンドの声に、オストラヴァも背後を振り返った。

 

 

 「っはあ…! はあ…! 登るのが…速いな、アンタたち…!」

 

 「ちょっとくらいゆっくり行ってくれても、いいじゃないですか……!」

 

 

 軽く息を弾ませて、キリトとアスナの二人組が下から追いついてきたのだ。

 

 「いや……なんで当たり前のようについてくるんだ、お前ら?」

 

 「勘違いするな。俺はアンタたちについてきたわけじゃない。ただ、誰よりも先に第二層へと踏み出したかっただけだ」

 

 「なるほど。新天地へと一歩を踏み出すことは、たしかに心躍りますからね」

 

 「あ、分かるんですか、オストラヴァさんにも。私、ずっとこの時を楽しみにしてたんです」

 

 「ええ。私も昔は、諸国を巡る放浪の旅をしていましたから。新たな土地の空気を胸いっぱいに吸い込んだら、旅の疲れなんて一息に吹き飛んだものです」

 

 「放蕩王子め……で、下の方はいいのか? 戦利品山分け大会で盛り上がりでもしてるんじゃねぇのか?」

 

 「考えただけで面倒くさい。俺はもう十分稼いだ。これだけでいいさ」

 

 新しく身に纏った黒のコートを翻し、キリトは満足そうに笑んだ。

 それを見て、ベルモンドもつられて思わず笑みを浮かべてしまった。

 キリトはすっきりした表情で、気にかかっていたことをベルモンドへと尋ねてみた。

 

 「アンタ、キバオウを挑発したのはワザとだな? いろんなごたごたを、全部自分に向けさせるためにヒールを演じた、とか?」

 

 「悪ぶったってのか? ないない、オレはどこまでも自分本位さ。他人がどんな思索巡らせてようと、オレにはなんも関係ないね。知らん知らん」

 

 「……本当に、食えない男だ。いろいろアンタから聞きたかったんだが、とりあえずそれはまた今度にしようかな」

 

 「それがいい。今日はもう帰って寝たい気分だからな」

 

 言ってあくびをかますベルモンドに、キリトは真正面から向き合って言った。

 

 

 「俺を、フレンド登録してくれないか」

 

 

 あん?とけったいそうな顔をするベルモンドに、キリトはあくまでも真摯な顔のままだった。

 そんな真面目な顔つきのキリトを見たベルモンドは、あくまでも軽佻浮薄に、フンと笑って答えた。

 

 「フレンド? 登録? 分り難い言葉を使うんじゃねぇよ」

 

 傍らのオストラヴァも、静かに笑みを湛えている。

 

 「言われるまでもないさ。オレは助太刀に入ったその時から、とうにお前らとはトモダチのつもりだったぜ?」

 

 

 

 

 気づけば4人は、扉の前に立っていた。

 重苦しい音を立てて開く扉に、ベルモンドとオストラヴァは背を向け、キリトとアスナは一歩を踏み出した。

 

 「では、縁があればまたどこかで。お二人共、お気をつけて」

 

 「オストラヴァさんにベルモンドさん!二人もどうか元気で!」

 

 「レディはしっかり守れよ、キリト。達者でな」

 

 「いちいち一言余計だな。言われなくてもやってやるさ」

 

 別れの言葉もそこそこに、4人はそれぞれの道を踏み出した。

 

 キリトとアスナは上へ。

 ベルモンドとオストラヴァはどこかへ。

 

 やがて4人の姿が見えなくなっても、扉は下から上がってくる人間のために、ずっとその入口を開いたまま。

 開き続けているその扉の向こうには、明るい未来を暗示するかのように、澄み渡る青空がどこまでも広がっていた。

 

 

 

 第一層フロアボス攻略戦、終了。

 討伐、イルファング=ザ=コボルドロード。

 死亡、ディアベル。

 

 殲滅、ファランクス。

 

 

 

 かくして激動の初レイド攻略戦は、その幕を下ろすこととあいなった―――

 

 

 

 

 「………あ」

 

 「ん、どうかしましたか、ベルモンド?」

 

 「いや、ふと気になってな。なぁ、『フレンド登録』って、具体的には何をするんだ? てか、どういう意味なんだアレ?」

 

 「………もしかして、何も知らないであんな恥ずかしいセリフ言ってたんですか? あなたは」

 

 「まぁな。で、何なんだよそれって。なぁ?」

 

 「……あなたはとりあえず、キリトたちとは『フレンド』では無いということです……」

 

 「え゛!? 嘘だろ! オレたしかに友情宣言したじゃないか! なのにフレンドじゃないなんて、そんなヒドイ話があるか! なぁ!」

 

 「………アンバサ………」

 

 




今回のセルフツッコミ。
ハルバードどんだけ万能なんやねん!
てか最初から竜ハルバードで無双してりゃよかったじゃん!

次は、SAO開闢のあの日の話です。
ではまた次回。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。