扶桑と提督の、鎮守府での一幕。
何故、ここに居るのか。そんな自問を投げかける提督のお話です。

※ピクシブに投稿されているものと同じ内容です。

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綺麗な空の下で散歩するのは楽しいものだ。


今ここにあるということ

 空の高さ、海の青さが沁みる昼下がり、鎮守府前の埠頭を散歩する人物が二人。

 腰に軍刀を帯びた、海軍の士官用礼装に身を包んだ男性と、巫女服のような和装に身を包んだ、物憂げな瞳が印象的な女性が、隣りあわせで歩いている。

「空はこんなに青いものなんですね…。提督」

 物憂げな瞳はそのままに、女性が微かに楽しそうな微笑を浮かべる。ここ二週間ほど、深海棲艦に対する遊撃任務が続いたせいか余裕が無く、こうして二人でゆったりと散歩を楽しむのは久しぶりであった。

「そうだなぁ。今日は特にそう感じるよ。季節柄かな」

 その微笑に応じるように提督も微笑を浮かべ、隣を歩く女性、艦娘の扶桑を見る。

「冬の空は澄んでいると言いますが、ここまで綺麗なものなんて…ふふ、少しだけ幸せな気分です」

 そう言って、そっと提督の腕に自分の腕を絡める。

「それは良いことだ。ならその幸せが長続きするように、俺ももっと頑張らないとな」

 提督は、扶桑が腕を絡めたことに緊張することも無く、扶桑の歩幅に自分の歩き方を合わせる。まるで長年連れ添った夫婦のように、互いが互いの動作を当たり前なものとして受け入れていた。

「でも、頑張り過ぎて倒れないようにして下さいね?この前は本当、心配したんですから」

「いやはや、面目ない。あの時は色々な事務仕事やら、複数艦隊の指揮やらが重なりすぎていたからねぇ」

 少しだけ不満そうな顔をしている扶桑に、申し訳なさそうに提督が苦笑いを浮かべる。

「忙しい時は私の力も使ってください。一人で彼是するのは駄目ですよ」

 そう言いながら扶桑は体を密着させる。女性特有の柔らかさが服越しでも伝わり、隣にいるという実感がよりはっきりとする。それは、儚く大人しいと言う印象の強い彼女が見せる、精一杯の自己主張だった。

「次からはそうさせてもらうよ。艦娘あっての提督だからな」

 扶桑の頭を撫で、ゆっくりと歩く。

「もう、提督はすぐそうやって…誤魔化すんですから」

 扶桑は、撫でられて嬉しく思う反面、上手い具合に誤魔化されつつある自分の心境を複雑にも感じていた。だが、想いは微塵も変わらない。

 

 そうやってしばらく歩き、鎮守府から少し離れた位置にある展望台までやってきた。高台から眺める鎮守府とその向こう側に見える街の全景は、海も含めて、観光の名所になっているほどの絶景である。なんとしてもこの風景を、ここから見える人々を守らねばならないと、見ているだけで気持ちが引き締まる思いだった。

二人は展望台近くのベンチに座り、景色を眺めている。

「いつ見ても美しいですね、ここからの眺めは…」

提督に軽く体重を預けつつ、扶桑が呟く。

 提督は、その暖かさを感じながら目の前の景色を見渡す。ここから見える景色が今の自分の全てなのだ。信じるものも、守るべきものも、ここにある。そう思えばこそ、苦しくとも耐えて足を踏ん張ることが出来るのだ。

ただ、人間は弱い。翼も持たねば水中呼吸機能も無い。汎用的に生きていくことが出来ないからこそ、よって立つための陸地が必要だった。自分にとってはこの景色こそが、その陸地だと言えた。

「提督、どうかしましたか?」

 考え事をしている提督に、扶桑が不思議そうな表情を向ける。

「ああ、いや。ちょっと景色に見入ってただけだから。大丈夫」

 提督は、心配そうな扶桑を安心させるために笑ってみせる。心底空々しい誤魔化し方だと思ったが、余計な不安を抱かせるよりはよほど良いと思われた。そもそもこれは、自分の心構えの問題なのだ。

「そうですか、なら良いんですけど…」

 何か言いたそうにはしていたが、それ以上の追及も詮索もせず、再び体を預けた。

 提督は、隣で幸せそうに微笑している扶桑の顔を見ながら、何はともかく、まずはこの笑顔を守れるくらいにはならないといけないな、と微笑し、その髪を撫でるのだった。




どうも、こんにちは。ラウンド・テーブルでございます。
艦これのSS、如何でしたでしょうか?稚拙ではありますが、楽しんでいただけたなら何よりです。

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