機動戦士ガンダム DoubT ~少年のウソが戦争となる~   作:NageT

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第23話「ナーベルの闘い」

 

「坊主、右腕上げろ!」

 

「はい!」

 

ケンが操縦桿を動かす。

 

整備用の固定台に収まったガンダムダウトの右腕が、ゆっくりと持ち上がった。

 

その周囲では整備員達が慌ただしく動いている。

 

準決勝を終えたばかりの機体。

 

装甲には細かな傷が増えていた。

 

ワイヤーアンカー。

 

ヒートカトラス。

 

ナックルガードシールド。

 

サブマシンガン。

 

決勝へ向け、一つずつ状態確認が進められている。

 

「もう一回。」

 

「はい。」

 

腕を下ろす。

 

再び上げる。

 

おやっさんは端末へ目を落とし、数値を確認した。

 

「……よし。」

 

「右腕は問題ねぇ。」

 

「ワイヤーアンカーは?」

 

「今見てる。」

 

「ちゃんと使える?」

 

「だから今見てるって言ってんだろ!」

 

「す、すいません……。」

 

ケンはコックピットの中で小さくなる。

 

準決勝を終えてから。

 

少しだけ。

 

いつもの調子が戻っていた。

 

完全に吹っ切れたわけではない。

 

それでも。

 

自分自身が怖くて何も考えられなかった時よりは、ずっとマシだった。

 

「……ほんとに、あと一回なんだよね。」

 

独り言のつもりだった。

 

『そうだ。』

 

おやっさんの声が返ってくる。

 

「あ。」

 

通信が繋がったままだった。

 

「決勝って聞くと急に帰りたくなってきた……。」

 

『ここまで来て何言ってやがる。』

 

「だって決勝だよ?」

 

『だからなんだ。』

 

「一番強い相手が出てくるってことでしょ?」

 

『当たり前だろ。』

 

「帰りたい……。」

 

『坊主。』

 

「はい。」

 

『腹括れ。』

 

「……はい。」

 

その時だった。

 

格納庫の奥から、大きな声が響く。

 

「だからアタシが出るって言ってんだろ!」

 

ケンが振り返る。

 

ナーベルとオーガ。

 

二人が向かい合っていた。

 

「出ることに反対してるんじゃない。」

 

オーガが腕を組んだまま言う。

 

「なら何なんだよ!」

 

「頭に血が上がってる。」

 

「上がってねぇ!」

 

「上がってる。」

 

「上がってねぇって言ってんだろ!」

 

「声がでかい。」

 

「元からだ!」

 

ケンはコックピットから二人を見る。

 

ナーベルは予備パイロットとして登録されている。

 

そして。

 

決勝で使う機体もある。

 

ナーベル専用機。

 

カトラス・C。

 

二刀のヒートカトラス。

 

額にはヒートホーン。

 

ダウトの改修が進められていた裏で、おやっさんが修理と整備を続けていた船長機。

 

さらに。

 

バックパックにも手が加えられていた。

 

機動性。

 

旋回能力。

 

共に以前より向上している。

 

ナーベルの近接戦闘に、より適した状態へと仕上げられていた。

 

問題は。

 

機体ではなかった。

 

「ナーベル。」

 

オーガが言う。

 

「先代が死んでから。」

 

ナーベルの表情が僅かに変わる。

 

「俺達が何年耐えてきたと思ってる。」

 

「……。」

 

「ガタガタになった海賊団を立て直すために。」

 

「カストロの庇護を受けた。」

 

ナーベルは黙る。

 

当時。

 

支柱だったナーベンを失ったレッドスワン海賊団は、大きく勢力を落としていた。

 

若いナーベルが跡を継いだものの。

 

船も。

 

小惑星の街も。

 

そこに暮らす仲間達も。

 

守るだけで精一杯だった。

 

そんな時。

 

ドン・カストロが手を差し伸べた。

 

かつての親友のガキを助ける。

 

そんな顔をして。

 

「最初はアタシらだって感謝してた。」

 

ナーベルが吐き捨てるように言う。

 

「ああ。」

 

オーガが頷く。

 

「だから従った。」

 

だが。

 

次第に。

 

要求は増えていった。

 

危険な仕事。

 

割に合わない仕事。

 

無茶な要求。

 

断れば。

 

決まってカストロは言った。

 

――俺の親友だったナーベンの子供のお前等だから頼んでる。

 

――誇り高きレッドスワン海賊団の名を継ぐお前等なら出来るだろう。

 

聞こえのいい言葉。

 

だが。

 

実際には。

 

利用されていた。

 

搾取されていた。

 

それでも。

 

ナーベル達は耐えた。

 

父が残したレッドスワン号を。

 

小惑星を。

 

仲間達を。

 

守るために。

 

「でも。」

 

オーガが続ける。

 

「俺たちは先代の最後の言葉だけは忘れなかった。」

 

ナーベルの拳が握られる。

 

――俺はやってねぇ!

 

誰よりも尊敬した父親。

 

大船長。

 

その最後の言葉。

 

だから。

 

ナーベルとオーガは動いた。

 

カストロファミリーの内側を探った。

 

そして。

 

掴んだ。

 

ドン・カストロが。

 

コロニー国家連合の輸送艦襲撃に関わっていた証拠。

 

さらに。

 

自分達が長年。

 

都合よく使われ続けていたという事実。

 

「証拠を掴んだ時。」

 

オーガが言う。

 

「お前はすぐカストロの所へ殴り込みに行こうとした。」

 

「……覚えてる。」

 

「止めた。」

 

「ああ。」

 

「勝てなかったからだ。」

 

ナーベルが顔を上げる。

 

オーガの目は冷静だった。

 

「俺達には力がなかった。」

 

「カストロを殺しても、その後にファミリー全部を敵に回せば。」

 

「船も。」

 

「街も。」

 

「仲間も守れない。」

 

「だから待った。」

 

ナーベルが低く言う。

 

「ああ。」

 

「力を溜めた。」

 

「いつか。」

 

「必ず。」

 

短い沈黙。

 

「カストロを潰すためにな。」

 

ナーベルの口元が僅かに上がった。

 

「だったら。」

 

モニターへ視線を向ける。

 

そこには。

 

決勝へ出場するサラマンダー。

 

そして。

 

パイロット名。

 

ドン・カストロ。

 

「今だろ。」

 

オーガもモニターを見る。

 

「……ああ。」

 

ナーベルが少し意外そうな顔をした。

 

「止めねぇのか?」

 

「何故止める。」

 

オーガは淡々と答える。

 

「カストロ本人が出てくる。」

 

「しかも試合だ。」

 

「ここで仕留めれば。」

 

「復讐は果たせる。」

 

「カストロファミリーは頭を失う。」

 

「俺達も支配から抜けられる。」

 

ナーベルの目が鋭くなる。

 

「これ以上ない好機だ。」

 

「だろ?」

 

「ああ。」

 

ただし。

 

オーガは指を一本立てた。

 

「だからこそ。」

 

「絶対にしくじるな。」

 

「……。」

 

「怒りに任せて突っ込んで。」

 

「返り討ちに遭うのが一番馬鹿らしい。」

 

ナーベルの眉が吊り上がる。

 

「誰が返り討ちに遭うって?」

 

「そういうところだ。」

 

「オーガ!」

 

ケンが思わず口を挟む。

 

「でもオーガの言ってることは分かる。」

 

「坊やまで何なんだ!」

 

「だってナーベル、絶対カストロ見たら突っ込むじゃん。」

 

「突っ込まねぇ!」

 

オーガが即座に言う。

 

「嘘だな。」

 

「なんでお前が即答すんだよ!」

 

「長い付き合いだからだ。」

 

「ちくしょう!」

 

ケンは少しだけ笑った。

 

張り詰めていた空気が。

 

僅かに緩む。

 

だが。

 

ナーベルの目から。

 

怒りが消えたわけではない。

 

むしろ。

 

はっきりしていた。

 

ずっと待ち続けた相手が。

 

ついに。

 

手の届く場所へ現れた。

 

「オーガ。」

 

「ああ。」

 

「ここで終わらせる。」

 

ナーベルが言う。

 

「親父を嵌めたことも。」

 

「アタシらを散々使い潰そうとしたことも。」

 

「全部。」

 

拳を握る。

 

「カストロに返してやる。」

 

オーガは短く頷いた。

 

「そのために。」

 

「生きて帰れ。」

 

ナーベルが笑う。

 

「当然だ。」

 

「坊主!」

 

突然。

 

おやっさんの声が飛んできた。

 

「はい!」

 

「終わったぞ!」

 

ケンが前を見る。

 

おやっさんが親指を立てる。

 

「ワイヤーアンカー問題なし。」

 

「ヒートカトラス二本とも使える。」

 

「サブマシンガンも異常なし。」

 

「ナックルガードシールドもそのまま出せる。」

 

ガンダムダウトを見上げ。

 

「決勝。」

 

「行けるぞ。」

 

「……。」

 

ケンもダウトを見る。

 

ここまで。

 

本当に色々あった。

 

最初は。

 

廃工場で見つけただけだった。

 

ジャンクを貼り付けて。

 

ガンダムだと言って。

 

動画を撮っただけだった。

 

それが。

 

今は。

 

暗礁宙域最大級の闇試合。

 

その決勝。

 

「……なんでこうなったんだろ。」

 

『今さらか。』

 

「いや、たまに考えないと俺も追いつかないというか……。」

 

『いいから降りろ。最終確認するぞ。』

 

「はい……。」

 

――――――――――

 

モニタールーム。

 

大型画面へ。

 

決勝戦の出場者情報が表示されていた。

 

ノン。

 

グレアー。

 

メイド長。

 

三人が画面を見つめている。

 

「オーガじゃない。」

 

ノンが出場者名を見る。

 

ケン=大神。

 

ナーベル=シーマ。

 

グレアーが頷いた。

 

「船長さんが出るようですねぇ。」

 

「……大丈夫なの?」

 

「事情が事情でやすからね。」

 

グレアーも画面を見る。

 

「腕は確かなんでしょうが。」

 

少し間を置く。

 

「かなり真っ直ぐな方ですから。」

 

ノンが即答した。

 

「でしょうね。」

 

メイド長は二人の会話には入らず。

 

静かにノンの横に立っていた。

 

「お嬢様。」

 

「何?」

 

「間もなく出撃のようです。」

 

「……うん。」

 

ノンは再び画面を見る。

 

決勝相手。

 

一人目。

 

アダマン。

 

カストロファミリー専属傭兵。

 

搭乗機。

 

ソリダスエースAC。

 

黒を基調とした細身の機体。

 

緑の差し色。

 

両手にライフルを装備した高機動射撃特化型。

 

そして。

 

もう一人。

 

ドン・カストロ。

 

搭乗機。

 

サラマンダー。

 

黒い装甲。

 

黄色の差し色。

 

巨大なヒートクロー。

 

尾部へ折り畳まれたレールガン。

 

ノンが僅かに目を見開く。

 

「……本人が出るの?」

 

「そうらしいですな。」

 

グレアーの表情も険しい。

 

「主催者自ら決勝へ。」

 

「随分と本気でやす。」

 

ノンは何も答えなかった。

 

画面に映る。

 

ガンダムダウトを見つめる。

 

――――――――――

 

格納庫。

 

『レッドスワン海賊団。』

 

『決勝戦出場者は発進準備を開始してください。』

 

アナウンスが流れる。

 

「……来た。」

 

ケンはヘルメットを被った。

 

少し離れた場所では。

 

ナーベルがカトラス・Cへ向かっている。

 

整備を終えた船長機。

 

バックパックには、おやっさんによる改修が加えられている。

 

オーガがナーベルの前へ立つ。

 

「ナーベル。」

 

「なんだ。」

 

「狙うのはカストロだ。」

 

「ああ。」

 

「だが。」

 

「何度も言うな。」

 

ナーベルがニヤリと笑う。

 

「分かってる。」

 

「確実に仕留める。」

 

オーガは少しだけナーベルを見つめた。

 

そして。

 

「……行ってこい。」

 

「ああ。」

 

ナーベルとオーガが拳を突き合わせ、カトラス・Cへ乗り込む。

 

ケンもダウトへ。

 

ハッチが閉じる。

 

システム起動。

 

モニターが次々と点灯する。

 

ケンは深く息を吸った。

 

吐く。

 

「よし……。」

 

操縦桿を握る。

 

発進ゲート。

 

二機が並ぶ。

 

ガンダムダウト。

 

カトラス・C。

 

『坊や。』

 

通信。

 

ナーベルだった。

 

「何?」

 

『アタシについて来い。』

 

「……。」

 

『なんだよ。』

 

「カストロ見た瞬間に一人で突っ込まない?」

 

『突っ込まねぇって言ってんだろ!』

 

「ほんとに?」

 

『しつこい!』

 

「だってオーガが――」

 

『あの野郎……!』

 

その時。

 

ゲートの向こうから。

 

巨大な歓声が響いた。

 

二人の会話が止まる。

 

『さぁぁぁぁぁ!!』

 

実況の声。

 

『ついにこの時がやって参りました!!』

 

『カストロカップ――決勝戦!!』

 

歓声。

 

怒号。

 

賭け札を握り締める観客達。

 

『誰が予想したでしょうか!!』

 

『謎のガンダムを引っ提げ!!』

 

『数々の強豪を打ち破り!!』

 

『遂に決勝へ上り詰めた大穴!!』

 

『レッドスワン海賊団!!』

 

東側ゲート。

 

開放。

 

『ガンダムダウト!!』

 

『そして決勝戦では船長自らが参戦!!』

 

『ナーベル=シーマ!!』

 

『カトラス・C!!』

 

「行くぞ坊や!」

 

「うん!」

 

二機が飛び出す。

 

宇宙空間。

 

小惑星。

 

巨大モニター。

 

観客席。

 

無数の歓声。

 

そして。

 

西側ゲート。

 

『対するはぁぁぁ!!』

 

歓声がさらに大きくなる。

 

『暗礁宙域を支配する巨大組織!!』

 

『カストロファミリー!!』

 

一機目。

 

黒と緑。

 

細身の機体が高速で飛び出した。

 

ソリダスエースAC。

 

両手にはライフル。

 

『カストロファミリー専属傭兵!!』

 

『アダマン!!』

 

「……あれか。」

 

ケンが呟く。

 

見るだけでも分かる。

 

速い。

 

そして。

 

無駄がない。

 

続いて。

 

二機目。

 

ゆっくりと。

 

姿を現す。

 

黒。

 

黄色。

 

巨大な両腕。

 

五本のヒートクロー。

 

尾部ユニット。

 

サラマンダー。

 

『そしてぇぇぇぇ!!』

 

実況の声が最大になる。

 

『まさかの本人参戦!!』

 

『カストロファミリーの頂点!!』

 

『ドン・カストロォォォ!!』

 

ナーベルが。

 

サラマンダーを見つめる。

 

「……。」

 

一瞬。

 

何も言わなかった。

 

その機体の向こうにいる男。

 

父を陥れ。

 

自分達を支配し。

 

利用し続けてきた男。

 

「カストロ……。」

 

低い声。

 

ケンが横を見る。

 

「ナーベル。」

 

『分かってる。』

 

「まだ何も言ってないよ。」

 

『言いたいことは分かる。』

 

「ならいいけど……。」

 

『坊や。』

 

「何?」

 

『アイツはアタシが殺る。』

 

ケンの表情が変わる。

 

「……うん。」

 

ナーベルの声には。

 

怒りがあった。

 

だが。

 

それだけではない。

 

長い時間。

 

耐え続け。

 

待ち続けた末に。

 

ようやく訪れた機会。

 

『両チーム!!』

 

実況。

 

『準備はよろしいかぁぁぁ!!』

 

ケンは正面を見る。

 

アダマン。

 

ソリダスエースAC。

 

その奥。

 

サラマンダー。

 

ドン・カストロ。

 

「……。」

 

怖い。

 

当然だ。

 

でも。

 

ここまで来た。

 

『決勝戦!!』

 

一瞬の静寂。

 

『開始ぃぃぃぃ!!』

 

直後。

 

ソリダスエースACが加速した。

 

「速っ!」

 

アダマンが一気に距離を詰める。

 

右手のライフル。

 

発砲。

 

ケンは咄嗟にダウトを傾けた。

 

弾丸が肩の横を通り抜ける。

 

次。

 

左手。

 

「うわっ!」

 

ナックルガードシールドを構える。

 

着弾。

 

衝撃。

 

「ぐっ!」

 

アダマンは止まらない。

 

移動。

 

射撃。

 

さらに移動。

 

また射撃。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

ケンは必死に操縦桿を動かす。

 

サブマシンガンを構える。

 

撃つ。

 

だが。

 

ソリダスエースACは射線を外した。

 

「当たらない!」

 

目の前に。

 

青いラインは出ない。

 

行動予測も表示されない。

 

アシストモードは。

 

発動していない。

 

「クッ早いな……!」

 

再び銃撃。

 

「うわっ!」

 

ダウトを横へ振る。

 

一方。

 

ナーベルも動いた。

 

「カストロォォォ!!」

 

カトラス・C。

 

加速。

 

新しくなったバックパックが噴射する。

 

サラマンダーへ向かって一気に距離を詰める。

 

「やっぱり突っ込んでるじゃん!」

 

『今はいいんだよ!』

 

「さっきと言ってること違う!」

 

『うるせぇ坊や!』

 

二刀のヒートカトラス。

 

抜刀。

 

斬撃。

 

サラマンダーの巨大な腕が上がる。

 

五本のヒートクロー。

 

激突。

 

火花が散る。

 

「ぐっ……!」

 

ナーベルが歯を食いしばる。

 

「重てぇ……!」

 

サラマンダーが押し込む。

 

だが。

 

カトラス・Cも以前とは違う。

 

バックパック噴射。

 

押される勢いを利用し。

 

一気に横へ。

 

旋回。

 

サラマンダーの側面へ回り込む。

 

「そこだ!」

 

もう一本のヒートカトラスを振るう。

 

サラマンダーが腕を引く。

 

ヒートクローで受け止める。

 

再び火花。

 

「チッ!」

 

ナーベルが距離を取る。

 

その瞬間。

 

サラマンダーの尾が動いた。

 

折り畳まれていたユニットが展開。

 

三角錐状の砲身。

 

「!」

 

レールガン。

 

ナーベルは即座にスラスターを吹かす。

 

カトラス・Cが機体を捻る。

 

閃光。

 

弾丸がすぐ横を抜け。

 

背後のデブリを砕いた。

 

「……相変わらず洒落にならねぇな。」

 

ナーベルの額に汗が浮かぶ。

 

父が乗っていた機体。

 

その力を。

 

今。

 

敵として向けられている。

 

だが。

 

視線は逸らさない。

 

「カストロ!」

 

再び加速。

 

「親父を嵌めたのはテメェだろ!」

 

サラマンダーのカストロは答えない。

 

ヒートクロー。

 

ナーベルがヒートカトラスで受ける。

 

「輸送艦を襲ったのも!」

 

火花。

 

「アタシらを今まで利用してたのも!」

 

押し返す。

 

「全部!」

 

カトラス・Cが旋回。

 

「テメェなんだろ!」

 

それでも。

 

返事はない。

 

「答えろやぁ!」

 

一方。

 

ケンは。

 

アダマンの銃撃を必死にかわしていた。

 

右。

 

左。

 

上。

 

下。

 

「なんなんだよコイツ!」

 

サブマシンガン。

 

発射。

 

アダマンは既に別の位置へ。

 

また撃ってくる。

 

「機体が速いだけじゃない……!」

 

距離の取り方。

 

射撃のタイミング。

 

移動。

 

全てが上手い。

 

「ヤバい……!」

 

警告音。

 

「え?」

 

ソリダスエースAC。

 

既にダウトの正面。

 

両手のライフル。

 

「しまっ――!」

 

発砲。

 

ケンは操縦桿を強く切る。

 

ダウトが横へ跳ぶ。

 

一発。

 

バックパックを掠めた。

 

「うわあっ!」

 

機体が揺れる。

 

「くそっ……!」

 

ケンは機体を立て直す。

 

前を見る。

 

アダマン。

 

そして。

 

離れた場所では。

 

ナーベルとカストロ。

 

カトラス・Cとサラマンダー。

 

二つの戦いが。

 

同時に始まっていた。

 

レッドスワン海賊団。

 

長年の支配から抜けるための戦い。

 

そして。

 

ナーベルとオーガが待ち続けた。

 

復讐の好機。

 

その全てを懸けた決勝戦は。

 

まだ。

 

始まったばかりだった。

 




サラマンダー(カストロファミリー)

【挿絵表示】


ソリダスエース(アダマンカスタム)

【挿絵表示】

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