機動戦士ガンダム DoubT ~少年のウソが戦争となる~   作:NageT

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第24話「届かない力」

 

 

「くそっ……!」

 

ケンは操縦桿を切った。

 

ガンダムダウトが急旋回。

 

直後。

 

さっきまで機体がいた場所を、二本の弾道が貫いていく。

 

「また!」

 

アダマンのソリダスエースAC。

 

右手。

 

左手。

 

二丁のライフルを交互に撃ち分けながら。

 

止まらない。

 

一発撃つ。

 

動く。

 

また撃つ。

 

位置を変える。

 

さらに撃つ。

 

その全てが。

 

ケンの逃げ道を塞ぐように飛んでくる。

 

「なんで!」

 

ダウトを下降。

 

一発。

 

頭上。

 

「そこまで!」

 

右へ。

 

もう一発。

 

今度は右側。

 

「読んでるんだよ!」

 

ナックルガードシールドを構える。

 

着弾。

 

衝撃。

 

「ぐっ!」

 

機体が押し流される。

 

ケンは必死に姿勢を立て直した。

 

サブマシンガンを構える。

 

「だったら!」

 

連射。

 

だが。

 

アダマンは一瞬早く機体を斜めへ流した。

 

銃弾が虚空へ消える。

 

「また外した!」

 

ソリダスエースACが急加速。

 

ダウトの側面へ。

 

「速っ!」

 

ケンもスラスターを吹かす。

 

距離を取る。

 

だが。

 

アダマンは追ってこない。

 

一度引く。

 

そして。

 

ケンが逃げようとした先へ。

 

先回り。

 

「え?」

 

ライフル。

 

発射。

 

「うわっ!」

 

ダウトが咄嗟に身体を捻る。

 

弾丸が腰部装甲を掠める。

 

「なんなんだよコイツ……!」

 

逃げても。

 

追わない。

 

その代わり。

 

逃げる先にいる。

 

撃とうとすれば。

 

射線から外れる。

 

近付こうとすれば。

 

距離を広げる。

 

ケンが何をしようとしているのか。

 

全部。

 

一歩先で潰されていた。

 

その頃。

 

少し離れた宙域では。

 

火花が弾けていた。

 

「おらぁぁぁ!!」

 

カトラス・C。

 

二刀のヒートカトラスが振るわれる。

 

サラマンダーの巨大なヒートクロー。

 

激突。

 

ナーベルは押し込まれる前に、左側のスラスターを吹かした。

 

機体が横へ滑る。

 

そのまま旋回。

 

「そこだ!」

 

サラマンダーの側面。

 

ヒートカトラス。

 

だが。

 

巨大な腕が振り返る。

 

刃と爪がぶつかった。

 

「チッ!」

 

ナーベルはすぐに距離を取る。

 

以前なら。

 

一度攻撃を防がれれば、そのまま正面から押し込んでいた。

 

だが。

 

今のカトラス・Cは違う。

 

更新されたバックパック。

 

上がった旋回性能。

 

機体を小さく切り返しながら。

 

再び。

 

サラマンダーの死角へ回る。

 

「こっちは!」

 

右。

 

左。

 

急旋回。

 

「何年も前のままじゃねぇんだよ!」

 

ヒートカトラス。

 

振り下ろす。

 

サラマンダーが一歩引く。

 

刃が肩装甲を掠めた。

 

火花。

 

「入った!」

 

ナーベルの口元が上がる。

 

だが。

 

浅い。

 

サラマンダーが即座に反撃。

 

巨大なヒートクローが横薙ぎに迫る。

 

「!」

 

ナーベルは機体を倒すように回避。

 

爪が頭上を通り抜ける。

 

その直後。

 

尾部ユニット。

 

展開。

 

「またそれか!」

 

レールガン。

 

発射。

 

ナーベルはスラスターを最大まで吹かした。

 

カトラス・Cが急上昇。

 

砲撃が脚部のすぐ下を抜ける。

 

「……っぶねぇ!」

 

一瞬遅ければ。

 

下半身を持っていかれていた。

 

それでも。

 

ナーベルは離れない。

 

「カストロ!」

 

サラマンダーへ再び向かう。

 

「いつまで黙ってるつもりだ!」

 

ヒートカトラス。

 

サラマンダーが受ける。

 

「親父を嵌めたのはテメェだろ!」

 

火花。

 

返事はない。

 

「輸送艦を襲ったのも!」

 

ナーベルが押し込む。

 

「サラマンダーを奪ったのも!」

 

サラマンダーの腕が動く。

 

ナーベルはすぐに離れる。

 

「アタシらはもう掴んでんだよ!」

 

「証拠も!」

 

「テメェがやったことも!」

 

一瞬。

 

サラマンダーの動きが止まった。

 

ナーベルの目が細くなる。

 

そして。

 

初めて。

 

通信が開いた。

 

『……よく調べたな。』

 

ナーベルの顔から。

 

笑みが消えた。

 

「……。」

 

短い言葉。

 

それだけ。

 

否定しない。

 

誤魔化さない。

 

ナーベルの中で。

 

何年もの間。

 

疑い続け。

 

追い続けてきたものが。

 

一気に。

 

答えへ近付いた。

 

「……やっぱり。」

 

操縦桿を握る手に力が入る。

 

「テメェだったのか……!」

 

サラマンダーが構える。

 

『だからどうした。』

 

「……あ?」

 

『今さら何が変わる。』

 

ナーベルの目が見開かれる。

 

『ナーベンは死んだ。』

 

『レッドスワン海賊団は俺の下に入った。』

 

『そして今まで生き延びてきた。』

 

「テメェ……!」

 

『結果だけ見れば。』

 

『悪い話ではなかっただろう。』

 

「黙れ!」

 

カトラス・Cが加速した。

 

「誰のおかげで生き延びたと思ってやがる!」

 

二刀。

 

振り下ろす。

 

「アタシらは!」

 

サラマンダーの両腕。

 

ヒートクローが受け止める。

 

「テメェに生かされてたんじゃねぇ!」

 

火花。

 

「歯ぁ食いしばって!」

 

押し込む。

 

「テメェの無茶振り全部こなして!」

 

さらに。

 

スラスター。

 

「自分達で生き残ってきたんだよ!」

 

サラマンダーが腕を振り払う。

 

カトラス・Cが弾かれる。

 

「ぐっ!」

 

ナーベルは機体を立て直す。

 

怒っている。

 

頭の中が熱い。

 

それでも。

 

止まらない。

 

いや。

 

止めるつもりもない。

 

だが。

 

ただ真っ直ぐ。

 

無茶苦茶に突っ込んではいない。

 

距離。

 

角度。

 

相手の腕。

 

尾部。

 

全てを見る。

 

「ここで。」

 

ナーベルが低く呟く。

 

「終わらせる。」

 

その頃。

 

ケンは。

 

終わらせるどころではなかった。

 

「うわああっ!」

 

ダウトが急降下。

 

頭上。

 

アダマンの銃撃。

 

さらに。

 

下降先。

 

左。

 

もう一発。

 

「そこにも来るの!?」

 

ケンは機体を右へ捻る。

 

ギリギリ。

 

回避。

 

だが。

 

ソリダスエースACは。

 

既に次の位置へ。

 

「くそっ!」

 

サブマシンガン。

 

発射。

 

当たらない。

 

「だったら!」

 

ワイヤーアンカー。

 

左腕を上げる。

 

アダマンが。

 

即座にライフルを向けた。

 

「え?」

 

発砲。

 

「うわっ!」

 

アンカー射出口のすぐ横へ着弾。

 

ダウトの腕が弾かれる。

 

ワイヤーを撃てない。

 

「狙って……!」

 

アダマンの通信が入った。

 

『それか。』

 

「え?」

 

『今まで妙な止め方をしていた。』

 

ケンの表情が変わる。

 

アダマンは。

 

ダウトの戦いを見ていた。

 

当然だった。

 

ここまで。

 

カストロファミリー主催の大会を。

 

勝ち進んできたのだから。

 

『その腕から出る物。』

 

『近付かなければ問題ない。』

 

「……。」

 

ケンはワイヤーアンカーを見る。

 

ハッキング。

 

ダウトの切り札。

 

だが。

 

届かなければ。

 

何も出来ない。

 

「そんな……。」

 

アダマンの射撃。

 

ケンは回避。

 

「うわっ!」

 

また。

 

銃撃。

 

「くっ!」

 

ナックルガードシールド。

 

着弾。

 

さらに。

 

別角度から。

 

左手のライフル。

 

「二つ同時とか!」

 

ケンはダウトを後退させる。

 

アダマンは。

 

追わない。

 

距離を維持。

 

撃つ。

 

「……!」

 

また。

 

ケンの逃げ道を潰す。

 

「なんなんだよ……!」

 

今まで。

 

ケンは。

 

オーガに助けられてきた。

 

囮になって。

 

相手を引き付け。

 

その隙を。

 

オーガが撃つ。

 

そして。

 

ワイヤーアンカー。

 

ハッキング。

 

ダウトには。

 

他の機体にはない力がある。

 

だから。

 

勝てた。

 

でも。

 

今。

 

そのどれも。

 

通じない。

 

オーガはいない。

 

アンカーは警戒されている。

 

相手は。

 

純粋な操縦技術で。

 

遥かに上。

 

「……俺。」

 

ケンの額から汗が落ちる。

 

「こんなに……。」

 

アダマン。

 

移動。

 

射撃。

 

「下手だったんだ……。」

 

弾丸。

 

シールド。

 

着弾。

 

「ぐっ!」

 

その言葉が。

 

自分の胸へ刺さる。

 

アダマンから通信。

 

『ガンダムというから。』

 

一発。

 

ダウトが避ける。

 

『少しは期待していた。』

 

二発目。

 

回避。

 

『機体は悪くない。』

 

三発目。

 

ナックルガードシールド。

 

衝撃。

 

『だが。』

 

ソリダスエースAC。

 

急加速。

 

「!」

 

一気に距離を詰める。

 

『乗っているのは素人か。』

 

「……。」

 

ケンの眉が動く。

 

「……知ってるよ。」

 

『何?』

 

「素人なのは!」

 

サブマシンガンを構える。

 

「自分が一番知ってるよ!」

 

発射。

 

アダマンが機体を横へ流す。

 

「でも!」

 

ケンも追う。

 

「俺しか!」

 

さらに射撃。

 

「コイツに乗れないんだから!」

 

一瞬。

 

アダマンが距離を取る。

 

ケンは追いかけようとする。

 

だが。

 

「……っ。」

 

速い。

 

追いつかない。

 

ソリダスエースACが。

 

また遠距離へ。

 

ライフル。

 

照準。

 

「まずっ……!」

 

ケンがダウトを動かす。

 

一発。

 

避ける。

 

二発。

 

避ける。

 

三発。

 

「うわっ!」

 

肩装甲へ直撃。

 

ダウトが大きく傾く。

 

「くそ……!」

 

機体を立て直す。

 

その時。

 

遠く。

 

ナーベルの戦闘が。

 

モニターの端へ映る。

 

サラマンダー。

 

カトラス・C。

 

ナーベルは。

 

まだ食らいついている。

 

「ナーベル……。」

 

ケンが呟く。

 

「そっちまで……。」

 

だが。

 

視線を逸らした。

 

その一瞬。

 

警告。

 

「!」

 

アダマン。

 

正面。

 

右手のライフル。

 

左手のライフル。

 

二つの銃口。

 

完全に。

 

ダウトを捉えていた。

 

「しまっ――!」

 

同じ頃。

 

ナーベルも。

 

サラマンダーへ迫っていた。

 

「カストロォォォ!!」

 

カトラス・C。

 

旋回。

 

背後。

 

「もらった!」

 

二刀のヒートカトラス。

 

だが。

 

サラマンダーの尾が。

 

突然。

 

こちらへ向いた。

 

「なっ――」

 

レールガン。

 

至近距離。

 

ナーベルの目が見開かれる。

 

二つの戦場。

 

二つの危機。

 

ダウトのコックピット。

 

警告表示が点灯する。

 

《WARNING》

 

「……!」

 

ケンの呼吸が止まる。

 

目の前。

 

アダマンの銃口。

 

そして。

 

モニターの端。

 

ナーベルへ向けられた。

 

サラマンダーのレールガン。

 

「ナーベル……!」

 

次の瞬間。

 

二つの砲火が。

 

同時に放たれた。

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