機動戦士ガンダム DoubT ~少年のウソが戦争となる~   作:NageT

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第25話「喰らいつく牙」

二つの砲火が。

 

同時に放たれた。

 

「――っ!」

 

ケンの目の前。

 

アダマンの二丁のライフル。

 

完全に逃げ道を塞いでいた。

 

その瞬間。

 

モニターが赤く染まる。

 

《WARNING》

 

《パイロット生命反応 危険域》

 

《アシストモード 起動》

 

「……!」

 

ダウトがケンの操作より一瞬早く動いた。

 

機体を大きく捻る。

 

一発。

 

胸部装甲のすぐ横。

 

二発目。

 

バックパックを掠める。

 

「うわっ!」

 

衝撃。

 

機体が回転する。

 

だが、直撃は避けた。

 

「……またこれか!」

 

視界へ。

 

青いライン。

 

敵機の移動予測。

 

射線。

 

回避経路。

 

次々と表示されていく。

 

《敵機行動予測 開始》

 

《最適回避ルート表示》

 

ケンは操縦桿を握り直した。

 

「今度こそ……!」

 

一方。

 

カトラス・C。

 

至近距離、サラマンダーの尾部レールガンを放つ。

 

閃光。

 

「うおおおっ!」

 

ナーベルがブースターを全開に吹かして加速する。

 

カトラス・Cが横へ、強引に滑る様に加速する。

 

砲弾が機体のすぐ脇を紙一重で通り抜けた。

 

「ぐっ!」

 

衝撃波でカトラス・Cが大きく煽られる。

 

それでもナーベルは操縦桿を切る。

 

新しくなったバックパック。

 

以前より素早く、機体が向きを変える。

 

「まだだぁ!」

 

姿勢を立て直し、二刀のヒートカトラスを振るう。

 

「こんなもんで!」

 

再加速。

 

「止まるかよ!」

 

カトラス・Cが一直線にサラマンダーへ向かっていく。

 

――――――――――

 

アダマンのソリダスエースACの右手のライフルを発砲する。

 

「そこ!」

 

ダウトは体を捻って回避する。

 

左手のライフルも構えて間髪入れずに発砲。

 

「次!」

 

下降。

 

さらに。

 

アダマンが位置を変える。

 

だが今度はケンの視界にその進路が映っている。

 

「見える……!」

 

サブマシンガンをばら撒く様に乱射。

 

ソリダスエースACが機体を捻る。

 

一発だけ脚部装甲を掠めた。

 

火花が散る。

 

「当たった!」

 

ケンの目が大きくなる。

 

アダマンも一瞬動きを止めた。

 

『……。』

 

「……?」

 

通信はない。

 

ただ。

 

ソリダスエースACが僅かに距離を取る。

 

そして。

 

再び二丁のライフルを構えた。

 

「まだ来る……!」

 

発砲。

 

右左のライフル間髪入れずに撃ち込む。

 

さらに移動しながら別角度から攻撃を仕掛けてくる。

 

「多いって!」

 

ケンは必死に避ける。

 

アシストモードが表示する回避経路。

 

そこへ次の弾丸がくる。

 

「えっ!?」

 

慌ててナックルガードシールドで受け止める。

 

着弾。

 

「ぐっ!」

 

衝撃に機体が押し流される。

 

アダマンは何が起きたか分かっているわけではない。

 

ただ、ダウトの動きが急に変わった、それだけだが

 

それだけで。

 

戦い方を変えてきた。

 

「この人……!」

 

ケンがダウトを立て直す。

 

「やっぱり上手い……!」

 

アシストがある。

 

それでも。

 

簡単には捕まえられない。

 

アダマンは。

 

回避した先へ。

 

さらに射線を重ねる。

 

一度外しても。

 

次。

 

その次。

 

止まらない。

 

「どうすれば……。」

 

青いライン。

 

次の回避方向。

 

ケンが見る。

 

その先。

 

アダマンの銃口。

 

「……。」

 

また。

 

そこへ撃ってくる。

 

なら。

 

ケンは操縦桿を逆へ倒した。

 

「こっちだ!」

 

ダウトが。

 

表示された最適経路とは違う方向へ動く。

 

「うわっ!」

 

身体に強い負荷。

 

弾丸がダウトの肩のすぐ横を抜ける。

 

だが。

 

アダマンの照準が一瞬だけ遅れた。

 

「……いける!」

 

アシストに全部任せるんじゃない。

 

使うんだその上で。

 

自分でも考える。

 

「だったら!」

 

サブマシンガン。

 

連射。

 

アダマンが回避。

 

青い予測ライン。

 

「そこに逃げるなら!」

 

ケンは。

 

予測位置より。

 

少し先を撃つ。

 

アダマンが。

 

急停止。

 

「!」

 

銃弾が目の前を横切った。

 

ソリダスエースACが大きく機体を振る。

 

「今!」

 

右腕のワイヤーアンカー。

 

アダマンも。

 

それに気付く。

 

ライフルを構え右腕へ照準を合わせる

 

「まだ!」

 

ケンは。

 

アンカーを撃たない。

 

ダウトが右へ。

 

回避。

 

サブマシンガンを乱射する。

 

アダマンが射線を外す。

 

その瞬間、ケンは狙いを付けて。

 

「そこ!」

 

ワイヤーアンカーを射出。

 

ソリダスエースACが。

 

再び回避しようとする。

 

だが。

 

一瞬遅い。

 

アンカーが一直線に射出される。

 

右脚に命中し突き刺さる。

 

「捕まえた!」

 

ワイヤーがピンっと張る。

 

《接続確認》

 

《対象機体解析開始》

 

「止まれ!」

 

だが、すぐに何も起こらない。

 

「……え?」

 

アダマン。

 

即座に反応。

 

ソリダスエースACが加速。

 

ワイヤーを振り切ろうとする。

 

「うわっ!」

 

ダウトが引かれる。

 

「ちょ、待って!」

 

ケンもスラスターを吹かす。

 

ワイヤー。

 

切れない。

 

まだ。

 

繋がっている。

 

《解析継続》

 

「早くしてくれ……!」

 

アダマンがライフルをワイヤーへ向ける。

 

「切られる!」

 

ケンはダウトを振る。

 

サブマシンガン。

 

牽制。

 

アダマンが射線を避ける。

 

その間も。

 

《侵入処理継続》

 

「まだなの!?」

 

ケンの額から汗が落ちる。

 

今まで直接触れた時はもっと早かった。

 

けれど。

 

今は。

 

ワイヤー一本。

 

挟んでいる。

 

「……!」

 

いつもより何か遅い。

 

でも。

 

考えている暇はない。

 

「お願いだから!」

 

アダマンが再びワイヤーを狙う。

 

発砲。

 

「切らせるか!」

 

ケンがダウトを引く。

 

ソリダスエースACの脚が。

 

僅かに流される。

 

その一瞬。

 

《アクセス確立》

 

「きた!」

 

《駆動系統 干渉開始》

 

《推進系統 干渉開始》

 

「止まれよ!」

 

ソリダスエースACのスラスターが不規則に噴射。

 

機体が大きく揺れる。

 

『……!』

 

アダマンが。

 

初めて。

 

通信を開いた。

 

『何をした。』

 

「……!」

 

ケンは答えない。

 

いや。

 

答えられない。

 

さらに。

 

《駆動系統 停止》

 

《推進系統 停止》

 

ソリダスエースACのスラスターが消える。

 

脚部。

 

停止。

 

機体が。

 

ゆっくりと漂い始めた。

 

『……。』

 

アダマンが。

 

操縦桿を動かす。

 

だが。

 

動かない。

 

『機体が……。』

 

観客から見ればワイヤーアンカーを刺された直後、ソリダスエースACが突然ショートしたように止まった。

 

ケンは。

 

ワイヤーを離さない。

 

完全に。

 

動きが止まるまで。

 

待つ。

 

やがて、アダマンが短く息を吐いた。

 

『……参った。』

 

「……え?」

 

『動かん。』

 

少し間。

 

『俺の負けだ。』

 

直後。

 

実況。

 

『ソリダスエースAC!!』

 

『行動不能!!』

 

歓声。

 

『カストロファミリー最強の用心棒のアダマンが脱落ぅぅぅぅ!!』

 

「……。」

 

ケンはしばらく動かなかった。

 

「勝った……?」

 

アンカー解除。

 

ワイヤーを巻き上げて回収していく。

 

ソリダスエースACはそのまま動かない。

 

「……勝った。」

 

一人じゃない。

 

アシストに助けられた。

 

ダウトの力を使った。

 

それでも。

 

どう動くか。

 

どこで撃つか。

 

いつアンカーを使うか。

 

決めたのは。

 

自分だった。

 

「……よし!」

 

ケンが前を見る。

 

「ナーベル!」

 

――――――――――

 

「ぐうっ!」

 

カトラス・C。

 

サラマンダーのヒートクロー。

 

直撃。

 

ナーベルは。

 

二刀のヒートカトラスを交差して受ける。

 

「っ……!」

 

押される。

 

機体が。

 

後退。

 

「この……!」

 

バックパックを噴射する。

 

押し返す。

 

だが。

 

サラマンダーはさらに力をかける。

 

「やっぱ出力負けしちまうか……!」

 

ナーベルが歯を食いしばる。

 

サラマンダーは無情にも腕を振るう。

 

カトラス・Cが弾き飛ばされる。

 

「ぐっ!」

 

それでもナーベルは止まらない。

 

機体を捻る。

 

旋回。

 

再びサラマンダーの側面へ。

 

「もらったぁ!」

 

ヒートカトラスを全力で振るう。

 

サラマンダーは軽く回避。

 

刃が装甲を浅く掠める。

 

火花が散る。

 

だがそれだけ。

 

「チッ!」

 

ナーベルがもう一撃振るう。

 

サラマンダーはそれをヒートクローで受ける。

 

そしてそのままで反対の腕を振り回す。

 

「!」

 

ナーベルは回避する。

 

だが少し遅い。

 

ヒートクローが。

 

カトラス・Cの肩装甲を抉る。

 

「ぐあっ!」

 

破片が散る。

 

警告音が鳴り響く。

 

「まだまだ!」

 

ナーベルは即座に反撃に移る。

 

ヒートカトラスでサラマンダーの腕を弾く。

 

そこへ頭を上げる

 

「おらぁぁ!!」

 

額のヒートホーンサラマンダーの頭部へ。

 

突き出す。

 

だがサラマンダーは後退し、僅かに掠めるだけ。

 

「逃げんな!」

 

カトラス・Cは後退したサラマンダーを追う。

 

『ナーベルよ。』

 

カストロの声。

 

「……。」

 

『その程度か。』

 

「黙れ。」

 

『先代と同じ機体に。』

 

ナーベルの眉が動く。

 

『随分と必死だな。』

 

「……。」

 

『貴様の親父、ナーベンなら。』

 

「テメェが!」

 

ナーベルが。

 

操縦桿を強く押し込む。

 

「親父の名前を口にすんな!!」

 

カトラス・Cが急加速。

 

二刀による連撃。

 

一撃。

 

二撃。

 

 

サラマンダーは軽く捌いてかわす。

 

しかしナーベルは止まらない。

 

「カストロォォォ!」

 

さらに斬りかかる、その動きは獣の如き。

 

『ナーベル!』

 

通信にケンの声が響く。

 

「邪魔すんな坊や!」

 

『アダマンは止めたよ!』

 

「……!」

 

ナーベルが一瞬視線を動かす。

 

遠く漂うソリダスエースAC。

 

その向こうからガンダムダウトがこちらへ向かってくる。

 

ナーベルの口元が上がる。

 

「やるじゃねぇか坊や!」

 

『今行く!』

 

「おう!」

 

ダウトが加速してサラマンダーへ。

 

『ここから二対一だ!』

 

「一気に潰すぞ!」

 

『うん!』

 

カトラス・Cは右へ。

 

ダウトは左へ。

 

サラマンダーを挟み込む様にケンとナーベルが連携を見せる。

 

『おおっとぉぉぉ!!』

 

実況。

 

『ここで状況が大きく変わったぁぁぁ!!』

 

『カストロファミリー、残るはドン・カストロただ一人!!』

 

『対するレッドスワン海賊団は二機健在!!』

 

観客席。

 

大歓声。

 

「行くぞ坊や!」

 

『うん!』

 

ダウトがサブマシンガンを連射して牽制する。

 

サラマンダーは難なく回避する。

 

ナーベルは正面に回り込み

 

「そこだ!」

 

ヒートカトラスをサラマンダーに振るう。

 

ヒートクローで受ける。

 

その反対側ケンが即座に回り込み

 

「今!」

 

ダウトもヒートカトラスを抜刀し斬り込む。

 

サラマンダーは身体を捻る様にかわし、そのまま巨大な腕で薙ぎ払う。

 

「うわっ!」

 

ケンは後退し。

 

ナーベルは横から再度切り込む。

 

「こっちだ!」

 

斬撃をサラマンダーは腕で受ける。

 

そして尾部を向ける。

 

「!」

 

レールガンを展開してケンへ照準を合わせる。

 

「また!」

 

アシストモードが回避起動を提示する。

 

ダウトが急回避。

 

レールガンが発射砲弾が加速して迫ってくる。

 

ナックルガードシールドを掠める。

 

装甲表面が大きく削られる。

 

「ぐっ!」

 

その隙にナーベルが突っ込む。

 

「もらった!」

 

サラマンダーは左腕のヒートクローで受ける。

 

右腕はダウトへ振るわれる。

 

「え!?」

 

ケンは回避するが

 

そのままサラマンダーが二機の間を抜ける。

 

「速い!」

 

ナーベルが振り返る。

 

「追え坊や!」

 

『分かってる!』

 

二機で追う。

 

だがサラマンダーが一気に反転。

 

尾部のレールガンを展開し、構える。

 

「!」

 

二人左右へ分かれて回避。

 

そのままサラマンダーがカトラス・Cへ突進。

 

「来やがれ!」

 

ナーベルは二刀を構える。

 

ヒートクローとヒートカトラスが激突。

 

「ぐっ……!」

 

押されるが、その隙をついて

 

ケンが背後に回る。

 

「ナーベル!」

 

サブマシンガンを撃つ。

 

サラマンダーは片腕だけでナーベルを押さえたまま、身体をずらす。

 

ばら撒かれた銃弾が外れる。

 

「嘘でしょ……!」

 

もう一方の腕がダウトへ伸びる。

 

「うわっ!」

 

ケンは急後退で回避する、その瞬間。

 

カストロはサラマンダーの腕を一気に振り抜く。

 

「ぐあっ!」

 

カトラス・Cが弾き飛ばされる。

 

「ナーベル!」

 

ケンが。

 

すぐ追おうとする。

 

だが。

 

尾部のレールガンがこちらを向く。

 

「っ!」

 

ダウトは回避機動を取りながらサブマシンガンを発射。

 

レールガンの砲弾はダウトを逸れ、背後の巨大な岩を粉砕。

 

「二対一なのに……!」

 

ケンの息が荒くなる。

 

「なんで……!」

 

ナーベルも一度姿勢を戻す。

 

肩装甲の損傷が深刻である。

 

だが、まだ動ける。

 

サラマンダーに大きな損傷はない。

 

装甲表面に浅い傷それだけだった。

 

『もう分かったか。』

 

カストロが口を開く。

 

「……。」

 

『これがサラマンダーだ。』

 

ナーベルの眉が動く。

 

『お前の親父も。』

 

「……。」

 

『この機体で力を得た。』

 

ナーベルが操縦桿を強く握る。

 

『そして。』

 

一拍。

 

『力を持ちすぎた。』

 

「何?」

 

『最初は良かった。』

 

カストロの声は落ち着いている。

 

『俺が先に上へ行った。』

 

『ナーベンは後からついてきた。』

 

『互いに助け合った。』

 

『酒も飲んだ。』

 

『良い友人だった。』

 

「……。」

 

『だが。』

 

ナーベルの目が鋭くなる。

 

『アイツは目立ちすぎた。』

 

『力を持ちすぎた。』

 

『俺の地位を。』

 

短い沈黙。

 

『脅かすほどにな。』

 

「……。」

 

ケンも通信越しに黙って聞いている。

 

『だから。』

 

カストロは平然と言った。

 

『潰した。』

 

ナーベルの表情から何かが消えた。

 

「……テメェ。」

 

『友人だったからこそ。』

 

『厄介だった。』

 

「……。」

 

『俺より上へ行かれるのは。』

 

『困るからな。』

 

ナーベルの呼吸が少しずつ荒くなる。

 

「……そんな理由で。」

 

『理由としては十分だ。』

 

「そんな。」

 

声が震える。

 

「くだらねぇ理由で……!」

 

『ナーベル。』

 

ケンがナーベルを呼ぶが。

 

返事はない。

 

「親父を……。」

 

カトラス・Cがブースターを噴射する。

 

『ナーベル!』

 

ケンが名を呼ぶ

 

「カストロォォォォ!!」

 

一直線にサラマンダーへ。

 

『待って!』

 

ケンが追うがナーベルは止まらない。

 

「ぶっ殺す!!」

 

二刀を構える。

 

「テメェだけは!」

 

加速。

 

「アタシが殺す!!」

 

『ナーベル!一人で行かないで!』

 

「うるせぇ!」

 

さらに加速。

 

「コイツは!」

 

サラマンダーがヒートクローを構える。

 

「アタシが!」

 

ナーベルはただ、カストロしか見ていない。

 

避ける気もないし、周囲も見えていない。

 

「……。」

 

ケンの表情が変わる。

 

自分も知っている。

 

何も見えなくなる感覚。

 

怒りだけで目の前の相手へ。

 

「ダメだ……。」

 

ダウトを加速させる。

 

「ナーベル!」

 

サラマンダーは巨大なヒートクローを振り上げる。

 

「もう周り見えてない!」

 

カトラス・Cは止まらない。

 

ケンはその背中を追ってさらにスラスターを吹かして追いかけた

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