機動戦士ガンダム DoubT ~少年のウソが戦争となる~ 作:NageT
@kiの研究施設へ戻ってからも、赤ずきんちゃんネルに寄せられる反応は途切れることなく増え続けていた。
ただ、その内容は少しずつ変わり始めている。
以前は、ダウトに自分達の街へ来てほしいという声が多かった。
瓦礫を退かしてほしい。
復旧を手伝ってほしい。
人手の足りない場所を助けてほしい。
だが今は、それだけではない。
赤ずきんちゃんネルの動画を見たことをきっかけに、自分の住む地域で復旧作業へ参加したという報告。近所で困っている人の手伝いを始めたという書き込み。避難所へ物資を運んだ者や、復旧作業をしている人達へ食事を届けた者までいる。
そして、そんな書き込みを見た別の誰かが、自分も何かやってみようと動き始めていた。
研究施設の一室。
端末の前に座ったケンは、流れていくコメントを一つずつ追いながら、思わず頬を緩めた。
「……この人、また書き込んでる。」
隣にいたノンが画面を覗き込む。
「昨日、自分にも何か出来ないかって書いていた人?」
「そうそう。今日、近所の復旧作業に参加してきたって。」
その書き込みにはいくつもの返信が付いていた。
自分も明日参加してみる。
近所にも人手が足りない場所があるから調べてみる。
MSなんて持っていないけれど、自分の手で運べる物くらいなら運べる。
ケンはしばらく黙ってそれを眺めていた。
以前、ノンと一緒にダウトで人助けへ向かった時、自分達がやったのは目の前で困っている人達を助けることだった。
けれど、その時の映像を見た人達が、今度は自分達のいる場所で動き始めている。
「……俺達が行ってない場所でも、こうやって誰かが動いてくれてるんだな。」
「ええ。」
「俺、前はさ。困ってるって言われたら、ダウトで全部の場所に行かなきゃって思ってたけど……そんなの無理だもんな。」
「地球だけでも、どれだけ広いと思ってるの。」
「だよな。」
ケンが苦笑する。
自分一人で全部を救えるわけじゃない。
ダウトがあったところで、それは同じだ。
けれど自分達の動画を見た誰かが、自分にも出来ることがあるかもしれないと思ってくれた。
その誰かが動けば、また別の誰かがそれを見る。
今、画面の向こうで起きていることは、ケンが最初に思い描いていたものとは少し違っていた。それでも悪いものには思えなかった。
「俺達のやったことが、こういう形で広がるのもありなんだな。」
「そうね。私達だけで何とかしようとするより、ずっと大きく広がるかもしれない。」
「うん。」
二人で画面を見ていると、不意に背後から声が飛んできた。
「ほんならウチらもやろうや!」
「うわっ!?」
ケンが椅子の上で跳ね、勢いよく振り返る。
いつからそこにいたのか、@kiが二人の後ろから端末を覗き込んでいた。
「@ki! 急に後ろから出てこないでよ!」
「細かいこと気にすんなや。それよりこれや、これ。」
@kiは画面に並ぶコメントを指差した。
「ええやん。みんな自分に出来ることやっとるんやろ? ほんならウチらもここで見とるだけやなくて、なんかやろうや。」
「それは俺も思うけど。」
「ちょうどええ話があんねん。」
@kiはニヤリと笑った。
「ここからそう遠くない場所で、まだ復旧が終わっとらん所があるらしいんや。人手は集まっとるらしいけど、大きい瓦礫なんかは人間だけじゃどうにもならん。」
「MSなら手伝える?」
「そういうこっちゃ。」
ケンはノンを見る。
ノンも頷いた。
「だったら行ってみましょうか。」
「うん。前みたいに俺達だけで何とかするんじゃなくて、今度はもう動き始めてる人達の手伝いに行くんだ。」
「せや!」
@kiが勢いよく手を叩いた。
「ほんで、せっかくやるんやったら――第二回コラボや!」
「……やっぱりそっちもあるんだ。」
「当たり前やろ!」
呆れたケンの横で、ノンが小さく笑った。
*
グレアーに話を通すと、まず周辺の状況が確認された。
現場は連邦軍施設から離れており、現在のところ周囲に大きな軍の動きもない。撮影した映像についても、位置を特定出来る情報が映り込んでいないか公開前に確認する。
それらを条件に、今回の外出は認められた。
前回、人助けへ向かった時と同じように、ケンとノンは二人でダウトへ乗る。
そこへ今回は@kiとスコルも加わることになった。
目的は戦闘ではない。
既に復旧を始めている人達の中へ入り、自分達も出来ることを手伝う。
そうして迎えた当日。
ケンが第二形態ダウトのコックピットで出発前の確認を進めていると、後ろからノンが覗き込んできた。
「通信は?」
「大丈夫。撮影機材も問題なし。」
「じゃあ、いつでも始められるわね。」
「うん。でも……。」
ケンはモニターへ視線を向けた。
少し離れた場所には、黒く塗装されたブルーガが立っている。スコルは既に搭乗しており、出発準備も終えているようだった。
だが肝心の人物がいない。
「@kiは?」
「さっきまでいたんだけど。」
『言い出した本人が遅刻かよ。』
通信からスコルの呆れた声が聞こえてくる。
「第二回コラボやるって一番張り切ってたのに。」
「何か準備してるとは言ってたけど……。」
ノンがそう言った直後だった。
『待たせたなぁぁぁ!!』
研究施設内に、やたらと大きな声が響き渡った。
「……何?」
ケンとノンが同時にモニターを見る。
施設の大型搬入口。
その奥から、一機のMSがゆっくりと姿を現した。
「……赤。」
ノンが呟く。
「赤いね……。」
ケンもそれ以上の感想が出てこなかった。
とにかく赤かった。
以前@kiが持ち出したGKCとは、まるで違う。
重厚だった装甲は大幅に減らされ、全体的なシルエットも細い。大量に搭載されていた武装も見当たらない。
その代わり、背部や腰、脚部をはじめ、機体の各所には異様なほど多くの推進器が取り付けられていた。
「……何あれ。」
『フッフッフ……。』
@kiの笑い声が通信に入る。
「その笑い方やめて。不安になるから。」
『ケンケン、赤ずきん! 驚くんはまだ早いで!』
「もう十分驚いてるんだけど。」
『細かい説明は本番や! はよ始めようや!』
ケンとノンは顔を見合わせた。
「……始める?」
「そうしましょう。」
撮影を開始する。
コックピットの中でノンが赤ずきんとしてカメラへ向き直った。
「皆さんこんにちは。赤ずきんです。」
続いてケンも手を上げる。
「どうも〜ケンケンです!」
その直後、待ってましたとばかりに@kiの声が割り込んできた。
『そしてぇぇぇ! @kiショーちゃんネルの@kiやぁぁぁ!!』
「今回は赤ずきんちゃんネルと@kiショーちゃんネル、第二回のコラボになります。」
「前回は戦闘になっちゃったけど、今回は違います。俺達の動画を見て、自分達でも何か出来ないかって動き始めてくれた人達がいて――」
『そう! そこでや!』
「まだ俺が喋ってる!」
『細かいことはええやん!』
「よくないよ!」
開始早々いつもの調子になった二人を横目に、ノンは小さく息を吐いてから進行を戻した。
「今回は、既に復旧作業を始めている皆さんのお手伝いに向かいます。人の手だけでは動かすことが難しい瓦礫などを、MSを使って撤去する予定です。」
『せやけどな!』
また@kiが割り込んだ。
『今日はただの復旧作業やない!』
「いや、復旧作業だからね?」
『第二回コラボに相応しい秘密兵器を用意したんや!』
「……それでしょ。」
ノンがモニターに映る赤いMSを見る。
『そうや!』
赤い機体が大きく両腕を広げた。
『前回、ウチは究極のガンダムキラーを作った! 圧倒的火力! 圧倒的装甲! そして大量の武装! その名もGKC! ガンダムキラーキャノン!』
「現場に着いた時には全部終わってたけどね。」
『それを言うなケンケン!』
「事実じゃん。」
『確かにGKCには重大な欠点があった!』
「一つだけ?」
『重かったんや!!』
「そこは認めるんだ。」
『せやからウチは考えた! 火力を盛るから重くなる! 装甲を盛るから遅くなる! だったら全部逆にしたらええ!』
ケンの表情が固まる。
「……全部?」
『余計な装甲は引っ剥がした! 武装も必要最低限! そして浮いた重量を――全部推力に回したった!!』
赤い機体の各部に取り付けられた推進器が、見せつけるように一斉に短く噴射した。
「いやいやいや……。」
ケンが思わず身を乗り出す。
「また極端になってるじゃん!」
『何を言うとる! 昔の偉い人が言っとった!』
@kiが声を張り上げる。
『当たらなければどうということはない! やぁ!』
「昔の誰だよ……。」
『見さらせぇ! 通常のMSの3倍のスピードで動く真紅の流星!』
赤いMSが勢いよく腕を掲げた。
『GKS! ガンダムキラースピードやぁぁぁ!!』
通信回線が静まり返った。
ケンはしばらく何も言わず、モニターのGKSを眺めていた。
「……いい塩梅って言葉知らないのか?」
「知らないのかしら……。」
『馬鹿だな……。』
スコルが呟く。
「馬鹿ですね……。」
通信を聞いていたジーナが続き、
『やれやれ……。』
おやっさんのため息まで入った。
『これはまた……。』
最後にグレアーまで困ったように呟く。
『なんでや!!』
六方向から一斉に浴びせられた反応に、@kiだけが納得出来ない。
『前回の反省を完璧に活かしとるやろ!』
「前と真逆にすればいいって意味じゃないから!」
『見とれケンケン! 今日こそウチのガンダムキラーが大活躍や!』
「だから今日はガンダムを倒す企画じゃないって!」
*
現場では既に多くの人達が復旧作業を進めていた。
悪天候によって崩れた構造物や散乱した瓦礫の撤去は少しずつ進んでいるものの、大型の残骸になると人の手だけではどうにもならない。
ケンはダウトを作業区域の手前で停止させると、コックピットから周囲を確認した。
「結構集まってるな。」
「この中にも、動画を見て手伝いに来た人がいるみたい。」
ノンが撮影用の映像を確認しながら答える。
画面の中では、何人もの人達が声を掛け合いながら瓦礫を運んでいる。
自分達が来る前から、もう作業は始まっていた。
「……なんか、いいな。」
「何が?」
「俺達が来るまで待ってたわけじゃないんだなって。」
以前は、自分がダウトで行かなければと思っていた。
だが今日は違う。
既に動いている人達がいる。
自分とノンも、その中へ加わる。
ただそれだけだ。
「よし。俺達もやろう。」
「ええ。」
ノンは頷くと、赤ずきんとして撮影を再開した。
「それでは、これから復旧作業のお手伝いを始めます。現場には多くの方がいますので、周囲の安全を最優先に――」
『ほな一番乗りやぁぁぁぁ!!』
「え?」
ノンが言い終えるより早く、GKSの全身から一斉に光が噴き出した。
次の瞬間。
赤い機体が猛烈な勢いで前方へ飛び出した。
「速っ!?」
ケンが思わず叫ぶ。
GKSが通った後を、一直線に土煙が巻き上がっていく。
『おいおい……マジで速ぇじゃねぇか。』
スコルまで驚いていた。
「速いことは速いのね……。」
ノンも目を見開く。
冗談のような発想で作られた機体だが、推力そのものは本物だった。
余分な重量を削り、その分を推進力へ回したGKSは、ダウトとブルーガをあっという間に置き去りにしていく。
『見たかぁぁぁ!!』
@kiの歓声が通信に響く。
『これがGKSや! 速い! 速すぎるでぇ! ワッチ天才やぁぁぁ!!』
「@ki、速さを競ってるんじゃないから!」
『分かっとる分かっとる! この程度――』
声が止まった。
『……ん?』
「どうしたの?」
ノンが聞き返す。
GKSの進行方向には、崩れた大型構造物の残骸が横たわっていた。
作業の邪魔になるため、これから撤去する予定だったものだ。
避ければいい。
ただ、それだけだった。
GKSが姿勢を傾ける。
しかし速度が速すぎた。
各部の姿勢制御用バーニアが噴射しているにもかかわらず、進行方向がほとんど変わらない。
『……あれ?』
「@ki?」
『曲がれ。』
GKSがさらに機体を傾ける。
『……曲がれや。』
「ちょっと待って。」
ノンの表情が変わった。
「まさか、曲がれないの?」
『ちゃうちゃう! 曲がれる! 曲がれるんやけど――』
前方の残骸が猛烈な勢いで迫る。
『ちょい待ち! これ思ったより曲がらへん!』
「速度落として!」
『やっとるわ!!』
今度は減速用の噴射が始まる。
だが加速に偏らせたGKSは、既に出してしまった速度を短い距離で殺し切れない。
『お前まさか止まれねぇのか!?』
スコルが叫ぶ。
『止まれるわ!!』
一瞬の間。
『多分!!』
「多分じゃ駄目でしょ!」
ノンの声が飛ぶ。
「@ki! 脱出は!?」
『まだいける! まだいけ――』
GKSが大きく揺れた。
『あ。』
@kiの声が急に小さくなる。
『アカン。』
「@ki!?」
『アカンアカンアカン! 赤ずきん! ケンケン! これアカ――』
激しい衝突音が響いた。
GKSが大型残骸へ真正面から突っ込む。
崩れかけていた部分が衝撃で砕け、辺り一面に土煙が広がった。
「うわっ!」
ケンは反射的にダウトを前へ出し、作業区域側へ飛んできた大きな破片を腕で受け止める。
「ケン、右!」
「見えてる!」
ノンの声に反応し、もう一つ飛んできた破片をダウトの腕で弾く。幸い周囲の作業員達は十分離れた場所におり、飛散した破片が人のいる区域まで届くことはなかった。
やがて静寂が戻る。
「……。」
「……。」
ケンとノンは揃って煙の向こうを見つめた。
スコルのブルーガも動きを止めている。
少しずつ土煙が晴れていく。
その向こうから現れたのは、上半身から大型残骸へ突っ込み、正面装甲を大きくひしゃげさせたGKSだった。
背部から白い煙が上がっている。
増設されたバーニアの一つが外れ、地面へ落ちた。
ころころと転がっていく。
止まった。
誰も喋らない。
しばらくして通信に小さなノイズが走った。
『…………生きとるで。』
「そこじゃないよ!!」
ケンの声が現場いっぱいに響いた。
*
幸い、@ki本人に大きな怪我はなかった。
だがGKSの方は完全に使用不能だった。
正面装甲は潰れ、右腕も動かない。脚部にも損傷があり、大量に取り付けられていた推進器もいくつかが衝撃で壊れている。
しかも、元々撤去予定だった大型残骸はGKSの激突によってさらに崩れ、周囲へ破片を撒き散らしていた。
ダウトのコックピットからその光景を見たケンは、操縦桿を握ったまま深々と息を吐いた。
「……仕事増やしてどうすんだよ……。」
「本当にね……。」
隣でノンも頭を抱える。
『言うなや二人とも……。』
救出された@kiが地上から小さな声で返した。
その横をスコルのブルーガが通り過ぎていく。
『ったく……何しに来たんだよ、お前。』
「面目ない……。」
『復旧作業を手伝いに来たんだぞ? なんで俺がお前の増やした瓦礫まで片付けなきゃなんねぇんだよ。』
「いやぁ……予定では颯爽と駆け回って大活躍するはずやったんやけどなぁ……。」
『開始して何分経ったと思ってんだ!』
「スコル、文句は後。そっち持てる?」
『へいへい。任せろ。』
ケンがダウトを屈ませ、GKSの激突で崩れた残骸の一方へ手を掛ける。
反対側にはスコルのブルーガ。
「ノン、周り大丈夫?」
「待って。」
ノンが外部カメラと現場の状況を確認する。
「……大丈夫。人は離れてるわ。ゆっくり右へ動かして。」
「了解。」
ダウトとブルーガが息を合わせ、大型残骸を持ち上げる。
急がない。
周囲の人達と確認を取りながら、少しずつ撤去場所へ運んでいく。
GKSの登場とは正反対の地味な作業だった。
けれど、その周囲では既に多くの人達が動いている。
ダウトとブルーガが大きな残骸を退かせば、その下に散らばっていた小さな瓦礫を人の手で片付ける。運べる物を運び、使える物を分け、次の作業へ回していく。
ケンはその様子をモニター越しに眺めながら、ダウトの腕を慎重に動かした。
「ちゃんと繋がってるんだな。」
「何が?」
「俺達の動画を見て来た人もいて、その人達と俺達が一緒に作業して……。」
ノンも外の光景を見る。
「そうね。」
「俺達だけじゃ出来ないけど、みんなでやれば出来ることもあるんだな。」
「ええ。だからこそ、私達も自分達に出来ることをやりましょう。」
「うん。」
『ケンケーン!』
地上から@kiの声が飛んできた。
『そっち終わったら、こっちに散らばったヤツも頼むわー!』
「誰のせいで散らばったと思ってるの!?」
思わず返したケンの声に、ノンが吹き出した。
*
それからしばらくして、予定していた復旧作業はようやく一段落した。
途中で余計な仕事が増えたものの、ダウトとブルーガが大型の残骸を撤去したことで作業はかなり進んだ。
現地へ集まっていた人々も、それぞれ最後の片付けを始めている。
ダウトのコックピットでは、ノンが撮影した映像を確認していた。
「大丈夫そう。」
「じゃあ締めようか。」
「ええ。」
ノンがカメラへ向き直る。
「ということで、今回の復旧作業は無事に終了しました。」
「お疲れさまでしたー!」
ケンも隣からカメラへ手を振った。
「現地で作業されていた皆さん、それから動画を見たことがきっかけで手伝いに来てくれた皆さん、本当にありがとうございました。」
ノンが頭を下げる。
ケンもそれに続いた。
「俺達も手伝いに来たつもりだったんですけど……。」
二人の視線が、同時に外部モニターへ向く。
少し離れた場所。
無残な姿になった真っ赤なGKSが横たわっている。
「一人だけ仕事増やした人がいました。」
『ケンケン!』
地上の@kiから抗議が飛んでくる。
ノンは構わず続けた。
「なお、GKSは作業開始直後に使用不能となりました。」
『赤ずきん。』
「何?」
『もうちょいオブラートに包んでくれへん?』
「事実でしょ。」
『はい……。』
@kiの肩が目に見えて落ちる。
そこへ、まだ最後の瓦礫を運んでいたブルーガから通信が入った。
『おい@ki!』
「なんや……。」
『お前が増やした分まで俺が片付けたんだけどよ!』
「すんません……。」
『ガンダムキラーはどうした!』
「……。」
@kiが振り返る。
GKSの正面装甲は大きく潰れ、背部からはまだ僅かに煙が上がっている。
しばらく自分の新型機を眺めた後、@kiは小さく呟いた。
「……次はちゃんと曲がれるようにします。」
『次作んな!!』
スコルの怒鳴り声が響いた。
「アハハハハ!」
ケンが堪えきれず笑い出す。
「もうガンダム倒すどころか、自分から突っ込んで壊れてるじゃん!」
『うっさいわ! 今回はちょーっと推力と制御のバランスを間違えただけや!』
「それ一番間違えちゃ駄目なところでしょ。」
ノンまで容赦がない。
『次はいける! 次こそ完璧や!』
「まだ作る気なの!?」
ケンが笑いながら返す。
@kiは口を尖らせながら、もう一度GKSを見上げた。
「GKCは遅すぎて間に合わんかった。」
指を一本立てる。
「GKSは速すぎて曲がれんし止まれんかった。」
もう一本立てる。
その二本の指をじっと見つめる。
「……。」
「……。」
ケンとノンも、@kiが何を言い出すのか黙って待った。
やがて@kiは、がっくりと肩を落とした。
「ちょうどええって……難しいんやなぁ……。」
「今さら!?」
ケンのツッコミと、ノンの笑い声が重なる。
その直後。
無残な姿で横たわるGKSから、壊れたバーニアがもう一つ外れた。
カラン、と乾いた音を立てて地面へ落ちる。
@kiはそれを見つめたまま、さらに肩を落とした。
「……トホホ。」