異世界に転移したら植物系魔人だった!   作:藤海 佐月

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ムカデとの死闘

 

 

 

瞼を開くと緑と茶の混ざる草原のす中にぽつんと立っていた。少々奥に見える所には草原をぐるんと囲むように森があり、正面の森の更に奥にはとっても大きな木が生えていた。

 

「……これは、夢ではないよな……まぁ、あんな事言ってまだ生きてたら余裕で死ねるしなぁ」

 

我ながら似合わないくさいセリフを言ったものだ、と頭を掻きつつ思った。こんな状況なのにとても頭が冷静に働いている。

 

まぁいいか、と思って気持ちの良さそうな草の上にゴロンと寝転がる。ふと、不思議に思ったこともあったが、多分転生の様なことをしているのだからそのくらいは普通なのかな?でも転生自体が普通ではないよな、と自問自答を繰り返す。

 

「…まぁ前世?のことは、あの時にもう終わったしな」

 

 

ふぅ、と息をついて、自分では冷静なつもりだったが思ったよりも困惑していたらしい頭を冷やすため頰をバシンと叩いて気持ちを切り替えるようにした。

 

 

 

「さーて、これから俺の物語がいざ始まる」

気合を入れて、いっちょやってやるか……

「スゥテータス!!……ッ」

 

パッと青い画面がいきなり出てくるものだから、来ると分かっていても仰け反ってしまった。 フッ、やるな我がステータスよ、私を驚かすとは……自分でやったけど一人芝居ってさむいな。だが、テンプレ通りステータスはあるみたいだな。

 

さて、ステータスの検証だ

まずは、ステータス画面の解除方法。

使ってみて思ったが意外に邪魔だ。

いきなり敵が来た時、こんな邪魔があれば逃げれもしないし。

 

 

「クローズ!ステータスオフ!えっと、閉じる?」

 

消えない。

やはり試しておいて良かった。

しかし、こんなとこでつまずくとは予想外だ。

うーむ、気合か?気合が足りんのか?

ならばっ

 

 

「ッスゥ、キェェェエエエィィ!」

そして唐竹割り。

そしたら霧が晴れるように消えていった。

どちらかと言うと、消えろと強く念じたら消えていった気がする。

 

結果、ステータスはあまり人前では出さない方が良さそうだ。

 

さて、こっからが本当の検証の時間だ。

 

「ステータス!」

 

名前

種族 植物人

レベル 1

体力 1150/1150

魔力 250/250

スキル

光合成 パッシブ

レアスキル

伸縮自在 lv1

 

 

 

どうやら”筋力”とか”素早さ”とかはないみたいだ。まぁそんなもんコンディションでいくらでもかわるしな。

それより、種族!

植物人ってまさか、植物人間?身体うごかせないの!?

積み?積みなのか?

いや、さっきから騒いでるし唐竹割りできてたからそれはないか。

 

ふむ、ならばタッチで詳細確認ができたりするかな?

 

”ポチッ”

 

 

植物人 マンドレイクが亜人化したもの。

体表が茶色のため、知能の有無で魔物と魔人に分かれる、として分類されている。

 

 

予想通りか…タッチで詳細か

ふむふむ、まぁ体表が茶色なのは知っていたがこの場合は魔人転生か…

ということは目指せ魔王かな?

次はスキル検証。

 

光合成 水と光があれば食物無しでも活動可能。ただし、食事をすればエネルギーを蓄えておける。

 

 

意外と便利かも知れない。

パッシブは常時発動かな?

となると、レベルがあるのがアクティブ。

つまり自分で発動といったところか

 

 

伸縮自在 手が伸びる。

 

 

少なっ。まぁそれより言い方が無かったんでしょう。

これから、ゆっくりと行き”ズシンッ”え?なに今の?

 

ズシン、バキバキ、ズシンと音がどんどん近づいて来ている気がする。

取り敢えず逃げ?うん?音が止まった?これは不味くない?

 

 

 

 

「ギチギチギチギチギチギチギチギチ」

 

 

 

 

不快な音を出している発信源を見れば、百足の体にクワガタの頭を持つ謎生物がいた。

紫色の堅そうな甲殻は太陽の光を反射するどころか吸収している、大量にある脚たちはその一本一本が杭のように太く逞しい。

どうやらさっきの音は、強靭な顎で木を倒して来たからのようだな……逃げるか。

 

 

逃げることに全神経を集中させて、熊の対処法のように目を合わせてゆっくりと立ち去ろうとしたが、眼を合わせたら

 

”ビクッ”

 

いきなり体がうごかなくなった。

脂汗が垂れてきている。手が小刻みに震える。

物凄い威圧感と恐怖感。

昔、中学の田舎で石を投げてたらヤンキーの集団に当たってしまい、一瞬にして囲まれたときのような……それよりも数倍凄みが増したくらいだ。

奴はゆっくりと地を舐めるように恐怖を煽るように近ずいてくる。

 

 

「ッゥ、舐めやがって」

奴め、自分が圧倒的強者だと疑いもしていない。事実その通りだが…

その事実だけが自分をイライラさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間には体が壊れないように脳が力に対して制限を掛けて100%の力を出せないようにしている。よって使われているのは50%の力にさえ満たない。

しかし、火事場の馬鹿力と呼ばれる力があるとおり生命の危機を感じると一部解放することがある。ただし終わったあとにはとてつもない疲労が残るなどの代償がある。

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

自分の体が完全に動けないのからして、奴は威圧みたいなスキルを持っているハズ。

そして、そんなのはだいたいは物語中盤以降の強キャラしか持っていない。

ならばっ俺の身体よ、本当に力に枷をつけていていいのか?

違うだろっ!

全身全霊をつくし、こいつを倒すことに集中するんだ!

後のことなど、まず生き残ってからだ。

アドレナリン全開のフルスロットルで行かせてもらう!

 

 

ビクッと体が痙攣した後に力が湧き上がる。

だが、足りん。

もっとだ、もっともっともっともっともっと

必要だ!

出し惜しみなどするな!

 

「ウォォオオォ」

 

力がどんどん沸いてくる。 ムカデも不味いと思ったのだろう。

体を縮めて一気に距離を詰めようとしてくる。

だが、遅い。今の俺は刹那の間に生きてるのだ。

両者の実力ならこの闘いは先に攻撃がヒットさせた方が勝つだろう。そして自然界での負けは死に直結する、ならばこの勝負負けは許されない

 

男、加佐彰弘。一世一代の大勝負。賭けるは己が命。

手を尖らせ中腰になる。重心を徐々に後ろへ持っていく。

だが、奴の堅い甲殻を破るには相対速度だけでは足りないだろう。

 

昔、 武術を習っていたときに”気”というものが丹田あたりにあると師範代が言っていたがあのころは全然わからなかった。

 

だが今ならば何か熱いものがあるのがわかる。

丹田のあたりから引っ張ってきて、心臓を回って力を手に集める。腕はボコっと破裂しそうなくらい変形した。

それは、この世界では魔力と呼ばれるものだろうと予想する。

 

 

「魔力強化!」

 

 

準備は整った。

ムカデも随分と距離を縮めている。

あと10mくらいだろうか

 

 

 

「喝っっ!」

重心を腰から肩へ、腕を伸ばすと同時に肘へと重心をずらす。

ドンッと音がなれば、腕が超高速で伸びる。

空気を殴ったようだ。カマイタチが周りの草花を蹴散らしていく。

そしてあと一瞬遅かったらこちらがやられていた距離まで迫っていたムカデに腕はまるで二本の槍の様に、頭と腹に刺さった。

勢いあまって後ろの木にも腕が刺さり張り付けのようになったのはご愛嬌だ。

 

ムカデはしばらく暴れていたが一度大きく痙攣するとグッタリとしたまま動かなくなった。

 

 

 

 

「ふぅふぅ、や、やってやったぜぇ」

 

今までの人生で味わったことのない達成感と勝利を噛み締めた数瞬後には頭が「クラッ」として視界が暗転した。

 

 

 

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