恵ちゃん至上主義?   作:名無しのナナ氏

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徐々に表現を過激にしていきたい今日この頃。


18.色欲の夏、孤独の島

 

 青い空。広い海。眩しい太陽。――火照る身体。甘露な刺激。堪え切れない嬌声。

 私の夏は、どこまでも艶めかしく、そして淫靡だった。

 

「んっ……ふ、ぅっ……ひぁっ、あ、んぅ……!」

 

 高級感漂う質の良いベッドの上で、裸体の私が快楽に身を捩る。脱ぎ散らかしたお互いの下着と衣類がその辺に落ちていた。部屋の外で薄っすらと同級生たちの声が聞こえて、懸命に声を押し殺す。

 カーテンを閉めた薄暗い部屋の中、私は彼女を迎え入れるように仰向けで股を広げていた。

 

「んふ……だいぶ濡れてきたね。そろそろ挿れちゃおうか」

 

 寝転がるような姿勢で、胸の突起を舌で転がしていた翔子が、そっと指先で秘部に触れる。とろみのある液体が彼女の細い指に絡みついて妖しく糸を引いた。

 

「恵ちゃん好きでしょ? 私の指。いっつもきゅーって締め付けてくれるもんね」

 

 濡れそぼった乙女の入口を、ぺたぺたと湿った指がノックする。分かりやすく合図されて、お腹の奥がきゅんと疼くのを感じた。

 

「じゃあ挿れちゃうよ。はい、い~…っぽん」

「は、ぁっ……ん~~~っ!」

 

 ぬぷ。とささやかな異物感が痺れを伴って緩慢に侵入してくる。自分のそれとはまるで違う感覚。それだけで腰を浮かしてしまうほどの快感が訪れ、情けない声を上げて浅めに絶頂してしまう。たまらずピンと両足を伸ばし、敷いていたタオルに染みを作った。

 

「あらら、まだ一本しか挿れてないよ~?」

 

 ナカに指を挿れたまま、愛おしいと言わんばかりに翔子は私の首筋に吸い付く。軽い倦怠感と心地良い余韻に浸っていた私は、それを咎めること無く息を整える。

 

「――に~……ほんっ」

「ひうっ!? んぁっ、だ、めっ……いまイッたばっか、りぃ……っ!」

 

 びくびくと身体を跳ねさせながら、電流のような強い刺激に翻弄される。翔子は器用に舌で私の胸を愛撫しつつ、ゆっくりと指をくねらせた。厭らしい粘ついた音が嫌でも聞こえてきて、その度に激しい快感が身体の内側を駆け巡る。

 

「恵ちゃんは奥の方ぐりぐりされるの大好きだもんね。いいよ、もう一回イかせてあげる」

「んぅっ! やっ、んんっ、あぁぅっ……! そこすきっ、んっ! もっと、して……っ!」

「ふふ、恵ちゃんは甘えん坊だね。じゃあ追加サービス、してあげちゃおうかな」

 

 絶え間ない快楽に溺れそうになっていると、翔子が不敵な笑みを浮かべるのが見えた。まともに物も考えられなくなった頭で、その光景をただ眺めていると一際強く内側から引っ掻くように指を擦られる。びりっとした耐え難い刺激を感じると同時に、突如として脇腹の傷跡を激しくくすぐられた。

 

「ひぁっ!? ぁ゛うっ……~~~っ!!」

 

 気持ちよさとくすぐったさで頭がバカになって、明滅する視界の中で無我夢中に翔子の身体に抱きつく。そして意識が吹っ飛ぶんじゃないかと思うくらいの、途方もない刺激が爆発する。股の間にあった彼女の美しい手を、私の愛液がびちゃびちゃに濡らす。

 

「は、ぁ……はふ……ぁっ……はぁっ……」

 

 激しく体力を消耗した私は、力なくベッドに手足を投げ出して荒い息を整えていく。ばくばくと煩い心臓の鼓動を聴きながら、ぼんやりと天井を見つめる。

 

「上手くイけてえらいね。少し休憩しよっか」

「んっ……」

 

 秘部からゆっくりと指を引き抜いた翔子は、ぬるぬるになった手を一瞥すると、それを迷いなく目の前で舐め始めた。……汚した本人の前でそうやって綺麗にされると、なんだか征服感というか嗜虐心のようなものを感じてしまう。いつもはヤられる側な私だけども、たまにはそっち側に回ってみたいと思うこともしばしばあるのだ。出来るかどうかは……ともかく。

 

 すっかりくたくたの私は、翔子と添い寝しながら小休止する。と言ってもただお喋りするだけじゃなくて、頭を撫でられたり、軽い口づけを何度か交わしたり、彼女のスレンダーな身体に抱きついてみたりと穏やかな時間を過ごす。クラスの皆は今頃、豪華客船に浮かれて豪遊の限りを尽くしてるんだろうけど、私たちは乗船してからもこうして頻繁に身体を重ねている。

 船内の設備は確かにどれも高級で魅力的だけど、ブルジョワな翔子にとっては然程珍しいものではないらしく、そんな彼女のふしだらなお誘いを受ければ、私も深く考えずに彼女のことを優先してしまう。ちなみに翔子曰く、この手の富裕層御用達の客船は実家に戻れば気軽に手配できるとのこと。その気になればいつだって世界一周旅行も可能なんだとか。お金持ちって凄い。

 

 期末テストを無事に乗り越え、このバカンスの参加資格を手に入れてうきうきだった私と違い、その時の翔子はどうにも乗り気じゃなかった。なんなら、私が行こうと誘わなければ一緒に学校に残るつもりだったらしい。誘えば即答だったけど。

 

 翔子の気持ちもちょっとわかる。この旅行は学校側が提供してくれたもので、当然だけど他の生徒も大勢参加している。きっと、翔子は私と二人っきりで旅行がしたかったんだと思う。だって私もそうだから。でもまあ、一般庶民な自分は豪華客船でのバカンスと聞いて、そりゃあ舞い上がってしまうわけで。

 

 結果、二人きりの時間を作るとなるとこうして部屋でまぐわうしかない。余談だけど、ここは元々翔子たちAクラスの生徒の客室で、彼女がポイントを渡してクラスメイトをどかしたんだとか。そこに、相部屋になった佐藤さんたちとの空気感に居心地の悪さを感じていた私がお呼ばれした形だ。

 

 適度にイチャイチャしていると、段々呼吸が熱を帯び、身体が良い具合にまた温まってくる。啄むだけに留めていたキスが、次第に舌を絡め合う濃密なものへと変わっていく。比較的小振りな胸を丁寧に揉みしだかれ、本格的な前戯が再び始まろうとしていた。

 

『生徒の皆様にお知らせします』

 

 盛り上がってきた――というところで、水を差すように室内のスピーカーからアナウンスが流れ始める。不服そうに眉をひそめた翔子がそれを睨みつけた。

 

『お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。間もなく、島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義のある景色をご覧頂けるでしょう。繰り返し、生徒の皆様に――』

「……だってさ。どうする?」

 

 身体の芯から熱が冷めていくのを感じる。せっかくのムードが妙なお節介で台無しだ。

 

「んー、意義のある景色かぁ」

 

 一瞬だけ考える素振りを見せて、翔子は妖しい笑みを浮かべる。ちろ、と薄い唇から赤い舌を覗かせた。

 

「でも今は、貴女だけを見ていたいから」

 

 雰囲気なんて何のその、また作り直せば良いとばかりに、私たちは薄っすらと汗ばむ肉体を重ねる。大海原の上だからか、私と翔子はいつにも増して性に奔放だった。

 

 

 

 

 

 

 島に上陸する旨のアナウンスが流れ、ジャージに着替えて荷物を持った私たちは甲板に出た。シャワーで色々と綺麗にした後だと言うのに、容赦なく照りつける太陽の日差しがじっとりと汗を滲ませる。でもそよぐ潮風は気持ちが良かった。

 既にデッキには大勢の生徒が集まっていて、一様に表情が明るい。皆、島でのバカンスに心躍っているようだった。かくいう私もその一人で、翔子と何をして遊ぼうか数日前から考えっぱなし。貴重なクルージングの旅ということもあって、心底浮かれている。

 

 やがて目前に島が近づいてくると、拡声器を持った先生が声を発した。

 

「これより、Aクラスの生徒から順番に下船してもらうが、島内への端末の持ち込みは禁止だ。各自、担任に提出してから下船するように」

 

 端末の持ち込みが禁止と伝わった瞬間、翔子も私も不満を募らせた。

 

「困ったなあ、それじゃ恵ちゃんを盗聴できない」

「んー……まあ大丈夫でしょ。ずっと一緒に居るしさ、御守りもちゃんと持ってるし」

「だと良いんだけど……」

 

 翔子は表情を曇らせたまま島を見つめている。ただのバカンスだと思うけど、なんだか嫌な予感がした。

 

 そして船が停泊し、Aクラスの生徒から順に階段状のタラップを降り始める。

 

「また後でね、恵ちゃん」

「うん」

 

 繋いでいた手を離して翔子を見送った。名残惜しいけど、こればかりは仕方ない。少しだけの辛抱だ。

 何食わぬ顔でDクラスの集団、その後方に紛れながら遠くにいる翔子の姿を探す。あ、居た。なんだか列の進みが遅いように感じたけど、どうやら翔子が荷物検査で引っかかっているらしい。あー、あれ多分発信機とか何かしらの機器類が引っかかったんだろうなあ。と思いながら、先生たちにごねている彼女の様子を微笑ましく眺める。程なくして、翔子がめちゃくちゃ不機嫌そうに顔をしかめながらタラップを降りていった。ダメだったっぽい。

 

 それから炎天下の甲板の上で待たされること数分、ようやくDクラスの番が回ってきた。幸い、御守りには気づかれなかったようで、あっさりと島に降りる。砂を踏みしめるや否や、早速茶柱先生から点呼と整列が指示され、またもや暑い日差しの下で立たされることになった。学校は私たちを蒸し焼きにでもしたいのだろうか。

 

 じりじりと直射日光に晒されながらも我慢していると、ガタイの良い男の先生が出てきた。確か真嶋とかいう翔子のクラスの担任だったっけ。

 どこかのクラスの生徒が病欠した旨を説明し、真嶋先生が言葉を一度区切る。明確に、雰囲気が変わるのを肌で感じた。

 

「――ではこれより、本年度最初となる特別試験を行う」

 

 思い描いていた楽しいバカンスが、音を立てて崩れるのを幻視した。

 

 

 

 

 

 

 最悪だ。最悪だ最悪だ最悪だ――!

 

 砂浜で茶柱先生の話を聞きながら、私は内心穏やかじゃなかった。翔子と思う様バカンスを堪能するはずだったのに、蓋を開けてみれば1週間無人島でサバイバルしろと言う。冗談にしては質が悪すぎる。こっちは旅行の名目で連れてこられたのに、何の事前説明もなくこんな試験を強いられるなんて思いもしなかった。

 表面上はしっかりと説明を聞きつつも、募る苛立ちに砂を靴底で踏みにじる。嘲笑うみたいな波の音が今だけは耳障りだった。

 

 1週間。1週間も集団生活を強制させられるのが何より我慢できない。翔子と合流しようにも場所がわからない。各クラスごとに固まって行動する以上、Aクラスのキャンプを見つけなければ翔子に会うのは難しいとは分かってる。翔子もなんとか私と合流しようと動いてくれると思うけど、こっちから位置情報を連絡する手段が何もない。端末は没収され、御守りの発信機だけ持っていても宝の持ち腐れ。いざという時は、自分の足で島を練り歩くことも視野に入れる必要がある。でもそうすると今度は入れ違いになるリスクが発生してしまう。

 

 体調が悪いと嘘をついてリタイアしようにも、ポイントが30もマイナスされる。これで黙ってリタイアしようものならクラスから激しく糾弾されるのは目に見えていた。平田くんがある程度は庇ってくれるだろうけど、彼の目が届かない場所では何を言われるか分かったもんじゃない。

 

 頭痛がしてきた。トイレがどうこうと主張する篠原さんの声が耳に響く。煩い。

 雑音が酷い。茶柱先生の説明がほとんど理解できていないまま話が進む。スポットがどうとか、キーカードがどうとか。ぶつ切りの単語の羅列でしか把握できなかった。

 

 一旦、何も考えずにぼーっと立ち尽くす。とても考え事をする精神状態じゃなかった。何度か深呼吸を繰り返してみても、冷静さはちっとも帰ってこない。それどころか視界も揺れてきたような気がする。……ちょっと、まずいなこれ。

 

 俄に呼吸が浅くなり始めたとき、誰かがこっちに向かって走ってくるのが見えた。

 

「――恵ちゃんっ!」

 

 ――世界から雑音が消えた。今、世界で一番会いたい人の声だけが聞こえる。

 

 翔子だ。翔子が走ってきている。それが分かった瞬間、私は無意識のうちに駆け出していた。

 

「お、おいちょっと待て軽井沢――」

「どいて!!」

 

 行く手を阻もうとした男子を押し退けて、脇目も振らずに彼女の下へ駆け寄る。

 

「翔子っ!」

 

 飛びつくようにして彼女の腕の中に収まる。強く抱きしめられ、私もぎゅうっと抱きしめ返す。もう頭痛も耳鳴りも嘘のように霧散していた。深く息を吸えば、嗅ぎ慣れた金木犀の香りが鼻腔を抜ける。聞こえるのは押しては返すさざ波の音と、彼女の規則正しい鼓動だけ。

 

「ごめんね恵ちゃん。出発前に先生を問い詰めておけばこんなことにならなかったのに」

「ううん翔子は何も悪くない。悪いのは全部先生たちでしょ? バカンスなんて嘘吐いて、私たちの邪魔して……」

 

 視界が滲む。楽しい旅行になるはずだったのに、大人たちに邪魔された。それが悔しかった。腹立たしいとすら思う。何よりも、無力な自分が情けなかった。

 

 ――帰りたい。

 

 本来の目的が達成できない以上、どうしてもそう思ってしまう。今はただ、寮の部屋が恋しい。あの場所で二人っきりの穏やかな時間を過ごせているだけでよかった。時間が巻き戻せればいいのにな、と今ほど強く思ったことはない。

 

「――恵ちゃん、1日だけ待っててくれる?」

 

 頭上から優しい声が掛かる。顔を上げれば、真剣な表情で青い双眸が私を見つめていた。瞳の奥に、決意を秘めた強い意志を感じる。

 

「明日の朝までで良いの。それまでに、私が恵ちゃんとのバカンスを取り戻してみせるから」

「……うんっ」

 

 翔子の言葉に、私は力強く頷いてみせた。1週間のうちのたった1日。翔子のお願いならそれぐらい耐えられて当然。

 

「いい子ね。えらいえらい」

 

 表情をふっと柔らかいものにして、徐ろに唇が重なる。触れるだけのキスじゃなくて、舌を絡める濃厚なディープキス。公衆の面前だとか、そういうのはどうだってよかった。

 翔子の桜色の唇がお互いの唾液で濡れている。私もきっとそうなんだろう。彼女の首に腕を回してしがみつきながら、別れを惜しむようにねだる。じゅる。ちゅ。波の爽やかな音に交じって、異質な水音が鳴る。それは私たちだけが奏でられる楽器の音色だった。

 

 数秒、或いは数十秒ほどたっぷりとキスを味わって、ようやく身体を離す。二人の唇に透明な橋が掛かっていた。

 

「これで頑張れそう?」

「ん、多分大丈夫」

 

 と私が言っても、やっぱり心配なものは心配なようで、翔子はジャージのポケットから布切れを取り出す。薄青色のハンカチらしきものだ。

 

「もしもダメそうな時は、使ってもいいよ」

 

 翔子が手を取って、それを持たせる。可愛らしいレースの付いたそれはやたらと手触りが良い。ふと、どこかで見覚えのデザインだなと思った。っていうかこれ翔子の――え?

 

「え、ちょ、これ……」

 

 その正体に気づき、慌てて返却しようとしたが、彼女は満面の笑みを浮かべて後ろへ下がった。

 

「明日の朝、必ず迎えに行くからね!」

 

 海色のように透き通る笑顔でそう告げて、翔子が砂浜を小走りで戻っていく。呆然とその様子を見送りながら、私は握らされたそれを素早くポケットに隠した。

 

「……流石に穿いてる、わよね?」

 

 ノーパンか否か。それが問題だ。

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