ダンジョンに悪魔がいるのは間違っているだろうか。 作:マリアンヌ・フェイスフル
ヒロイン迷い中
「す、すごい...」
「...」
私は正義と秩序を司る女神アストレア様のファミリア、アストレアファミリアの団長アリーゼ・ローヴェル。
ファミリアの中で腕に自身のある輝夜、リオン、ライラと四人で
ポーションがあと数個となりドロップアイテムもパンパン、なので補給ついでにギルドまで帰る最中、10階層で
その数はおよそ50、Lv.4の集まりでもこれはしんどかった。
そんな最中、駆逐していると黒い狼が上層の方角へ逃げていった。
すぐに追った。上層にはLv.2はいるだろうが、その殆どがLv.1で必ず蹂躙される。秩序を重んじる私達がこんなことをして許されない。
私達の足でも奴は早く、追いつけない。数刻がたっただろうか。すでに死んでいる人もいるかも知れないのに。急がねば。
そう思っていた矢先やつが向かった方向から凄まじい咆哮が鳴り響き確実にLv.4はあるだろうと確信する。
すると数刻、轟音とともに爆風が襲いかかった。遠目から見たその光景はまさしく__
まさしく、英雄が舞い降りたと思ってしまった。
「あー、びっくりした」
なんだったんだあの狼、まるでユグドラシルのイベントモンスターのフェンリルにそっくり過ぎる。オラリオのダンジョンに狼のモンスターなんかいたっけな。
「しっかし、【居合:死突】も【円業】も久しぶりに使ったが、こんな派手だったか?」
職業レベルの剣聖は様々な技を獲得することができる。剣士、騎士、侍、槍使い等、居合:死突は侍の技だ。そしてコンビ技の円業、これも侍の技でかなりの火力を誇る。
基本的に戦闘は魔法オンリーだが、たまにこうして剣を使うと息抜きとして凄く楽しい。いやこれはまじで。
「あの〜、すいません?」
「ん?」
俺としたことが、まだ避難していなかった冒険者がいるとは...
「私、アストレアファミリアのアリーゼ・ローヴェルといいます!先程の狼の怪物、対応させてしまって申しわかりません!私達が取り逃がしてしまって...」
とてもきれいなお辞儀だこと...
こんな完璧なお辞儀他にないんじゃないんじゃないか?
「いえいえ、お気になさらず、どうか顔を上げてください。皆様も」
「あ、ホント?助かったわ〜あなた強いのね!」
先程までの態度が嘘のようにキラキラの笑顔で話しかけてくる赤毛の少女。目は翡翠のようにきれいな目をしている。
確か、原作のダンまちで何回か登場したキャラクターだ。リュー・リオンが過去に所属していたアストレアファミリアの団長、そして闇派閥ルドラファミリアに壊滅させられたという、正義のファミリアだったか。
「団長、もう少し申し訳なくしたらどうだ?」
桃色の
それでとなりの黒髪、たしか...
「この度は申し訳ありません、うちの青二才が不甲斐ないばかりに...」
「__ッ輝夜!!あの狼は輝夜が逃したんだろう!」
「あらあらこのポンコツエルフは目まで腐ってしまったのですかぁ?私が逃がすわけ無いでしょう?」
「ポンコツエルフと呼ぶなー!!!」
そうだ、たしか大和撫子が二つ名のゴジョウノ輝夜、それでこのエルフがリュー・リオンか。まだ若いしアストレアファミリアがいるってことは原作開始前と思っていいようだな。
「それで、貴方のお名前は?」
「私はアザトースファミリア所属、ウルベルト・アレイン・オードルと申します。よろしくお願いしますね」
「...アザトースファミリア、聞いたことがありませんね。」
それはそうだろう、俺しか団員いないしここ数年いたことないと聞いたしな。
「設立したばかりなので仕方ないですよ、まぁ私も来たばかりですのでどのファミリアかとかはあまりわかりませんが...」
「ほう、先程の剣筋を拝見したところどこぞの騎士様かと思いましたが...」
「いえ、私は流しの傭兵ですので」
「それはまた、もったいない腕ですこと...」
こちらを値踏みするような瞳、女性からの熱烈な視線は嬉しいがこの視線は好きじゃないな。
金持ち共を思い出してしまう。
「...さて、私は下の階層に行くので、また」
「あぁもうこんな時間ね、また今度!ウルベルトさん!」
俺には規格外のアイテムボックスもある、がこの世界の人間はそんなものはない。あったとしても大きめのバッグか軽量化のできる魔道具だけだろう。だから彼女たちは帰るのだろう。防具もボロボロだし。
彼女たちの後ろ姿を見てやはりパーティーはいいなと思ってしまう。かつてのような仲間がほしいものだ。
「さて、次の冒険をしようか」
せめて最初の死線までは行きたいところ。種族スキルで不眠不休で動けるし腹も減らない。さすが悪魔だ。
「5階層到達!風景全く変わらんな」
ただの殺風景、つまるところ洞窟である。だが冒険者が多くいるであろうここは5階層、だが先程の騒動で大半の下級冒険者が地上へ避難している状態。アストレアの眷属が事情を話して人がなだれ込みそうではあるが....
冒険者の話し声や足音がなく静寂が身を包む。洞窟でもあるため、湿った冷気が肌を撫で岩肌から滴る雫が規則正しく落ちていく。
__ピチャン。__ピチャン。
淡い白光が周囲を照らし、黒一色だった洞窟に輪郭が生まれる。壁には青白く輝く鉱石が点在し、まるで星空が閉じ込められているかのような幻想的な光景が広がっていた。
だがそんな美しい光景であってもここはダンジョン。次から次にモンスターが産み落とされる。そして侵入者を排除しようとこちらに向かってくる。
「...いるな、数はおよそ50といったところか」
暗闇の奥から赤い光がいくつも浮かび上がる。そして唸り声も数多く。
「グルルルル……。」
とても低い唸り声が聞こえる。コボルト、ゴブリンといった大群、パレードである。
「滾る。さあ来い、雑魚共ッ!!」
次の瞬間。
こちらに向かっていたモンスター達が一斉に襲いかかってきた。
剣が閃く。銀色の軌跡が闇を切り裂いた。
鮮血が岩肌に飛び散り、いくつかの亡骸があたりに転がる。
だが、そんな同胞なぞ知るかと群れの勢いは止まらない。
「仕方ない、【雷鳴一閃】ッ!!!」
雷鳴の如く、雷の速さでモンスターを切り捨てていく。
岩肌に鮮血が飛び散る中、群れの奥に見たことのある姿があらわになる。
「グオオオォォォォォォ!!!!」
上にいる冒険者でさえ感じてしまうそれは咆哮。ギルドで祈祷を捧げている神でさえ感じてしまうそれは、異常事態の警告。
「...【
単体の敵に殲滅するための雷系魔法では最上位、つまるところ過剰戦力である。いくつもの雷を束ねて作った巨大な豪雷が群れの長を貫く。
「グウゥゥゥゥ...」
「まだ生きるか、早く死ねば良いものを....」
魔法剣士は剣を抜く。
「...【居合:一閃】ッ!!」
雷の如く、長の首を跳ねる。
切られた拍子、鮮血が宙を舞う。
長の赤い瞳が更に禍々しく輝いた。
こちらを睨むような挑戦的な瞳。
「いつでもかかってこい、犬畜生」
不敵な笑みを浮かべ、長は姿を消していった...
ギルド祈祷の間にて。
「___迷宮が震えている、上層でイレギュラーのようだ。」
「なに?しかも上層だと...?どうする、前代未聞だぞ」
祈祷の間と呼ばれるそこにはおよそ2Mの大男が巨大な椅子に鎮座しており、白髪をはやしている。彼こそがギルドの主神と呼ばれているウラノス。
そして向かいには黒いローブ、その顔は生きている者とは思えない骸骨の姿である。
「いや、大丈夫のようだ。とある冒険者が全て討伐したようだ。」
「イレギュラーをひとりで?ロキファミリアの【
「いや、彼等は今遠征からの帰還途中だろう。いま上層にいるとは思えん。」
「...ならばフレイヤ・ファミリアの幹部でもいたのか」
うぅむ、と眉間に深い皺を刻むウラノス。
「感じたことのない魔力、まだこような強者がいたとは...存外、魔術師かもしれんな」
「...魔術師は私だけだ。ありえん」
...かつていた魔術師と呼ばれた者達、フェルズもそのひとりだ。我々が下界に降臨した時代にいた数人の魔術師は神の恩恵を持たず、己の魔力で奇跡を起こす魔術を生み出した、とされている。
その魔術師は数が少なく、ちゃんとした情報はない。八百年前にその存在が確認され、今はフェルズしか生きていないだろう、と思っていたが...
まだ生きていたのか...と思ってしまうほどに濃密な魔力、魔術師だろう。
「一度、見極めるべきだろう。どの神の恩恵を持っているかも気になるところだ」
「承知した。私が行こう、時間はかかるが良いか?」
「致し方あるまい、先の気配も気になる、存外その者の気配なのかもしれんしな。慎重に関わるとしよう。」
黒のローブの魔術師、フェルズが闇夜に消えていく。
「古代の魔術師が動くか、時代の流れが変わる、か。」
「ん〜、手強い相手がいないなぁ」
5階層のパレードを殲滅後、俺は下へ下へ攻略を再開していた。6、7を攻略後8階層に差し掛かっていた。このあたりは本編の最初、主人公のベルがミノタウロスを戦う場面の区域だ。多分だいぶ先だろうけど...
「あ!ウルベルトさん!さっきぶりです!」
すると後ろから青髪の少女、ギルドの場所を教えてくれあアーディ・ヴァルマがそこにいた。
「あぁ、アーディ、だったか」
「はい!アーディです!ここらへんで
「...あぁ、先程殲滅したよ」
「えぇ!?ウルベルトさんそんな強かったんですか!?」
そんな...って、そんな弱く見えたのかなぁ
そんなこんなあり、怪物進呈を対処するための先遣隊と後続隊がぞろぞろとやってきた。ガネーシャファミリアの半数がフル装備でやってきた。
「貴方がウルベルトさんですか、私はシャクティ・ヴァルマと申します。アーディの姉とガネーシャファミリアの団長をしております」
「...これはこれはご丁寧に、私はウルベルト・アレイン・オードル、アザトースファミリア所属の冒険者です」
「ほう、神アザトースの眷属ですか...」
「...なにか?」
神アザトース、ここに来てファミリアを作るかと私は思ってしまう。我々の主神ガネーシャでも警戒をしている神の一柱、万物の王とされる神アザトース。年齢不詳、性別不詳、神友関係も不詳、何もかもが謎に包まれた神。一部では闇派閥と繋がっているという噂が独り歩きしている、が孤児たちに優しく犯罪者がいる場合は神自らおさえ、憲兵に引き渡したりしていることから単なる噂程度とされている。が、噂がなくなることはなく、住居もダイダロス通りというのもあって偏見が多い神でもある。
「いや、ここ数年神アザトースが眷属を迎えるというのは聞かなかったもので、めずらしいこともあるのだなと」
「まあ仮契約なものです、1年の期間という限定的なものですし」
「なるほど、理解した。それで怪物進呈を解決したというのは?」
「そこのアーディにいった通り、すでに対処済みだ。これでも腕が立つのでね」
ゆっくりと腰の剣へ手を添えた。
シャクティの後ろに控えている冒険者達が警戒を強める。ある者は怯えた瞳、ある者は警戒する瞳。
「よせ、殺気を放つな。なにも疑っていないというわけではない。アリーゼ達が貴方のことをしつこく言ってくるものでな。興味が湧いただけだ」
「やっほー!ウルベルトさん!さっきぶり!」
アーディと全く同じセリフでシャクティの後ろから赤髪の少女、アリーゼが顔を出す。その後ろには先程の輝夜とライラがいた。
相変わらず輝夜は俺を凝視している。嫌な目線だ。
「とりあえず我々はギルドに騒動は終わったと報告をする、後にギルドとガネーシャファミリア、アストレアファミリアと貴方を加えた会議がしたい。よろしいだろうか?」
恐らく今回群れを成したモンスターのことについての言及だろう。仕方ない、まだ先に行きたいが...
「構いませんとも」
「感謝する。では早速向かおうか」
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