【クロス】コードギアス 忘却のピーター   作:超高校級の小説家(笑)

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【その名はゼロ】

◆ 

トウキョウ租界の大通りを埋め尽くすのは、異常なまでの熱気と、どこか血生臭いブリタニア市民たちの歓声だった。

「クロヴィス殿下暗殺の犯人、名誉ブリタニア兵・枢木スザクの軍事裁判を行います」

 街頭の巨大スクリーンに映し出される、厳重な警備のなかを連行されていく少年の姿。

 アッシュフォード学園の用務員室で、ピーター・パーカーはその画面を食い入るように見つめていた。

 「……嘘だろ。あの白いロボット(ランスロット)に乗ってた人が僕と同じくらいの歳の人だったのか……」

 シンジュクの戦場で、生身の自分と文字通り拳を交えたあの凄まじいパイロット。その正体が、暗殺の濡れ衣を着せられた少年だと知った時の衝撃は大きかった。

 ピーターはベッドの下から、ボロボロのバックパックを引きずり出した。

 中を覗き込めば、シンジュクでランスロットの質量兵器のような蹴りを喰らい、ズタズタに引き裂かれて泥と血に塗れた、赤と青の布切れ。……ミシンも材料もない中で、これを直す手段は今のピーターにはない。マスクだってレンズが割れ、使い物にならない。

 「スーツはない。……でも、スザクってやつが犯人じゃないのは、僕が一番よく知ってる。あいつはあの時、街を守ろうとしてたんだ。無実の人が殺されるのを、黙って見てるわけにはいかない……!」

 ピーターはバックパックから、辛うじて機能する手首のウェブ・シューターだけを取り出し、私服の地味なグレーのパーカーの袖のなかに隠すように装着した。

 そして、パーカーのフードを深く被り、顔を隠すようにして夜の街へと駆け出した。

 

 

 

 

 

「――私が、クロヴィスを殺害した犯人、ゼロである!」

 トウキョウ租界の中央通り。突如として現れた謎のクロヴィス専用の巨大トレーラーの上で、漆黒の仮面と血の色のマントを纏った男――ゼロが、拡声器を通して高らかに宣言した。

 ブリタニア軍の純血派を率いるジェレミア・ゴットバルト卿が、驚愕と怒りに顔を歪ませる。

 ルルーシュは仮面の奥で、冷徹に「オレンジ」のハメ技を仕掛け、ブリタニア軍の包囲網を内側から自壊させていった。

 「よし、カレン、スザクを回収しろ!」 

トレーラーのハッチが開き、カレンたちが拘束されたスザクの元へと走る。完璧な救出劇。ルルーシュが勝利を確信した、まさにその時だった。

 「――待てぇぇい! 騙されるな、その男はテロリストだ!」

 ジェレミアの異常な命令に不審を抱いた別の純血派のサザーランドが、独断でアサルトライフルを構え、無防備なスザクとカレンに向けて引き金を引こうとした。

 至近距離から放たれる対人実弾の嵐。銃口が火を噴く――。

 

 パパパパァン!!!

 

強烈な銃撃音が響き渡る。だが、実弾は二人には届かなかった。

 代わりに聞こえたのは、粘着質で強靭な白い繊維が、サザーランドの重厚な銃身を強引に斜め上へと引っ張り上げる、鋭い風切り音。

 

 「――はい、そこまで! 裁判も受けてない人を、いきなり後ろから撃つのはルール違反だよ!」

 ビル街の影から、一本の細い糸(ウェブ)を引いて戦場に割って入ったのは、あの派手な赤青のヒーローではなかった。

 ヨレヨレのグレーのパーカーにジーンズ。フードを深く被り、顔の半分を隠した「ただの生身の少年」。

 ピーターは私服のまま、手首のシューターからウェブを連射。銃を構えていたサザーランドの腕を近くの街灯に強引に張り付け、その射線を完全に逸らしてみせた。

 「なっ……何だ、あのガキは!? イレヴンのゲリラか!?」

 混乱するブリタニア兵たち。 カレンは驚愕に目を丸くした。目の前でフードを被り、糸を操って自分たちを救った少年。その声、その軽口、そしてあの「白い糸」。

 (嘘……。あの時のクモ男……!? スーツはどうしたのよ!? っていうか、あいつ、ただの子供じゃない……!!)

 マスクのないピーターの横顔、その幼い素顔の一部を見てしまったカレンの衝撃は計り知れなかった。

 拘束されたスザクもまた、シンジュクで自分のランスロットの拳を受け止めた「あの超人」が、自分と大差ない年齢の少年であることに息を呑んだ。

 

 「君は……!」

 

 「話は後だよ! ほら、そこの仮面の不審者(ゼロ)さん! 君のハメ技は凄かったけど、最後のリスク管理がちょっと甘いんじゃないかい!?」

 ピーターはトレーラーの上のゼロに向けて叫ぶと、迫り来るブリタニアの警備兵たちを私服の怪力で次々と投げ飛ばし、カレンたちの退路を作り出した。

 

◆ 

 

数分後。ゼロのトレーラーは、スザクを無事に救出し、地下道へと滑り込んでいた。

 アジトに戻り、一人で仮面を脱いだルルーシュの表情は、激しい焦燥に満ちていた。

 「スパイダーマン……。奴は今日、あの派手なスーツを着ていなかった。フードを被っただけの、ただの少年……」

 ルルーシュは自身の私室のモニターに、現場の監視カメラが捉えた「グレーのパーカーの少年」の拡大画像を映し出す。粗い画質の向こうにある、一瞬だけ見えた茶髪の横顔。

 「……まさか」

 ルルーシュの背中に、冷たい戦慄が走る。

 「驚異的な回復力。歴史に存在しない国家の紙幣。そして、我が学園の正門前で行き倒れていた、あの冴えない居候……ピーター・パーカー」

 ルルーシュはチェスの駒を握りつぶさんばかりに指先に力を込めた。

 「繋がってしまったな、ピーター。私の完璧な盤面を二度も乱したジョーカーが、まさか、私の目と鼻の先にいたとは……!」

 ゼロという名が世界に轟いたその日、ルルーシュはついに、自分のすぐ傍にいる少年の「本当の素顔」へと行き着くのだった。

ピーターにKMFを与えたほうがいい?

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