親愛なる弟へ 作:アオイ
トキワジムで行われる四天王への挑戦の為に私は今全力で調整している。
「相棒のライチュウは当然として他メンバーは……」
リーグを制したライチュウと相性補完の良いカイリュー、弱点の氷を受けられるラプラス、岩タイプの対策にはニドクイン、あとは……火力の高いフーディンとシバさん対策にゲンガーかな。
「じゃぁメンバーの選定はコレで終わりっと……」
私は決めたメンバーを手持ちにしてパソコンの操作を終えた。
「ママ! 姉ちゃんがバトルするって本当!?」
「そうよ? アオイの話だと今回は会場は近いけど私達は入れないわ。代わりにテレビで放映されるから我慢してって伝言よ?」
「チェ……姉ちゃんのバトルが生で見れると思ったのになぁ……」
俺はマサラタウンのサトシ……もうすぐ旅に出られる未来のトレーナーだ! 憧れの姉ちゃんがよくは分からないけどスゲー人とバトルするらしい話を聞いてどこでバトルするか気になったけど場所は教えてくれなかった。あ〜あ……生で見たかったなぁ……
「相変わらず元気だなサ〜トシ君は」
「そういうシゲルはどうしてここにいるんだよ?」
「………………君と同じさ。マサラタウン出身の先輩トレーナーであのレッドさんに食らいつくアオイさんのバトルを生で見たいから開催地を知ってるだろうと思ってここに来たけど空振りだったとはね」
シゲル……俺の幼馴染でライバルのシゲルも姉ちゃんの場所を聞こうとママに聞きに来たみたいだけど空振りしてた。
「ごめんなさいねシゲル君……開催地に関する事は保護者以外に教えたら駄目らしくてね?」
「えぇ……まぁ当然ですよね……アオイさんの美しいバトル……見たかったなぁ……」
「なんか言ったかシゲル?」
「何でも無いさ」
シゲルは空振りだと分かるとすぐに出ていきやがった。アイツ絶対姉ちゃんの事好きだわ。今度からかってやろう
そして私達は最終調整を終えてトキワジムのバトルコートに立っている。
「それではコレより挑戦者アオイの四天王挑戦を開始します! 使用ポケモンは3体のシングルバトルです! 四天王先鋒 カンナ! 挑戦者 アオイ! 両者ポケモンを出してください!」
フィールドは水で足場が点在する。この地形なら陸上はともかく水中はカンナさんの庭だ。セオリーだけど相性で流れを掴む必要がある。
「行きなさいパルシェン!」
「行くよライチュウ!」
私達のバトルが始まった。やはり先発は水タイプ複合のパルシェン……その防御は並の攻撃が響かない。まず物理技は決まり難いと考えるべきか。
「10万ボルト!」
「チュウ!」
「水中へ回避!」
「シェ!」
ライチュウの先制攻撃は難なく回避されパルシェンに入水された。ここまでは想定内……とはいえ相手を視認出来ないのはやり難い。
「セオリー通りの真面目な子ね。グリーン君を思い出させるわ」
「まだ始まったばかりです! ライチュウ! こうそくいどう!」
「ライ!」
フィールドの足場を高速で移動するライチュウの速さは圧巻だ。少なくとも陸上ではパルシェンよりも速いと仮定出来る。
「パルシェン! 水中からとげキャノン!」
複数の水面から出てきたとげがライチュウに迫る。なるほど拡散して撃っても対象が同じなら……それなら!
「10万ボルトで撃ち落として!」
ライチュウも見えた攻撃は難なく撃ち落とす。初手の探り合いはますますかな。
「中々良い動きね……流石はジョウトリーグの優勝者だわ。でも……逃げてるだけじゃ意味が無いわよ?」
「ですよね。なら……水面へかわらわり!」
「ラァイ!」
水面に叩き付けた拳が飛沫を上げて大きく波を揺らす。そして割れた水面からパルシェンを補足する。
「見えた! 10万ボルトで追撃!」
「みずのはどうで相殺よ!」
撃ち合った2つの技が煙と飛沫を巻き起こす。相殺までの時間から恐らく火力はライチュウが上、だけど距離の関係で対処は出来る。逆にパルシェンは威力や速度を求めるならある程度距離を詰めて来る。
「ライチュウ! 火力はあなたが上! チャンスを掴むよ!」
「よく見てるわね……パルシェン! 水中からみずのはどう!」
水面と同化しているみずのはどうが下から放たれている。オマケに発射位置が特定出来ない。距離とラグの関係で回避は出来てもいつまでもは続かない。どこかで流れを掴まないと押し切られる。
「水面にかわらわり!」
「割れた水面へれいとうビーム!」
再び水面を割るも水という緩衝材の無い攻撃は先程よりも尚速い。しかも放たれたれいとうビームは下手をすれば【こおり】状態を引き起こす以上迂闊に距離も詰められ無い。さて……どうするべきか……
「この私に千日手を仕掛けさせるなんてやるわね。でも貴女の方は余裕が無くなっていくのではなくて?」
「このまま続けばそうですね。なら……たたきつける!」
ライチュウの尻尾で叩き付けられた水面は先程よりも大きく揺れる。しかしパルシェンは既に迎撃体勢を整えている。
「れいとうビームで逃げ場を奪いなさい!」
「足を止めないで!」
パルシェンのれいとうビームでフィールドの足場が凍りついていく。凍りつく前に飛び移れば凌げるけどこのままじゃ逃げ場が…………逃げ場? そうだ!
「こうそくいどうで回避よ!」
徐々に失われるライチュウの足場……だけど逃げれば逃げる程、追い詰めれば追い詰める程に互いの距離は近付いていく。引きつけろ……引きつけろ!
「追い詰めなさいパルシェン!」
「凌いで!」
始めに10を超えていた足場も残り4つ……カウントを……合わせろ!
「今! たたきつける!」
三度水面を割ればパルシェンを捕捉する。やはり足場を奪う為に接近していた!
「かわらわりで横ないで!」
「ッ!」
揺れる水面を更に割れば渦を巻くように波がうねる。そしてその動作は散開していたとげキャノンを阻んでいた。
「今! 10万ボルト!」
攻撃の為に動きを止めたパルシェンに電撃が振り注ぐ。この試合始まっての確かなダメージだ。
「追撃よ! かわらわり!」
「なんて苛烈……れいとうビームで迎撃しなさい!」
パルシェンも反撃のれいとうビームを撃ち出すが水中でなければライチュウの方が早くなんとか回避する。そして私の狙い通りの展開が起こる。
「引きつけてスステップ!」
うねる水面がれいとうビームで凍りフィールドがえぐれる。そして今ライチュウとパルシェンは直線で結ばれてる。
「10万ボルト!」
2度目の10万ボルトがパルシェンを戦闘不能にした。
「パルシェン戦闘不能!」
審判の言葉に従いカンナさんはパルシェンを戻す。ライチュウを追い詰める為に点在する足場をはじめまばらに凍結した水面……おまけにライチュウの疲労が溜めさせられた。高速の戦闘にあとどのくらい付き合えるか……
「中々やるわね。私の攻撃を読む為に足場を捨てるなんて思いもしなかったわ。なら次は……ヤドラン!」
「ヤドラン……ですか。この子も中々に硬いですね……」
氷タイプではなく水タイプ……おまけに重戦車型のポケモン。でも「相性はまだ有利」とは思えない。それでも!
「10万ボルト!」
「受けなさいヤドラン」
ヤドランは回避せずに受けている……違う!
「コレは……めいそう! ヤバい! 起点にされる!」
確かに電撃はヤドランへの有効打だ。ダメージも少なくは無いだろう。しかもパルシェンとの戦いでスタミナを消耗してる以上必ずペースが落ちる! 我慢比べをさせられた!
「耐えてめいそうよヤドラン。そう……そしてなみのりよ!」
「ライチュウ……逃げ」
その言葉が届く前にフィールドは大波にのまれた。そしてライチュウはダウンしていた。
「ライチュウ戦闘不能!」
審判の言葉に従いライチュウを戻す。めいそうの起点にされた以上特防はもはや要塞……崩すなら……ん? 瞑想の起点……ッ! まだ望みはある。だけど機会は1度だけ。
「お願いラプラス!」
「キュ〜!」
「賭けるよ……ぜったいれいど!」
「なっ……1撃必殺技!?」
「ラプラスを信じてこの1撃に賭ける。ここを越えないと私達は勝てない!」
巻き起こる冷気の煙が晴れるとそこには氷漬けになったヤドランがいた。
「ヤドラン戦闘不能!」
「…………ふぅ」
無謀な賭けだった。というよりメンバーの選出が甘かった。ラプラスにこの技が無ければ間違いなく私達が負けていた。
「相性は悪く無かったけど戦況の不利を理解して1撃必殺技に賭ける……ね。貴女の苛烈はそこまでとは驚いたわ。なら私も……ラプラス!」
フィールドに相対するのは2体のラプラス。さっきのヤドランは元々の遅さに加えてライチュウからのダメージを負っていたから決まった奇襲だ。当然ラプラスには通じない。
「ラプラス……りゅうのまいよ」
「えっ……?」
ラプラスが……りゅうのまい……? 私がそう呆けた一手の間にカンナさんのラプラスがその素早さを上げる。
「驚いた? ラプラスはりゅうのまいを覚えるの。最も使用する技の都合【こうげき】の上昇は活き難い。でも今はどうかしら?」
上がった素早さが私のラプラスをいや……私達を翻弄する。
「れいとうビームよ!」
「こっちもれいとうビーム!」
衝突するれいとうビームが煙を上げる。技の威力はほぼ互角でもカンナさんの方が反応も速度も1手速い。このままじゃあ……防げない。
「水中に逃げて!」
ラプラスが水中に逃げるけど状況は好転しない。縦横無尽に駆けるラプラスを止めるにはカンナさんの想定を外れないと!
「りゅうのまいで更に加速よ!」
「れいとうビーム! れいとうビームで水面を凍らせて!」
考えろ……考えるんだ! ラプラスの使える技……りゅうのまいに対抗する動きを!
「範囲攻撃……れいとうビーム!」
縦ではなく横の線で攻撃するふぶきがカンナさんのラプラスを確かに掠める。当たりはする……でも!
「私達も反撃に出ましょうか。れいとうビーム!」
「ッ! こっちもれいとうビーム!」
再び衝突する互いの技。対カンナさん用の技だけど当てられない…………違う!
「ラプラス……あまごい!」
「なるほど……なら次は」
「「かみなり!」」
私達は双方同じ技を選び互いのラプラスへ雨で必中となったかみなりを指示する。確かにコレなら「素早さは関係ない……かしら?」
「もう1つ見せてあげるわ。ラプラス……のしかかかり!」
かみなりが切れたあとカンナさんのラプラスが私のラプラスを上から攻める。そうだったこの技があったんだ!
「ラプラス……いける?」
「クゥ~~」
大分削られてる。次だ。次のしかかりを受けたら終わりだ。
「れいとうビーム!」
「ラプラス……りゅうのまい!」
更に加速するカンナさんのラプラス。もう速度で捉えるのは難しい……やら!
「ラプラス……私を信じて!」
「キュ」
ラプラスは頷いて私の指示を待つ。この速度差、火力差……恐らくカンナさんが選ぶ技は……
「のしかかりよ!」
頭上を取ったカンナさんのラプラスが来る今!
「かみなり!」
攻撃体勢のカンナさんのラプラスにかみなりを直撃させることには成功した。でも……
「チャレンジャーのラプラス戦闘不能!」
私のラプラスが戦闘不能になった。最後の1体……ゲンガー……お願い!
「頼んだよ……ゲンガー!」
私も最後の1体であるゲンガーを繰り出す。しかし……
「ラプラス? ……ッ! まさか今のかみなりで!?」
カンナさんの驚愕の表情だが試合が続行してる。まだ終わっていない!
「押し込むよゲンガー……ナイトヘッド!」
「水の中へ早く!」
ラプラスが水中に逃げる前にその背をナイトヘッドが掠める。あれだけ速かったラプラスに当たる……? そうか!
「決めるよゲンガー……サイコキネシス!」
「もっと奥へ……ラプラス!」
本来だったら避けられた1撃。でも……
「ラプラスが繋いでくれた【まひ】……お願い!」
りゅうのまいで素早さが上がったとはいえまひと元々の素早さならいける!
「水中から引き摺り出して……打ち上げろ!」
ラプラスを捕らえたゲンガーが水中から引き摺り出して空中へと投げ出される。そして体勢が完全に崩れた今なら決まる!
「10万ボルト!」
「キュ〜……」
「ラプラス戦闘不能! よって勝者チャレンジャー アオイ!」
カンナさんのラプラスが度重なるダメージでついにダウンした。
「勝った……良し!」
私はとうとう四天王の1人を打ち倒す事に成功した。
瞑想2積みヤドランの倒し方がキツかったです。マジで【まひ】・【1撃必殺】が無かったらカンナさんに負けるイメージが湧きませんでした。
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