あたち神様に幼女にされちった!   作:あるがままに在れる世界

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なんか違うんだよなな少女ちゃん

 

 

 我が家の一室。開放的なその空間で、杏は知り合ったばかりの金髪の美少女と向き合っていた。そんな中少し視線をずらしてみると、部屋の時計は既に九時を回っている。そして今日は平日。

 

 堂々と学校をサボっている訳だ。しかし学校はいつでも行ける。金髪の美少女とは何時でもは話せない。必然こちらを優先しているというわけだ。

 

 

「まず自己紹介を。私はサーヴァント。クラスはセイバー。真名はアルトリア・ペンドラゴンと申します」

 

「へえ。となるとアーサー王なんだ。じゃあ、あたしは遠坂杏。義理だけど凛とは姉妹になるかな。よろしく」

 

「よろしくお願いします。ところで、不躾かとは思いますが、サーヴァントと殴り合える、というのは本当なのですか?」

 

 

 金髪に碧眼の眼差し。それが興味に染まりながら、杏の体を突き刺す。昨夜は驚愕に目を見開いていたアルトリアも、落ち着いてきたのか純粋に興味が強く出たようだった。

 

 

「うん。というか過去の情報からして、アサシンなら普通に勝てると思うよ。セイバーは……最優とも言われてるしどうだろう。そうだなぁ。アルトリアはどう思う?」

 

「む、アルトリアですか」

 

「ああごめん。そう言うと呼びやすいから」

 

「構いません。では私も杏、と。そうですね。見たところ杏は何らかの武術に熟達しているようだ。良い師に恵まれたのでしょう。冷静に考えてみるとそれほどの積み重ねがあるならアサシンには勝てると思います」

 

 

 真摯な眼差しで、アルトリアが答える。言動は挑発的だが、おそらく本心なのだろう。自信とかそういうのを抜きにした、客観的事実を元に言葉を吐き出している。

 

 

「そうなんだ。セイバーレベルは未知数。あるいは論外。武芸者として生きてみると、果てしなく上がいるもんだねぇ」

 

「あ、いや。純粋な技術だけを見ての評価なので、あまり真に受けないでください。おそらく杏の自信の源はその肉体強度でしょう。サーヴァントの毒に耐えて生還するのは生半可ではない」

 

「うーん。肉体強度を褒められてもなぁ。これは起源とかそう言う類の、まあ先天的なものだから。才能って言うならそうだけど、なんだかなぁ」

 

 

 杏の中で、念能力の扱いは難しい。最初の念能力など現代の人間の言峰にも勝てないレベルだったから、そこから今にまで練り上げたのは確かに杏の積み重ねによるところが大きい。

 

 しかし念能力は神に与えられた力。完全に自分の力として誇れるかと言うと、いまいち。

 

 まあ神いわく杏が元々持っていた権限を別の世界にとって安全なものに置き変えたとか何とかだから、実質念は杏の素の力に近いのだが。

 

 ともかくそんな杏の悩みとも言えない悩みを受けたアルトリアは、さらに体をあたふたさせる。

 

 

「す、すみません。しかし思い悩みながらもアサシンを狩ろうとしている以上、力量には自信がおありなのでは?どうでしょう?凛が起きたら私と手合わせすると言うのは。良ければ私を指標に使ってください。これでも私は、最優と言われるセイバーですから」

 

 

 柔らかな微笑みを浮かべるアルトリア。今更だが、否定しないということは彼女はかのアーサー王なのだったか。過去の英雄を使い魔とするサーヴァントでそうだと言うことは本物なのだろう。

 

 そんな彼女に気を使わせいている。そう思うと何だか申し訳ない気分になる。と同時に良い意味で王様の態度だとは思えない。非常に好感が持てる。

 

 そう考えながら杏はセイバーの提案を快く受け入れた。むしろこちらから頼みたかったくらいなので、ありがたい。お礼を言うと、アルトリアは爽やかにそれを受け入れてくれた。

 

 そうして当座の目標設定はアルトリアとの模擬戦ということになり、ひとまず寝坊助の凛が起きるまで杏はアルトリアと適当な話し合いに興じることにする。

 

 おおよそ時刻が9時10分を超えたところで、隣室の凛に動きがあった。ドタバタと。できた妹がいるから自分が寝坊したまま放置されるとは考えてもいなかったのか、酷く慌てた様子だった。

 

 そして少しして、杏たちのいる部屋に凛が殴り込んでくる。

 

 

「ちょっとー!ペンドラゴンさんはともかく杏は私を起こしなさいよ〜!」

 

 

 髪を寝癖でボサボサにしたまま、部屋に突撃してくる凛。マスターのそんな姿が意外だったのか、そばに座っていたアルトリアはその姿を見て目をぱちくりさせた。そして少し経って杏の方を見てくる。

 

 

「はいはい。じゃあアルトリア。凛も来たことだし」

 

「ええ。模擬戦といきましょうか。マスター。苦労をおかけしますがお許しください。審判役をお願いします」

 

 

 凛が来たのを見計らって、杏とアルトリアは席を立ち部屋の出口へと向かう。必然的に杏達は凛のすぐ横を通る形になり、移動の最中発された発言も相まって、凛は奇妙な表情を顔に浮かべた。

 

 

「へっ?ちょ!待ちなさいよあんたたち!あたしはマスターよ!」

 

 

 部屋を出て地下の修練場へ向かう杏達の背に、そのような声が浴びせられる。だが杏もアルトリアも凛の気質は理解しているので、特に省みる事はなかった。

 

 そうして色々文句を言う凛を連れながら、杏達は地下の修練場を目指す。歩く距離自体はそこまででもないので、凛の文句をBGMに、そこそこの時間で修練場にたどり着いた。

 

 そこは真っ白かつ無機質な空間。ひたすら修練の為だけに作り出された遠坂の狂気の産物。

 

 そこで先祖が幾度となく魔術を放ち、血を流し続けたことで、もはやそこはある種の異界と化している。

 

 その場で、杏とアルトリアは対峙した。

 

 お互いに非殺傷の竹刀を手に持って。

 

 

「えーと、私が合図したら始まるのね?じゃあまず、両者事前に共有しておくべき事はあるかしら?まったく姉だなんだと便利使いして」

 

 

 杏とアルトリアの間には十数歩程の距離。その中間線上に、凛が仕方なさそうに立っている。なんだかんだ審判としての役割を果たしてくれそうだ。

 

 ひとまず杏がアルトリアを見つめると、アルトリアは特に何も無さそうに杏をただ見つめた。その視線に、共有事項は向こうにはないと判断して杏は口を開く。

 

 

「ひとつ言っておくことがある。あたしの両腕はおそらく宝具の攻撃も受け流せるような能力がある。だから他の部位はともかく、両腕のどちらかで攻撃を防御した場合は戦いを続けて欲しい」

 

「…………わかりました。実戦想定でやるということでよろしいですか?では私もひとつ。正直これを使っては杏の実力を測れないと思いますが、私には『風王結界(インビジブルエア)』という能力があります。詳細は…………」

 

 

 アルトリアが自身の持つ、いわゆる宝具の能力について説明してくれる。なんでもそれを使うと、武器の透明化ができるようだ。それをもって歴戦の猛者相手でも正面からの不意打ちという理不尽を可能にするという。

 

 一見杏のパーフェクトプランの劣化版だが、部分的に展開できるという点で利便性はインビジブルエアの方が高いかもしれない。

 

 

「OK。お互い出せる範囲とはいえおそらく全力だ。この状態で試しに模擬戦をしてみよう。言っておくとあたしはある程度インビジブルエアに対応できる自信がある」

 

「それは何よりです。では凛。どうかあなたの判断で合図を。それを戦いの始めとして私たちは認識します」

 

 

 両者準備が整い、杏の目線の先にいるアルトリアは騎士然とした構えを取る。そこに特質するべき迫力はない。だが、堂々たるその姿は、少女の容貌を持ちながらも、誰よりも威厳に満ちた姿を演出していた。

 

 それに、杏は改めて目の前の存在が過去の英雄。アーサー王なのだと認識する。どこか単なる少女だと侮っていた気持ちも、すぐに失せた。

 

 そして杏もまた、その騎士の威容に答えようと自身の間合い、オーラを広げる。すなわち高等応用技"(えん)"。

 

 

「うひっ。杏またなんか変なことやったでしょ!なんか気配が変わったもの!もう二人共変なことしないでよね!それじゃあ!試合開始!」

 

 

 広げたオーラの範囲内。その全ての物質を感知できる。展開した円の半径は3m。これだけあれば英霊相手でも初動で終わることはない。そう直感してのその範囲だったが、直後。

 

 それは誤りであることを杏は悟る。

 

 試合開始の合図と共に杏の方へと踏み込んできたアルトリアの姿。それは一歩目で既にあらゆる地上の乗り物の速度を超えており、二歩目には、現存するほぼ全ての移動手段の速度を超越していた。

 

 あまりにも早い。

 

 杏から見るとまるでアルトリアはコマ送りのような形態で動いているように見える。それほどの速度だった。その想定外の速度を前に、杏はほぼ反射で竹刀を合わせにいった。

 

 都合三歩目。アルトリアが円の範囲内に入った瞬間、ほぼ本能によって繰り出される杏の一閃。

 

 それをアルトリアはまるで予期していたかのように避け、杏の視界内で「次はこちらの番」とばかりに、あまりにも美しい型で、反撃に出てきた。

 

 

「ッとお!?」

 

 

 身を翻し、杏は咄嗟に開けていた方の左腕でアルトリアの斬撃を受ける。すると木と生身の腕が激突するのとはまるでかけ離れている音が、その場で鳴った。

 

 

「ぬう!?硬い!?」

 

「この程度で驚いて貰っちゃ困るぜ!神様からの授かりものであたしの全身は全部この程度には硬いさ!」

 

「なるほど!我が聖剣がなければとても断ち切れませんね!」

 

「悲しいな!あたしは宝具の遥か下かよ!?」

 

 

 衝突の間際、思念の交差とでも言うべき超速で、迫るアルトリアと会話を交わす。宝具なら断ち切れるとほぼ断言された杏は、落ち込み気味に竹刀を再度振るった。

 

 だがアルトリアの姿は捉えがたく、やはりその攻撃は予期していたように避けられる。そして一歩退いたアルトリアが、竹刀を振り切った杏に隙を見出して再度突撃してきた。

 

 だが予期していると言うなら杏も負けてはいない、円の中に収まるアルトリアの姿形。全てを詳細に感じ取れる。次にどう動くか。筋肉の動きから予測できる。無論見えない剣も捉えることが可能!

 

 

「ここ!」

 

 

 アルトリアの横一文字の攻撃に対して、杏は左腕で防御の構図を描き、右腕で攻撃の型をとる。完全に詰ませにいっている一手。

 

 さあどう出る!?

 

 

「なるほど。よく練られた良い一手です」

 

 

 あまりにも冷静。場違いなほど。そう思った瞬間、莫大な魔力がその場に渦巻いた。発生源は、言わずもがなアルトリアその人。

 

 魔術を使うのか?

 

 否。

 

 どこまでも純粋な魔力。それはアルトリアの足元から湧き出て、その身体を浮き上がらせる。飛んだのだ。その莫大な魔力を糧に。

 

 それを感じ取る事はできた。だが視界の中には既にアルトリアはいない。しかしやはり感じ取る事はできる。展開した円の天井付近。そこをアルトリアが浮遊している。

 

 そして今にも真下の杏に剣を振りしきろうと!

 

 

「…………くっッ!?」

 

 

 瞬時に状況を把握した杏は、邪魔な竹刀を手放し、身軽になった体で宙のアルトリアと向き合い全力での防御を敢行する。詰みに行ったはずが、逆に後手に回っている現状。

 

 毒殺されかけたのも合わせて、英霊というものが如何に理不尽かを今杏は体感していた。

 

 

「…………ふふ」

 

 

 両手での防御を試みる杏に、ふと空中のアルトリアが笑いかけてきた。何がおかしいのか。そう思っていると、圧縮された時の中で、アルトリアが攻撃の構えを解くのが見えた。

 

 一体何故?

 

 その困惑を他所に、アルトリアはそのまま完全に戦意を衰えさせ、軽い魔力の放出によって少し遠くの地面に着地した。

 

 

「想定以上です。杏。あなたは自身の力を神から授かっただけの紛い物か何かだと思っているようですが、それは半分正しく半分間違っている」

 

「…………もしかしてこれで戦闘終わり?」

 

「はい。杏。あなたは強い。少なくとも力に驕らず己を律している。それは過去の才能だけはあった英雄などには出来なかった事です。今の戦いで杏のことをある程度理解できたように思います。あなたはどうですか?」

 

 

 どう、と問われても。どうも杏は初めての自身より格上との戦闘に、まだその余韻を処理しきれていない。過去一力が溢れてくるような感覚。

 

 手を広げそこを見ると、もう意図的に戦闘姿勢を維持している訳でもないのに、そこには莫大なオーラが宿っていた。

 

 

「うーん、まあ。今ので半人前ながらにアルトリアのことをちょっと理解できた気がするよ。どこまでも誠実だけど、ずるいね。アルトリアは。あたしよりも一歩先をずっと見てる気がする」

 

「それは当然です。経験値が違いますから」

 

「そうじゃなくて…………」

 

 

 もっと、こう。見ているものが大きく違うような。それを経験値ゆえの差だと言ってしまえばそうなのだが。

 




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