静養は続くが、できることが少しずつ増えてきた。
時折外の空気を吸いに外出したりすることができるようになって来ていて、さらにはウイに古書館へ招かれ、そこで知見を増やしたりすることもある。
ふいに強いマイナスの思考が押し寄せるが、その頻度も幾分か落ち着いた。
…聖堂に、出向いてみても。そろそろ顔を見せておいた方がいいか…サクラコには、そういったわずかな心の余裕が出来ていた。
(………マリーに、場を取り計らって頂けるか、聞いてみましょう…)
電話とはいえ、シスターフッドの人間との接触はいつぶりか。
少々手が震えている。それでも、そろそろ一歩を踏み出したい。
「……………もしもし?」
『……サクラコ様、ですか…!?』
「は、はい……本当に、ご心配をおかけしてすみません…」
『いっいえっ!ご無事なのでしたら、本当によかったです…!』
喜びの声があがるマリー。
「その、色々と…現状についてを、お話したいと思ったのですが…」
『それでしたら、いつでもお時間お作りします!明日でも問題ありません!』
そうしているうちに電話は終わる。
…未だ慕ってくれているような様子であることに嬉しさを感じる。
(ですが…本当に私のためなんかに時間を作ってくださるなんて…)
サクラコは、申し訳なさも共存する心中となってしまっていた。
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「どれ程の心中だったか…察することの出来なかった私が恥ずかしいです…」
「い、いいのですよマリー…あなたが自責するようなことでは…」
翌日サクラコとマリーは久しぶりに対面し、近況を話し合い始める。
サクラコは自身の状態を告白し、マリーはサクラコ不在の間のシスターフッドについて語った。
「それにしても、そうですか…どうにかは、なっていたんですね」
「はい。学内で私たちの介入が必要そうな事案も、起こりませんでしたから」
私がいない間平穏無事だったことに安堵はしている。
だがサクラコの心にはもう一つの余計な思いまで顔を覗かせていた。
(それは…つまり、私がいなくても…?)
いいやそんなまさか、いやでももしかして本当に…?
不要な思索が脳内を巡り始めてしまった。
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「つい、自分の存在意義を問うようなことをしてしまって…」
マリーと会った次の日が定期診療の日であった。
ミネに心中を吐露する。
「どうにかなっていたかもしれませんが…サクラコさんがいるからこそのシスターフッドであると、私は思っていますから」
「……そうだと、いいのですが」
精神の摩耗した状態では、悪い方へ極端に思考が偏る。
今回のように自身の存在意義や生きる意味という、解なき問いを始めることもある。
何よりも、前進できていようとそうした思索がよぎることが多い。
今はまだサクラコは、自身の状態は良化していないと思い込んでいるが、思っているよりも悪いわけではないのだ。
「まだ、時間はかかるのですね」
「焦る気持ちは重々承知ですが、これで大丈夫なんです。少しずつのものであると考えるしかありませんから…」
「…はい」
気持ちでは納得している。それでもその考えは止まらない。
言い聞かせるしかないのだ。
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「サクラコ様…」
再びマリーと会う機会があった。
ついうっかり、その中で自分がいなくてもシスターフッドはどうにかなるのでは、という件の話を出してしまった。
悲嘆の顔をマリーは見せる。
「私は…いつまでもお待ちしています。サクラコ様に、いて欲しいですから。本当にそう思っています」
「マリー……」
やはり先行する感情は申し訳なさだった。
それでも、必要とされるというのは心を解きほぐす。
サクラコは再び、前に進もうという感情を手にするに至った。