機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第5巻 第12章 「帰還座標」

アマテラス。

 

 

艦は静かだった。

 

 

だが。

 

 

その静けさは、

安堵ではない。

 

 

■“何かを受け入れる準備”

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

ミライが、

表示された座標を見つめている。

 

 

数値は安定している。

 

 

だが。

 

 

安定し過ぎていた。

 

 

 

■ミライ

 

「……変ね」

 

 

「座標が揺れてない」

 

 

 

■セラーナ

 

「違う」

 

 

「“揺れを止められてる”」

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

低く呟く。

 

 

「受け入れ準備か」

 

 

 

■アマテラス・格納デッキ

 

フィロメラが静かに停止している。

 

 

白いサイコフレームだけが、

微弱に脈動していた。

 

 

まるで。

 

 

■“誰かの鼓動を維持している”ように。

 

 

 

■レイジ

 

コクピット内。

 

 

汗を拭う。

 

 

 

■レイジ

 

「……重すぎんだろ」

 

 

 

後方。

 

 

ブライト・ノアが、

静かに座っている。

 

 

だが。

 

 

その姿は、

微妙に輪郭がズレていた。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「まだ……」

 

 

「馴染まんな」

 

 

 

■レイジ

 

「そりゃそうだろ」

 

 

「世界ごと引っ張ったんだから」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

視線を向ける。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「君は」

 

 

「本当に、

とんでもない事をしたんだな」

 

 

 

■レイジ

 

「知らねぇよ」

 

 

「俺は、

戻したかっただけだ」

 

 

 

沈黙。

 

 

その瞬間。

 

 

フィロメラ内部の光が、

一瞬だけ揺れる。

 

 

 

■ラプラス・コア 遠隔ログ

 

CAUSAL ENTITY REINTEGRATION:

IN PROGRESS

 

 

(因果存在再統合:

進行中)

 

 

ANCHOR ACCEPTANCE RATE:

68%

 

 

(錨点受理率:

68%)

 

 

 

■セラーナ(通信)

 

「始まったわね」

 

 

 

■ミライ

 

「何が?」

 

 

 

■セラーナ

 

「“現実側の受理”よ」

 

 

 

■アマテラス艦橋

 

空気が変わる。

 

 

誰も喋っていない。

 

 

なのに。

 

 

全員が、

同じ方向を見始める。

 

 

 

■格納デッキ

 

フィロメラのハッチが、

ゆっくり開く。

 

 

蒸気。

 

 

白い残光。

 

 

そして。

 

 

ブライト・ノアが、

立ち上がる。

 

 

だが。

 

 

一歩目が、

少し遅れる。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「……っ」

 

 

 

現実が、

まだ完全には噛み合っていない。

 

 

 

■ミライ

 

「ブライト……!」

 

 

 

その声。

 

 

その瞬間だけ。

 

 

ブライトの輪郭が、

僅かに安定する。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「ミライ……」

 

 

 

その呼び方は、

確認だった。

 

 

記憶ではない。

 

 

■“帰還先の確認”

 

 

 

■ラプラス・コア

 

ANCHOR RESPONSE:

CONFIRMED

 

 

(錨点応答:

確認)

 

 

REALITY ACCEPTANCE:

EXPANDING

 

 

(現実受理:

拡大中)

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

小さく息を吐く。

 

 

 

■ジョブ・ジョン

 

「戻ってきやがった……」

 

 

 

■セラーナ

 

「違う」

 

 

一拍。

 

 

 

■セラーナ

 

「“受け入れられ始めた”の」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

ゆっくり歩き出す。

 

 

そのたびに。

 

 

世界とのズレが、

少しずつ減っていく。

 

 

 

■レイジ

 

後ろから小さく笑う。

 

 

 

■レイジ

 

「ほらな」

 

 

「戻れたじゃねぇか」

 

 

 

■ブライト・ノア

 

立ち止まる。

 

 

振り返らない。

 

 

だが。

 

 

少しだけ笑う。

 

 

 

■ブライト・ノア

 

「……まだ途中だ」

 

 

 

その瞬間。

 

 

アマテラス艦内の時計が、

初めて“正常な時間”を刻み始める。

 

 

 

■ラプラス・コア

 

REALITY RECEPTION:

PARTIALLY COMPLETE

 

 

(現実受理:

部分完了)

 

 

BRIGHT NOA:

ANCHOR ENTITY CONFIRMED

 

 

(ブライト・ノア:

錨点存在確認)

 

 

 

だが。

 

 

外縁宙域の奥では。

 

 

まだ。

 

 

“別の何か”が、

静かに目を開き始めていた。

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