機動戦士ガンダム:残響   作:片蔵清優

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■第5巻 第13章 「ブライト艦長」

アマテラス。

 

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艦内は静かだった。

 

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だが。

 

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その静けさは、

ようやく“人間の静けさ”へ戻り始めていた。

 

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■アマテラス艦橋

 

誰も大きな声を出さない。

 

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警報も無い。

 

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戦闘も無い。

 

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それなのに。

 

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全員が、

落ち着かなかった。

 

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■ミライ

 

艦長席を見る。

 

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そこだけが、

まだ空白だった。

 

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■ジョブ・ジョン

 

「……戻ったんだよな」

 

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■セラーナ

 

「戻ったわ」

 

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一拍。

 

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■セラーナ

 

「まだ完全じゃないけど」

 

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■格納デッキ

 

ブライト・ノアが歩いている。

 

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歩幅は、

もうズレていない。

 

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だが。

 

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空間の奥では、

まだ微細な遅延が残っていた。

 

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■レイジ

 

後ろを歩く。

 

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■レイジ

 

「もう大丈夫そうだな」

 

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■ブライト・ノア

 

「分からん」

 

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小さく息を吐く。

 

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■ブライト・ノア

 

「だが——」

 

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「ようやく、

地面を踏んでいる感じはする」

 

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■レイジ

 

「それ地味に怖ぇな」

 

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ブライトが、

少しだけ笑う。

 

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それだけで。

 

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フィロメラのサイコフレームが、

微かに安定する。

 

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■アマテラス艦橋

 

扉が開く。

 

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全員の視線が、

同時に向く。

 

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ブライト・ノア。

 

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その姿を見た瞬間。

 

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空気が変わる。

 

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■ラプラス・コア 遠隔ログ

 

ANCHOR ENTITY:

STABILIZATION CONFIRMED

 

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(錨点存在:

安定化確認)

 

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REALITY COHERENCE:

EXPANDING

 

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(現実整合性:

拡大中)

 

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■ブライト・ノア

 

艦橋を見渡す。

 

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ミライ。

 

ジョブ。

 

セラーナ。

 

クルー達。

 

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その全員を見て。

 

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ようやく。

 

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“帰ってきた”という感覚が生まれる。

 

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■ブライト・ノア

 

「……すまなかったな」

 

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■ジョブ・ジョン

 

「馬鹿言え」

 

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「戻ってきただけで十分だ」

 

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■その瞬間。

 

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後方モニターが一瞬だけ点灯する。

 

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ノイズ。

 

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そして。

 

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一人の男の顔。

 

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■カイ・シデン(通信)

 

『ったく……』

 

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『相変わらず、

面倒事ばっか集めるな』

 

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■ブライト・ノア

 

目を見開く。

 

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■ブライト・ノア

 

「カイ……!」

 

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■カイ・シデン

 

『その顔見る限り、

完全に戻った訳じゃなさそうだな』

 

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一拍。

 

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■カイ・シデン

 

『でもまぁ』

 

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『ブライト艦長の顔ではある』

 

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艦橋に、

小さな笑いが戻る。

 

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それは。

 

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戦争でも。

 

観測でも。

 

残響でもない。

 

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■“人間の空気”だった。

 

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■ミライ

 

ゆっくり立ち上がる。

 

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ブライトを見る。

 

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長い沈黙。

 

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そして。

 

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ミライが駆け寄る。

 

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そのまま。

 

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強く、

ブライトへ抱きついた。

 

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艦橋の誰も、

何も言わない。

 

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ただ。

 

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その光景を、

静かに見守っていた。

 

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■ミライ

 

「——お帰りなさい」

 

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一拍。

 

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■ミライ

 

「ブライト艦長」

 

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ブライトは、

何も答えない。

 

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ただ。

 

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震えるように、

ミライの肩へ手を置いた。

 

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その瞬間。

 

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アマテラス全域の照明が、

一斉に安定する。

 

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時間。

 

空間。

 

認識。

 

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全てが、

初めて“現実”として噛み合う。

 

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■ラプラス・コア

 

REALITY LOCK:

FAILED

 

⸻

 

(現実固定:

失敗)

 

⸻

 

NEXT PHASE PREPARATION:

STARTED

 

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(次段階移行準備:

開始)

 

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外縁宙域の奥。

 

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白。

 

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黒。

 

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二つの光が、

静かに瞬く。

 

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まるで。

 

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“次の戦争”を、

観測しているように。

 

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■機動戦士ガンダム:残響

 

第5巻『帰還座標』完

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