アマテラス。
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艦内は静かだった。
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だが。
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その静けさは、
ようやく“人間の静けさ”へ戻り始めていた。
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■アマテラス艦橋
誰も大きな声を出さない。
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警報も無い。
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戦闘も無い。
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それなのに。
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全員が、
落ち着かなかった。
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■ミライ
艦長席を見る。
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そこだけが、
まだ空白だった。
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■ジョブ・ジョン
「……戻ったんだよな」
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■セラーナ
「戻ったわ」
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一拍。
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■セラーナ
「まだ完全じゃないけど」
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■格納デッキ
ブライト・ノアが歩いている。
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歩幅は、
もうズレていない。
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だが。
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空間の奥では、
まだ微細な遅延が残っていた。
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■レイジ
後ろを歩く。
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■レイジ
「もう大丈夫そうだな」
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■ブライト・ノア
「分からん」
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小さく息を吐く。
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■ブライト・ノア
「だが——」
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「ようやく、
地面を踏んでいる感じはする」
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■レイジ
「それ地味に怖ぇな」
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ブライトが、
少しだけ笑う。
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それだけで。
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フィロメラのサイコフレームが、
微かに安定する。
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■アマテラス艦橋
扉が開く。
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全員の視線が、
同時に向く。
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ブライト・ノア。
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その姿を見た瞬間。
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空気が変わる。
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■ラプラス・コア 遠隔ログ
ANCHOR ENTITY:
STABILIZATION CONFIRMED
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(錨点存在:
安定化確認)
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REALITY COHERENCE:
EXPANDING
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(現実整合性:
拡大中)
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■ブライト・ノア
艦橋を見渡す。
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ミライ。
ジョブ。
セラーナ。
クルー達。
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その全員を見て。
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ようやく。
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“帰ってきた”という感覚が生まれる。
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■ブライト・ノア
「……すまなかったな」
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■ジョブ・ジョン
「馬鹿言え」
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「戻ってきただけで十分だ」
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■その瞬間。
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後方モニターが一瞬だけ点灯する。
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ノイズ。
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そして。
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一人の男の顔。
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■カイ・シデン(通信)
『ったく……』
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『相変わらず、
面倒事ばっか集めるな』
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■ブライト・ノア
目を見開く。
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■ブライト・ノア
「カイ……!」
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■カイ・シデン
『その顔見る限り、
完全に戻った訳じゃなさそうだな』
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一拍。
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■カイ・シデン
『でもまぁ』
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『ブライト艦長の顔ではある』
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艦橋に、
小さな笑いが戻る。
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それは。
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戦争でも。
観測でも。
残響でもない。
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■“人間の空気”だった。
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■ミライ
ゆっくり立ち上がる。
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ブライトを見る。
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長い沈黙。
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そして。
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ミライが駆け寄る。
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そのまま。
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強く、
ブライトへ抱きついた。
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艦橋の誰も、
何も言わない。
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ただ。
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その光景を、
静かに見守っていた。
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■ミライ
「——お帰りなさい」
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一拍。
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■ミライ
「ブライト艦長」
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ブライトは、
何も答えない。
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ただ。
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震えるように、
ミライの肩へ手を置いた。
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その瞬間。
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アマテラス全域の照明が、
一斉に安定する。
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時間。
空間。
認識。
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全てが、
初めて“現実”として噛み合う。
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■ラプラス・コア
REALITY LOCK:
FAILED
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(現実固定:
失敗)
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NEXT PHASE PREPARATION:
STARTED
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(次段階移行準備:
開始)
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外縁宙域の奥。
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白。
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黒。
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二つの光が、
静かに瞬く。
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まるで。
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“次の戦争”を、
観測しているように。
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■機動戦士ガンダム:残響
第5巻『帰還座標』完