不老不死なら寿命を削る禁術も無限に使えるんじゃね?   作:正義のヒーローA

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第三話「正義のヒーローはまた現れる」

 正義のヒーローとは、助けるべき人を助け、礼を言われる前に颯爽と去る存在である。

 

 そう。

 颯爽と、である。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

 

 俺は廃ダンジョンの通路を、全力疾走で逃げていた。

 

 颯爽?

 

 いや、違う。

 これは完全に逃走だった。

 

 だって仕方ないじゃん!

 人、斬れちゃったんだもん!

 いや、禁術を使った時点で相手が死ぬことは分かっていた。

 分かっていたけど、実際に目の前で人間が縦に真っ二つになると、普通に怖い。

 俺は正義のヒーローになりたいのであって、血しぶきに慣れた殺戮マシーンになりたいわけではないのだ。

 

「おえっ……!」

 

 曲がり角の陰に隠れたところで、俺は膝をつき、吐いた。

 さっき〈絶死〉を三回使ったせいだろう。

 寿命は削れない。

 不老不死だからそこはノーカン。

 だが、どうやら肉体的な反動は普通にあるらしい。

 

 喉が焼ける。

 肺が潰れたみたいに痛い。

 全身の血が沸騰しているような気持ち悪さがある。

 

「くそ……禁術、便利だけど、普通にしんどいな……」

 

 俺は仮面の隙間から垂れた血を袖で拭った。

 石仮面も血まみれだ。

 これで正義のヒーローはちょっと無理がある。

 どちらかと言えば、呪われた殺人鬼側のビジュアルだった。

 

 ……いやいや。

 見た目ではない。

 大切なのは心だ。

 困っている人を助けた。

 それは紛れもなく正義のヒーローの行いである。

 

「よし、今回の俺、かなりヒーローだったのでは?」

 

 俺は一人で頷きかけて――。

 

 ふと、思い出した。

 

 アリスちゃんの右手。

 

 短剣が突き刺さっていた。

 深く、ひどく、痛々しく。

 

 俺は彼女を殺される寸前で助けた。

 でも、彼女の右手はどうなった?

 

「……あれ?」

 

 血の気が引いた。

 

 命を助けた。

 それで終わり。

 それで本当にいいのか?

 

 正義のヒーローとは、困っている人を助ける存在だ。

 死にそうな人を死なせなかっただけで、「はい終わりでーす」と帰っていいのか?

 いや、違う。

 多分違う。

 少なくとも、俺が憧れたヒーローはそんな中途半端な仕事はしない。

 

「ま、まあ、聖職者とか治癒魔術師とかいるし……貴族だし……大丈夫だよな?」

 

 そう呟いてみる。

 だが、どうにも胸の奥がざわざわした。

 

 嫌な予感がした。

 

 俺は仮面を外し、血を拭い、廃ダンジョンの裏口から外へ出た。

 そして翌朝、何食わぬ顔で冒険者ギルドへ向かったのだった。

 

 

   ***

 

 

「アリス・エレクトリアの右手、もう剣は握れねぇらしいぞ」

 

 ギルドに入ってすぐ、そんな声が聞こえた。

 

 俺は足を止めた。

 

「昨日の件だろ? 〈銀の龍〉が壊滅したってやつ」

「ああ。ケンたちは謎の仮面男に殺されたらしい」

「怖ぇよなぁ」

「でもよ、アリスも助かったって言っても終わりだろ。右手の腱がぐちゃぐちゃで、しかも呪毒入りの短剣だったんだと」

「治癒魔術でも駄目なのか?」

「傷は塞がるらしい。でも、指がまともに動かねぇってよ」

「はっ。元から剣の才能なんてなかったんだ。ちょうどいいんじゃねぇの?」

 

 ガタン、と音が鳴った。

 

 俺が無意識に椅子を蹴っていた。

 

 周囲の冒険者たちがこちらを見る。

 俺は慌てて目を逸らした。

 

 落ち着け。

 落ち着け、俺。

 ここで怒鳴っても意味はない。

 今の俺は万年Eランク冒険者エル。

 正体不明の仮面ヒーローではない。

 

 そうだ。

 俺がやるべきことは一つだ。

 

 治す。

 アリスちゃんの右手を治す。

 

 だが、俺に治癒魔術の才能はない。

 普通の魔術も剣術も大したことがない。

 だから万年Eランクなのだ。

 残念ながら、俺が「ふんっ!」と気合を入れたところで、折れた小枝一本治せやしない。

 

 では、どうする?

 

 決まっている。

 

「禁術だな」

 

 俺は小さく呟いた。

 

 寿命を削って相手を殺す禁術があるなら、寿命を削って相手を治す禁術もあるはずだ。

 いや、あってくれ。

 なかったら困る。

 非常に困る。

 

 俺はその足で闇市へ向かった。

 

 

   ***

 

 

「おい、またお前か」

 

 薄暗い路地裏。

 前に透明化の薬と石仮面をくれた露店商のオッサンは、俺の顔を見るなり嫌そうな顔をした。

 

「オッサン、治癒系の禁術って知らない?」

「帰れ」

「即答!?」

「お前みたいな厄ネタの塊にこれ以上関わりたくねぇんだよ。透明化の薬を飲んで不老不死になって、次は禁術だぁ? 世界に喧嘩売ってんのか?」

「売ってない。俺は人助けがしたいだけだ」

「一番タチ悪いんだよ、そういう善意の馬鹿は」

 

 ひどい言われようだった。

 だが、俺はめげない。

 正義のヒーローたるもの、多少の暴言で心折れていてはやっていけないのだ。

 

「頼むよ。右手を怪我した子がいるんだ。剣が握れなくなるかもしれない」

「普通の治癒魔術師に頼め」

「呪毒らしい」

「……ああ、そりゃ面倒だな」

 

 オッサンは舌打ちした。

 そして、しばらく俺を睨んだ後、店の奥から一冊の薄汚れた写本を取り出した。

 

「治癒の禁術は、殺しの禁術よりずっと危ねぇ」

「そうなの?」

「当たり前だ。殺すだけなら命の糸を断てばいい。だが治すってのは、切れた糸を元通りに結び直す行為だ。下手すりゃ、治す相手の存在そのものを歪める」

「なるほど、全然分からん」

「胸張るな」

 

 オッサンは写本を開いた。

 そこには、気味の悪い魔法陣と、細かい文字がびっしり書かれていた。

 

「〈因果縫合〉」

「いんがほうごう?」

「傷が生まれた原因を、術者の寿命で縫い直す禁術だ。分かりやすく言えば、怪我を“なかったことに近づける”」

「おお! それだ! それください!」

「ただし、代償は重い。寿命だけじゃねぇ。相手が受けた痛みと損傷の一部が術者に返ってくる」

「ふむふむ」

「ふむふむ、じゃねぇよ。指を治せば、お前の指が裂ける。腕を治せば、お前の腕が潰れる。最悪、心臓が止まる」

「俺、不老不死だし」

「そういう問題じゃねぇんだよなぁ……」

 

 オッサンは深くため息をついた。

 

「それに、この写本だけじゃ足りねぇ。発動式が欠けてる。完全な術式は帝都中央図書館の禁書庫にある」

「また禁書庫かぁ」

「行くなよ」

「行くよ」

「行くなって言ってんだよ!」

「だって困ってる子がいるし」

「……お前、いつか本当に取り返しのつかねぇことになるぞ」

 

 オッサンの声は、いつになく真面目だった。

 

 だが、俺は笑った。

 自分でも少し馬鹿みたいだと思うくらい、自然に笑えた。

 

「その時はその時考える」

「考えてから動け」

「正義のヒーローは、考える前に身体が動くものなのだ」

「それ、ただの無謀って言うんだよ」

 

 結局、オッサンは透明化の薬を売ってくれた。

 前より高かった。

 足元を見られた気がする。

 正義のヒーローは経済的に厳しい。

 

 

   ***

 

 

 帝都中央図書館の禁書庫に忍び込むのは、二度目だった。

 

 前回は透明化の薬で楽勝だった。

 今回はどうか。

 

「おい、何か今、足音しなかったか?」

「気のせいだろ」

「前に侵入者が出たんだぞ。油断するな」

 

 警備が増えていた。

 

 当然である。

 前回、俺が侵入したせいだ。

 完全に自業自得だった。

 

 俺は透明化したまま、そろりそろりと禁書庫の奥へ進む。

 床に魔法陣が仕掛けられていたり、棚の間に鈴付きの糸が張られていたり、明らかに前より厳重になっている。

 

 やめてほしい。

 図書館はもっと開かれた場所であるべきだと思う。

 禁書庫に忍び込んでいる俺が言えたことではないけど。

 

「〈因果縫合〉、〈因果縫合〉……どこだ……」

 

 棚を探す。

 寿命を奪う術。

 魂を削る術。

 死者の声を聞く術。

 何か触っただけで呪われそうなタイトルばかりだ。

 

「お、あった」

 

 黒い革表紙の本。

 題名は『禁忌治癒大全』。

 

 いかにもだった。

 むしろ、いかにもすぎて罠を疑うレベルだった。

 

 俺は慎重に本を開く。

 

 ――〈因果縫合〉。

 対象の傷に宿る因果を術者の命脈へ移し、損壊前の形へ縫い戻す。

 代償、術者の寿命。

 副作用、激痛、肉体崩壊、記憶欠落、魂魄汚染。

 

「うん、最後の方ちょっと見なかったことにしよう」

 

 俺は必要な術式を必死にメモした。

 魔法陣の描き方。

 詠唱。

 触媒。

 発動条件。

 

 難しい。

 死ぬほど難しい。

 いや、不老不死だから死なないけど、普通に頭が死ぬ。

 

「そこに誰かいるのか!」

 

 また怒鳴り声がした。

 

 やばい。

 透明化の薬の効果が切れかけている。

 

 俺は本を戻し、メモを懐に突っ込み、全力で走り出した。

 途中で鈴付きの糸に引っかかった。

 

 チリンチリンチリンチリン!

 

「侵入者だ!」

「禁書庫に侵入者!」

 

「うわぁあああああああああ!」

 

 正義のヒーロー、二度目の禁書庫逃走である。

 そろそろ出禁どころか指名手配されそうだった。

 

 

   ***

 

 

 その夜。

 俺はぼろっちい集合住宅の自室で、〈因果縫合〉の練習をしていた。

 

 まず、ナイフで自分の指を軽く切る。

 痛い。

 普通に痛い。

 

「〈因果縫合〉」

 

 詠唱すると、指の傷が塞がった。

 

「おお!」

 

 直後、逆の手の指が裂けた。

 

「いってぇえええええええ!」

 

 なるほど。

 こういう感じか。

 相手の傷を治すと、そのぶん俺に返ってくる。

 自分に使うと、別の自分に返ってくるらしい。

 何だその仕様。

 悪意が強すぎる。

 

 だが、使える。

 

 ならば十分だ。

 

 俺はメモを握りしめた。

 アリスちゃんの右手を治せるかもしれない。

 

 いや、治す。

 

 正義のヒーローは、最後まで助けるものなのだ。

 

 

   ***

 

 

 アリス・エレクトリアは、帝都の外れにある古い訓練場にいた。

 

 月明かりの下。

 彼女は一人、木剣を握ろうとしていた。

 

 いや、握れていなかった。

 

 包帯の巻かれた右手は震え、指は木剣の柄を掴みきれず、何度も何度も地面に落とす。

 

 カラン。

 

 乾いた音が響く。

 

「……っ」

 

 アリスは唇を噛んだ。

 泣いてはいなかった。

 けれど、その横顔は泣いているみたいだった。

 

 俺は石仮面を被り、物陰から出た。

 

「こんばんは」

「……あなたは」

 

 アリスが目を見開く。

 

「昨日の……」

「通りすがりの正義の味方です」

「正義の、味方……」

 

 しまった。

 ちょっと格好つけすぎたかもしれない。

 自分で言うと恥ずかしいな、これ。

 

 俺は咳払いした。

 

「右手、見せて」

「……駄目です」

「え?」

「もう、駄目です」

 

 アリスは右手を胸に抱いた。

 

「あなたは昨日、私のために寿命を削りました」

「あー、まあ、うん」

「血を吐いていました。苦しそうでした。それなのに、どうしてまた来たんですか」

「右手、困ってるだろ?」

「……っ」

 

 アリスの顔が歪んだ。

 

「困っているからって……そんな理由で……」

「十分な理由だと思うけど」

「十分じゃありません!」

 

 アリスが叫んだ。

 

 その声は震えていた。

 怒っているのに、泣きそうだった。

 

「私なんかのために、あなたが削られる必要なんてない! 私は、助けてもらっただけで十分なんです! 生きているだけで、もう十分で……だから……だから、これ以上は……」

 

 言葉が途中で途切れる。

 

 俺は頭を掻いた。

 困った。

 非常に困った。

 

 俺としては寿命の問題はない。

 でも、不老不死です、と正直に言うわけにもいかない。

 そんなことを言えば、禁術使いどころか化け物扱い待ったなしである。

 正義のヒーローとしては、正体バレも化け物バレも避けたい。

 

 だから俺は、できるだけ軽い声で言った。

 

「大丈夫。俺、こう見えて丈夫だから」

「そんな言葉、信じられるわけないじゃないですか」

「じゃあ、信じなくていい」

「え……?」

「信じなくてもいいから、右手は治させてくれ」

 

 俺は一歩近づいた。

 

「剣、好きなんだろ?」

 

 アリスの瞳が揺れた。

 

「……好き、でした」

「じゃあ、過去形にするのはまだ早い」

「でも……」

「俺が治す」

 

 言い切った。

 

 正直、自信満々ではなかった。

 怖い。

 痛いのは嫌だ。

 失敗するのも嫌だ。

 また血を吐くのも嫌だ。

 

 でも、それ以上に。

 さっき木剣を落とした時のアリスちゃんの顔を、見なかったことにはできなかった。

 

 アリスはしばらく黙っていた。

 そして、ゆっくりと包帯の巻かれた右手を差し出した。

 

「……本当に、嫌になったらやめてください」

「もちろん」

 

 嘘である。

 途中で嫌になっても絶対やめない。

 

 俺はアリスの右手に触れた。

 細い手だった。

 震えていた。

 包帯越しにも、傷の奥に嫌な熱が残っているのが分かる。

 

 俺は地面に魔法陣を描いた。

 自分の血を触媒に使う。

 うわ、ヒーローっぽくない。

 完全に悪役の儀式だ。

 

 でも、やるしかない。

 

「傷に宿る因果よ」

 

 詠唱を始める。

 

 魔法陣が赤黒く光った。

 アリスが息を呑む。

 

「断たれた糸を、我が命脈にて縫い戻せ」

 

 右腕が熱い。

 いや、熱いなんてもんじゃない。

 焼けた鉄を血管に流し込まれているみたいだった。

 

「――〈因果縫合〉」

 

 瞬間。

 

 アリスの右手から黒い靄が噴き出した。

 呪毒だ。

 それが糸のように俺の腕へ絡みつく。

 

「あっ、あああああああああああああ!」

 

 痛い。

 

 右手に短剣を突き立てられたような痛みが走った。

 骨が軋む。

 腱が裂ける。

 指が勝手に曲がり、皮膚が割れ、血が噴き出す。

 

「やめて!」

 

 アリスが叫んだ。

 

「もういいです! やめてください!」

「やめない」

「やめて!」

「やめないって!」

 

 俺は歯を食いしばった。

 

 正義のヒーローが、助けている途中で「痛いので帰ります」とか言えるわけないだろうが。

 そんなの、俺が俺を許せない。

 

 魔法陣の光が強くなる。

 アリスの右手を覆っていた傷跡が、少しずつ薄れていく。

 動かなかった指が、ぴくりと震えた。

 

 代わりに、俺の右手がぐちゃぐちゃになっていく。

 

 痛い。

 痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 でも。

 

「もう少し……!」

 

 最後の黒い靄が、俺の腕へ流れ込んだ。

 

 ブチン、と何かが切れる音がした。

 

 俺はその場に膝をついた。

 仮面の下で血を吐く。

 右手は原型を留めていなかった。

 

 だが、アリスの右手は――。

 

「……動く」

 

 彼女の声が震えた。

 

 アリスは自分の右手を見つめた。

 指を一本ずつ曲げる。

 開く。

 握る。

 木剣を拾う。

 

 今度は、落ちなかった。

 

「動く……動きます……!」

 

「そりゃよかった」

 

 俺は笑おうとした。

 でも、仮面の下から出たのは血の混じった咳だった。

 

「どうして……」

 

 アリスがこちらを見る。

 

「どうして、そこまで……」

 

 またその質問か。

 でも、答えは変わらない。

 

「困ってる奴がいたら助ける」

 

 俺は立ち上がった。

 右手はもう少しずつ再生し始めている。

 不老不死さまさまだ。

 ただし、めちゃくちゃ痛い。

 便利だけど、痛覚オフ機能を付け忘れているのは設計ミスだと思う。

 

「それだけだよ」

 

 アリスは泣いていた。

 

 今度は、声を上げずに。

 ただ静かに涙を流していた。

 

「あの……名前を……」

「あ、そろそろ俺、行かなきゃ」

 

 名前を聞かれるのはまずい。

 正体不明だからこそのヒーローである。

 

「待ってください!」

「じゃあね、アリスちゃん。剣、頑張って」

 

 俺は背を向け、全力で逃げ出した。

 

 颯爽と去るつもりだった。

 だが、右手の再生途中でバランスを崩し、途中で一回転んだ。

 めちゃくちゃ痛かった。

 それでも何とか起き上がり、闇の中へ走る。

 

 背後で、アリスの声が聞こえた。

 

「絶対に……」

 

 その声は、小さかった。

 でも、妙にはっきり耳に残った。

 

「絶対に、見つけますから」

 

 俺はその言葉を聞きながら、少しだけ嬉しくなった。

 

 感謝されている。

 多分。

 きっと。

 おそらく。

 

「ふふ……また一歩、正義のヒーローに近づいてしまったな……」

 

 そんなことを呟きながら、俺は夜の帝都を走っていく。

 

 その頃、訓練場に残されたアリスが、治った右手で木剣を握りしめ、涙を流しながら何度も何度も同じ言葉を呟いていたことを、俺は知らない。

 

「もう、使わせない……」

 

 月明かりの下。

 彼女の瞳は、熱を帯びていた。

 

「私のために、誰かのために、あんな禁術を使わせない……絶対に見つけて、止めて、守ってみせる……」

 

 木剣を握る右手に、力がこもる。

 

「今度は、私があなたを助けます」

 

 その決意が、俺にとってなかなか厄介な方向へ育っていくことになるなんて、この時の俺はまだ、少しも気づいていなかった。

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