才禍の少年と風精の少女   作:長夜月

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 ベルのこの世界での強さ

アルフィア、ザルド>>オッタル、レオン>ベル>フィン、リヴェリア、ガレス、アイズ(エアリエル使用時)って感じかな?多分。


Story(ストーリー)3 今すぐ本拠に帰りたいベル・クラネル(アイウェントトゥゴーホームライトナウ)

 はぁ〜、なんで僕は毎度毎度面倒に巻き込まれるんだ。多分これは僕のせいでは無い!!何故なら僕には『幸運』の発展アビリティがあるからだ!!それを持ってすればこんな窮地、窮地にすらならない。

 

「ロ…ロキ…、気が付かれてしまったか…」

 

「何やドチビ〜、何してんのや?」

 

「ロキ、控えてくれ。今は彼と話がしたい。良いだろうか?そこの少年」

 

「あ…はい…、分かりました(これがカリスマか!?この有無を言わさない圧倒的カリスマ、僕も欲しい!!)」

 

『無理じゃ諦めろ、お主に出来るのは圧倒的力で場を制するだけじゃ、ほら見てみぃ、酒場の有り様を』

 

 そこには笑いを浮かべる者など一人もおらず、そこにいた全ての人がベルに恐怖の念を抱く。それを察したベルも「流石に福音拳骨(ゴスペルパンチ)はやり過ぎたか?」と心の中で僅かに反省し…する努力をしていた。

 

「済まない少年、君の名前を聞かせてもらってもいいかな?」

 

「はい…えっと、ベルです、ベル・クラネルです」

 

「ありがとう、君はそこの神…、申し訳ない、貴方の真名を教えて頂きたい」

 

「んあ?!僕はヘスティア、炉の女神ヘスティアだ」

 

「ありがとう神ヘスティア、それでは君はあの神ヘスティアの眷属…という事で良いのかな?」

 

「えっと…、そうですね、そうなりますね」

 

「え?嘘…、ベルの冒険者カードには違うのが…」

 

 アイズが心底面食らった顔をする。それに対してベルは「あ~、そう言えばそうか、まあお義母さん達が来たらどうせバレるし、知られても一ヶ月の差しかないしいっか」と思いそのアイズの困惑の声に答える。

 

「はい、そうですね。僕は訳あって前の派閥からは半脱退状態なんです、なので()()神様…ヘスティア様の眷属になりますね」

 

「そうか、ベル・クラネル、差し支えなければ前の所属派閥を教えてもらえるかい?済まない、詮索は良くないと分かっているんだがね、それでも先程の動きや魔法を見てしまうとね…少し気になるんだ」

 

「あ…、はい…(そうかそう言えば言ってたわお義母さんが!!!「あの年増とパルゥムのガキとドワーフの爺に昔一度洗礼をくれてやった」ってさぁ~、じゃあさっきの福音拳骨(ゴスペルパンチ)で大方バレちゃった感じかな?)分かりました、僕の所属派閥は…」

 

 そこでベルは一呼吸挟む、そして今まで隠してきたベルの中にある内包された力を解放して、ベルは言う。

 

「僕の所属派閥(ファミリア)はゼウス・ファミリア、かつてオラリオ最強に君臨した派閥ですよ」

 

「「「「――――――んな?!」」」」

 

 三首領と一柱の神、ロキが驚愕の声を上げる。

 

「ロキ…ちなみに彼は…」

 

「嘘は言っとらん、真実や…!!!」

 

「えぇっと…何か不味いことでも…(お義母さん達が生きてること?それとも僕がお祖父ちゃんのファミリアに所属してること?ど〜っちだ)」

 

 うん、どっちもである。それを聞いたフィン、リヴェリア、ガレス、ロキは眉間にシワを寄せ、唸るように声を上げる。

 

「ちなみに…、君に技や駆け引き等を教えたのは…?」

 

「はい!()()()()()お義母さんと()()()叔父さんです!!!」

 

「ロキ…これは…?」

 

「嘘や…ないで…」

 

 その一言に一気にその場が凍り付く。フィンとロキは事の重大さに目を細め、リヴェリアはかつての苦い記憶を思い出して眉間にシワを寄せ、ガレスは辛酸を舐めた日々を思い出して目を閉じ眉間にシワを寄せる。

 それに対してベルは少し申し訳なさそうに言う。

 

「えっと〜、それで何か僕に用ですか…?」 

 

「あ!?あ…あぁ、済まないね。今回はこちらの者が不手際を働き、そしてあまつさえそれを酒の肴にしてしまい申し訳なかった、謝罪を受け取って貰えるだろうか」

 

「…はい、それは良いですけど…、と言うか僕も少しやり過ぎましたしね、すみませんでした」

 

「いや…ありがとう。今回の件はこちらも重く受け止めている、済まないが少し残って貰えないだろうか?」

 

「えっと……」

 

 ベルはヘスティアに一瞥、ヘスティアは頭を縦に振りながらベルに許可を出す。それを見てベルは少し残念そうにフィンの方を見ながら言う。

 

「はい、大丈夫みたいです」

 

「済まない、神ヘスティアもありがとう」

 

 フィンはヘスティアに深々と頭を下げる、それに対してヘスティアは優しく言う。

 

「いいや、ベル君が決めたんだからね、僕はそれでいいよ」

 

「すみません神様、迷惑を掛けてしまって」

 

「なぁに、気にしてないよ。そもそも君はあまり手がかからない子だからね、あんまり気にしなくていいよ」

 

 ベルはフィンの方を向き直り、改めて話を聞く体制へと移る。隣で何故かアイズが聞こうとしていたが…。

 

「それではベル・クラネル、改めて申し訳なかった、今回はウチのファミリアの者が失態を働いてしまい、そしてあまつさえその尻拭いをしてくれた相手に、あの様な罵倒をしてしまったこと、この場を借りて深く謝罪させて貰いたい」

 

 フィンが深々と頭を下げる、それに続くように主神であるロキと副団長のリヴェリア、そしてガレスが頭を下げる。それを見た他の団員は呆気にとられていた。

 それを見たベルは少し困りながらも言葉を紡ぐ。

 

「大丈夫ですよ…、顔を上げてください。それに僕も少し感情的になり過ぎてしまって…、お二人の事を悪く言ってしまい申し訳ありませんでした」

 

 四人が頭を上げるのと同時に今度はベルが深く頭を下げる。

 

「頭を上げてくれベル・クラネル、そもそもこちらが止めなければならなかった事だ、それをしなかった僕等に非があるのだから」

 

「そう…ですか…(つうかなんで当たり前に隣にアイズさんが居るの?ってうかそれに対してあの子…レフィーヤさんがすっごく睨んでる…、トホホ…そう言えばレオンさんから言伝があるんだった、それを伝えないと)」

 

「では、次の話に移りたいんだが…アイズ、君は何をしてるんだい?」

 

 ようやく突っ込んだ〜!!!!!待ってましたよフィンさん!!

 

「だって…、私もベルと話したい事がある…から?」

 

(ん…?なんで最後疑問形なの?)

 

 アイズは少し悩みながらもフィンに言う。それを聞いたフィンは少し眉間にシワを寄せるが、注意しても多分どかない事を悟るとベルに許可を取る。

 

「済まないベル・クラネル、アイズの同席を許してもよいだろうか?」

 

「…良いですよ!それにフルネームじゃなくて良いですよ。気軽に『ベル』って呼んでくれて良いので」

 

「あぁ…済まない、ありがとう()()

 

「はい!」

 

 そこからはフィンさんとロキ様とリヴェリアさんの三人が話し合い、そして明日ロキ・ファミリアにてその結果を伝える事となった。

 少しベルはそれに対して眉を細めるがすぐに引っ込める、それに対してアイズが機敏に反応した。

 

「どうしたの…?ベル、何か嫌なことでも…あるの?」

 

「いや~…、それが〜(言えない、門前払いを喰らったなんて…、言わんとこ)そちらの本拠ってどんなとこなのかな?と思いまして…」

 

「知らないの…?」

 

「いえ、その…内装についてですよ!!(ッあ〜、僕頑張った〜、ヴァレンシュタインさんがちょっと鈍感で助かったーーー!!!!)」

 

「そうなの…?凄く綺麗だから…ベルもきっと気に入るよ」

 

「そうなんですか?!それじゃあ楽しみにしていますね!!」

 

 そして僕は神様と共に本拠へと帰る、最後にロキ・ファミリアを見た時、なんかベート?さんが引っ張られてるのを見たけど…大丈夫かな?まあ明日になれば分かるっしょ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

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「それにしても…、今回は凄い目に遭ったね」

 

「そうですね…、僕は暫く問題ごとはお腹いっぱいですよ」

 

 ベルとヘスティアは本拠のソファーに腰を掛けて心底疲れた表情をする。

 

「済まないベル君、僕はついて行くことは出来ない、ちょっとロキとはあまり会いたくないからね」

 

「あ…はい!分かりました、じゃあ僕だけで行きますね」

 

「うん、済まないね」

 

「いえ、それではお休みなさい」

 

「…あ?!そう言えばベル君は、どんな獲物を使ってるだい?」

 

「はい…?なんですか…、僕は長剣をメインに使ってますね、でも僕のは片刃の物ですけどね」

 

「そうか…、分かったよありがとう。それじゃお休みベル君」

 

「はい…、お休みなさい神様」

 

 ヘスティアはベットへ、ベルはソファーで寝る。そして外はだんだんと静かになっていき、ベル達の本拠も静まりかっていった。

 

 

 

 

 

 

「ホンマにあの子は…ゼウスん所の子なんやろか?少しウチには想像出来ひんわ、だってあの【静寂(せいじゃく)】が育てた子やぞ?確かに何処となく面影はあったけど、それでもあれはちょっと似てなさすぎやろ」

 

「あぁ、だが今回は彼のそんな優しさに救われたということだ、あれがなければきっともっと厄介な事になっていただろうからね」

 

「そうやなー、それにしても…なんでドチビなんや?あの子なら選び放題やろ?」

 

「さあ…?ゼウス・ファミリアは変わり者が多かったからね、僕も彼…ベルの真意は分からないね」

 

「そうか〜、にしてもベートはまだ起きんのか?リヴェリア〜」

 

「そうだな、あの子…ベル・クラネルの魔法で一時的に気絶しているだけだが…あれは相当脳にダメージが入っているだろうな、だからもう数時間は起きんだろうな」

 

「そっか…、そりゃあまぁ…ベートが悪いしな〜」

 

 フィンとリヴェリアは黙って頷く、止められなかった自分達にも非があるが、一番悪いのはベートだろう、それは全員の意見だった。

 等しく雑魚を見下すベートは、決して踏んではならない獅子の尾を踏んでしまったのだ、今回はこの程度たが恐らく次はない、それにフィン達は直感的に感じていた。

 

(それに…、ベルの最後にとどめを刺そうとしたときの、あの親指の疼きは…一体)

 

 まるで攣ったとすら誤認できるほどの疼きに、フィンは今までで一番焦っていた。

 

 そんな彼等の悩みはどこ吹く風、アイズはベルと別れてからずっとベルの事を考えていた。

 

(あの子…ベルは一体何者なんだろう…?フィン達が驚いてたって事は…ベルは凄い子なのかな?でもあの時の一撃は、私は見えなかった…)

 

「にしても凄かったね〜、あの子…ベルだっけ?」

 

「もう忘れたの馬鹿ティオナ、まあ確かにあれは私も見えなかったわ、悔しい話だけど」

 

「うんうん、レフィーヤはどう思う?」

 

「私はあのヒューマンが許せません!!リヴェリア様を罵倒なんて…なんて畏れ多い!!!」

 

「アハハ…、レフィーヤは相変わらずだね」

 

 レフィーヤの言葉にティオナは苦笑いをする。止めなかった私達にも責任はある、そしてそれを一番糾弾されるのはその組織の最高責任者た。それがフィンであり、その二番手であるリヴェリアが糾弾されるのは尤も事、それを理解しているからこそレフィーヤも怒りを爆発…はさせることは無かった。

 ティオナはレフィーヤの方から視線を移してアイズの方を向く。

 

「アイズは…どう思ったの…?」

 

「あの子は…なんか懐かし風を感じた…、だからもう一度会った確かめたい…かな?」

 

「そうなんだ!!それじゃあ明日が楽しみだねアイズ!!あの子は英雄譚とか好きかな〜?」

 

「んな?!アイズさん!!それはどういう意味ですか?まさかあの礼儀知らずのヒューマンに…その…懸想を…」

 

「け…そう…?何言ってるのレフィーヤ?」

 

「流石エルフ、やっぱりあんたもムッツリなのね、レフィーヤ」

 

「ち…違いますよティオネさ〜ん!!」

 

 

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「えっ…と、これは持って行かないとな」

 

「何をしてるんだい?」

 

 ベルは机の上に荷物を広げていた、一通の手紙に袋に入れられた菓子折り、紅茶の茶葉等など。

 それを見てヘスティアはベルに問う。

 

「随分と大荷物だね、そんなに居るのかい?」

 

「菓子折りは必要ですしね、紅茶は僕も神様も飲みませんし…お義母さんが飲みますけど、お義母さんはどうせ自分で持ってきますし…そもそもこれはお祖父ちゃんに「謝罪する場合はこれを持ってけ」って言われて渡されたものなので、まぁ今回ぐらいしか出番ないと思うので…って事で」

 

「じゃあその手紙は…?」

 

「これは僕の知己の方から、ロキ・ファミリアに所属している人宛の物なんです」

 

「へぇ〜、それでその子は見つかったのかい?」

 

「はい、昨日僕に叱責してきたあの山吹色のポニーテールのエルフの人だと思うんですけど」

 

「あの子…かい?あの子は随分とハイエルフ君を崇拝しているみたいだったけど…、まあ程々にね」

 

「わかりましたよ、神様」

 

「うん、じゃあ行ってらっしゃいます」

 

「はい、行ってきます」

 

 ベルは本拠を後にした、そしてまだ朝日が出たばかりの頃、都市のメインストリートを一人で歩き、道なりに沿って歩いていく。するとやがて目の前に大きな館が、『黄昏の館』が現れる、それを見てベルは一言。

 

「来たくなかった…門前払いされたらどうしよう」

 

 そんな事を考えながらもベルは前に進む、すると館の門の前には前見たぞ?と言う感じでベルを見つめる二人の門番がいた。

 

「おい!!そこの者、また性懲りもなく来たのか?」

 

「帰れ!!今日は大事な客人が来るのだ!!貴様などに構っている暇など無いのだ」

 

「え…っと…(アカン、しばき回したい。いいんだな?お前ら門番程度福音拳骨(ゴスペルパンチ)で一瞬であの世行きだからな?)…えぇ〜…」

 

 正直声が出ないといった感じだった。客人が来る、つまり話は通っているということ、その上での門前払い、ベルは正直憤っていた。

 だがそんなことにも気づくことなく門番の二人は言葉を続ける。

 

「それに何だそれ?まさか菓子折りで気に入られようってか?随分と必死だな」

 

「ハッ!!それは随分と偉いこったな〜、でもここはお前には相応しくない、とっとと失せろ」

 

「え…えっと〜(うん、ジュピター、僕こいつらしばくから少し力貸してくれない?)」

 

『お主だけでも既にオーバーキルなのに、儂まで追ったら奴ら骨すら残らんぞ?』

 

(うん、存在自体を滅却してやる、取り敢えずアリアさんの風でこいつらを天まで飛ばして、その後ジュピターの(イカズチ)で骨すら残らずに灰に帰してやる)

 

『辞めい、流石にそれは小奴らが可哀想じゃわい。奴らとて悪気はない、ただ職務を果たしているだけだ』

 

(うん…ん?僕客人、彼奴等は門番のクセに客人を『ご〜ほ〜む』させて来る、どう考えても職務放棄だろ!!)

 

『そうじゃの、まあ取り敢えず帰るか?また時間を変えれば良いんじゃないか?昼間であれば昨日あの場に居た者の一人や二人ぐらい居るじゃろう』

 

(う〜ん、そうするかな〜、んじゃまあ出直すか)

 

「おい!!いつまで居るんだ!!とっとと失せろ」

 

「…はい、わかりました」

 

 うん、絶対に殺す!!と言う思いを新たにベルはゆっくりと、そして優雅に敗走する。

 

(う〜ん、どうしようかね〜、取り敢えずヴェルフの所にでも行って剣の出来を見に行こうな〜)

 

 

「待って!!!」

 

 ベルがゆっくりと黄昏の館を後にしようとした所でベルに制止の声がかかる、それにベルは「待ってましたー!!」と言わんばかりにそちらを振り向く。

 そこには金髪金眼の少女、アイズ・ヴァレンシュタインが居た。二人の門番は瞠目、何が起こったのかと言わんばかりに目を見開く、アイズの後ろから二人のアマゾネスが現れ、門番の二人を睨みつける。

 

「ベル…、だよね?」

 

「ヴァレンシュタインさん…。良かった〜、このまま帰ろうかと思いましたよ〜(うん、門番の二人は命拾いしたな、ヴァレンシュタインさんが来なきゃお前ら明日は地面の中だったからな?まあ埋める骨すら残さねぇけど)」

 

「うん…ごめんね、すぐに案内するから」

 

「はい!!ありがとうございます」

 

 そしてアイズはベルの手を引いて館へと案内、その一部始終を見ていた門番はポツンと立ち尽くす。そんな彼らにアマゾネスの姉妹は一言。

 

「後で団長からお話があると思うから」

 

「覚悟しておいてね」

 

 その二人の言葉に門番は身体をビクつかせる、やがて彼こそがその客人である事を遅れながらに認識、そして自分らが犯した罪の大きさを知り、顔が青ざめる。

 

 館へと案内され、ベルはアイズの後をついて行く。

 

「でもよく気づきましたね」

 

「うん…、朝の訓練をしようとしたら…、君が門の前に居るのを見て、それで…話しかけに行こうと思ったら、何故か帰ろうとしてて…それで慌てて声をかけたの」

 

 ヴァレンシュタインさんありがとう!!!と内心叫びながらもベルはアイズの後をついて行き館の中へと入る。そこには様々な絵画や装飾が施されており、中々に豪勢な作りとなっていた。

 

「どう…、気に入った?」

 

「はい!!凄く綺麗です!!(凄く綺麗ではあるんだけど…、正直僕はあんまり好きじゃないな〜、煌びやかで目がチカチカするし、何よりなんか雑音が五月蝿いし…、お義母さんが来たらもう装飾品が次々に破壊される未来が………あ…やめよ、考えるの)」

 

「それは良かった…。ごめんね、私達のファミリアの人がベルに酷い事を言って…」

 

「いえ!!大丈夫ですよ!!(ヴァレンシュタインさんが来なかったらマジで灰に帰してたけどな)」

 

 アイズがベルに謝罪し、ベルはそれを受け取る。そうして中を歩くと突然二人の後ろから元気な声がかかる。

 

「いや~、ごめんね!!何も無かったかな?」

 

「ごめんなさいね、ウチの者が粗相をして。後で団長達に話を通して貰ってしっかりと処罰は下すから」

 

 そしてベルとアイズの後ろから先程のアマゾネスの姉妹が現れる。

 

「あ!この二人はティオナとティオネって言うの」

 

「よろしくね、えっとベル君?」

 

「よろしくね」

 

 ティオナとティオネがベルと挨拶を交わし、二人はそのまま先に執務室へと向かった。

 それに続くようにベルはアイズの後をついて歩く。その道中、凄まじい剣幕でベルを見つめる妖精が一人…、ベルは知らんぷりしながらアイズの後をついて行く。

 

「フィン、ベルが来たよ」

 

「うん、入っていいよ」

 

 アイズが扉の前でノックを行い声を発する、すると中から声がして、アイズとベルは中へと入る。

 

「本当に済まないね、門番には後で重い懲罰を下す、今回はそれで許して貰えないだろうか」

 

「はい?僕は中にはいれたのでそれで良いんですよ!!それにもう門前払いは二度目ですしね〜」

 

 その言葉にフィンとロキは瞠目、リヴェリアは手で顔を覆い、ガレスは心底呆れた様に外を…門の方を見る。

 

「ベル、詳細を聞かせてもらえないだろうか?」

 

「えっと…、昨日も偶々ここを訪れた時に…、あの門番の方に門前払いを喰らって…それで〜って感じですね」

 

「はぁ〜、ロキ、昨日訪問者が居たという知らせは?」

 

「無いな、一つも来てへんで」

 

「そうか…、分かった、彼らには追って処罰を下すとしよう、それで良いだろうか?」

 

「はい、大丈夫ですけど…(そもそもここに入る気は無かったし…別に気にしてないんだけどな〜)」

 

 それからベルはフィンとロキとリヴェリアの三人と話し合うためにその場に残り、アイズとティオナとティオネはガレスに連れられて外へと向かう。

 そして最初に口を開いたのはベルだった。

 

「あ!そうそう、菓子折りを持ってきたので、どうぞ食べて下さい!!」

 

「えあ!?少年、なんでウチらが謝らなアカンのに菓子折りなんて持ってきたんや?」

 

「はい?だって僕も謝ることがありますし…、それに会いたい人も居るので…」

 

「ほう…、会いたい人と言うのは?」

 

「えっと…レフィーヤ…さん?って人ですね」

 

 その言葉にリヴェリアは眉を引き吊り、フィンとロキは少し苦い顔をする。

 

「済まないベル・クラネル、レフィーヤとはどういう関係なんだ?」

 

「ベルで良いですよ、そうですね…実際に会ったことはないですけど…その、レオンさんから彼女宛に手紙と言伝を預かっていて…、もし会ったら伝えてくれと言われたので」

 

「ほう、自分まさか学区の生徒か?」

 

「いえ、僕は違いますよ、でもよくお義母さん達に連れられて一緒に『訪竜問題』を片付けていたので…、それで良く会ってましたね」

 

「へぇ〜、そうなんか…。あぁごめんな、話が逸れたわ!!」

 

「それでベル、今回の謝罪としてこちらからはそれ相応の金銭と、そちらの派閥への支援を約束したいと思っている、どうだろうか?」

 

「えっと…、協力関係…ってことですかね?」

 

「まあ表沙汰はそうやろな、まあ自分らはまだ派閥としては新興派閥やし、それに自分の強さは異常やしな、それを加味するとこれがそちらにとって一番都合が良いと判断したんだか…どうだろうか?」

 

 フィンさん達の意見は要するに、『君達はまだ新興派閥、なのにいきなり君のような実力の持ち主が現れた、昨日の動きを見るに恐らくレベルは5か6だろう、そんな実力者がオラリオ外から突然現れたとなればいざこざはあるだろう、それらを効率良く排除するには、僕等の後ろ盾がある方が何かと便利だろう?』と言う事。その言葉の真意には恐らく僕の力を知りたい、もしくは協力関係を結ぶ事で僕に助けを求める場合があった時にすぐに力を借りれるようにしたい…と言う事なのだろうか?まあ僕はなんでも良いんだけどね。

 

(それに…まあ懇意にさせてもらうのは良いこと?だし、まあそんなに頼ることはないと…信じたいな)

 

「どうだろうか?こんな感じなのだが」

 

「はい、僕はそれで良いです、まあ懇意にさせてもらう事でこっちにもそちらにもメリットがありますしね〜、これが一番いい感じで丸く収まるんじゃないですかね(ようやく帰れる、早く帰って寝たい)」

 

「ありがとうベル、それではロキ…ロキ?」

 

「んあ?!ごめんごめん、このお菓子が美味しくてな〜、なあ少年、これどこで買ったんや?」

 

「はい?それは僕が作ったんですよ、叔父さんに教えてもらったんです、(僕甘い物苦手だから作るのに滅茶苦茶難儀したのは黙っておこう、それにしてもお義母さん以外に振る舞うのは初めてだな〜、お義母さんと叔父さんに自慢しよ)気に入って貰って良かったです」

 

「えぇ!!そうなんか、自分随分と器用なんやな〜、にしても美味いわ〜、それに甘くて美味しいなぁ、こっちの紅茶の茶葉も美味いんか?」

 

「僕は…あんまり趣向品の類は詳しくなくて…、でも多分美味しいですよ、都市でも少しばかりしかないですけど」

 

「へぇ〜、レア物っちゅうわけか?」

 

「う〜ん、そういう訳ではなくてですね〜、そもそも作ってるのが僕のお祖父ちゃんだけなんで、だからまずまずの絶対量が少ないんですよね」

 

「へぇ〜、そう言えば自分の祖父って誰なんや?」

 

「はい…?ああ、それは大神ゼウスですよ、まああれを神と崇めるのは少し…気が引けますけどね」

 

 ロキは改めて昨日のやり取りを思い出してハッとする。お義母さんと言うのはアルフィアの事であり、であれば叔父さんと言うのは恐らくザルドの事。それを思い出してロキは眉を細める。

 

「ベル、昨日の件だがベートからの謝罪はまた今度でも良いだろうか?今彼は凄まじく機嫌が…悪いと言う訳ではないが凄く落ち込んでいてね」

 

「いえ、そもそも僕があの時ヴァレンシュタインさんの前から逃げなければ良かっただけですし、それに僕と言うよりかはヴァレンシュタインさんに謝ったほうが…、いや既にあれは手遅れですね、あの告白紛いなあれは凄かった…」

 

「ごめんな少年、ベートはその件でかなり落ち込んでるんや、ホンマに済まんな」

 

「いえ、それは気にしてませんので」

 

「そうか…ありがとうベル、ではもう一つの話に移ろうか、入って来てくれガレス」

 

 フィンがそう言うと、外からはガレスと…先程の門番の二人がおり、ベルを見るなり肩をビクつかせていた。

 それを見たベルは少し眉を細めるが、すぐに平静を装う。

 

「ベル、彼等の処遇について何か意見なあるかな?」

 

「いえ、別に僕は…、まあ彼等もこの館の安全を守ろうとしただけですしね」

 

「そうか、では君達に僕から沙汰を下そう、君達には神の恩恵(ファルナ)を剥奪した上でロキ・ファミリアからの強制脱退を命じる、今後ここに足を踏み入れることも当然禁ずる。いいね?」

 

 

 そうして門番の二人は顔を青ざめさせて、最後は半泣きになりながらも執務室を後にした。

 僕は今リヴェリアさんに連れられてレフィーヤ…さん?の居る所に案内してもらっている。当然手紙の件で彼女を会わなければならないのだが、リヴェリアさん曰く「相当君に対して逆恨みをしているのであまり会わないほうがいい」と言われてしまったので、あまり話す事はないだろうね。

 

「レオンさんからの手紙を渡したらすぐに帰ろうと思ってるので大丈夫ですよ」

 

「済まない、客人に対して気を使わせてしまって…」

 

 リヴェリアの謝罪にベルは苦笑しながらも後をついていく。そしてリヴェリアに案内され、ベルはロキ・ファミリアの居る食堂へと赴く。

 

「あ!!ベル…お話は終わったの?」

 

「はい、ヴァレンシュタインさんが居なかったら今頃僕は帰ってましたよ…アハハッ」

 

 ベルは少し乾いた笑いを上げながら辺りを見回す、そして目的の山吹色の髪のエルフを見つけてそちらを見る。レフィーヤ自身は「え?私?!」みたいな顔をしてベルを見つめた。

 

「あ!貴方がレフィーヤさんですよね?レオンさんから手紙を預かってたんですよ」

 

「え…?レオンって…レオン・ヴァーデンベルク先生の事ですか…?」

 

「はい!これがその手紙です」

 

 ベルはそう言ってレフィーヤに手紙を渡す、レフィーヤはそれを見て少し眉を細めるがすぐに中を見てレオンの物であることを確信しベルに礼を言う。

 

「ありがとうございます…えっと…ベルさん…?でいいですか?」

 

「はい!別に何でもいいです、それじゃあ僕は帰りますね」

 

「え?!ベル…帰っちゃうの…?」

 

「え…えぇっと…ん?(え?何か用事ってあったけ?もう僕は帰って寝たいんだけど…、今日は朝早くに起きて苦手な甘い物を作ってたからかなり疲れたんだけどな…)何か他にようでもありましたか?ヴァレンシュタインさん」

 

「えっと…その〜、お話がしたい…かも?」

 

 何で疑問形なの?と言う顔でアイズを見つめていたベルも、次第にあ、これは逃げられんと言う事を直感的に感じた為その場に留まることを決意する。

 

「ねぇレフィーヤ!!その手紙にはなんて書いてあったの?」

 

「えあ?!えっと…こんな感じですね」

 

 ティオナの声にレフィーヤは素っ頓狂な声で答えながらも手に持っていた手紙を見せる。

 

 

□□□□□

 私の自慢の生徒 レフィーヤ・ウィリディスへ

 

 これを見ているという事はベルから手紙を受けったのだろう、彼と私は旧知の仲でね、そんな彼がオラリオに行くということを聞いて今回君に文を出したと言う事だ。

 

 君の活躍を今も私は海の上から見ているよ、これからも邁進していってくれ、バルドル様も君の活躍を嬉しく思っているようだからね。

 それでは今回は短い手紙ではあったがこれで終わりにしようと思う、近い内にオラリオに用が出来る、その時にまた会おう。   

 

 レオン・ヴァーデンベルクより

□□□□□

 

「へぇ〜、レオンさんこんな事書いてたんですね…、野暮用って…また面倒事じゃなきゃいいんですが…」

 

「えっと…失礼ですがベルさんとレオン先生は一体どういう仲なんですか?」

 

「はい?あぁ…レオンさんとは良く一緒に『訪竜問題』を片付けてたんですよね〜、でもレオンさんは学区の教師でもありますから、中々都合が合わなくて、だから僕が偶に竜を狩ったり、仲良くお義母さんにしばき回されたりしましたね…お陰で四度の偉業を成してしまいましたよ…トホホ」

 

 ベルはアルフィア達との特訓の末であったり、レベル3から5までは竜狩りが偉業となっている。

 それを聞いたレフィーヤは目を見開いてベルの実力を知る、それを聞いていたアイズが少し興味本位でベルに聞く。

 

「ねぇベル、私と戦ってくれない?」

 

「え?ヴァレンシュタインさんと?僕がですか?(早く家に帰りたいのに…)」

 

「うん…後何で私は家名なの…?レフィーヤは名前で呼んでるのに…、私も『アイズ』で良いよ」

 

「え…あぁ…アイズ…さん?で良いですか?」

 

「『アイズ』で良いよ」

 

 ベルはアイズの剣幕に押されて、渋々アイズの事を敬称無しで呼ぶ事となる。

 そしてそのついでにベルはアイズとの立ち会いも快諾…渋々快諾する事となってしまった。

 

(いや!!渋々快諾ってなんだよ!!!)

 

『ベル…諦めるのじゃ、逆に取られのじゃ!!おなごからの誘いだぞ!!それを断るのは良くないぞ!!』

 

(うん…少し黙ってて)

 

 ベルはジュピターの言葉に心底呆れながらもアイズの後をついていき、そして黄昏の館の中庭へと赴く。

 

「済まないベル、アイズが無茶を言ってしまい」

 

「いえ…気にしないで下さい、僕は大丈夫ですので(うん、手加減は慣れてるしね、主にゴブリンを虐めるのに)」

 

「じゃあベル、始めようか、ベルはその剣で良いの?」

 

「はい、それはそうとアイズの方こそ良いの?その剣…前会った時とは違うようだけど…前はほら!!青の装飾に銀の刀身だったでしょ、随分違うようだけど…」

 

「覚えててくれたんだ…、うん…まあ大丈夫だよ」

 

 以前とは違い、アイズの剣は金の装飾の施された細剣(レイピア)へと変わっていた。

 ベルは「よくあれを折らないで使えるな〜、僕なら力加減を間違えて折っちゃいそうだけど」と考えながらアイズと正対する。

 

 

「気になるかい?リヴェリア」

 

「気にならない方が可笑しい、そうだろ?フィン」

 

「そうだね、彼等もそれが気になるようだ」

 

 そこにはロキ・ファミリアの団員の殆どが集まっており、それは当然ベルとアイズの戦いを見るためだろう。

 当然、その場にいた団員の殆どがアイズの勝利を確信していたが、フィンやリヴェリア達第一級冒険者はそうでは無かった。

 

「アイズが…勝てると思うか?」

 

「う〜ん、厳しいだろうね。まず速度では確実に負けている、あれは僕でも厳しいね、その上恐らく技でも負けている。あのアルフィアやザルドから直々に稽古を付けられた、僕的にはアイズの勝ちはあんまり考えられないかな」

 

「そうだな、私も同じ意見だ。あの少年…ベルの実力はレベル6(我々)にも届いている。アイズが勝つのはまず難しいだろうな」

 

 フィンとリヴェリアはアイズの負けを確信しながらも二人の立ち会いを見守る。そこにロキが現れ面白そうな顔をしながら二人を見据える。

 

「どうな未知を犯してくれるやろな、あの少年は」

 

 それは期待の眼差しだった、ロキや他の神々にとって退屈は本当にうんざりだった、だがだからこそ目の前の少年に対して期待を抱きざるおえなかった。

 その場に居たアマゾネスの姉妹はどっちが勝つかを予想し、狼人の青年はその立ち会いを2階のバルコニーから見下して「チッ」と舌を鳴らす。

 

 

「ベル…、行くよ」

 

「はい、いつでも」

 

 アイズとベルは正対する。お互いの間には僅か5Mの距離しかなく、これは彼等二人からしてみれば一種で詰められる距離でしかない。そしてアイズは内心ベルの速度を恐れていた。

 

(ベルは速い、私よりも全然…、だからこっちから先に…仕掛けないと!!!!)

 

 そしてアイズは両の足に力を込め、思いっ切り踏み抜く、その威力は地面が抉れるほどであり、既にレベル4以下の団員はアイズの姿を捉えられていなかった。

 

 だが、目の前の少年はそれを見て思う。

 

(う〜ん、速いは速いけど…なんか動きが直線的なんだよな〜、まあアイズは絶対に強力な付与魔法(エンチャント)を持ってるだろうね、じゃなきゃこんな戦法成立しないしね)

 

「え…?」

 

 アイズは右手に持っていたレイピアを突き出しベルに高速の刺突をお見舞いする…が、それをベルは左手の人差し指と中指で器用に捕まえて止める。

 

「う〜ん、動きが直線的過ぎて読みやすい。ための動作も長いから大技来るのは誰にでも分かるし…、それに僕からすれば止まって見える…までは行かなくとも遅く見えるしね」

 

「―――ん?!なら、これは!!!」

 

 アイズはベルに掴まれた剣と右脚を軸に左脚を撓らせて鞭ような回し蹴りを繰り出す。その一撃は確かにベルの頭を捉える。

 

「それも…予測出来る範囲内だよ」

 

 ベルはそれを頭を屈めるだけの最小限の動きで躱して避ける。そしてアイズのガラ空きの胴体に掌底を繰り出す。

 

「―――ッッッン!!」

 

 鈍い音が鳴り響く、ベルはまだ一度も剣を鞘から引き出していない…どころかまだ一度も動いていなかった。

 

「アイズ、君は少し自分の力を過信してる…、だからもう少し搦め手を使った方が良いね…で、これで終わり?」

 

 ベルは鞘から純白の刀身を抜き放ちアイズに言い放つ、それを聞いたアイズは自身の魔力に火をつけてその名を呼ぶ。

 

「【目覚めて(テンペスト)】――――――【エアリエル】」

 

「風の…付与魔法(エンチャント)か…、良いものを持ってるね、じゃあ僕も少し本気を出そうかな(一気に強くなったな、あれはランクアップに等しいんじゃないか?)」

 

『じゃろうな、儂を使うか?』

 

(あ?いや、たまには使ってやらなきゃこいつも可哀想だ、それにホコリ被せておくには少し勿体ないからね)

 

 ベルはアイズに向かい剣の刀身を向ける、アイズはそれに対して風を脚に溜めて一気に加速して再び刺突をベルに繰り出す、先刻よりも倍は速い一撃にベルは初めてその場を動く。

 

「うん、やっぱりその状態の()()は脅威だね、じゃあ僕も行こうか―――【ファイアボル卜】!!」

 

 詠唱破棄の五条の炎雷がアイズに向かった一直線に飛ぶ、それを風でなんとか防御するが、その際に舞ってしまった粉塵でベルの動きを見失う。

 

 それを遠巻きに見ていた都市最強の魔道士はベルの魔法をまで瞠目。

 

「あれは…一体…?詠唱破棄?」

 

「だろうね、でもその分威力はお粗末だ。さて、これが君の底かい?ベル」

 

 フィンは二人の戦闘を見て唇を僅かに綻ばせる、そしてそれは二人だけではなく、アマゾネスの姉妹もそれを見て驚愕の声を上げる。

 

「すごいねあれ!!詠唱してないよ」

 

「えぇ、でもあの威力じゃあアイズの【エアリエル】は突破出来ないわ、それはベルって子分かってるでしょうけどね」

 

 ベルはアイズの居る粉塵の外からアイズの出方を伺う、やがて粉塵が晴れて改めてアイズはベルをその双眸に捉える。

 

「何で…仕掛けなかったの…?」

 

「う〜ん、別に理由は無いですよ。ただ何となくアイズがどんな出方をするのかな?って思ってね。じゃあもう一回行こうか、次はもっと威力を上げるよ」

 

 そう言うとベルの左手に純白の光が収束していき、やがて鈴の音を鳴らしながらベルは左手をアイズに向ける。

 

(なにか…来る!!じゃあそれを突破してカウンターをすれば…一撃を入れられる!!!)

 

「う〜ん、それは駄目だね―――【ファイアボル卜】!!!」

 

「――――――ん!?」

 

 スキル【英雄憧憬(アルゴノゥト)】、その効果は能動的行動に対してのチャージ実行権獲得。僅か5秒のチャージではあったが、それでもレベル5であり、限界を超え続けたベルの魔力を持ってすればその威力は無詠唱で放って良い威力では無かった。更にベルの足元には純白の魔法陣(マジックサークル)が顕現し、更にベルの魔法威力を底上げする。

 

「んな?!【目覚めて(テンペスト)】!!!!」

 

 アイズは更に自身の魔力に火をつけて纏う風の量を上げる、先程は精々矢程の大きさをだった炎雷が、純白の光を纏って巨大化、その大きさは優にアイズを飲み込む程だった。

 

「ゴホ…ゴホッ!!あれは…一体…?!」

 

「まあチャージみたいな物ですよ、僕のこれは二つの属性がありまして、次はこれでいきますよ」

 

 ベルはアイズに習い、自身の魔力に火をつけてその大火の名前を呼んだ。

 

「【炎雷兵装(ファイアボル卜)】!!!」

 

 その魔法の名に呼応するように再び足元に純白の魔法陣(マジックサークル)が顕現し、ベルの身体には炎と(イカズチ)の付与魔法が纏わりつく。

 

「あれは…【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】と同じ魔法…?」

 

「アイズが誰を言ってるかは知らないけど…、僕のこれはそんなに便利なんかじゃないよ」

 

 炎雷兵装(ファイアボル卜)の効果はシンプル、炎を身体中と武器に纏うことで単純に自身の攻撃に炎属性を加える物、そして(イカズチ)は自身の『敏捷』のアビリティに補正がかかるという物、どちらもベルの持つ【風の大精霊(エアリエル)】と【雷霆英刃(ケラウロス)】の劣化版、だがその真価は恐ろしい程の魔力効率、そしてそれら全ての魔法を同時に発動させた時の三重付与魔法(トリプル・エンチャント)による爆発的なまでの戦力アップ。それを使わないにしてもベルの付与魔法はとても強力だった、そして更に強化された速度を持ってさアイズに斬りかかる。

 

「グゥ!?!?―――ッッッゥウ!!!!!!」

 

「ハー…ふぅ~、更に速度を上げますよ」

 

 ベルはアイズと斬り結び、そしてベルは更に加速する、斬る結び加速、再び斬る結び加速、再び斬る結び加速、再び斬る結び加速、再び斬る結び加速、都合六度の加速を経てベルは最高速度へと至る。

 発展アビリティ『連撃』、効果は攻撃をすれば加速、加速すれば攻撃力が上がるという物。理論上加速し続ければ、攻撃し続ければやがて相手の防御力を突破できるということ。

 

「ハアァァァァァアアアアアアア!!!!!!!!」

 

「―――うん。また出たね、アイズの悪い癖が」

 

 三度目の刺突、一度目は距離を詰めるのに、二度目は全力の一撃、そして三度目は追い詰められて出さされた一撃。既に都合三度、ベルはそれを見ていた、冒険者であるベルにとって情報収集は欠かせない物、そしてそれを三度見たのであればそれはもう恐れるに足らず。

 アイズの剣先に自身剣先を合わせてそのまま自身の刀身を回転させての斬り上げ。

 

「え……あ…?」

 

「はい、これでアイズは一度死んだよ」

 

 アイズが気づいた時には自身の右手から自身のレイピアの柄を離していた、斬り上げられたレイピアは弧を描いて地面に落ちる。

 そして瞬きの余裕すら与えられずにアイズの首元に純白の刀身が突き付けられる。

 一度目は完全に見切られ、二度目は全力の一撃を魔法によって阻止、三度目は圧倒的技量を持って完封。

 剣しか握って来ず、剣しか無いアイズが、剣で敗北した、この事実にアイズは酷く瞠目した。

 

「まだ…負けてない」

 

 それでも尚消えない強い意志を見てベルは少し溜め息をつきながらも刀身をアイズから離してアイズのレイピアを拾い上げる。

 刀身をつまみながら、剣先を自身に向けてアイズに渡す。

 

「じゃあ、最後にアイズの全力の一撃をぶつけて来てよ、もしそれで僕が競り負けたら…そうだな…、一つ何でも言う事を聞いてあげるよ」

 

「え…?!良いの…?」

 

「うん、良いよ。だからアイズ、頑張ってね」

 

「うん、分かった。じゃあ本気で行くよ」

 

 アイズは一気に跳躍し後退、十分な助走距離を獲得する、それに対してベルは内心少し考える。

 

(う〜ん、流石に【斬光(ざんこう)】は使えないよな、使ったらここら一帯が吹き飛ぶし。じゃあやっぱり()()でいくか)

 

「行くよ…ベル――――――【目覚めて(テンペスト)】!!!」

 

 それはアイズの持つ唯一の魔法、風の大精霊を彷彿とさせる風を限界まで出力して放つ大技。

 刺突の構えを取り、脚には大量の風を纏い、そして一気にベルに肉薄する。

 

(はや!!さっきの僕ぐらい速い?!)

 

 ベルは一瞬焦り慌てて技を出そうとする。それはアイズと同じ刺突の構え、その場からは動かずに『待ち』の体制。そしてベルは心の中で小さくその魔法を紡ぐ。

 

(【目覚めろ(テンペスト)】―――【エアリエル】)

 

 そしてベルもアイズと同様の風を剣に纏わせてアイズの攻撃対抗する。

 

「【リル・ラファーガ】!!!!!!」 

 

 刀身から膨大な風が溢れ出し、大地を抉りながらベルへと突き進む。それに対してベルも魔法の起動言(スペルキー)を紡いで対抗する。

 

「【風精剣界(ストライク・エア)】!!!!!」

 

 刺突と刺突の衝突、ベルはアイズの刺突に対して剣先を寸分違わずに自身の剣先を合わせて衝突させる。その一撃で二つの風は互いに互いに攻撃しながら突き進む。

 アイズの一点に集約された風がベルの刀身を揺らす、ベルの風の剣界(けんかい)がアイズの刀身を揺らしアイズを僅かに後退させる。

 

 そしてお互いの技がぶつかり合い、互いに削り合いながらもその技の衝突に打ち勝ったのは―――

 

「あ?!やべぇ!!」

 

「え…?」

 

 ―――アイズだった。本来であればベルが普通に押し勝っていたが、ベルが勝つよりも先にその純白の刀身は砕け散ってしまった。

 アイズは突然支えを失い前のめりで倒れる、それを肩に手を回してベルは支える事でなんとか地面との衝突を阻止する。

 砕けた純白の刀身が宙を舞い散っていき、白き祝福を受けながらアイズはベルに抱き寄せられる。

 

「大丈夫…?アイズ」

 

「う…うん、大丈夫…だよ」

 

 僅かにアイズの頬は赤くなっていたが前のめりで倒れた為ベルには見えない。そしてベルそんな事を気にしている暇はなかった。

 

(やべぇ、お義母さんの剣砕けちゃった、また怒られる『だからあれ程買い換えろと言ったのだ』って言われて福音拳骨(ゴスペルパンチ)を喰らう)

 

「これって…どっちの勝ち…?」

 

「え…えっと…(あれ?これってどっちだ?でも刀身が砕けたし、僕の負け…?なのかな)」

 

『大人しく負けを認めておけ、言い訳するのはみっともないぞ……、それに!!!!!このような(おなご)のお願いなら代わりに儂が受けてやろう!!!!』

 

(うん…少し黙れ)

 

「ベル…どうしたの…?」

 

「んあ?!いえ…、僕の()()ですね」

 

 砕けた純白の刀身を見ながらベルは言う、それを聞いたアイズは顔をハァっと明るくさせる。

 

(やった、ベルに勝てた…!!)

 

 アイズの中にいるチビアイズも両手を上げて走り回っていた、だがすぐにアイズは思い出す。

 

(不味い…ベルの剣…砕いちゃった…)

 

 その事実にチビアイズは顔を青ざめさせながらまたしても両手を上げて走り回る。

 

「ベル…ごめん、剣…砕いちゃった」

 

「いいよ、あれは元々買い換える予定だったしね。だから気にしなくていいよ、それにアイズに怪我が無くて良かった(精霊の力で汚れって落とせる…?)」

 

『可能じゃろうな、まあ本来は高等技術なんじゃがお主の技量なら感覚で出来るじゃろうな』

 

「(うん、ありがとう)アイズ、少し目を瞑ってて」

 

「う…うん」

 

 アイズが目を瞑ると、ベルはアイズの頭に手を乗せて静かに何かを唱えると、地面から明るい光が立ち昇り、アイズの身体を包んでいく。

 

(温かい…、これ…好きかも)

 

「こんな感じですね、はい!綺麗になったよアイズ!!」

 

「え…ほんとだ!!」

 

 アイズの身体にあった土煙の汚れなんかが全て綺麗に消えていた。そして消費した精神力(マインド)も僅かに回復した。

 温かい光がやがて宙に霧散していき天へと昇り帰る、それを見上げてベルは静かに感謝する。

 

「ありがとうね、精霊達」

 

 スキル【精霊恩寵(エレメンタル・スピリット)】、その効果の一つは『精霊に好かれやすくなる』という物、精霊から好かれるということは自然から、そして世界から愛されるという事。その力を持って大地から少しづつ力を借りてベルはアイズの身体の汚れを取り除いたのだ。

 

「ベル…誰と話してるの…?」

 

「いや、何でもないよ。ほら、リヴェリアさんが少し怒ってるから早く行ってきな」

 

「んな?!リ…リヴェリアが…怒ってる…ウゥ」

 

 アイズは少し唸りながらもリヴェリアの元へと歩みを進める、そしてリヴェリアの前に着くとすぐさま拳骨を食らっており、アイズは悶絶していた。ベルは内心「まさかリヴェリアさんまでもが福音拳骨(ゴスペルパンチ)の使い手だったとは?!」なんてふざけた事を考えていた。

 

 

 そしてベルはフィンとリヴェリアと少し話をして、ロキ・ファミリアの武器庫から一つ武器を貰った。

 

「これ…かな?多分」

 

「それで良いのかい?」

 

「はい!何もなくですけどね」

 

 ベルは武器を頂いてロキ・ファミリアのホームを後にした。最後にアイズに「約束…忘れないでね」と言われでベルはハァと思い出す。最後の一撃での賭けを思い出してベルは内心ヒヤヒヤする。

 そんな一点の曇りだけを残してベルは本拠へと帰還する前、ヴェルフの工房へと足を運んだ…のだが、ベルは響く槌の音を聞いて思い。

 

(この圧倒的なまでの『入って来るなよ』と言わんばかりの気迫、こりゃ帰るか)

 

 そしてベルは大人しく本拠へと足を向けた。





 あんまり戦闘シーンは苦手でしてね、上手く書けたかは分かりませんが、気に入っていただけると嬉しいです!!!

 それではコメントやお気に入り登録をしてくれるの嬉しいです。ついでに評価などしてくれると嬉しいです。

 次回はフィリア祭ですね!!今回は文字数が多くやってしまって申し訳ありません。

 それでは次回までさよなら〜
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