才禍の少年と風精の少女 作:長夜月
「神様遅いな〜」
ベルは廃教会の本拠にてヘスティアを待っていた。その時間は何と四時間、その間暇過ぎて一度は昼寝をするものの、すぐにジュピターからの茶々が入り目を覚まさざるおえなくなる。
(ねぇジュピター、なんか面白い話しして)
『それ、儂もう4回目なんだが?逆にお主が話さんかい!!』
(え〜、話す事…う〜ん…あ?!そう言えばアイズってやっぱりアリアさんの娘…?なのかな)
『あの『風』はお主の物とする同様だった…、つまりそういう事なのだろうな』
(娘を頼むって、そう言えば何をしたら良いんだ?)
『さあ?娶ったらええんじゃね』
(ジュピター…後でしばくよ?)
『嘘じゃよ嘘、それよりもどうする?何かあの
(まあそれもそうだけど…、でも僕らって派閥が違うしね〜、どうしたものか)
義理を通す為にもアイズに協力したいベル、事実上は懇意にさせてもらっては居るものの、神同士の仲は最悪。それを理解しているからこそベルはどうするか悩んでいた。
『まあ何じゃ、それならあの
(は…?
『いや!!お主阿呆か?なんでアルフィアにされた事と同じ事をしようとしておるのだ?』
(え?違うの?)
『今日のあの立ち会いの様に、手加減しながら指導すればいいであろう?』
(う〜ん、まあそれくらいしか僕には出来ないよね〜)
ベルとジュピターは溜め息をつきながら考える。気づけばかなり時間が経ったと思っていたが、その実あまり時間が経っていなかった。そうして改めて溜め息をつきながらベルとジュピターはヘスティアの帰りを待っていた。
すると本拠の玄関から高らかな声が鳴り響く。
「今帰ったよ〜、ベル君!!!」
「おかえりなさい、神様。それで何をしていたんですか?」
「そうそう、それがさぁ〜、ベル君明日ギルドに行けってさ」
「なんでですか?まあ用はあるでいきますけど…何かあったんですか?」
「それがさ〜、昨日ベル君ロキの所の
「ハァ、面倒くさい事になりましたね。まああの『ギルドの豚』に命令されたら普通に無視しますけどね」
「おいおい、それはヤバくないかい?流石にギルドの命令は無視しちゃ駄目だろう?」
「いえ、もしそれで命令を聞いたらお義母さんに「いつからお前はギルドの犬に成り下がった?」とか言われでしばかれるんで…、それに比べたらあのロイマンって人の事を無視したほうがよっぽどマシですよ」
「うへぇ、それは怖いね。僕は君からの話しか聞いていないけど既に君の
「大丈夫です神様、神様が思っている以上に怖いので」
「何も安心出来ないよ!!!!」
ベルとヘスティアは談笑しながらゆっくりと時間を過ごす、そしてベルは気になることがあると言ってヘスティアに話を聞く。
「それで神様、何の支度をしてるんですか?」
「んあ?僕はこれからも少しガネーシャの所の宴に行くんだ!!だから支度をしてるんだよ」
廃教会を本拠に選んだ時、そしてここに荷物を運んだ時、そのどちらでもヘスティアの荷物をあまり見たことがないベルは恐る恐る聞く。
「でも…神様ドレスはあるんですか?」
「いや、ないよ。別に要らないだろう?」
「いやいや、宴に行くのにドレス無しは駄目ですよ」
「大丈夫!!少し恥を忍べは良いだけだしね!!」
「いや…それにそんなに大事なことなんですか?その宴って?」
ヘスティアは肩をビクつかせながら後ろを向く。それに対してベルは「何か隠してる」と言う事実を確信し、ヘスティアを問い詰める。
するとヘスティアが渋々その内容を告白した。
「それは…、君に武器を作って上げたくて…」
「いや!お金はどうするつもりだっんですか?それに僕は今は剣がないですけど、明後日ぐらいになれば剣が出来ますし、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
「それでも…、僕を選んでくれた君にお礼がしたくて…」
「それは、僕が神様を選んだんですから、お礼なんていりませんよ!!」
「そう…かい…?でも…やっぱり何かお礼はしたいよ。君は僕の記念すべき一人目の眷属なんだから」
「それじゃあ……、気が済むまでやって下さい!!でも…、借金は駄目ですよ、それは許しませんからね」
「うん!分かったよ。じゃあ僕は行ってくるね(バレなきゃ大丈夫!!安心たまえベル君、君にピッタリな剣を用意してあげるからね)」
「はい!行ってらっしゃい神様」
ヘスティアは勢い良く本拠を飛びたじ、ベルはそれを見て少し苦笑いをしながらもヘスティアを送り出す。
『あれ?そもそもお主、あのちび女神がドレス持ってないから問い詰めたのでは?』
(あ…やべぇ、何も解決してないのに送り出しちゃったよ)
既にヘスティアはメインストリートを歩いていた、そしてベルはヘスティアを心配しながらも、無事を祈った。
(神様…馬鹿にもされないと良いけど…)
『まああの女神はそんな事を気にする玉ではないだろう』
(はぁ〜、それは少し駄目でしょ、流石にそこは気にしてもらわないと…トホホ)
ベルはヘスティアの事を心配しながらソファーの上で眠りにつく。
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私は…ベルに何をお願いすれば良いんだろう…?やっぱり我儘な事は駄目だよね!!じゃあ何を…。
アイズはベルとの賭けに一様勝ったので、今はその勝利で勝ち取った『何でも一つ言う事を聞く』と言う権利の使い道を探していた。
「ア〜イズ!!どうしたの?そんなに悩んでさぁ~」
「ううん、何でもないよ」
「何でもって……」
ティオナはアイズの顔を見て苦笑、それも当然、アイズは先程からブツブツと言っては顔を百面相させていたのだ。そんなアイズを見たことがないティオナ達は只事でないことは分かっていたのだが、如何せんアイズが何に悩んでいるのかは分からなかった。
「アイズさん…どうしたんでしょうか」
「さあ、まあじゃが丸君をあげたら治るんじゃない?」
「ティオネ…まあ確かにそうかも」
アイズの態度にレフィーヤは心底心配していた、あの白髪の少年 ベルとの一戦からずっとあの感じだったためだ。
「(あの…ベルさんって人は…、レオン先生が認めたな悪い人じゃない…、じゃあアイズさんは何に悩んでるんだろう、いや!!ここは勇気を振り絞るのですレフィーヤ・ウィリディス)あ…あの!!アイズ…明日、お買い物に…皆さんと一緒に行きませんか…?」
「え…レフィーヤ…?まあ明日は何もないから良いけど」
「本当ですか!!やったー」
レフィーヤは子供のように燥いだ、そしてアイズ、そしてティオネとティオナともフィリア祭を周る約束を取り付けたレフィーヤはウハウハな気持ちで寝た。
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フィリア祭前日、都市全体が活気に溢れていた、それもその筈、
そんな中、表向きはただの『
「相変わらず奇天烈な見た目しとるなぁ〜」
ここは【
そしてロキはその建物のなかに入り、そして開口一番喧しい事この上ない象神の男神の叫びを聞く。
「俺がガネーシャだ〜!!!!」
奇天烈な建物の主はそれ以上の奇天烈さを身に纏う馬鹿、それは古代より決まっていた。
この建物の名は『アイアム・ガネーシャ』、なんとも自己主張の激しい名前、そんな阿呆面全開の男神の名はガネーシャ。都市最大派閥の一角であり、
有する眷属数は都市の中でも一、二を争うほどであり、ただ頭数の多いソーマ・ファミリアとは違い、その殆どがレベル2、最低でもレベル1の上位勢が所属している。
そんな彼等がわざわざ神を集めて宴をする理由とは?
そんな事言わずとも分かっている、とでも言わんばかりにロキは建物内の装飾に目をやる。
(にしても豪勢な造りやな〜、ゴブニュんとこもようやるわ〜)
そんな事を考えながら歩いていると、周りからチク、チクと言葉の刃が刺さる。
「あらあらロキちゃん来ちゃったよ〜」
「残念女神登場〜、にしてもやっぱり圧倒的な無乳だよな〜」
「あんな断崖絶壁見たことねぇよ」
「馬鹿!!そこが良いんだろ」
そんな毒を吐く彼
「(はい、全員の顔を覚えたでぇ、後で必ず潰す)にしてもドチビおらんな〜、やっぱりデマやったんか?あのドチビに眷属が出来たっちゅ〜のは」
「やぁ、ロキじゃないか」
当たり見渡し目的の者を探すロキ、そこに現れては親しげな口調で話しかける神が一柱。
「んあ、なんやディオニュソスやんか〜、自分も来とったんか」
「ああ、せっかくの神の宴だ、情報収集は欠かせないからね、それに私の派閥はロキの所ほど巨大ではないし、ましては非常識でもないからね」
「あら〜?ロキじゃない久しぶりねぇ〜」
神ディオニュソス、レベル2の冒険者を複数抱える中堅派閥の一角。
その後ろから大きく実った果実をロキに見せつけるが如く現れたのは神デメテル、野菜や果実など栽培、売り捌く商業系のファミリア。
「おぉうデ…デメテル、自分おったんか…」
「ああ、私と話していたところだ」
「ねぇロキ〜、あの剣姫ちゃんは元気にしてる?たまには会いに来てって伝えて頂戴ねぇ」
圧倒的乳圧にその貧相な身体を後ろに仰け反りながらなんとか正気を保つロキ、そんな事など気にもかけずデメテルは2人に向かって話を振る。
「それにしても豪華な宴よね〜、流石はガネーシャの所よね、おもてなしは豪華だし、オラリオの殆どの神が集まってるしね〜」
「当然だろう、ここで大盤振る舞いをして置かなければ後で困るのはガネーシャの方なのだからね、『当日は間違っても邪魔してくれるなよ』と言うことであろうな」
ディオニュソスは自身の後方に立つ柱に貼られた一枚の紙切れを指差す。
「
「フィリア祭…か、そりゃあ気になるなぁ〜」
「本当かいロキ?!まさか何か企んでいるのかい?」
「はぁ?おいコラ、どういう意味じゃ!!」
「いや、済まない君はこういうのには興味ないと思っていたからさ…、ほら!!君の天界での破天荒っぷりを知っているかさ」
恐ろしい剣幕でロキはディオニュソスを問い詰める、それに対してディオニュソスは必死に弁明する。
「そういう自分はどうなんや?」
「う〜ん、そうだな…多分行かないかな、その日は少し予定があるからね」
「あぁ、そうか……」
そう言いながらロキは近くのスタッフから飲み物を一つもらい口に含む、するとその視線の先には身の丈は小さく、だが身の丈に合わない不釣り合いな乳房を持つ女神の姿が映る。
「ほんじゃウチは行くわ〜!!!お~い!!ファイた〜ん、フレイヤ〜、アストレア〜、ドチビ〜!!!!」
そんな子供じみた声を上げるロキの背を見ながら、一人の男神はニヤリと口角をつり上げる。
「あら…また悪巧み?」
「心外だな、僕がいつ悪巧みをしたって…?」
「だって…、貴方がいつもその顔をする時は、決まって何かが起こるんですもの」
何かを企む男神は、その心の内に天界切ってのトリックスターをも騙すほどの執念と、下界を揺るがす程の悪意をその内に飼っていた。
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「相変わらず奇天烈な見た目をしてるなガネーシャは」
大広間に鎮座する象神の像を前にヘスティアは瞠目、なにせその入り口が股座と言うのもまた奇天烈な見た目だった。
「今回は目的があるから…それを果たしたらさっさと帰ろう」
そしてヘスティアは股座の入り口から入る。
中に入る様々なファミリアの主神がおり、その中に胡桃色の長髪に青色の瞳を持つ端麗な姿の女神が一柱。
「やあアストレア!!そう言えば君は
「あら?ヘスティア!!そうよ〜、少し前に帰ってきてね。それよりも聞いたわよ、貴方の所に新しく入った子、凄く強いんでしょ〜、何でもロキの所の【
「へぇ〜、やっぱりか。それで?今日はアストレアは何をしに来たの?」
「あら?貴方から話しかけてきたのに?まあそうね、私のファミリアの子達は明日からフィリア祭の警備に入るから、それでまあ、今日は来たって感じよ。ヘスティアはなんで来たの?」
「僕は少し用がある神が居てね…それが―――」
「あら?ヘスティアにアストレアじゃない、久しぶりね」
「えぇ、久しぶりヘファイストス」
そこに現れたのは赫色の髪に右目は黒い布で覆われており左目は髪の色と同じ赫色の瞳をした女神。
神ヘファイストスはオラリオ内だけに留まらず世界中にその名を知らしめる鍛冶師系ファミリアの主神である。彼女のファミリアに所属する鍛冶師は全員が生粋の職人気質であり、それらをまとめる彼女の鍛冶師としての技術はかなりのものだ。
そんなヘファイストスを見てヘスティアは目をハァ!!と明るくして話しかける。
「やあヘファイストス!!君に会いたかったんだよ!!」
「何ヘスティア?言っとくけど、もう1ヴァリスだって貸してあげないんだからね!!」
「なんだとヘファイストス!!僕がそんなろくでなしに見えるのかい?」
「貴方…、今までに私にして来た事を忘れたの?」
「ギグ?!そ…それは…」
かつてヘスティアはベルと出会う少し前まではヘファイストス・ファミリアの所に居候していたのだ。最初は天界でも同郷だったヘスティアを住まわせていたが、やがてぐうたらしているヘスティアを見かねて、「これは少しお灸を据える必要があるわね」との事でヘファイストス・ファミリアから追い出したのだ。
そんな前科を持つヘスティアがヘファイストスに対して何かをしようとしている…、警戒するなと言う方が無理という物だ。
「ち…違うよヘファイストス!!お金は必ず払う!!だから…」
「だーめ!!貴方それでなんか私から―――」
「あら?アストレアにヘファイストス、ヘスティアも何をしているのかしら?」
「あれ?フレイヤじゃない、貴方は来ないと思ってたわ」
「そうね、貴方の所はギルドから都市外遠征の強制依頼が出ていたと思うのだけど」
「えぇ、だから明日ここを経つわ、だから最後に貴方たちの方を見に来たのよ」
フレイヤはそう言いながらヘスティアを見つめる。その蛇のような視線にヘスティアは隠す様子もなく言う。
「僕…、君のことは苦手なんだ」
「あら?そうなの、でも私は好きよ。貴方の持つ『悠久の聖火』はとっても素敵よ」
「はぁ〜、もう勘弁してくれ。君以上にキャラの濃い奴が来たら僕は―――」
「お~い!!ファイた〜ん、フレイヤ〜、アストレア〜、ドチビ〜!!!!」
遠くから走り出して、ヘスティア達のいる方へと来る一柱の男神…いや、女神が来た。
それを見てヘスティアは目を細め、眉を細める。
「はぁ〜、面倒な奴が来たよ…トホホ」
「あら、じゃあ私はお暇させてもらいましょうかね」
「え?貴方まだ少ししか来てないじゃない」
「良いのよ、見たいものは見れたしね」
そしてフレイヤは連れのものと共に本拠へと戻る。それを見ながら新たに加わった面倒…ロキの方を見てヘスティアは瞠目する。
「お~い!!!ドチビ、なんで自分がおるんや?まさかその貧相な服を見せつける為に…、偉いこったな〜」
「はぁ?何を言っているんだい?ロキ、君は逆になんだい?その貧相な胸は。自重するのは良いけどそれは余りに女を捨て過ぎじゃあないか?」
「なんやと…ドチビのクセに!!!!」
「なんだと〜!!この男神が!!!」
「「―――――――――キイィィィィイ!!!!!!!!!」」
二人はただならぬ奇声を発しながら掴みかかり、お互いにその頬や耳を引っ張り合う。
それを見てヘファイストスとアストレアは「またか…」と言った風な態度でそれを見守る。
「ハハァ!!絶壁なだけに絶望だなんて馬鹿じゃないの?!あ!!僕今上手いこと言ったねぇ!!」
「全然上手くないわ!!!ボケェェェェェエ!!!!」
ヘスティアはロキの外見を罵倒し、それに対してロキは涙目になりながらも頬をつねり対抗する。
「ヌグググググゥゥゥゥウ!!!!!」
「今回はロリ巨乳が勝つに賭ける」
「俺は無乳が勝つに賭けるは」
「いや、前回は無乳だったからな、今回こそはロリ巨乳だろ!!!」
「私はロリ巨乳に賭けるわ」
「じゃあうちは無乳に賭けるぞ!!」
ロキはヘスティアの身体を揺らし続ける、だがその揺れをもって揺れ動く双丘を前にロキは酷く動揺してしまう。
「は!!今回はここまでにしたるわ!!!!」
「は!!次はその貧相な胸を僕に見せつけてくれるなよ!!この負け犬め!!!」
「うっさいわ!!ボケェェェェェエ!!!!」
ロキは涙を流しながらその場を大人しく敗走する。それを見てヘスティアは唾を吐き捨てながら罵倒する。
「ロキ、本当に変わったわね」
「っていうか小物臭が強くなった気がするよ」
「可愛いものよ、天界の頃は暇過ぎて神々に殺し合いを挑んでいたんだもの」
「まあ、甚だ遺憾だけどね。って言うかフレイヤは?」
「あら?聞いてなかったの?もう帰ったわよ。ねぇアストレア」
「そうよヘスティア、さっき盛大に見送られながら帰ったわ」
「え?!気づかなかった…」
ヘファイストスとアストレアは少し呆れながらもヘスティアを立ち上がらせて言う。
先刻、多くの男神に見送られながらフレイヤはその場を後にしていった、無論ロキとの取っ組み合いをしていたヘスティアはそんな物に気が付く余裕はなかったが。
「ねぇヘスティア、このあと少し飲みに行かない?」
「え!!良いのかいヘファイストス!!僕も君に用があって――」
「この期に及んでまた頼み事ですって?変わったと思ったけどそれは勘違のようね」
「いや…あ…(こ…今度こそ愛想を尽かされるかも知れない、でも…それでも僕は
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「神様…一体どれだけの時間宴に行ってるんだ?」
ヘスティアが神の宴に行ってから随分経った、既に外は朝を越えて昼前となっていた。ベルは冒険者メインストリートを歩いてギルドの方へと向かっていた。
「にしても…随分人が多いな」
フィリア祭…?があるってものあるけど、やっぱりそれじゃないよな。
ベルは一枚の張り紙を見て言う。
「『【
ベルは街を歩きながらも、一つの大きな建物を前に足をとめる。
「着いた…面倒くさい事になりそう…だけど、まあいつかはやらなきゃだったし…」
そうしてベルは渋々
(なんで…かな?笑われてる気がする)
『まあお主の容姿はどう見ても子供じゃからな、仕方なかろう』
(はぁ〜、まあ別にいっか…取り敢えず派閥更新だけでして帰ろう)
ベルは冒険者協会の受付へと赴き、目の前の茶髪でハーフエルフの受付嬢に話しかける。
「あの~、
「はい?あ!すぐに紙を持ってきますね(あら?随分可愛い子だけど…一帯どこに所属していたのかしら?)」
そしてハーフエルフの女性は自身の机から用紙を幾つか持ってベルの元へと戻る。
「私の名前はエイナ・チュールと申します、これから貴方のアドバイザーとならせて頂きます。えっと…都市外からですか?」
「はい、そうです!!(一様そうだよね?まあ都市から追い出されたって点では一様都市外からって事になるし)」
「はい、では
ベルは一枚の冒険者カードをエイナに見せる。それを見てエイナは少しキョトンとする。
「えっと…冒険者カードをお持ちなのですか?でしたら都市内では…」
「あ!!元々はそうですけど、都市外になってしまったんですよ」
ベルは少し濁しながら言う、それを見てエイナは何か訳ありだということを察する。そしてエイナは目の前に出された冒険者カードを見て瞠目する。
「はい、では…確認…を…(え…?見間違いじゃないよね?だって…【
「はい!まあそれは僕が生まれる前に作ったものですけどね。生まれる前にお祖父ちゃん…いや、大神ゼウスが作ってくれた物なんです」
「え…(大神ゼウスってゼウス・ファミリアの主神じゃ?それがこの子の元の主神…、じゃあこの子の一体何者なの?)あの!!失礼ですがレベルを教えて貰えますか?(都市外なら精々レベルは2、どれだけ研鑽を積んでも3が限界の筈!!)」
「はい!レベルは5ですね。なんならステイタスの写しがあるので見せましょうか?」
「え……ええええぇぇぇぇぇ!!!!!!レ…レベル5ゥゥゥゥウ!!!!!」
そのエイナの咆哮がギルド本部内に木霊する。その大声と『レベル5』という言葉にその場にいた全員が目を見開いて声の主を見る。
「おいおい、レベル5って誰がだよ!!」
「んなもんあそこのガキだろ!!」
「はあ?じゃああれが…あのガキがそうだっていうのかよ!?」
「あれが…第一級冒険者…だと…?」
「嘘つけ!!んな
その驚愕の声や、疑念の声がその場に木霊する。そんな中一層動揺するエイナはベルの見せたステイタスの写しを見て更に動揺する。
(なにこれ?!アビリティSSS?!それにここにあるスキル…全部聞いたことがない!?じゃあ全てレアスキル…え?……あ)
エイナは開いた口が塞がらなかった。目の前の少年が既に都市最強クラスの人物である事実と、ステイタスの異常性を前にエイナは瞠目してしまう。
そんな中、エイナの後ろから
彼はベルを見るなり血相を変えて奥へと引っ込んで何がを知らせると、そのままベルはギルド本部の奥へと連れて行かれる。
そこに居たのはギルド長であり、エルフの男性…いや、豚が鎮座していた。
「今回はご足労いただき感謝する、ベル・クラネル。君の話は我らが老神ウラヌス様より聞いている、どうかそこに座りお話して頂けないだろうか?」
「はい…あ?!わかりました(あれ…?なんかこの人…聞いていた人と全然違うぞ?)」
その言動を見て驚いたのはベルだけでは無く、その場にいたエイナやレーメルも同様であり、ここまで言葉を丁寧に…いや、言葉を慎重に選んで、言葉を紡ぐロイマンの姿に彼等は酷く動揺していた。
「(このガキが…、本当ならば一つ言動を間違えるだけでもギルドが…いや、オラリオが滅ぼされかねん!!!)」
そこからはロイマンが兎に角丁寧にベルに接し、気を逆撫でないように細心の注意を払いながらゼウス・ファミリアの現状を聞いた。そしてアルフィアやザルドが生きている事実を知った時、ロイマンは手元にあった薬を一気に飲み干した。その数おおよそ六錠。
ロイマンは胃に大きなダメージをくらないながらもベルと話、そして二時間が経った頃ようやく話は終わる。
そして話終えたロイマンは、少し痩せていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はい!ベル君、これで
「はい!!さようならエイナさん!!」
ベルはエイナに一瞥しその場を後にする。そしてベルはその足でヘファイストス・ファミリアの近くの工房へと赴く。
「ヴェルフ!!武器できた?」
「おう?!ベルじゃねえか、丁度いいところに来たお前の感想を聞かせてくれ!!」
「じゃあ本当に…!!」
「ああ、これがお前の新しい武器だ。第二級武装の
「うん!!こんなすごいの僕、握ったことないよ!!」
ヴェルフはベルに黒い鞘と柄が特徴の片手剣を渡す。ベルがその刀身を抜き放つと、そこには深紅の刀身が露わになる。
「そうだな…、名前は…」
「【
ベルは静かに呟く、それを聞いたヴェルフは顔を綻ばせながらベルに言う。
「あぁ!!お前の武器だ、お前が気に入った名前にすれば良い!!そうだ、ベル!!この後少し良いか?」
「う…うん、空いてるよ!!」
「なら少し付き合ってくれ、お前をヘファイストス様に紹介したいんだ!!」
「え…ヴェルフの主神に、分かった!!行こう!!」
ここはヘファイストス・ファミリアの執務室、つまり主神ヘファイストスがそこには居る。だがもう一柱、黒髪のツインテールに身の丈に合わない胸が特徴のロリ女神がいた…いや、土下座をしていた。
「あんた…一体いつまでやってるつもり?それにそれは何?何かの儀式?怖いからやめてくれない?」
「これは『DOGEZA』と言って、極東に伝わる由緒正しき懇願術だと…タケから聞いたんだ」
「タケミカヅチの奴、何を教えたるのよ。はぁ、何をしようが私の気は変わらない、貴方が借金をしてまで武器を打って、それでその子供達の生活はどうなるの?ヘファイストス・ファミリアの
「うん、だから僕に示せる最上級の誠意を持って君に…、僕はヘファイストスに恥を忍んで頼んでいるんだ!!」
「あのねえ、そもそも貴方がわざわざそんなにする相手は、その子供は一体貴方の何?言いたくはないけど、そんな事をする価値は本当にあるの?」
「ある!!!!あの子は僕を選んだ、本当ならもっと上の派閥にも入れる…いや、ロキの所やフレイヤの所にだって入れた。なのにわざわざ僕を選んだ…、僕はそれに応えたい!!僕を選んだ事を…後悔して欲しくない!!」
その誠意ある言葉に、ヘファイストスは酷く動揺した、先刻の言葉「ロキの所やフレイヤの所にだって入れた」という言葉の真意も分からないまま、ヘファイストスは言葉を続けた。
「なら、その子は言ったの?貴方にそんな事をさせてまで『武器が欲しい』って」
「―――ん!?それは…」
「だったら私は断るわ、何よりその子がそれを望んでいないなら、私は武器を貴方に売ることなど出来ない。帰りなさいヘスティア、私達鍛冶師は生粋の職人気質よ、そう簡単に決定を覆す事は無いわ」
ヘファイストスは冷たく言い放つ。それはヘスティアの唯一の眷属たるベルの意志を汲んで、目の前の女神に「それは貴方の自己満足よ、本当のファミリアならもっと違う形で誠意を示しない」と言う。最も気難しい気質をした眷属達をまとめる主神として、ヘファイストスはヘスティアに言う。
「僕は…それでも、あの子に―――」
『ヘファイストス様、少し時間を頂きたいのですが』
外から男性の声が聞こえる、それを聞いてヘファイストスは目を少し見開いて、やがて許可を出す。
「えぇ、入りなさいヴェルフ。という事で今日は帰りなさいヘスティア、私にも予定があるの」
「へ…ヘファイストス!!」
「失礼しますヘファイストス様、こいつが俺の新しい相棒です!!名前はベルと言ってですね―――」
「はい、よろしくお願いします、神ヘファイストス様……―――え?神様?!」
赫灼の髪の青年の後ろから現れた少年、処女雪を思わせる白髪に
「え…?神様、なんで『DOGEZA』なんてしているんですか?」
「えあ?!ベル君、なんでここに…?」
「はい?僕はヴェルフに武器を打ってもらった、それでその後ヴェルフの主神様に紹介したいって言われて…それで」
その状況はまさに
「貴方がヘスティアの眷属ね、それでヴェルフとはどういう関係なの?私の知る限りではヴェルフに貴方のような友人は居なかったと思うのだけど?」
「それは俺の方から言わせて下さいヘファイストス様、こいつは…ベルは俺の魔剣を欲しがらなかった、俺に武器を打ってくれと、だから俺はこいつに武器を打ちました」
「そう、貴方がここ数日工房に籠もって居たのはそれね。なら礼を言うわベル、貴方が初めてヴェルフに武器を打ってもらった眷属になるのかしら?」
「え?!ぼ…僕が最初…?でもヴェルフはレベル4で…それにさっき打ってもらった武器も凄け業物だったのに…、なんで僕ガ最初なんですか?」
「それはね、ヴェルフはまあ生粋の職人気質でね、だから本当に気に入った子にしか武器を打たないのよ、それで君はこの子のお眼鏡にかなった、そういう事よ」
「そういうことだったんですね、あの…それで…なんで神様が極東秘伝の『DOGEZA』をしているんですか?」
「べ…ベル君!?『DOGEZA』を知っているのかい?」
「知ってるも何もお祖父ちゃんから教わりましたしね。『女に問い詰められたらこれをしろ』って教わりましたしね(よくお祖父ちゃんやザルド叔父さんがアルフィアお義母さんにやってたわ…はぁ)」
「そうか!?そう言えば君の祖父はゼウスだったね、じゃあそれも当然か」
ヘスティアはベルの方を見て言う、それには若干ゼウスへと呆れも入っていた。そんな中、一番驚いていたのはヘファイストスだった。
「貴方…ゼウスって事はゼウス・ファミリアだったの?名前は…、家名は何?母親の名前は?」
「ぼ…僕ですか?えっと…ベル、ベル・クラネルです。僕のお祖父ちゃんが元主神は…大神ゼウスです。お母さんの名前は『メーテリア』です」
ヘファイストスは目を見開いた、そしてかつての記憶を思い返して動揺する。それにヘスティアが反応し、ヘファイストスは重苦しく口を開く。
「な…何か知ってるのかい?ヘファイストス!!?」
「昔…15年以上前に…、かつてオラリオ最強に君臨し、フレイヤ・ファミリアをオラリオに縛り付けた婚姻を司る女神が主神のファミリア、名前は【
「あ…あぁ、ヘラの事だね?確かにヘラは傲慢と言うか…少し気難しい気質ではあったけど…」
「そのヘラが…、大事そうに、そしてその顔には笑みを浮かべながら…車椅子を自ら押して本拠を歩く姿を一度だけ見たのよ…」
「はあ?!あのヘラが…?ヘラがかい?!そんな事があるのかい?」
「そのヘラに車椅子を押してもらっていた子は…、今にも散ってしまいそうな命を輝かせて、見る人全員に笑みを与える、そういう子だった…。その子の容姿はまさに処女雪を思わせるような白髪の長髪だったわ、その子の名前は確か『メーテリア』、ベル…貴方はこれを知っていたの?」
「えっと…お義母さん…アルフィアお義母さんが僕のお母さんよ事を「誰からも愛される、そんな奴だった。そしてそんなあいつをヘラは大事そうに思っていたぞ」って言っていましたけど…」
ベルのその言葉に嘘はなかった、何より
そしてそれは只人であるヴェルフにですら分かる、それ程にまで彼が…ベルが放つ優しい気配が、何よりもそれらを事実だと物語っていた。
「そう…、分かったわ。ヴェルフ、準備をしなさい」
「えあ?!お…俺ですか?ですが一体何を…?」
「貴方が昔言っていたじゃない「いつか俺と一緒に武器を売ってください」って。合作よ、私と貴方でね」
「え…?それは嬉しいのですが…なぜ急に…?」
「私も彼が…ベルが気に入ったわ。だからこれはヴェルフ、貴方の職人としての目が間違っていなかった事へとご褒美よ。準備は良いわね?」
「―――ッ?!無論です、ヘファイストス様」
ヘファイストスがそう言うとおもむろに本棚の一冊に手を掛ける、そしてゆっくりと引っ張るとそれは扉だった。ゆっくりと開いていき、やがて中には工房が…神匠ヘファイストスの工房が露わになった。
「な…なんでいきなり武器を…?!さっきまでは違ったじゃないか?ヘファイストス!!!」
「そうね、でも変わったわ。貴方の眷属は、そして
「……いや!!要らない!!僕も手伝う!!僕に出来る事は何でもする!!」
「そう…、そうね、ならアシストをお願いね。それからごめんなさいねベル、貴方の許可を取らずに…、遅いけど良いから?私が貴方の武器を打っても?」
「…、僕はヴェルフを信じています。そしてヴェルフが信じる貴方が、ヘファイストス様が打ってくださるのなら、僕に断る理由はありません!!」
「そう、良かったわ。ならヴェルフ行くわよ、準備は終わった?」
「はい、常に槌は、持っています!!」
ヴェルフは自身の腰から一つの、黒い槌を手に取ってヘファイストスに言う。それを聞いてヘファイストスもまたその唇を綻ばせて言う。
「感謝するわ、ベル。ヴェルフを選んでくれてありがとう、貴方のおかげであの子の努力は報われたわ、本当にありがとう」
「いえ、僕は何も…。それに僕はヴェルフの槌の音を聞いてここまで来た、それはきっとある種の
そのベルの言葉にヴェルフは少し頬を赤らめながら恥ずかしがる、そしてヘファイストスもまた「私もよ」と言って工房へと入る。それに続くようにヴェルフが入り、そしてヘスティアが続いていった、そして最後にベルが入り、工房にはかつてない熱気に包まれていた。
「さて、次代の英雄に…かつての豪傑達が認めた彼に相応しい武器…フフ、腕が鳴るわね」
ヘファイストスは赫灼の槌を持って、おもむろに鉱石を選び、そしてヴェルフは漆黒の槌を持って、ヘスティアは二人に冷気を送りながら、火を絶やすことなく、ベルもまた自身に出来うる限りのサポートを行った。
カーンと鳴り響いた、かつてない心地さを持つ槌の音がが。槌の響を聞いて、鉄の声を聞いて、やがてそれは鉄塊から一振りの武器へと至る。
今回はここまでです。はい、オリジナル展開です、フレイヤ・ファミリアは都市外へ遠征に行きました。なのでここからは原作とは大きく異なる展開へとなります。
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それでは次回まで、さようなら!!