才禍の少年と風精の少女 作:長夜月
あれからどれだけ経ったのかも分からない。鉄を叩く音、息を切らす音、炎が燃え上がる音、様々な音が入り乱れ、だが決して不協和音などにはならない。
「はぁ…はぁ…これが……武器…かい?」
「そうよ…ヘスティア…ベル、握ってみて」
「はい…少し…待ってください」
「ベル…早く握って感想を聞かせてくれ」
ヘスティアは既に地面にノックダウン、ヴェルフはその赫灼の髪と同じくらい顔を真っ赤にしてその場に腰を下ろす。ヘファイストスは大粒の汗を流しながらもその漆黒の刀身をベルへと見せる、そしてベルはその漆黒の柄を持って剣を一振。
「ハァァァ!!!」
空気が揺れた、剣がベルの意思に呼応する様だった。漆黒の刀身には白い文字が浮かび上がり、ベルの手へと来ると初めて息衝いた。
「それはそうね、【
「これが…、凄い。武器が僕に呼応してる」
「そうよ、それはヘスティアの
「あ…ありがとうございます!!!」
「えぇ、それじゃあヘスティア、料金だけどね…」
「あぁ、いくらでも払うよ!!」
「いや、神様…僕が払いますから…」
「いえ、これは私とヘスティアの間の取引よ。派閥としてではなくね、だからこれはヘスティア、貴方が自分で払い切りなさい」
「ああ、当然だ!!」
その言葉に嘘はなかった、だがベル心底心配していた。神匠ヘファイストスとヴェルフの合作である
「それじゃあ料金は、二億よ」
「に…二億だって?!」
「え…安くないですか?!ヘファイストス様とヴェルフの合作ですよね?」
ヘファイストスの言葉に、ヘスティアは高すぎて驚愕、ベルは安すぎて驚愕した。
だがヘファイストスはゆっくりと言う。
「さっきも言ったけどこれに
「それって……いや!!正規の料金を言ってくれた!!」
「あら…なら言ってあげるわ、それはじゅ―――」
「―――やっぱり言わなくていい!!!!!」
「…あら、そう?なら大人しくこのご厚意に甘えておきなさい」
ヘスティアはヘファイストスの言葉を食い気味に遮って紡がれる言葉を聞かないふりをした。最初の文字が十…そして値段が下がる事など無いので、これはつまり上がったという事だ。そして桁が上がった、そもそもヘスティアには払いきれない額の物だったのにも関わらず、それが桁までも上がっているのであればそれはヘスティアには到底聞けるものではなかった。
「まあ、そもそも未完の武器なんだから偉そうに料金なんて取れないんだけどね」
「そう…か…、ありがとうヘファイストス!!必ず完済するからね!!」
「ええ、当たり前よ!!途中で払えないなんて許さないんだからねヘスティア!!そしてベル、大事に使ってね」
「はい!!分かりました、ヴェルフもありがとう!!」
「あぁ!!約束、忘れんなよ!!」
「なら今から行く?」
「いや…それは無理だ…。そもそも三徹していた上に更に徹夜を重ねて俺はもうボロボロだ、それは今度な」
「うん!分かったよ」
約束…、それは武器を打っている時に結んだベルとヴェルフとの間の約束。
そしてベルとヘスティアは外へ出た、ヘファイストス・ファミリアの工房を出ると、そこには活気が溢れていた。
「なにか…あるんでしょうか?」
「知らないのかいベル君!!今日はフィリア祭だよ!!」
「あぁ、そう言えばそうですね!!忘れていました」
「そうだ!!僕と一緒に周らないかい?」
「神様とですか?いいですよ!!行きましょう」
ベルとヘスティアは人混みの中へと突っ込む。そして屋台を周り、都市を周った。
―――――――――――――――――――――――――――
キャラ紹介
ヴェルフ・クロッゾ
ステイタス ≪Lv.4≫
力:A841 鍛冶:E
耐久:C681 魔防:F
器用:E449 精癒:I
敏捷:C692
魔力:S901
≪スキル≫
【
・自身と契約した精霊の力の行使可用
【
≪魔法≫
【ウィル・オ・ウィスプ】
武器紹介
【
・鞘も刀身も柄も全てが漆黒で出来ている。そして刀身にはヘスティアが刻んだ
【
・鞘と柄は漆黒、刀身が深紅。鞘と柄には龍の鱗が、そして刀身には
―――――――――――――――――――――――――――
「悪いなぁ、アイズたん。わざわざ使わせちゃってな」
「ううん、別に良い。それよりこんな所に何の用があるの?」
「んあ?そりゃもう一人しかおらんやろがい」
ここは酒場だった。当然大抵が荒くれ者の集まり、その中でもアイズはかなり浮いていた、無論それは女神にも劣らない美貌ゆえだ。だがそんなアイズが霞むほどの美貌を持った女神が奥の席に座っていた。
「それで、なんでウチらを呼んだんや?
「あらロキ、来てくれたのね」
「阿呆か?お前が自分から呼んだんやろが!!そもそも何で居るんや?お前んとこは今北の果てに遠征やろが!!」
「あら?私の眷属達は私がいないと力を発揮できない軟弱者だとでも思っていたの?」
その言葉にロキは少し狼狽えながらもフレイアの正面の席に腰を掛ける。アイズは付き人としてロキの背後に立つ。
「それで、そちらは…」
「
(きれい……、いや!!駄目だ!!)
アイズは一瞬フレイヤに見惚れた、それは目の前の女神の美貌故だった。
地上にいる神様達は力を抑えてる、目の前の女神も例外じゃないのに…、それでも魂まで酔わされそうな程の魅力、………これが美の化身フレイヤ。
「えぇそうね、今日は来てくれてありがとうねロキ」
「は!!お前がこれ見よがしに「有益な情報をあげる」なんて書いとったから来てやったんやで…。ふざけた内容やったらしばくからな」
「えぇわかってるわ、なら話を始めましょう。まずは貴方の知りたがっている情報からね」
フレイヤはそういいながら一口、紅茶を口に含んだ。
「死の砂丘…そこに何があるかは知ってるわね?」
「阿呆か、んなことぐらい知っとる。死の灰が立ち込める、昔にゼウスとヘラが倒した三大クエストの一体、
「そう、それが最近になって死の灰が消えたのよ。そしてあのモンスターが再び姿を現した。その名は
「神獣……って事はまさか神が?!どうやってや?」
「さあ?それは分からないわ、でもそれを討つ為にオッタル達は向かっているわ」
「勝てると思っとるんか?最悪そっちのファミリアの奴ら全員死ぬで?」
「あら?私の眷属達がこの程度で死ぬと?ロキ、見当違いはよしなさい。大丈夫よ、あの子達には言葉を伝えたしね」
「なんて言ったんや」
ロキは少し眉を細めながらも聞く、それに対してフレイヤは少し笑みを浮かべながら言う。
「『私の眷属達が最も強いことを証明してきて』って言っただけよ」
「ハッ!!そりゃあ心配いらんな。んじゃあもう一つ聞こうか、ウチらを呼んだ本当の理由はなんや?」
ロキの言葉にフレイヤは外を眺めて、先程よりも賑やかな笑みを浮かべながら振り返るように言う。
その姿を見てロキは大きく溜め息をつきながら言う。
「はぁ、またか…
「……?」
ロキの言葉にフレイヤは静かに頷く、そしてそれを後ろから見ていたアイズはキョトンとした顔で全く話についていけていなかった。
「ほら吐けや、
そのロキの言葉にフレイヤはゆっくりと言葉を紡いで言った。
「強くて…とても白い、でもまだオッタル程は強くないわ。でも綺麗…私はあんなに綺麗な魂を…、あんなに神々しい光を放つ魂を見たことが―――」
(――――――!!!ベル…?)
フレイヤは外を見て言う、そしてその視線の先に一人の少年が映る、それを見てフレイヤは即座に立ち上がりロキに別れを言う。
「それじゃあごめんなさいねロキ。急用ができたわ、また今度会いましょう」
「ハァ?ってコラ!!先行くなって……まさか会計もウチかいな?」
フレイヤは足早にその場をあとにする、それを見てロキは吐き捨てるように言う。
「何やったや、あいつ……。何かあったんか?アイズたんまで」
「いや…ううん…(今のはベル…?ヘスティア様と一緒にいたけど…)」
アイズは思い返すように目を瞑る。先程窓の端に見えた白髪の少年と、それを振り回すように手を引く一柱の女神の姿を。
アイズが先程の風景に浸っていると、横からロキが言う、それを聞いてアイズは目を見開いた。
「白い魂…、ウチにはあの色ボケ見たいな
「…え?」
――――――――――――――――――――――――――
第一級特別機密依頼
ギルド長ロイマンより以下の命令が等の派閥に下された。
ギルドより【
死の砂丘にて漆黒の大怪獣、名を【神獣・ベヒーモス】と言う。それらを討伐し、ドロップアイテムを回収されたし。
――――――――――――――――――――――――――
「か…神様…さっきまで死にかけてたのに…、なんで今はそんなに元気なんですか?」
「いや!!当たり前じゃないか!!君とお出かけなんてした事ないしね」
「まあ、そうですね。それで…じゃが丸君ですか…?」
「そうだよ!!なぁに気にするな、ここは僕が奢ってあげようじゃないか、ちなみにオススメはあの【
「誰ですか剣姫って…それに僕はあまり甘い物は得意じゃないんですよねぇ」
ヘスティアは目を見開いてベルを見る、甘い物が苦手というのも意外だが…それよりも何よりあれを忘れたのかと。
「剣姫っていたら【
「あぁ、アイズの事だったんですね神様、僕はてっきりもっと他の人かと…」
「ハァ、良いけどさ。君も少し変だよ?もっと君は女の子に興味をだねぇ〜」
「それ処女神が言います?それに僕は女性の恐ろしさを知っています…あの
「あ…あれはそう?!イレギュラー見たいなもんさ。流石に世界にいる女性が皆あれだったら今頃世界の男性は皆死んでいるよ」
ヘスティアの言葉にベルは苦笑しながらも応える、そして二人でじゃが丸君を買い、ヘスティアは『小豆クリーム味』をベルは『コーンクリーム味』を一つづつ買って食べ歩きをしていた。
「ねぇベル君、そう言えば―――」
「あら?ヘスティア、昨日ぶりね」
ヘスティアは肩をビクつかせながら前を向く、するとそこには美の化身フレイヤだった。
黒の外套を纏い、しかしそれでも隠しきれない美貌に辺の都市の住人はその視線を釘付けにされた。
「そう、貴方が
「あの…誰ですか?(この視線…品定めをするような視線…やっぱりこの…女神様が塔の上から見ていた人…って?!)」
『ベル、警戒せい。奴はそこらの女神とは訳が違うぞ、下手したら一発でアウトだ』
(うん…、分かったよ)
美の化身にのみ許された圧倒的美を持って相手をひれ伏せさせる権能。アルフィアとザルドからその話を聞いていたベルは目の前の美神を前に警戒心をMAXまで上げる。
「あら…警戒されてしまっているのね。ねぇベル、―――――私の物になりなさい」
その一言には魅了の効果が付随されていた、話しかけられてもいないのに、周りに歩いていた街の者までもがその魅了の効果にひれ伏す。
ただ一人、ヘスティアは違った。正と貞潔を司る処女神であるヘスティアにはそれは効かなかった、だからこそその場で最も冷静に思考を回した。
(不味い!!下界の子供達ではフレイヤの美の権能には抗えない!!)
そしてそのフレイヤの蛮行を遠巻きに見ていたロキとアイズはフレイヤの仕出かした事を前に目を見開いた。
「たった一人の為にそこまでするか?!」
「ベルは…どうなるの…?」
「魅了されて…それでもう一生少年はフレイヤの物になる」
ベルが…誰かの物になる…、それがどうしようもなく嫌だった。やめて…私からもう何も奪わないで…、お願いベル…私を…置いて行かないで…。
(何を言っているんだ、この女神は?やっぱりアルフィアお義母さんやザルド叔父さんが言っていた事が合っていたんだ、あれ…?こういう時、お義母さんがなんて言ったらいいか言っていたような…)
ベルは思考した、アルフィアとザルドに教えられた厄介な女神を振り払う方法を。
そして思い出されるのはゼウスとの会話だった。
『―――ベルよ、面倒くさい女にわな、こう言ってやれば良いんだ!!』
(は?!そうだ…思い出した!!)
ベルはハッ!!と顔を明るくしてフレイヤの方を見る。それを見てフレイヤもまた顔を綻ばせる。
「ベル、私の物になる気は出来たかしら?」
ベルはその問いに一呼吸置いてから、まるで何かを覚悟するようにその問いに答えた。
「いえ結構です許してくださいごめんなさい本当にごめんなさい僕は無理ですお願いします絡まないでください本当にマジでお願いしますもう本当に神様の愛ほど面倒くさいものはないってヘラ叔母さんをみて知ってるでマジで無理ですお願いします」
ベルはまさに超長文詠唱の如き謝罪文を高速で詠唱、相手に反論する余地すら与えずに謝罪だけをして逃げるという大神ゼウス御用達の必殺技。それはまさしく極東秘伝の『DOGEZA』にも勝るとも劣らない威力だった。
ヘスティアはベルを見て瞠目、ロキはそれを見て呆然とし、やがてそれを見て大爆笑。アイズは何故か顔を綻ばせながらベルの下へと走る。
「べ…ベル君?!なんで君には魅了が効かないんだい?!」
「当たり前です…、ヘラ叔母さんからしっかりと
それを聞いてフレイヤは唖然とした、まさか自身の美の権能が効かないなんて、その事実にフレイヤ自身と、そして周りにいた都市の住人すらも驚いた。
「ベル!!!」
「ア…アイズ―――グフゥ!!!」
アイズはベルのお腹に飛び込んだ、そしてベルはそれを受け止め…突然過ぎたのと頭の中での
「う…う…………アイズ…さ……ぁ」
「え…?ベル?!ベル(なんで?ベルが倒れてる…?もしかしてフレイヤ様が…?!ユルサナイ)」
頭の中で盛大な被害妄想を行うアイズ、内心「アイズだからね」と思っているベル。そしてヘスティアはまるで空気に徹するが如く退散…そして遠巻きにそれを見ていた。ロキは先刻のフレイヤが振られた事実に今でも大爆笑、アイズが居なくなった事にすら気が付かずに両手で腹を抱えて笑い続ける。
やがて羞恥で顔を赤く染め上げるフレイヤは、足早にその場を退散…まさしく百戦百勝の美の化身が初めて敗北した日だった。その日、フレイヤは枕を濡らしながら大泣きした、それを見て一人の女神の付き人は静かにナイフを持って復讐へと赴こうとした所を他の団員に止められた、愛憎と呪詛を孕んだ高速詠唱にその場にいた全ての者が呆気にとられていた。そしてようやくフレイヤの命令で止まったのは暴れ出してから五時間が経った頃だった、だがその後もフレイヤは枕を濡らして泣き喚いた。
「ベル…良かった、無事で」
「いや…無事では無いですけどね(貴方にお腹をやられてから痛いんですけどね!!!)」
「そうなの…?何処が?」
「いえ…、やっぱり大丈夫です」
「それにしてもロキ、君達は何でここに居るんだい?君みたいな神はこういうのには興味なさそうだけどね」
「阿呆か、ウチかて行く気は無かったわ、せやけどあの色ボケ女神がようあるっちゅうから来たんや。そしたらそこの少年を…まあ狙っとるちゅうのはもう分かっとるやろ?」
「あぁ、まあそれは分かっている。ベル君、十分注意してね、君は確かに強いけど、それでも神威には逆らえない、それが下界の子供達の最大の弱点だ、わかったね」
「はい、分かりました」
ベルはアイズを身体から引き剥がす、それを少し名残惜しそうにしながらもアイズは離れる。ロキは「あのアイズたんがデレとる!!」なんて事を抜かしていると
そしてベル達はそのコロシアムへと向かう、するとそこにはベルの新しいアドバイザーであるエイナの姿があった。
「エイナさん?!何かあったんですか?」
「ベル君…それに剣姫?!いや…それがモンスターが檻から逃げ出してしまって…ベル君、ヴァレンシュタイン氏どうか力を貸していただけませんか?」
アイズとベルは互いの顔を見合い、そしてエイナに言う。
「「はい!!」」
「ありがとうございます、ヴァレンシュタイン氏はここの近辺をお願いします、ベル君はダイダロス通りに逃げた
「はい!」「分かりました」
ベルとアイズは瞬時にその場を散開した、アイズは高台からモンスターを発見、迎撃し続けた。そしてベルはその持ち前の敏捷を活かして一瞬でシルバーバックの下へと向かう。
ヘスティアの名を借りた漆黒の長剣を鞘から抜き放ち、詠唱を唱える。
「居た…、行くよジュピター!!」
『分かっておる、行くぞ』
「【
ベルの足元から雷鳴が鳴り響く、ベルがその名を呼ぶと更に雷鳴は歓喜し、それは雷霆となってベルへと収束する。
そしてベルはその圧倒的速度を持ってシルバーバックへ肉薄する。
『グァァァァァァア!!!!!!』
ベルの一撃で一瞬にしてシルバーバックは討伐された、ダイダロス通りの住人はベルに感謝するが、ベルはすぐにヘスティアやロキの居る場所へと戻る。
(ねぇジュピター、そう言えばスキル効果にさ、『六属性精霊魔法行使権限』みたいなのあったじゃん、それってどうやるの?)
『あれは相当長い詠唱が必要じゃ、その上
(便利だと思ってたけど…そうじゃないんだ)
『便利ではある、ただそれに頼る必要もない、ということだ』
ドォォォォォォオン!!!!!!!!
鳴り響く轟音は都市を破壊する輩の音だった、それをベルの進行方向からは真反対だった。それなりに距離があり、ベルは速度を上げてそちら旋回する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
時は少し遡る、ここはガネーシャ・ファミリアがフィリア祭の為に捕らえて置いたモンスターを保管しておく場所、多くの憲兵が居る中、それでも何事もないかのようにその黒髪の二人は歩く。
「ヴィトー、ありがとね」
「いえいえ、なんて事をありませんよ。えぇ〜」
その男は多くの憲兵の首をへし折り、その場にほっぽり投げていた。
そんなことはなど意にも返さず、黒髪の男…いや男神は檻の鍵を開けて言い放つ。
「さあ!!行き給え。君達では役不足も良いところだろう、だからこそ前座として、そして本命の為の贄となってくれ」
モンスターは雄叫びを上げながら外へと出た。悲鳴が、都市の住人の悲鳴の声が聞こえる。
「はぁ〜、何故この様な事を?」
「いんや、別に。ただただあの時の少年が、彼等の後をついて歩くだけの彼が何処までも成長したのか見たくてね」
「貴方様の考えること事など私にはどうにも理解し難いですな」
男神は笑みを零しながら言葉を続けた。
「さあ、見せてれよベル。あの日彼等が君に全てを託した理由を、その根拠を僕に見せてくれ。安心しろ、資格があると僕が思えた時、この冥府の神
高らかな笑み、隣で見ている男は全く理解しがたいと吐き捨てる。
神々の寵愛、恐らくこれほど厄介な愛もそうないだろう、それを受けてしまった哀れな少年。
「さぁベル、英雄に成ろう!!」
地下水道、地面より下でダンジョンよりも上、そこから這い出るエレボスの本命。
極彩色の蛇のような花のような形のモンスターは、どこからか吹く風に誘われてるように、まるで標を辿るように外へと這い出る。
「さあ、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「アイズ…遅いね」
「可笑しいわね、東のメインストリートから闘技場に来るならここを通る筈よね?何かあったのかしら」
ティオナとティオネは朝待ち合わせをしたアイズの事を探していた。
「すみません、私がアイズさんを待ちたいって我儘を言ったばかりに……」
レフィーヤは顔をうつむかせながら言う、それに対してティオナがいつものような元気な声でレフィーヤに言う。
「いいって、いいって。私もアイズの事待ちたかったもん!」
ティオナの元気ハツラツな言葉も今のレフィーヤには届いていない。レフィーヤの頭の中には昨日の話でいっぱいだった。
「(昨日アイズさんは一人でダンジョンへ向かった…、私なんかじゃあの人の隣なんて…)…ティオナさんは誘われたんですか?」
「え?何か言った?」
「いえ…何でもありません…(私は置いていかれた…、知りもしなかった)」
ずっと思ってた、私なんかじゃアイズさんの隣に立つ資格なんてない…って。でも少し力になれるって…そう思えたのに…。思い知らされた、あの優しい手はアイズさんの戦いから遠ざけた。
レフィーヤは思い返すように心の中で考える。51階層でのイレギュラーで生まれた極彩色の大型モンスター、それを単騎で討ち取ったアイズと自分の距離を。
『―――ありがとう、レフィーヤ』
(はい、あの言葉は本当だったんですか?それに…私は分かってしまった…、そんなアイズさんを相手に笑いながら戦う怪物を…。)
知りたい!!どうすればあの人の様に強くなれるのかを、ベルさんは一体どうやってあそこまで強くなったのかを。それを知って、私も同じ様にすれば…きっとアイズさんの隣に立てる!!
「ねぇ、あそこ」
ティオナの言葉にティオネとレフィーヤが反応する、ティオナの指す指の先には多くのガネーシャ・ファミリアの団員が集まっていた。
「[ガネーシャ・ファミリア]…」
「こんな時に武装なんてしてどこに行くんでしょうか?」
「気になる…」「わよね」
そしてティオナとティオネ、そしてレフィーヤはその騒ぎの渦中へと向かう。
するとそこにはつい最近見た背丈の小さい黒髪の女神と、いつものような貼り付けた笑みを見せない道化の女神がいた。
「全滅?!んな訳あるか!!そりゃ可笑しいやろ!!」
「今の話を聞くと…少なくともその賊は
ロキは声を荒げる、それを横目にヘスティアは辺の住人を見回し、不安を取り除きながらも先程エイナ等のギルド職員からの報告にあった話を総合してまとめる。
「ロキ!!」
「んお!」
「何かあったの?」
ティオネにティオナ、そしてレフィーヤはロキとヘスティア合流、そしてロキが事のあらましを掻い摘んで説明した。
「ちゅう訳や、ティオネ達はアイズが討ち漏らしたモンスターを狩ってくれたらええわ!!」
「平然と言ってくれてるけど、これってかなり不味い状況よね?」
ティオネは少し焦った表情をしながらもロキに聞く。それも当然、都市にモンスターが蔓延るなど前代未聞の事案、冒険者ならまだしも一般市民にまで被害が及べば【ガネーシャ・ファミリア】挽いては大型ファミリア全域に糾弾の嵐が及びかねない。
「アイズさんとベルさんはもうモンスターの下へ向かったんですか?」
「ん?まだ行っとらん。少年君は話を聞くなり一瞬で消えてまったで〜、あら速度でも都市最速と為張るんちゃうか?」
「ふふん!!そうだろそうだろ!!
「阿呆か!!そもそも自分とこの少年君は最初っから完成しとったろ?!」
「なにおう?!」
「なんやと!!」
「馬鹿なことしてないでアイズの場所を教えなさいよ!!」
ティオネの怒号にロキとヘスティアは取っ組み合いをやめて上を…即ちコロシアムの柱の天辺目掛けて指をさす。
「「あそこ」」
風が靡く、新調した服が風になびき、そしてその美しい金髪も風に靡いていた。
そんな中アイズの双眸には数体のモンスターが捉えらえられていた。
「見つけた―――【
アイズは即座に風を纏い、それを一点に集約させる大技【リル・ラファーガ】を持ってコロシアムの塔から都市を蔓延るモンスターへと肉薄、瞬きするまもなく胴体を一閃する。
一つ、二つ、三つ、四つ!!
アイズの神速の一撃がモンスターの魔石を砕く、そして風に乗りながらアイズは残る四体のモンスターをその視界に捕らえる。
「うわ~、本当に出番なさそ〜」
「餌を用意されておいてそのままお預けされた気分ね」
「あ!分かるかも〜」
ティオナとティオネは屋根の上に登りながらアイズの剣捌きを見ていた。そして自分たちの出番がない事を悟ると少し残念そうに苦言を呈す。
「お二人共、武器が無いのによく言えますね」
いや違う、それ程までに二人は強いんだ。アイズさんの隣で戦える程に……だけど。
(武器がなくたって私には!!)
魔法がある、そう思いたかったレフィーヤはさっきまでの劣等感をかなぐり捨てながらティオナとティオネの後ろをついていく。
そんな時、大地が揺れた。天井にいたからこそ感じ取れたのかもしれない、それを最初に感じたのはティオナだった。野生の勘、天性の直感が感じ取ったものは『危険な何か』だった。
「………?」
「どうしたのティオナ」
「地面が揺れてない?」
「…本当ね」
「本当ですね、地震ではないと思うのですが…」
そんな会話をしながらも彼女等の警戒心は最大まで引き上げられる。都市にモンスターが蔓延るという異常事態、更にこの揺れだ、何かある。冒険者としての彼女等の勘が『何かある』と言って止まらない。
ドォォォォォォオン!!!!!
その時、都市の中央から爆発音が聞こえた。何かを破壊する音、地面を抉る快音を聞いた三人は即座にその場を後にし、そして爆発のあった場所へと向かう。
「何…あれ?」
「まさかまた新種?!」
それはロキ・ファミリアが遠征を切り上げざる負えない程の痛手を与えたモンスターと同色のモンスター。だがその見た目は全く異なり、今目の前にいるモンスターは蛇のような形状だった。
「きゃあああああ!!!!」
「あんなモンスターを[ガネーシャ・ファミリア]は一体何処から?!」
「アイズは遠い、私達で倒すしか無いわよ!!レフィーヤ、詠唱の準備を!!」
「分かった!!」
「は…はい!!」
困惑を隠せないティオナとレフィーヤに向かって即座に指示を飛ばすティオネ。フィン・ディムナを誰よりも見てきた彼女だからこその迅速な判断。
「ひゃああ!!」
「「ハァァァア!!!」」
今にも人を殺さんとするその尾を、ティオナとティオネの剛拳が捉え、そして地面へと殴り捨てる。
「…つ!!」
「かったぁー!!」
そして痛みを負ったのティオネとティオナだった、どうやら敵は相当に硬いらしい、それを感じ取り武器を置いてきた事を悔いるように二人は続ける。
「打撃じゃあ埒が明かないわ!!」
「あぁ、武器持ってくれば良かった〜!!」
そしてティオナとティオネは再び極彩色のモンスターと正対する。その様子を少し遠くで見ながらも自身の魔法を詠唱する暇を探す一人のエルフ。
今のうちに―――
「【解き放つ一条の光】―――【聖木の矢幹。汝、弓の名手なり】」
速度重視の短文詠唱!!これなら行ける。
「【狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】」
気付いていない、今なら行ける!!私だってアイズさんの力になれ―――?!!
レフィーヤは額に汗を浮かべながらも詠唱を紡ぐ。極彩色のモンスターの背後を取り、決して悟らせないまま光の矢で穿つ…、筈だった。
「―――カッ!?」
レフィーヤの華奢な身体を貫かんとする威力で極彩色のモンスターの尾がレフィーヤの身体を撫でる。
第二級冒険者の反応速度を持ってしても反応することすら許さない高速の一撃、相性が悪い。生粋の魔道士であるレフィーヤ、そして並行詠唱を扱えないレフィーヤなどあの極彩色のモンスターの格好の餌食。
「レ…レフィーヤ!!?」
「何あれ?!尻尾…?」
そしてレフィーヤを倒した事で調子付いたのか、尾の先がパカっと開く。そしてその中から出てきた…いや咲いたモンスターの形状は先程の蛇型とは大きく異なった。
「花が…咲いた?!」
「蛇じゃなかったの?」
ティオネとティオナなその豹変ぶりに驚愕、だがすぐに意識を切り替えレフィーヤを救出しようとする。
「レフィーヤ、起きなさいッ!!」
「あーもうッ、邪魔!!」
だがそれを拒むように極彩色のモンスターがティオナとティオネの進行を邪魔していた。そして五体のうちの一体が今も血を吐いて突っ伏しているレフィーヤの下へと向かう。
何度も…守るから。
(……だ、もう……嫌だ!!)
また助けられる?誰に?私が…。同じ様に?繰り返すように…、助けられる。
「あ……あああああああああああああ!!!」
声を荒げて立ち上がろうとするレフィーヤ、だがそんな雄叫びすらも意味を成さず、レフィーヤの華奢な身体はそれを拒むように力無く倒れたままだった。
嫌だ…、嫌だ!!!
レフィーヤは心の中で自分を必死に叱咤して立ち上がろうとする。それでもやっぱり無理だった。
目の前には今にも自分を喰らわんとするモンスターがいる、だから怯える…そうでは無かった。
もう……また同じようにあの人に…助けられる?
『隣りに居たいから、だからその手は取れないんです!!』
数日前にレフィーヤがアイズに向けていった言葉、何処までも理想論で甘い考えをレフィーヤは呪った。
きっと…きっとまた自分は―――
「グァァァァァァア!!!!!!」
レフィーヤを喰らおうとするその極彩色のモンスターの凶暴な
また私は…あの憧憬に助けられる。
「(間に合った)レフィーヤは…?」
アイズは安堵の声を漏らしかけるが、それを寸での所で止めてレフィーヤの安否を気にする。
するとその油断を見越したようにアイズに新手が襲いかかる。
(三体…?!新手!!でも何処から?その程度なら!!)
三体、たった三体。アイズの背後から襲いかかるが、アイズであれば対処可能。
そしてアイズは振り返りざまに刺突の構えを取り、そして極彩色のモンスターへと放った。
「え…?!」
剣が砕けた、それもその筈だ。数日前にベルと斬り合い、そして全力の風を使い、そして今も剣を酷使し続けていた。
剣が…
アイズは襲いかかるモンスターの頭部をレイピアの柄で殴り跳躍、そしてティオネとティオナとの合流を果たす。
(
そしてアイズは距離を取るが、それでも極彩色のモンスターはアイズ目掛けて一直線に向かう。
「あーもう!!今度はアイズ!!」
「そうか!?アイズ、そいつらを魔力に反応してる!!」
(ん…?!ならレフィーヤと距離を取りながら…!!)
アイズは華麗なバックステップを踏みながら極彩色のモンスターをレフィーヤがいる場所から遠ざける。
だがそこには小さな女の子がその小さな身体をさらに縮こませて蹲っていた。
(子供…?抱えて逃げる時間は…無い!!)
アイズは一瞬にして反応し、自らを囮として女の子とも距離を取る。そして八方塞がりとなったアイズ。
(不味い!!これじゃあ…)
アイズが追い詰められ、打開策を練る。刹那、白い大火と雷轟がアイズの頭上から鳴り響く。
「【ファイアボル卜】!!!!」
白髪の少年、ベルの一撃が極彩色のモンスターの顎を捉え、確実にに射抜く。
ベルは咄嗟に漆黒の長剣を鞘に収め、女の子を片手に抱えた風の名前を呼ぶ。
「【
そしてベルの足元に風が集まり、強化された足を使ってベルは一瞬でレフィーヤの下へと向かう。
そして女の子をそこに置いてベルは再び剣を構えた。
「レフィーヤさん、その子をお願いします」
「べ…ベルさん?!駄目です!!あのモンスター達は
「はい…分かりました」
ベルがそう言うとその右手に純白の光が収束していく、鈴の音を鳴らしながらベルは漆黒の長剣にそれを移す。
そして漆黒が純白へと変化し、ベルは更に剣を握る力を強める。
(ジュピター、さっき教えてくれたので間違いないよね?)
『ああ、問題ない。やるだけなってみろ』
「(うん、分かった)【光の円環、これは星々の
ベルは詠唱を紡ぐ…そしてそれは途中で中断される、そしてそれに反応するように極彩色のモンスター達は一直線にベルの下へと向かう。
それを待っていたかのようにベルは振り上げた剣を振り下ろしながらその技の名を呼ぶ。
「【
それは丘を絶ち、城を斬り、そして竜をも討つ技。故に斬光、故に極光。それ即ち英雄の一撃に相違なかった。
それを目の前で見せられ、そしてその技に魅せられた少女は心の中で思う。
(見えてしまった……、この人がどうしてこうまで強いのかを……)
その一撃に、一体どれ程の竜が討たれたのか、その一撃を撃つのにどれだけの鍛錬がいるのかを。私なんかがあの人を超えて憧憬に追いつくなんて……、出来ない。
少女は絶望した、その差に。歳は一つ下、なのに強さという点に於いてはここまで違うのかと。
すみません、これから少しの間は投稿をお休みします、何故かといいますとですね、まあテストがあるんすわ。私もまだね高校生ですから、ほれ高校生は学問優先なんでね、まあニ週間ぐらいしたらまたいつも通り登校するで、それまでは待っててください。