俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
押し黙ったスカーレットとダリーの不穏な空気を察して、
「すまない。臨時に編隊を組んだだけなのに嫌な思いをさせてしまって」
そう声をかけると、彼女は手のひらを交差させ否定をした。
「俺は秋川でうしろはミア。こっちはスカーレットと山藤、こっちはダリーとケイト」
それぞれ手を上げたり、会釈したりさまざまな挨拶を見せた。
いきなりの挨拶にキョトンと呆気に取られていた彼女だったが、我に返り「私は、
いがぐり頭の少年がペコっと頭を下げる。
「よろしくお願いいたします」と声を上ずらせながら挨拶を返してきた。
ダリーは中岡が気になるようで、チラチラと視線を向けつつ「あ、あの」などどうにか声をかけようと試みているのだが、言葉が上手く出ないらしく視線を泳がせる。
「ダリー、どうしたの」
「あ、ケイト......」
「大丈夫! ダリーには私がいるから」
「え、ケイトとはそんなんじゃ」
「あら、お二人さんは――ふふふ」
「あ、いや......はぁ」
そんな会話をしている内にクィーンエレインが段々と姿を現すも......。
「様子がおかしい」
「何か、煙がすごい勢いで上っている」
まるで、炎上しているように見える。
上空に到着すると、遠くから見るよりもひどい有様で艦橋が爆撃により吹っ飛ばされて跡形もなく、甲板には大小無数の穴が開いており、
「着艦できるかなぁ」
「そうですね」
「無理なら他の空港に行かないと魔力が無くなっちまうぞ」
他の天空騎士たちが空母と通信を試みるも艦橋が無いせいかはたまたアンテナが故障しているのか一切連絡が取れないようだ。
「そういえば、味方の直掩隊はどこに行ったのだろう」
周囲を見回すも、それらしい影が無い。
そんな折、護衛艦から天空騎士隊に緊急通信が入った。
「本土からクィーンエレインの直掩隊が数分後に到着する。攻撃より戻ってきた戦爆連合の天空騎士隊は、スチューザン中央のヴィナンメレ湖にある空港に向かうこと。空母直掩隊も一足早くそちらに向かっている。
通信が終わるや否や残りの魔力のことを考えてか、みなぞくぞくとヴィナンメレへ方角を定めて進み始める。
「我が部隊も、ヴィナンメレへ移動する」
みな心配そうにクィーンエレインを振り返り後ろ髪をひかれながら移動を開始した。
冗談を言える空気ではなく、今日の戦果も頭から飛び、不透明な先行きに心囚われ、飛ぶ足取りは重く、道は遠い。
「みな、再度蓄魔石および
下に目を移すもまだ一面海でしばらく陸地を拝めそうにない。
順次入って来るみなの報告では、余裕があるとまでは言えないが、到着できそうな魔力は残っているようだ。
偵察騎を先導に、ぞろぞろとみなついていく。
(一応確認するか)
方位磁石と簡易地図を取り出し、一ミリ刻みの線が入っているペンも取り出し、目的地までのおおよその距離と時間を割り出す。
(今何処にいるのかがイマイチわからないんだよなぁ)
(発艦したのはここら辺だったよな。クィーンエレインの進路は北西だったからこの辺かな。だったら今はこの辺りか)
なにせ間違った方向に進んだら、そのまま海の藻屑になってしまう。
そのようなことは無いとはわかっているのだが、艦の惨状を見てしまうと色々と心配になってしまい気を紛らわせることも兼ねて計算を続ける。
(あと十分位で海岸が見えるはずだな)
十分ほど飛んでいると、遥か彼方に茶色や緑色をした立体感のある広がりが計算通りに見えてきた。
嬉しくなり、にこやかに微笑みながら後ろを振り返る。
暁星七騎および他の飛行隊のそれぞれの顔が陸地を見たことで安どしたり興奮したりしているのが見て取れた。
陸地を超えると針路を東寄りに変え飛行を続ける。
小さな海岸の町を通り過ぎると、一面畑の大地が広がった。
暁星隊の影が通り過ぎるたびに農夫たちや子供たちが頭を上げているのが見える。
目印となるヴィナンメレ湖が徐々に姿を現す。
「こちらクィーンエレイン攻撃隊。艦隊の命令により来た。着地の場所不明にて指示を求む」
しばらくすると、上空からはわからないよう偽装された飛行場からライトがこちらに向け照らされた。
飛行場の方に旋回をする。
「魔力の残り少ない物から着陸せよ」
他騎が順次着陸してゆき、最後に自身が着陸するために高度を下げていく。
「ミア、揺れるから気をつけろよ」
「うん、わかった」
靴の裏にあるタイヤが地面と触れ合う。
どうやら飛行場は砂利ではなくコンクリート製の様で着陸しやすい。
フラップを広げ、ブレーキをかけて速度を徐々に落としてゆく。
スッと止まるとホウキを下げミアに「到着した、ホウキを下げるから降りなさい」と声をかけた。
カチャカチャとベルトを外し、ヒョコッと地面に飛び降りる姿を確認すると、海も暁星から降りて引っ張って行く。
多少離れた所にピストのような所が見え、流石にみな疲れたのだろう、力なく座っている者、寝転がっている者など様々な恰好をしていた。
ミアを連れて重い足を一歩一歩進めていたところ、スッと汗が額より伝わって目に入った。
「うぅ」
目を擦り擦りしながら歩みを止め、その後目をしばたたかせた。
「海さん? 大丈夫?」
ミアが心配そうに見上げていることに気付き、二回三回と頷いて大丈夫だと微笑みを浮かべた。
目も幾分痛みが引いたので再び歩みを始めた。
「ミア、地上は熱いな」
「そうかな、あっ、でも空より熱いか」
ミアは一人合点して、笑いながら見上げてきた。
ピストの前に来る頃には、黄金色に照らされた二人の影は彼方まで延び、ミアがそれを指さして「おひさまがいなくなる前だから影がこぉーんなに長いね」と話しかけてきた。
「太陽もおねんねするから俺らもお休みしたいね」
ミアに向かってそう語りかけるとミアは微笑みながら激しく頭を上下させた。