俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
疲労困憊
ピストに行くと、ダリーたちが手持無沙汰そうに地面に座っており、その様子から今後のことが全く決まってないだろうことが容易に見て取れた。
若い士官は一瞥し、着いてくるよう目で促して司令官の所へ案内した。
「暁星隊先任将校の秋川です」
敬礼をしつつ名乗り、今後のことをたずねてみた。
「クィーンエレインが敵の攻撃により着艦が難しくなり、その指示でこちらに来ました。これから我々はどちらに行けばよろしいのでしょうか」
どっしりと座っているそこの司令官は顔を見るなりわかったというジェスチャーを繰り返し若い士官に案内を命じた。
案内するのは海だけのような素振りを感じ取り、部下のために今後のことを尋ねることにした。
「私の部下たちはどちらに行けばよいのでしょうか」
司令官は目を細めながらゆっくり諭すように語りかけてきた。
「まだだ、いきなり数十人来たのだぞ、もう少し待ってくれ」
「部下を置いて先に休む訳にはまいりませんのでこちらで待たせていただきます」
「ふぅ。好きにしなさい」
司令官は大きくため息をつき、諦めるようにそういった。
フクロウが遠くで鳴いている。
疲れからかウトウトと半分寝ていたところをゆさゆさと何者かに起こされた。
「秋川殿、指令がお呼びです」
ゆすっていたのは先ほどの若い士官だ。
顔をパンパンと二回ほど両手でたたいて眠気を飛ばし、士官の後に続いた。
「待たせたな。何分人数が多いものでな」
「閣下、ご迷惑をおかけしております」
「ああ、他のものに君の部下を宿泊先へ案内させるよう手配はした」
「ありがとうございます」
「君もゆっくり休むといい」
「お心遣い感謝いたします。お言葉に甘え、そのようにさせて頂きます」
敬礼をして部屋を出ようとしたところ、伝え忘れたことを思い出したような面持ちで声を投げかけてきた。
「敵空母、ゲルハルト――まあ君が攻撃した艦だが、南東の海に飲まれ沈没が確認され、女王陛下がお喜びだとの事とクィーンエレインの艦橋に直撃弾が当たり、指令長官ジェームズ公他みな戦死なされ陛下はお悲しみになられたとのことだ」
甲板であったマーガレット侯爵令嬢のことを思い出した。
(おそらくは......)
その沈んだ顔を見て指令はジェームズ公に悲しみを手向けていると勘違いしたらしく、優しく同情的な視線を投げかけてきた。
その視線に敬礼を持って返し部屋を後にした。
トビラの外には若い士官が待っており、顔を見るなり宿舎への案内を始めた。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
「......いや、お気遣いなく」
「ホウキの整備はどうすればよいですか」
「申し訳ありませんが、翔陽国の騎体は我々ではわかりかねますので、そちらの整備兵が来てから手を入れてもらってください。 指令の方から連絡はしたとのことです」
少しばかり冷えた態度で返されるも、手配の困難さによるものだろうと考え、感情を心の奥に仕舞い込んだ。
「こちらです」
案内された宿舎は、外見はいかにも民家を借り上げたというような一般家屋だった。
「失礼します」
入口のドアを開けると、どうやらペンションのような作りで、一階の中央は吹き抜けとなっており、真ん中に大きなテーブルが存在している。 そのまわりに入浴施設やらトイレやらがある。 そこから奥に行くと二階へ続く螺旋階段があり、上には円形の廊下がある。 その廊下の外側に各部屋へ通じるトビラが数部屋分あり、そのうちの一室にしばらく留まることになるだろうと予感した。
ホウキに名札をつけ端に立てかける。
「階段を上がっていく士官に遅れまいと駆け足で追いかけ、一つの部屋の前まで来た。
「この部屋です。 ごゆっくりどうぞ」
感情のこもらぬ挨拶を置いて、そそくさと階段を下りて行ってしまった。
「ふう」
ため息をつきつつ気を取り直す
コンコン
部屋をノックし反応を確かめるも返答がない。
(誰もいないのか? 一人部屋かな)
ガチャ
トビラを開け中に入ろうとした瞬間、ほっこりとした感情が溢れ、思わず微笑んでしまった。
中は、ベッドランプ以外の明りが消されており、入って右にベッド、左に木箱を並べた簡易ベッド、中央にソファーがある。
右のベッドにはミア、ケイト、夏子、潤太郎が肩を寄せ合い眠っており、その横で佐那が床に新聞を引いて毛布をかぶり、その近くに微妙な距離を保ってダリーが寝ていた。
左に視線を動かすとスカーレットとソフィアが簡易ベッドで一つの毛布の中でちいさなイビキをかいていた。
「激戦だったしな、疲れたろう」
今日一日の疲労を考えるとみな早々と寝てしまっているのは仕方がないと思った。
「――寝るか」
ソフィアがいるとなるとベアトリクスも合流してくる可能性が十分にあり、ソファーで寝ると叩き起こされると考えられるので、部屋の隅に置いてある新聞の束から数冊抜き取り、空いている場所にそれを広げる。
「よっと」
新聞の上にゴロンと横になり、毛布など見当たらないので、余った新聞を上にかける。
「ふわぁぁ」
睡魔が即訪れて意識が薄らいでいく。
バタン
意識の片隅にトビラが開閉したような音がした......よもや気のせいかどうだかすら分からない。