俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
爆撃騎は投爆した以上帰投するであろうことから正直戦闘は難しいかもしれないが、敵の第二派があれば迎撃出来るやもしれぬと思いロンザニアへと飛行を続ける。
「......」
「......」
ロンザニアが近づくにつれお互い言葉が少なくなり、そのせいなのか飛行速度もゆっくりと感じ、最後には時の流れすら遅く感じて間を持たせるために通信機のスイッチを入れた。
通信機の感度がイマイチよくない。
少し前の騎種では、通信機があまりにも使用できないので、どうせ使えないのなら少しでも重量を減らそうと、それを取っ払って、魔法通話でやり取りしていた話を聞いたことがある。
しかし、魔法通話は会話できる距離が極端に短く、数十メートルした届かない問題があるので、通信機の品質が多少なりとも改善したことにより廃れた。
「本当に壊れやすいよなぁ」
海が通信機を飛行と索敵の片手間でいじったところでどうこう出来るわけではなく、仕方なしに諦めようと視線を何気なく横に動かした。
「ん?」
騎についている魔探に正体不明騎が写っている。
不明機は複数いるようだ。
「ミア、魔探に不明騎が写っている」
確認したミアは備え付けの魔銃をギュッと握りしめ、軽く上下左右に揺すぶりながらキョロキョロとあたりをうかがう。
「敵騎は進行方向右手二十度と行った所だ、高度がわからん」
状況がよくわかっていないだろうと海が声をかけると、ミアは納得したようにこくりと頷く。
「高度は低いかな? たぶん一〇〇位下」
すぐ後に確認をしたのか、ミアが冷静に不明騎の高度を伝えてきた。
「ありがとう」
お礼を伝えつつ今現在の自騎の高度を素早く確認した。
敵騎だったとしたら戦闘騎の直掩がいる可能性を踏まえて周囲を慎重に観察すると共に魔探に写っている不明騎を探す。
(あれは)
プロイデンベルグのER一六七。 爆撃騎の中でも旧型ながら騎体の改良やマイバッハベンセデスの発動機を新型に換装するなどマイナーチェンジを繰り返し、まだ一線級で戦える双発騎だ。
おおよそ十騎程が編隊を組んでいる。
進入角度を合わせ、七十度からダイブに入る。
こちらを見定めたER一六七の編隊から口火が切って落とされ、噴水のような弾丸の激しい打ち上げで視界が狭められた。
慣れた手順で最後尾の騎体を標準器の中に収める。
中に映し出された赤い鷲のマークが徐々に近づいて来た。
「それ、当たれ」
海が引き金を引くと同時に、鷲のマークめがけ魔弾がパッパッと吐き出されてゆく。
騎首をひねり衝突を上手く回避をしつつ後ろを振り返る。
ミアが必死に射撃をしているが最後尾の騎体は全く落ちそうにない。
「次だ」
「え?」
「もう一度攻撃する」
「うん」
戦場を一時離脱し、再び射撃できる態勢を整えるために高度と確保する。
「あっ」
ミアが何かに気付いたような声を上げると同時に、先ほどのER一六七が火を噴いて落ち始めていた。
「スチューザン騎の攻撃か」
ここからでは距離が遠く、詳しくは分からないが、味方騎が攻撃を加えているようだ。
敵騎に対して
高さを確保して、再び攻撃できる位置取りを取ろうとするも、まるで人気アトラクションの順番待ちのような行列ができており、結局最後尾に並びながら味方の攻撃を眺めるとしっかりと射撃体勢を取りながら突っ込んでいる。
「すごいな、エースクラスが迎撃している」
おそらくは、首都防衛の精鋭騎士団なのだろう。
四騎、五騎と落ちてゆく。
それでも敵の爆撃隊は針路を変更せず、爆弾を抱えたまま直進し続けていた。
スプライト・ディーバの隊が降下に入る。
次いでサイクロンの隊が続き、見たことのある後ろ姿が操るスプライト・ディーバの隊が降下していく。
発動機から炎が上がり、他の騎より遅れ出したかと思うと、爆弾に燃え移ったのかER一六七は爆発して三騎程が瞬時に消えていった。
残りの二騎は爆弾を雑に投下して
海の前のサイクロン隊の攻撃で、一騎が撃墜され、残り一騎の場面で最後の攻撃が回ってきた。
「ミア、ラストだ」
後ろに声をかけながら速度を上げて侵入を試みる。
もうすでに魔弾を打ち尽くしたのか、対空う砲火は撃たれずじまいで難なく攻撃を開始した。
タカタカタカ
一斉射が発動機に吸い込まれ、チロチロと小さな火が付いたのが確認できたが、そのまま飛行を続けている。
結局は今回の迎撃では手柄は無く、後続の部隊が最後の一騎を屠っていった。
それを最後まで眺めると「ミア......帰ろうか」と声をかけ、返事を待つまでもなく踵を返した。
「ミアはお給料入ったら何を買うの? チョコレート?」
沈黙に耐えられなくなり、何気なく以前話題にした給料のことを聞いてみた。
「パパとママにお花を買うの」
「でも、お花いっぱい必要だから足りないかも」
困ったような口調で返してきた。
「何でいっぱい必要なの」
花が好きな親だったのだろうかと思い、知らないなりに花の名前をいくつか頭の中に浮かべるも予想外の答えが返ってきた。
「いっぱいの人とお墓にいるから」
「え?」
「パパ・ママだけにあげると他の人泣いちゃうかもしれないし......」
「そっか......じゃあ俺も出すよ。花代」
流石に
「えっ、でも悪いし......」
「気にするな、あとでチョコも買ってあげるからな」
「ありがとう」
何気なく魔探に目をやると、周りにいる我らと同じく帰投している味方騎が写っていた。
そのまま基地に着陸すると、どうも様子がおかしい。
「中尉、お疲れ様です」
先ほどの整備兵が姿を現す。
「ああ、お疲れ様です」
「魔探は役に立ったみたいですね。それと通信機ですが直しときますね」
「?――何で知っているんだ」
海は訝しげな表情を浮かべ、整備兵を見ると、相手もそれに気づいたのか申し訳なさげに説明を始めた。
「実は、ウチの若いのが配線を間違えて、送信が入ったままの状態で、すべて聞こえていたのですよ。本当に申し訳ない」
「俺らの会話が聞こえていたってことか?」
「はい」
申し訳なさげに俯く。
「何故そうなったんだ」
「スチューザンの魔探は味方の識別のために魔探のシグナルを感知すると、自動で通信を返すようになっているのですが何分配線図がスチューザンのものしかなく......」
「翔陽の通信機に間違ってつけたと」
「はい」
整備兵が一層小さくなる。
「まあ、とりあえず直しておいてください」
「はい、直ぐに」
整備の者たちは、ホウキを受け取ると小走りに去っていった。
爆撃騎を攻撃した後に味方がすぐに集まったのはそういう訳だったのかと一人納得しミアと一緒に宿舎へ向け歩き出した。
「ねえ海さん」
ミアが海の顔を見上げて困り顔で声をかけてきた。
「どうした?」
視線を下げてミアに合わせた。
「お話、パパママのおはなしとか、お山のお話とか、汽車のお話とかみんなに聞こえちゃったの?」
ミアは少しばかり動揺しているようで、どうしていいか分からない、そのように感じ取れた。
海はしばらくミアの頭を撫でて落ち着かせて、ゆっくりと口を開いた。
「通信機がおかしくなっていて、二人でしたお話がみんなに聞こえちゃったって」
「どうしよう」
ミアは半ば泣きそうになりながら、海を見上げた。
「ミアは、人の悪口とか言ったかい」
ブンブンと強く首を振り否定する。
「じゃあ、大丈夫! みんなスグに忘れるから」
「でもでも」
海は立ち止まり、ヒザを折り曲げて目線をミアに合わせた。
「ミアはご飯を食べている時に、となりの人のお話とか覚えているかな?」
「う~ん」
ミアは困ったような顔をしながら頭をしきりに動かす。
「俺は忘れちゃうな」
「私も......あまり覚えてないかも」
「うん、しばらくは色々からかわれたりするかもしれないけど......」
ミアの表情が曇る。
「新しいお話とか出てきたら、みんなそっちのお話に夢中になって、古いお話とか誰もしなくなるから大丈夫」
話を終えて海がにこりと笑うと、ミアもつられてぎこちない笑顔を見せた。
(ある意味、ミアより俺の方が色々といわれるよな)
立ち上がると、ミアに悟られぬよう苦笑いを浮かべ、ゆっくりと歩き出した。
宿舎に帰りつくと、好奇の目に晒されるも無視し自室に戻る。
部屋を開けると、いつも通り思い思いの場所で休憩を取っており、こちらをチラリと一瞥すると思い思いの行動に戻っていった。
(このままでは良くないな)
「お疲れ様、戻りました」
「ミアも戻りました」
少しずつチームワークを構築しようと、まずは挨拶からと行動を起こした。
「あ、隊長、お疲れ様です」
「んー、お疲れ」
ダリーとスカーレットが返事を返す。
「お疲れさまです」
二人が挨拶を返したのを聞いて、ケイトと夏子も返事を返してきた。
あまり最初から色々と行動すると逆効果になるやもしれないと考え、適当な場所に荷物を降ろして、それを枕に目を瞑った。
海たちは空母を修理している間、基地航空隊の騎士たちと協力し、ロンダニアの防空を担うことになった。
のちの歴史ではスチューザン防空戦と呼ばれることになる。
空戦が主な任務に切り替わるにあたり、中岡 佐那と北添 潤太郎が我が隊に正式に配属されることとなった。
「改めて、中岡 佐那です。よろしくお願いいたします」
パチパチパチ
みなから拍手がおこる。
「北添 潤太郎......です......」
パチパチパチ
しばらくは、俺とダリー・スカーレットと中岡でコンビを組みたいと考えているが、みなはどう思いますか。
「それでいいのでは」
スカーレットが真っ先に同意をしてくれたので、すんなりと決まった。
「新しい仲間が増えたことだし、歓迎会をかねて皆で食事をしようか。
「さんせーい」
「いいですね、やりましょう」
ケイトとダリーが積極的な賛同の声を嬉しそうにあげた。
「ここでという訳には参りませんから、湖のほとりにあるテーブルで行うのはどうでしょうか」
夏子が言ったテーブルというのは木の板を張り合わせたような簡易的なものが数個置かれてあり、周辺にはこれまた簡易的なチェアが十脚ほど無造作に置かれていて、観光客用に設置されたものだと思われた。
「ああ、いいね。 あそこなら湖から涼しい風が吹いてきて気持ちいいしな」
スカーレットが口笛を吹きながら答える。
「みなさん、そのようなことは......」
「ああ、気にしないで。 みな同じことの繰り返しの日常で刺激が欲しいだけだから」
佐那の申し訳なさげな言葉を海は遮る。
「そうそう、気にしないで」
「でも隊長、それって歓迎している風には受け取ってもらえないですよ」
「え! そんなことないよ、大歓迎だよ」
「あはは」
「ふふふ」
海の焦った姿を見て、周囲がどっと沸く。
「何かしら用意しないとね」
「そうだね」
ケイトとダリーはお互いに声を掛け合って何かしら小声で話をし始めた。
「食べ物、飲み物を用意しないとな」
「飛行場の近くの店にいってくるよ」
海はすっくと立ち上がった。
「つきあうよ」
「私も行く」
スカーレットとミアも腰を上げた。
「四時位でいいか」
「了解」
「じゃあ、三人が買い物している間に、僕たちは場所と道具の確保をしてくるよ」
「よろしく」
そうして決まった歓迎会を行うためのちょっとした材料集めをするために、各自思い思いの場所へ散っていった。