俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記   作:クワ

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第5章
新しい水上空母・新しい作戦


 高度を五〇〇程に保ち巡航速度でゆっくりと飛んでいると、まるで仲間と旅行をしているようで、戦争をしているのが嘘のように感じられた。

 

「調べたところ、夕方にはクラウド湾に着きそうだけど、騎体不良や体調不良になっている騎はあるかい」

「今のところ大丈夫です」

 各騎、複座とワイワイとやり取りして、海に報告を上げる。

 

(うん、大丈夫そうだ)

 体を吹き抜ける風が火照った体を適度に冷やして、眠気が襲ってくるほどの気持ちよさだ。

(......)

 気になって後ろを振り返ると、ダリー騎とスカーレット騎が、ふらふらと蛇行飛行をしている。

 

「これは危ないな」

 眠って落ちてしまったら元も子もない。

「みんな聞いてくれ、このままでは眠ってしまってそのまま落ちてしまうかもしれないから、何かしら話をしよう」

「そう......ですね」

「ああ、そうしよう」

 背中越しにミアの寝息が伝わって来る。

 

「んっんっ」

 水筒の蓋を親指で器用に開け、喉を潤す。

 

「そういえば隊長」

「ん?」

「翔陽の陸軍は空母を持っているとか」

 先ほどの眠気はどこへやら、ダリーは面白いネタを仕込む新聞記者のような勢いで問いを投げてきた。

 

「あれはなぁ、カール王国が滅亡したことでカール領ムグルシンがプロイデンベルク領に編入された」

「そこで、プロイデンベルクは新たに得た領土の南北の港町、ロウフォンとゴンタウなんだが、そこにBボートの基地を作り、多数のBボートおよびRボート......まあ魚雷艇だな、を多数配置し、南のカルセンタンやジャワルタ等の資源を運ぶスチューザン及び翔陽の商船を攻撃し始めた」

 

「それは、知っています」

 ダリーが素早く答えた。

「そこで、スチューザンと翔陽はムグルシンの攻略に着手するんだが、色々あってな」

 

「色々ですか」

「ああ、色々だ」

「翔陽からは陸路では行けないので、そこは船を使って移動することになったのだが」

「だが?」

「翔陽の陸軍師団を乗せた輸送船はBボートに狙われかなりの被害を出した」

 

「スチューザンもかなり被害を出してるからなぁ」

 スカーレットがうんうんと頷く。

「陸軍が言うには、海軍は護衛艦を出してくれない」

「逆に海軍からすれば、十分に出している」

「難しいですね」

 

「ああ、そこで陸軍は護衛艦の製造に踏み出した、のだが、海軍が非協力的なのもあるが、そもそも造船のノウハウがないので性能がイマイチだったらしい」

「そこで、陸軍はメリアン連合国に泣きつき護衛空母及び駆逐艦のレントリースを行ったんだ」

「じゃあ、スチューザンと同じ?」

 いつの間にか目を覚ましたケイトが話に混じる。

「航空騎は陸軍にもいるので問題ないのだが、船の運用で海軍のOBを雇った事に対して海軍が反発したりと凄かったらしい」

「らしい?」

 ケイトは不思議そうに海の言葉を繰り返した。

 

「俺は、雲鳳に搭乗してこちらに向かってたからだよ」

「だから知らなかったんですね」

 ミアが相槌を打つ。

「どちらにしろ、今現在陸軍は二隻の護衛空母を運用しているとのことだ」

「そうなんですね。 ありがとうございました」

 

 ダリーは海に楽し気に頭を下げた。

「さて、もうそろそろ見えてくるころだ」

 スカーレットが目を凝らしつつ話す。

 氷河によって削られた大地は、まだまだあどけない程の冷たさを残し、海たちの熱を持ち去っていく。

 

「見えてきたな」

 キラキラとオレンジの光を投げる水面に、いくつかの漆黒の色合いがまばらにあり、船が多数停泊していることが伺えた。

「見えてきましたね」

 空母に発着艦の練習をしているのが遠目ながらも確認できた。

 

「見えてきたぞ、着地の準備」

 海の掛け声とともに独立飛行隊の面々は着陸態勢に入った。

 

(これから、何が待ち受けるのだか)

 

「隊長、良かったですね」

「ん、何がか?」

「カタパルトですよ」

 ダリーの言葉通りパーセフォニーにはカタパルトが備え付けてあり、どうにか暁星は発着艦できた。

 そこで、しばらく発着艦の訓練を行うこととなった。

 

 それからしばらくした後。

 

「ここともお別れか」

 五隻の空母と多数の駆逐艦と共にクラウド湾を後にする。

 

 とはいっても、パーセフォニー以外の空母はレントリースの護衛空母二隻の他、輸送船の上に鉄板を乗せて簡易的に空母にした船が二隻と機動部隊とは言い難い寂しい陣容ではあった。

 

「航海先はマカダスカルだそうだ」

「ドラゴンサンダーの守備隊への補給だな」

 海の言葉に皆頷く。

 

「初日という事もあるので、俺が上がる。ミア申し訳ないけど徹夜だ」

 ミアはこくりと頷いた。

 

「海さん、もうそろそろ時間ですよ」

 ミアがゆさゆさ揺するのに体を任せて時計を手に取る。

 

 時は十六時を指していた。

(これも荻野隊長に返さないとな)

 

「ふああ」

 騎上で大あくびを出しつつ魔探を見る。日は既に暮れて、明りと言えば雲の隠れた月の曖昧な光位だ。

 

「今のところう異常なし。ミア何か写ったら声をかけてくれ」

「うん」

 爆弾を抱えて艦隊の周囲を警戒する。Bボート対策だ。

 

 太陽が地平線より離れた頃、交代の連絡が入った。

「ミア、帰るよ」

「う、うん」

 必死に目をこすって頑張っている。

 

 しばらくこのような日々が続いたある日。

「作戦変更、目標カルタ島」

 

 カルタ島……遥か昔カルタ騎士団で名の知れた内海にある島で、今はスチューザンが統治しているものの周辺のカール・トロイヤ・ビリアなどがプロイデンベルクの領土になっているため孤立している。

「撤退戦だ、敵は浮遊空母メッテルニヒおよび水上空母ホワルン・アウグストゥスおよびファルコ確認されている。詳細は追って連絡する」

 

 周りはみな困惑の表情でお互いの顔を見る。

 しばらく不穏な日々が続くも、のちに知らされた続報で多少の希望を持つことができた。

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