俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
その日は朝からピリピリしていた。
「敵、最新鋭の浮遊空母発見」その報告が入ったのが昨日の夜、作戦行動中の護衛空母からもたらされたものだった。
スチューザン本土に空母が攻撃に来たことは今まで一度もなかった。
「本土上陸作戦の前触れかも」そう呟く者。
「魚雷は、爆弾は、弾薬は」武器を確認するもの。
「敵はまだ見つからんかぁー」焦りのためイライラするもの。
そして……
「どう? 騎体は」
「大丈夫ですよ、今すぐにでも行けます」整備兵の心強い一言が入る。
騎体にはすでに魚雷が装てんされて、発見の連絡を待つばかりである。
「そういえば、秋川大尉」整備兵がにこやかに話しかけてきた。
「どうした?」
今までにない感じだったので、不思議そうに言葉を返す海に「お疲れではないですか」と聞いて来た。
「まあ、それなりに」と海が答えると、整備兵は「ジャーン、大尉のためにどうにか手に入れて来ましたよ」と小さな瓶を渡してきた。
「何だい、これ」と問う海に「ツカポンですよ、疲れがポンと飛んで行っちゃうという」と嬉しそうに答えた。
海もツカポンの話は聞いている、疲れを感じなくなるがあまり体に良くないらしい……だがこの翔陽人がどれだけ苦労してこれを手に入れたかを思うと海は無下に断るのも気が引けた。
「おお、ありがとう、疲れてどうしようもなくなったら使わせてもらうよ」と言ってポケットの中に仕舞い込んだ。
緊急連絡のサイレンがけたたましく鳴り響く。
「敵か?」魔探に敵騎写る、迎撃せよとの報。
「うーん、いつもの定期便かぁ」海の言葉に整備兵は「待ちましょう」と返した。
だがその日は明らかに様子が違った。
「なんだこいつら?」
「航空騎じゃねぇ」
「人間が乗ってない」
のちにG1ロケットと呼ばれる魔法の力で遠隔操作する発動機のついた無人兵器なのだが、その性質上G1は高高度を飛ばせないそうで、この時も地を這うように飛んできた。
「大したことねぇ」
戦闘騎隊が攻撃のため高度を下げて攻撃を始めた時だった。
「魔探に敵影、数多数」野外の魔法拡張機からでも連絡に緊張が乗っているのが伝わってきた。
護衛予定だったノワルド達の隊が迎撃のため離陸していく。
(荻……ホウィットマン准尉、がんばれ)
「隊長、護衛騎が行っちゃいましたよ」ダリーの困った顔を眺めながら「ダリー、仕方ないだろ」となだめた。
結局日が暮れるまで空母が見つかることは無かった。
「隊長、ロンダニアの被害が凄いらしい」スカーレットが仕入れてきた情報を披露する。
「まず、無人騎が多数来たので落とすために高度を下げた所、いつものFM一九九が覆いかぶさってきたり、多数のHu一八八がロンダニアまで無傷で到着したり」
「無人騎って爆弾積んでるんだろ? 見逃せないもんな」
「ああ、見逃したら今度はロンダニアがそいつらの餌食になっちまう」深刻そうに皆で顔を付け合せる。
「明日は俺たちも迎撃に出よう」
海の発言に一同頷きそれぞれベッドにもぐりこんだ。
「魔探より敵騎来襲……」
「みんな、出るぞ」
「おう」
ダリーとスカーレットが勢いよく返答し大空へ飛び立つ。
昨日とは打って変わり、空はどんよりとして雲が多く敵を見つけにくい。
「爆撃騎に絞ろう、恐らくは昨日と同じパターンで来ると思う」
海たちが波打ち際上空まで来た頃には、敵騎がはっきりと確認できるくらいまでお互いに近づきあっていた。
「あれが……噂の無人機」
聞いた通り確かに人は乗っておらず、中央が大きな爆弾となっており、その後ろに発動機が設置されて魔力を出して飛んでいた。
「二十、いや三十か」
サイクロン隊が上から襲い掛かり落としてゆく。
ドーン、サイクロンの魔銃が命中するたびに、爆弾が爆発して大きな破裂音が響いた。
「海さん!」後ろからミアのせわしない声がしたと思うと、魔探に敵影が写った。
JG一九二の戦闘騎隊だ。彼らが上からサイクロン隊に襲い掛かろうとした瞬間、その上からスプライトディーバの隊が襲い掛かり、昨日の様には行かないぞとアピールしていた。
しばらく警戒しながら旋回していると、またもや魔探に敵影が写る。
「また、魔探に敵が写った」
「今度こそ、ですね」敵は徐々に近づいてきて目視できようかというところまできた。
「あれ、我が方の味方ではないよな」
海は困惑した。四発騎なのだ。
「あの型は、我が方の航空騎にはないはずですね……」
さすがのダリーも自信なさげに答える。
海たちが攻撃しようと態勢を整えた頃に、青電隊が攻撃を開始して少しばかりの肩透かしを喰らった。
その後も三式艦戦やら六式戦が次々と突っ込み、流石の四発騎たちも次々と落ちていった。
「また、来たね」
ケイトの声と指で指し示す方角を交互に確認し、双発騎CL三三五と護衛のFM一九九の戦爆連合が来るのが見えた。
そのころには、後方基地のスプライトディーバやサイクロンも駆けつけ乱戦になることが予想された。
「よし、今度こそは」左端のCL三三五に狙いをつけてダイブを開始する。
周囲に魔弾がばら撒かれ、目の前がカラフルな模様に彩られた。
そんな中、海は右の発動機に標準を合わせ引き金を引いてゆくと、銃口がタカタカと久しぶりの快音を鳴らして発動機に吸い込まれてゆく。
パン・プスプスと大きな音を鳴らし、右の発動機は火を噴くのを止めて静かになった。
後続のスカーレットが左エンジンを射抜き、出力が下がったのか雲の中に隠れたかと思うと光と共に破裂音が響いた。
ダリーと佐那が次の騎に狙いを定め突入しているのを見ていると、他の騎にも次々とスプライトディーバ、サイクロン、六式戦、青電が次々と雲の隙間から湧き上がるがごとく次々と落下攻撃に突っ込んで、攻撃を受けたCL三三五が一騎また一騎と火を噴いて落ちていった。
再び高度を取るために上昇を始める。
「海さん、敵の影!」
ミアの声を聞き、視線を魔探にやる。
「おう、写っている」
高度は低い。
「無人機か」
「隊長、迎撃しましょう」
「よし、みんな新しい敵に向けて動き出す。
しばらく洋上を飛行していると、南の方角から太陽光をキラキラと反射させている物体が飛行してくるのを見つけた。
「来たぞ」
「護衛騎はいる?」
みな目を皿のようにして周囲を見回す。
「いないようだな」
そうしているうちに攻撃するのにベストな位置取りを済ませて皆に声をかける。
「突っ込むぞ、反撃は無いから分散して落とそう」
「了解」
ゆるっと軟降下して、無人機の斜め上六十度位から標準機に目を通し、敵騎がスコープいっぱいになったら魔銃を撃つ。
魔銃が吸い込まれると、激しく火を噴きながら海に落ちてゆく。
「ミア、後ろから敵は来てないか」
「うん、大丈夫」
「次行くぞ」
二騎目は角度が少し浅かったものの、やはり魔銃を騎体にぶち込むと火を噴き、その火が騎体全域に広がり落ちていった。
三騎めは、バンと爆発音を残して消滅した。
そうこうしている内に他の部隊と共闘して、全騎叩き落とした。
「よし、終わったな」
「無人機は、動かない分気が楽だな」
「そうですね」
スカーレットとダリーが軽口を叩くころには敵の空襲はひとまず収まり、魔力の残量を考え基地へ戻ることにした。