俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
三上の忘れ形見
「海さん、大変です!」
ミアが大声を上げ海を激しく揺すった。
「んーなんだよう」
「私たちの飛行騎が無くなっちゃいました」
「はぁ?」
海はよろよろとベッドから這い出て、身支度を整えると騎体の置いてあった場所へ向かった。
「確かに……無い」
唖然とする海に蓄魔石補充をお願いした整備員が困った顔で話しかけてきた。
「あそこに翔陽の騎体がありますが、間違って乗っていったのでしょうか」
「流石にそれは気付くでしょう」
「ですよね」
整備員が苦笑して同意する。
「まあ……何かしら手がかりがあるかもしれないですね」
「はあ」
「ほかの騎の補充をお願いします」
整備員にそう頼んで、ミアと共に教えてくれた騎体に近づいた。
「うん、青電だな」
(名誉が乗っている、ワイド島の騎体だろう)
海が操縦席に乗り出して計器周りを見ていると……。
「海さんこれ」
ミアが布のようなものが括りつけてあるのに気が付いた。
「それどれ……これは」
(三上が使っていたハンカチだ!)
見覚えがある、まあ飛行隊でハンカチを持っているのはアイツぐらいだが。
開くと、絹のモダンな模様の中に走り書きがあり、海はそれを読み始めた。
秋川へ、昨日の爆撃に巻き込まれハンナは帰らぬ人となった。
俺はハンナの仇を討とうと思っていたところ敵の浮遊空母を見つけたとの連絡が入った。
魚雷が必要なので
無事に戻ったら貰ったラムより百倍いい酒をお前にやるので楽しみに待っていてくれ。三上
その文字は急いで書いたせいなのかひどくインクが滲んでいて文字そのものもかなり乱れていた。
「馬鹿野郎! 何が百倍だ、一騎じゃ無理に決まってんだろ」
「海さん……」
歯噛みする海をミアは心配そうに見上げていた。
ワイド島を始め各所に連絡したところ、とりあえず青電で基地に戻ることに決まった。
「みな待たせてすまない、幸いなことに蓄魔石はあまり使用されておらず補充もすぐ終わるので、すぐに出れる」
隠し通せるものではないので、事情はすでにみんなに話してあり、何とも困った顔をしながらも誰も何も言わなかった。
「確かここにあったよなぁ」
操縦席から手の届くところについている小物入れには、いざという時のための結束バンドが乗っている。
「おっ、あった」
取り出したバンドをちょうどミアを背負うような形に取りつけて、海の前でバンドを閉めようとするがなかなか上手くいかない。
「きついな」
「ミア、太ってないよぉ」
「そうだな、ごめんごめん」
カチャリとバンドが止まるころには、蓄魔石の補充も終わり、離陸の準備が整った。
「総員、しゅっぱーつ」
「了解」
今日は、やはりいつものような反応は来なさそうだ。
雲鳳の時と発動機が違うため挙動に戸惑うも、騎体の癖は相変わらずなので乗っているうちに慣れていった。
基地の飛行場に着陸し、ベルトを開くと慌ててミアが下りて走り出した。
「せわしないな」
いつもの整備兵に事情を話して騎体を引き渡すと、興味深そうに青電を眺め「この騎体は初めてだ」と言う。
「怖いこと言うなよぉ」
海がおどけると、整備兵は「大丈夫、何とでもなります」と力強く笑ってくれた。
「そう言えば、空母の動きはどうなったかわかるかい」
海の質問にチラッと視線を合わせて「なんでも昨日夜も爆撃があったらしいですよ」と教えてくれた。
部屋に戻ると、ミアがそわそわしている。
「どうしたんだ?」
「海さんとお別れになっちゃうかもって……」
どうやら暁星から青電に変わったことを気にしているようだった。
「大丈夫だよ、一時的なものだから」
ミアは胸をなでおろし、可愛らしい微笑みを浮かべた。
「こうやって四六時中一緒にいると、実の娘みたいに感じるな」
ミアは海の顔をじっと見つめて「へへっ」っと嬉しそうに笑った。