俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記 作:クワ
それから数日後
「ふああ、とても眠いですね」
夏子が会話をして眠らないようにと声をかけてきた。
シューーーン
「偵察用の四発騎が離陸していきますが、四発騎にはお乗りになった事は」
「俺はないかな。第一翔陽には四発騎が無いからね」
「それもそうですね」
その四発騎の戦闘が膠着した状況を動かすことになるとはその時は知る由もなかった。
三時間くらい後、四発騎から緊急無線が入る「敵艦載騎に追われつつあり――」
「近いな、十五分ってところだ」
海は青電に飛び乗り、スロットルを開き速度を上げる。
「やっぱり軽いな」
ふわっと離陸したかと思うと、サーーーーーと加速するので海は少しばかり焦りながら東へと向かった。
「名誉もいい噴きあがりだな」
発動機は機嫌よく回り、まだ明け切らない空にまるで流れ星に乗っているような、そんな感覚を海に伝えていた。
「そっか、この騎には魔探積んでないんだなぁ」
敵は戦闘騎だから噴出魔力を消すことは無いだろうと海は思い直し、速度を上げて現地へ向かった。
「あっ、無線を入れれば何かわかるかも」
海は無線のスイッチを入れ、周囲を警戒しつつ聞き耳を立てた。
「魔探に新たな敵影が映っている……高度は六〇〇だ」
(俺の事だ)
「俺の隊は高度を上げ迎撃する、お前らはそのまま攻撃を続行しろ」
「了解」
(流石に単騎はまずったなぁ)
後ろを振り返る味方騎は着いてきていない。
(まあ、無線で相手の事が筒抜けなのは助かる)
海は高度を上げつつ前進する。
(相手騎はFM一九九かJG一九二か)
一九九は水冷騎のため高高度は不利だが旋回性が劣り格闘戦に持ち込めば勝機があるだろう、一九二は空冷騎でこちらと同じなので高度的な問題はないが、一九九より軽快な騎体なので数が多いと厄介だ。
(もうそろそろ奴さん見えてきてもおかしくない)
「敵補足、各騎突っ込め」
無線から怒号が伝わる。
「上か!」
空を見上げた海に向かって、流星群が突っ込んで来る。
海は素早くレバーを引き増魔石を落とすと、相手との距離を測って右へ騎体を滑らせた。
「外したぁ」
魔銃の音と共に敵騎がすり抜けてゆく。
「一九九か!」
次いで二騎目も突っ込んで来るも、これも右に滑らせて回避する。
「あまりに早くから動くと動きが読まれるから気を付けないとな」
「うおおおお」
雄たけびを上げ突っ込んできた三騎目を、今度は左滑りで回避して、上を見るともう敵騎の姿はない。
敵機を探し騎体を下げると、傷ついた四発騎が見えた。
その姿は痛々しく、二発の発動機は既に止まっており、残りも行き絶え絶えに動いているように見受けられたが闇に包まれよくわからない。
「あいつか」
攻撃の順番待ちをしている三騎を見つけ、一番後ろの騎体に忍び寄る。
敵は攻撃に夢中で背後および魔探はお留守らしい。
標準器いっぱいまで敵騎を入れると引き金を引く。
「三上の仇だぁ」
線香花火のようにぱちぱちッと跳んだ弾丸が綺麗に吸い込まれ、そのまま落下してゆく。
(まずは一騎)
警戒しつつ二騎目の背中に取りつき、一騎目と同じように魔銃を放つとボールのように跳ねて落ちていった。
三騎目は、絶対に発動機に命中させようと下を覗き込み、必中の角度になるまで突っ込みを我慢してその態勢を保っていた。
(中堅どころってとこか)
敵がまわりにいないことを確認すると忍び足で近づき、標準機に目をやり魔銃を放った。
下を見ていた敵は弾が当たって初めてこちらに気付き、振り返ると同時に滑って騎体から落ちていった。
「残りは何処だ」
あたりに目を配り敵を探すと、先ほどの騎か一騎背後に迫っていた。
「上等だ」
巴戦に持ち込もうと右いっぱいに操舵してフラップを操作し、足に出した風の魔法を蹴りだし勢いをつける。
十回ほど旋回をすると、旋回力の差で圧倒する翔陽の騎体に逆に背後を突かれる形となり、一斉射を浴びて落下していった。
「アルベルト、ルクスキー、ダリア、カッフェ」
無線から必死に仲間へ呼びかける声が伝わってきた。
(すまないな、こちらも死にたくないんでね)
海は無線のスイッチを切って、味方騎の上空を並行して飛行する。
飛行するも、発動機がやられ速度が出ないために、海はジグザグに飛行してより多く飛んでスピードを合わせている最中、不思議なものが飛んでいるのを発見した。
「何だこれ?」
それは先ほど海が落としたFM一九九の一騎で、乗っていた天空騎士が落下したためにそのままの状態で飛んでいたものの、魔力が足りずにあっちへ行きこっちへ行きとふらふらと飛んでいたものだった。
「よっと」
手を伸ばしてどうにか引き寄せることに成功した。
「よし」
右手で掴んだホウキを見て海は思った。
(着陸、上手くできるかなぁ)
飛行場に戻るころには、夜の帳は徐々に上がりその姿が登り切っていない朝日に照らされ多数の航空騎があらわになっていた。
四発騎を先に着陸させて、のちに海が着陸する。
海が着陸している最中に四発騎にはタンカがつけられ負傷している人間が運び出されていくのが確認できた。
「ふう、やっと着いた」
騎を止めFM一九九をどうやって引っ張っていこうか思案していると、いつもの整備兵が走ってきた。
「はあ、はあ、お帰りなさい」
「四騎だ」
「えっ」
「四騎喰った」
一瞬当惑する整備兵に海は誇らしげに語り掛けた。
「発動機の調子はすこぶる良かったよ」
「それは、交換できる部品をスチューザンのにしといてよかったですよ」
今度は整備兵が誇らしげに語った。
「そちらはなんです?」
「これ、FM一九九なんだけど、たまたま後ろから撃った騎の天空騎士だけ滑り落ちてこいつだけが残されて飛んでいたので持って帰ってきたんだよ」
首を伸ばして覗き込む整備兵に海は一連の出来事を説明した。
「あはは、そいつは豪快だ」
「ただ、降りるのがやっとで運べそうにないから手を貸してくれないか」
「任せてください、おーいみんな手伝ってくれ」
整備兵の掛け声とともに仲間がわらわら集まって来た。
彼らは一同に空母搭載型のFM一九九に興味を持ってキラキラした目で眺めそれっと勢いよく持って行ってしまった。
「おーい、こっちも持って行ってくれい」
仕方なしに海は自分で整備場所へ運んでいく。
この何気ない海の功績は大きかった。
一つは今までヴェールに包まれていた艦載騎としてのFM一九九の航続距離をはじめとしたデータを取れた事。
もう一つは天上騎士の忘れ形見の日記が残されており、おおよそではあるがツェッペリンの行動パターンや洋上での補給場所、寄港予定までもが赤裸々にされたことだった。