俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記   作:クワ

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命を懸けても守りたいものがある

「第一波離陸開始」

 

 まだ草木すら眠っている午前四時、その眠りの暗幕を切り裂くように発動機の爆音が響く。

 

「ミアのために父さんに手紙を書かないとな」

 海はカバンに入った便せんを出すと父にミアの経歴と名字をそのままに養子にする旨の手紙を書いて写真を数枚入れ封をして、海軍の郵便担当の職員に託した。

(検閲されるだろうが、かえってその方がよいかもな)

 

 ミアを探すと、飛行場まで来ていて心配そうな目で海を見ていた。

「ミア、おはよう」

「海さん、おはようございます」

「ごめんね、今日はお留守番で」

 ミアは首を振り海を見る。

「どうした?」

「……海さんが、死んじゃったら……」

「孤児院がいやなのかい?」

「それもあるけど……」

 

 海は、泣きそうなミアの頭を撫でて優しく語り掛ける。

「今日から、俺がミアのパパになってあげるから孤児院とか行かなくても大丈夫だよ」

「……海さん」

「これが俺の書いた証明書。もし俺が戦死してもこれをもって翔陽の大使館に行けば大丈夫だよ」

「秋川って覚えてね。心配しないで、俺の親にもしっかり連絡したからね」

「でも」

 何か言おうとしているミアに、海は笑いながら「うちの親は優しいから本当に大丈夫だよ」と語り掛けた。

 

「そろそろ行かないと」

 そう言って、海は走り出す。

「海さん」

「バイバイ、またな」

 

 ツェッペリンは予想通りのバードー海峡南部を通過する航路を取っており、まず第一波として明朝より攻撃できるよう準備、戦闘騎隊を制空隊と護衛隊とに分け制空隊により周辺空域を制圧し、しかる後雷撃隊および爆撃隊で護衛についているポケット戦艦および巡洋艦、駆逐艦などを攻撃。

 それと同時刻に、四発および双発の爆撃騎隊は直掩隊を伴い周辺飛行場を爆撃、これに関しては救援の戦闘騎隊を出させぬため一時的に飛行場を使用できぬよう無力化すればよい。

 

 制空後、敵に制空権を渡さぬよう順次戦闘騎隊を繰り出す。

 第二派にて、裸になったツェッペリンの魔法障壁を破壊、しかるのちにツェッペリンを攻撃、撃沈する。

 

 少数ながら第三派も準備、これは旧式騎および一波攻撃のち帰還した精鋭の一部を充てる。

 

 各基地より無線が飛び交う。

「まあ壮観なこと」

 スカーレットは流石に呆れを通り越して感心している。

「今回は、マーガレットさんの部隊で頼むぞ」

「ああ、任せとき」

 

 第二派に出撃するパーセフォニー隊および護衛空母隊は、海の隊を一時的にマーガレットが率いる形になり、海及びノワルド隊が護衛に付く。

 他に翔陽の二航戦、スチューザンのツーミダブルなどの空母搭載騎、カール自由天空騎士団、各基地航空隊などが制空隊として先行する隊、護衛隊として随行する隊、攻撃隊、急降下爆撃隊として雷装、爆装する隊など新旧国籍様々な彩り豊かな編成になっている。

 

 第一波が出撃した後、飛行場には第二派の飛行隊が引っ張り出され試運転を開始し始めた。

「お嬢様、お待たせいたしました」

「マリー? どうしたのその恰好は」

 驚いたマーガレットの視線の先には、いつものスーツではなく飛行服を来ているマリーの姿があった。

 

「射撃の訓練は受けておりますお嬢様」

「あなたまで死ぬことは……」

「お嬢さまを御守りすることが、先代より仰せつかった使命ですから」

 マリーは右手を胸の前に掲げる。

「ありがとう、マリー」

 

 マーガレットの騎体は、スチューザン最新鋭のパトナムの発動機をヒッポグリフの選別品に換装した試作型で、それを新型のターボで今まで以上の出力を確保してある。

 重量のある対魔法障壁用爆弾を運ぶにはそれでも心もとないとの意見もあり、心配の種でもあった。

 

「第二派、離陸開始」

 まずは制空隊から先発。 先行して制空権を確保・維持せよ。

 

 次いで基地航空隊、一波目が撃ち漏らした残存艦を排除せよ。

 次はマーガレット様の隊、およびカール自由天空騎士団。

 その後は空母艦載騎隊および翔陽二航戦。

 

「三上、見守ってくれよ」

 海がマーガレットを眺めていると、向こうも海の視線に気付いたようで、視線の主を見やりとても嬉しそうに微笑んだ。

 

「絶対に守らないと」

 海が微笑み返すと、お願いしますといったのだろうか口を動かし頭を下げた。

 

 自然に海も頭を下げ、自分でも顔が綻んでいるのが分かるぐらいに自然に笑っていた。

 基地航空隊は時刻を合わせて、すでに離陸進撃している隊もあればこれからの隊もあるだろう。

 

 マーガレット隊、離陸お願いいたします。

「ふぅ」

「マリー行きますよ」

「は、お嬢様」

 マーガレットは一息つくとマリーに声をかけてスロットルを開いた。

 

 蓄魔石の魔力とマーガレットとマリーの魔力がホウキに供給されて出力メーターが上がってゆく。

 スピードが徐々に上がって滑走路の線が段々と繋がって見えてくるころ、後輪の感覚がフッと消えたかと思うと、騎体はゆっくりと浮き上がり地面と決別することができた。

 ダリーやマーガレット、佐那たちがこれに続く。

 

「よし、離陸だ」

 海は魔力をホウキに込めると、名誉は元気に魔力を噴出し勢いをドンドン増してゆく。

 

「よし」

 三上の騎には魔探が付いていない。

 

 念のため帰還の進路用の地図を探すためポケットをまさぐる。

「何だコレ?」

 ポケットにビンのようなものが入ってるのに気が付いた。

「あっ」

 前に整備員から貰ったツカポンだ。

 再びビンをポケットに突っ込み中をまさぐった。

 

 その後地図はすぐに見つかって安堵すると共に帰れるか分からないこれからの戦いに思いを馳せた。

「バードー海峡南部だからそこまで時間はかからないだろう」

 

「コチラ第一波飛行隊、敵ツェッペリンおよび護衛艦発見、攻撃に移る」

 

「トトト」

「敵直掩騎多数、交戦中」

 

 次いで基地爆撃に向かった隊の報告が入る。

「ショーボール飛行場爆撃成功、離陸準備騎多数撃破」

 

「ラ・メーブル攻撃開始」

 

 その後も続々と報告が入る。

 

「プロイデンランド型撃沈」

 海は景気のいい報告を受けて、この時は苦労しないで到着できるかなっと漠然と考えていた。

 

「敵直掩隊、遠方より来襲」

 敵も空母を守ろうと必死なようだ。

 

「敵駆逐艦撃沈」

 味方も奮闘している。

(俺も頑張らなくては)

 

 マーガレット隊は急降下爆撃を敢行するため高度は千二〇〇、雷撃隊が七〇〇、戦闘騎隊がそれぞれ一五〇〇、一〇〇〇、八〇〇に位置づけている。

 

 あと十分もすれば敵が見えてくるはずだ。

 ここまで迎撃騎が来なかっただけでも制空隊が奮闘しているのがうかがえた。

 

「敵騎魔探に写る」

 無線の報告を受けながら、目線を回すと上空からキラキラッと光が零れた。

 

「上だぁ」

 敵に向けて魔銃を放ち知らせると同時に魔導力を増魔石から海の魔力に切り替えた。

 

 名誉の噴出魔力が勢いを増し、少しのだるさが襲ってくる。

 

 レバーを引いて増魔石を切り離すと、敵の襲撃を見逃さじと備えた。

 護衛騎は、その任務のため爆撃騎より離れられない。

 

 守ることが任務なのだ。

 

「お嬢様、上からくるそうです」

「はい、みな密集しましょう。間隔を詰めてください」

 海は滲み出る汗を拭くこともなしに必死に他に敵はいないか目を凝らしていた。

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