俺たちゃ翔陽天空騎士隊~第二次サマイルナ大戦空戦記   作:クワ

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エピローグ

 ちゅんちゅんちゅん

 昇京の海軍病院の軒先(のきさき)で雀の親子が仲良く会話している鳴き声が響くころ。

 

 サ――――

 

 カーテンを勢いよく引く音が聞こえる。

 

「海、おはよう、今日の体調はどう?」

 明るい日差しが海のこけた顔に降りかかった。

 

「ホント、色々聞いた時、母さんビックリしたんだから」

 海は射し込まれる太陽光に抗い、薄目を開け母親を見る。

 

(洋服を着ている、ミアと一緒かな)

「ああ、良かった起きたのね」

 母が嬉しそうに微笑む。

 

「……ミアは」

「ああ、ミアちゃんね、お花の水を取り替えに行ってるわよ」

「そう……」

「あっ言ってるそばから戻ってきた」

 

 母がにこやかに振り向くと花瓶を持ったミアがよろよろと歩いて来た。

 また洋服を買ってもらったのだろうか、以前着ている物と違う服を着ている。

 

「ミア、おはよう」

「お兄さ……ん、おはようございます」

 

 ミアが棚の上に花瓶を置こうとするが、届かないため少しばかり背伸びをした。

 

「ミアちゃん、危ないわよ」

 そう言って母はミアの持っている花瓶を支えて、一緒に棚の上に置いた。

「ありがとうございます」

「いいのよ、ミアちゃんは本当にお人形さんみたいでかわいいんだから! 母さんミアちゃんの事大好きよ」

 

 父から聞いた話では、私の手紙を読んだ両親は、未婚なのに養子を取るのかとビックリ仰天したのだが、事情が事情でもあり父が引き取ると色々駆けずり回って書類を修正したらしい。

 

 私がミアと一緒に西京に帰ってきた時に、私自身はまだツカポン過剰摂取の後遺症であまり記憶が無いのだが、両親、特に母は一目見てミアを気に入り、よく連れまわしているとのことだ。

 

 海がゆっくりと体を起こすと、ミアが駆けつけてきて支えてくれる。

「母さん、新聞あるかな?」

「海、まずは水分を取りなさい」

 以前ほど痙攣が出なくなったとはいえ、時々出るので警戒しての事なのは分かる。

 

 水を飲んでいると、母は新聞を持ってきてくれた。

 翔陽・スチューザン連合、北海の戦いに快勝。

 次は、メリアン連合国、コービィー砂漠の秋川司令官に援軍。

(姉の事だ)

 名参謀秋川 真好の孫、秋川 椿司令官の元にメリアン連合国が陸空の援兵を出すことが分かった。

 メリアン連合国は、スチューザンのマナンプトン公マーガレットと椿の弟海とのロマンスからツェッペリンに対する貴族としての気高き自己犠牲を聞き、上院・下院ともに全会一致で可決、大統領もサインしプロイデンベルクに宣戦布告し、翔陽、スチューザンおよびスーズルカに武器を送ると共に各戦線へ、まずは航空騎を送ってしかるのち魔動歩兵を送る手筈を整えたとの事。

 

「……マーガレット……あなたの死は無駄ではなかったよ」

 

 海は静かに新聞を畳んで窓の外を見やった。

 まるで窓にはめ込まれたキャンパスのような青空に真っ白な雲が数個ふわふわと浮かんでいる。

 

「海、母さんたち帰るからね」

「そうそう、ちゃんと朝ごはん食べなさいよ」

「お兄ちゃんバイバイ」

「母さんありがとう、ミアもバイバイ」

 海は二人の方へ向き直って別れを告げた。

 

「ミアちゃん、帰りにどこ寄ろうか」

「でも……迷惑なんでは……」

「いいのよ、気にしないでついでだから」

 母とミアとの会話を聞いていると思わず苦笑いが出てくる。

 

「どっちがついでなんだか」

 

 海が再び窓の外へ目をやると、帰ってゆく二人の姿が段々と小さくなっていき、角を曲がってその姿は見えなくなった。

 

 天空では真っ白な雲は風に揺られてゆっくりとこちらに流されてくる。

 マーガレットの魂が海へ会いに来たかのように。




 俺たちゃ翔陽天空騎士隊をお読みいただきまして誠にありがとうございます。
 この天空騎士隊のスピンオフ作品であるの荒野の椿が脱稿しまして、あとがきを書いたもので今更ながらこちらにもと思いまして書いております。
 この作品の原案が生まれたのが、今から20年ほどまえ、私がアニメーションの制作進行を生業にしていた時でした。
 魔法使いってほうきで空飛ぶけどさ、相手を何で撃ち落さないんだろ。これが当時の私の中で疑問にあがりまして色々と設定を考えておりました。
 航空機の歴史としまして、少し長くなりますが、1903年ライト兄弟が飛行に成功します。その後、第一次世界大戦で、観測気球にかわる偵察兵器として着目されますが、この時点では敵の撃墜するどころか、すれ違ったら手を振ったり敬礼したりと牧歌的な様子だったそうです。
 それもしばらくして、相手の目である航空機を落としてやろうという考えが出て来て、まずは石のぶつけ合いからエスカレートしてライフルの打ち合いになり、複座に旋回式の機関銃を装備するまでにまで発展し、その後戦闘専用の前方に固定機関銃を備え付けた機体が発明されました。
 それと同時に空中から爆弾を落とせば大砲の届かぬ奥地を攻撃できるとしてこちらも開発が進み、どんどん機体は大きくなり、末期にはドイツとイギリスの都市を戦略爆撃しあうまで発展しました。
 また照準器の登場によって命中率が飛躍的にあがったり、陸地以外でも運用できるよう水上機が発展し、それの乗せる軍艦が製造され、その発想の延長上として第一次世界大戦後航空母艦の開発が列強で進んだという事があります。
 そう考えますと、人の思考など似たようなもので、ホウキで空を飛んでる以上異世界の軍人たちも同じように考えるだろうというのが私の中にあり、それを表現してみたかったということがありました。
 第二次世界大戦のパラレルワールドとしたのは、第一次世界大戦よりなじみが深いのと航空母艦を書きたかったというのがありました。日英同盟が継続している世界線で書かれているのは、昨今の世界情勢を鑑みて決めました。本来はマーガレットは翔陽の皇女、まあまだ名前は決めておりませんでしたが、の予定でした。
 ただ変えたことで色々とイギリス関連の勉強をして知識が増えたので、まあすぐ忘れてしまうでしょうが、それは良かったと思います。
 終わりに、この駄文および独り言にお付き合いいただきありがとうございました。
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