↑そろそろ注意喚起しなくて良いですかね?
オリ主はお馬鹿さんなので、その助けとなってくれる人が欲しいなと思って、オリキャラ3人出しましたが「原作キャラで良いな…」「3人もいらなかったな…」と思い始め……いえ、オリキャラ登場系ですが暖かく見守っていただけると幸いです。
「皆聞いてくれ。今回の中間テストに向け、放課後の時間を使い、クラス全員での勉強会を開こうと思う」
放課後。教壇に立ち、クラス全体を見渡しながら堂々と提案を告げたのは葛城康平だった。
「突然のことで面倒なのは百も承知だ。だが、この学校のルールが明かされた以上、我々が今取るべき行動は成績の底上げによる、ポイントの獲得だ。全員が高い水準を維持できれば、他クラスよりクラスポイントを大幅に引き離すことができる」
その言葉には、クラスを率いようとする者に相応しい責任感と説得力が宿っていた。元中学の生徒会だったという経歴は伊達ではない。早速行動を起こした葛城の姿に、Aクラスは真剣な表情で耳を傾けている。
賛同するように大きく頷く者がいる一方で、あからさまに「面倒だ」と顔をしかめる者や、様子見を決めて静観する者など、教室には様々な反応が渦巻いていた。
すると葛城は視線を動かし、席に座る少女へと言葉を投げかけた。
「坂柳もどうだ? 共に来てくれるならこちらとしても助かるが」
なぜ葛城がわざわざ彼女の確認を取るのか――その理由を口に出す者は誰もいない。彼女がこのクラスで無視できない異質な存在であることは、誰もがわかっているからだ。
指名された坂柳有栖は、小さく微笑むと、コツンと心地よい音を響かせて杖を鳴らし、教壇の近くへと歩み寄る。その足取りは優雅でありながら、どこか圧倒的な存在感を放っていた。
「素晴らしい提案です、葛城くん」
「…賛同してくれるか」
葛城の表情がわずかに和らぐ。
「ええ、勉強会そのものには。――ただし、全員参加には反対です」
「……理由は?」
再び葛城の眉が不機嫌そうにピクリと跳ね上がる。教壇を挟んで対峙する二人の間に、目に見えない火花が散った。
「クラスの中には、すでに自分なりの勉強法を確立している生徒もいるでしょう。一律で拘束してそのペースを崩すことは、かえって効率を悪くします。それに中には、集団行動が苦手な方もいるはず。嫌々参加させたところで、やる気の低下に繋がるだけではありませんか?」
それは、クラスの状況を見極めた上での合理的な意見だった。だが、葛城も己の信念を曲げるつもりはない。腕を組み、低い声で反論する。
「それも一理あるな。だが、この勉強会にはもう一つ意味がある。クラス全体の結束の強化だ。強固な信頼関係を築くことは、結果として全体の成績維持にも繋がるはずだ」
「ええ、結束は大切ですね。ですがそれは勉強会でなければ得られないものでしょうか?」
「今回の最優先目的は、あくまで試験での減点を防ぎ、成績を引き上げること。そこへ結束という別の目的まで混同させてしまえば、どちらも中途半端になりかねません。まずは試験で結果を出すこと。その後に親睦を深める機会など、いくらでも作れます」
坂柳の言葉に、葛城は反論の言葉を探すように少し考えこむ。
「もちろん、参加したいという方を止めるつもりはありません。ですが、自分の勉強法を持つ方や、一人で集中したい方まで巻き込む理由はないはずです。参加はあくまで、本人の意思に委ねるべきです」
葛城は目を閉じ、しばらく沈黙した後、深く息を吐き出して目を開けた。
「……そうだな。勉強は本人が主体的に取り組まねば意味がない。分かった、参加は任意としよう」
「各自のやり方を尊重する。だが、これはクラス全体の勝負だ。一人でやる者も、決して油断だけはしないでくれ。全員で成績を上げ、共にAクラスの勝利を目指そう」
坂柳の提案によって強制力を失ったことで「助かった」と言わんばかりに数人の生徒が安堵の息を漏らし、身支度を始める。葛城の言葉を受け止めつつも、自分のペースを優先する者、坂柳の意見に内心賛同した者たちが、それぞれの事情を口にしながら静かに教室を後にしていった。
◇
何か違和感を覚えた。この2人の普通の会話。まるで戦争状態の国家が会談しているかのような、じりじりとしたぎこちない空気を感じた。
教室の隅――たまたま集まっていた俺、桜井、万城目、天樹の4人は、周囲に聞こえないよう、コソコソと声を潜めて近くにいる湊に質問する。
「ねえ湊」
「どうしたの晴人くん」
俺の小さな呼びかけに、授業の復習でノートに熱心にペンを走らせていた湊が、囁き返してくる。
「あの2人って……もしかして仲悪いの?なんかぎこちなくない?」
視線の先では、教壇の葛城と、席に座ったまま優雅に微笑む坂柳が対峙している。俺の目には、2人の間に漫画のような視線ビームのぶつかり合いが起きているように見えた。なにかバチバチしているのだ。
「あー……僕もそこまで詳しくはないんだけどね。なんかクラスの中で、大きく二つのグループに分かれてるみたいだよ」
「グループ…?」
「水瀬さん、今まで気づいていらっしゃらなかったのですか?」
俺の言葉に、万城目が驚いたように聞いてくる。
「今、坂柳と葛城の両者でクラスをまとめようと動いている。一言で言うならば、派閥争いだな」
万城目の隣で、腕を組んで黒板を眺めていた天樹が、静かな声でそう付け加えた。
「派閥争い、なんかドラマみたいだね。……ちなみに、2人もその……どっちかのチームに入ってたりするの?」
「私は……どちらかと言えば坂柳さんですかね」
坂柳側なんだ。確かに万城目さんが坂柳と会話するところを何度か見たことがある気がする。
「そうなんだ。坂柳と仲が良いの?」
「そういうわけではないのですが……坂柳の名前は、家の事情でよく耳にしていましたから。この学校の理事長も、坂柳さんのご家族です。政財界に強い影響力を持つ名門であるため、おそらく幼少期から相当な教育を施されているはず。葛城さんも良いですが、坂柳さんの方がリーダーとして遜色ないと考えます」
(えっ、理事長が家族なの!?)
やっぱりとんでもない大物なんだな、坂柳。
気になって手元の学生端末を開き、学校の役員名簿を検索してみる。『坂柳成守』という名前と共に表示されたのは、スーツを綺麗に着こなした、優しそうなおじさんの顔写真だった。
端末を閉じ、顔を上げると調べていた所をバッチリ見られていたようで、周りの3人は「気づいてなかったの?」と、ちょっと怪訝な顔をしていた。俺はこほんと咳払いをして気を取り直し、天樹に視線を向けた。
「天樹もその……派閥に入ってるの?」
「そうだな…葛城の方になるのか。まあ、大して帰属意識はないがな。少し坂柳に対して不気味に感じていてな」
「不気味…?そうかなぁ…良い人だと思うけど。」
「…」
俺の反応に対し、天樹は黙り込んでしまった。
「なんていうか綺麗に意見が分かれたね。…2人ともクラスの中で喧嘩とかしないよね?」
俺が本気で心配すると、2人ともハッと鼻で笑った。
「いや、どっちが勝とうが俺にはどうでも良いことだからな」
「同じく。私自身の評価に響かないのであれば別に。」
冷めてるなぁ。俺にはこの割り切ったドライな感覚がちょっと眩しくて、ちょっと怖い。
「桜井はどうだ?」
「僕は……どっちでもないかな。この学校に関しては先導する人が必要なのは分かるけど、正直、自分の勉強を優先したいかな」
「どこにも属さず…か。 なるほど」
みんな自分なりの考えやスタンスを持っている。派閥争いに1ミリも気づかず、のんびり暮らしてた自分が少し恥ずかしく思えてくる。
「…水瀬さんは、お二人とも仲がよろしかったですよね?どうなさるのですか?」
うーん。どちらとも敵対したくない。たくさん恩がある葛城、何かと優しくしてくれる坂柳。正直、分断などせずクラス一丸となって頑張るべきだ。しかし、それは2人が一番分かっていると思う。だからこうしてバチバチしているわけで。
「……2人とも好きだから、できれば争ってほしくないな……でも、2人ともクラスを勝たせようとしてるんだよね…」
「俺は俺にできることを頑張って、2人とも応援することにするよ」
「それがいいと思う。深入りしない方が無難だよ」
優柔不断だが仕方がない。とにかく俺は自分のことに集中しなければ。
◇
勉強会の準備が始まった。勿論、俺は勉強会に参加だ。このクラスで一番学力が危ないのは俺なんだから、今回の勉強会は願ってもない時間だった。
机を動かし、グループ席をいくつか作っていると、ふと心底どうでもいいことを思いつく。まだ勉強は始まってもいないし、ちょっと雑談しても大丈夫だろう。俺は優雅に座っている坂柳に近づき確認する。神室と橋本とで何やら話し合ってるみたいだ。邪魔をしないよう隙を見て声をかける。
「ねえ坂柳」
「はい」
ニコニコとしてる坂柳に対して側に控えていた神室と橋本は一瞬だけ顔を見合わせ、俺を怪しむようにジロジロとこちらを見てくる。派閥でピリピリしてるのは知っているが、そこまで邪険にしなくても。二人の反応に少し傷つきながらも質問を続ける。
「坂柳も勉強会参加するの?」
「はい。私もこのクラスの一員ですので」
「おぉ…!それでさ…変な意味じゃないんだけど、坂柳って勉強するの?」
「………と申しますと?」
「あっごめん!馬鹿にしてるつもりはないんだ!坂柳って一を聞いて十を知るイメージで!全部最初から知ってそうに見えてさ!なんていうか…コツコツ勉強してる姿が全然想像できないんだよね!」
坂柳は意外そうに目を丸くして、パチパチと素早くまばたきをした。すると橋本が、まるで絵に描いたようにずっこけた。あのクールな橋本がずっこけているところを初めて見た。神室は困惑しながら「…はぁ。」といった感じで呆れている。
「今聞くことかそれぇ!?」
「え?でも気にならない? 坂柳って教科書を一瞬見ただけで全部理解しちゃいそうじゃない?」
橋本は「悪いね僕くん〜今大事なお話ししてるんだよ〜」と冗談混じりに俺を遠くへ押し出そうとする。それを坂柳は手で制した。
「ふふ、買いかぶりすぎですよ水瀬くん。私も皆さんと同じ、ただの人間です。努力をしなければ知識は身に付きません。勉強はしますし、授業中にはこうして、要点をノートに書き留めておりますよ」
「ノート取るんだ…」
「…心外ですね。取りますよ」
呆れ果てたように頭をかく橋本をよそに、坂柳は手元に置いていた自分の薄いノートを開き、晴人に見せるように掲げる。
「へえ!見せて見せて! ……おお……!」
ノートを覗き込んだ晴人は、思わず声を上げた。そこにあったのは、およそ高校生が書いたとは思えないほど、整然と並んだ美しい文字と図式だった。先生達の長ったらしい解説が、坂柳の手によって、まるで一枚の洗練されたアートのように完璧に要約されている。橋本と神室も気になったのかチラチラとノートを見ていた。
それにしても要点…要点?本当に要点かなこれ。ホワイトボードや先生の言ってたことの『先の先』を書いてある気がするのだけれど…。本当に高校一年生?
「一を聞いて十を知る、などという便利な能力は持ち合わせておりません。ただ、先生の話や教本の内容を、その場で既存の知識と結び付けながら整理しております。ただ、授業中に内容の大半を理解してしまいますので、長時間机に向かうことは少ないかもしれませんね。」
「…なるほど?」
「本当に分かってんのかよお前……」
橋本のツッコミが入ると同時に、葛城が端末を片手に再び教壇に立った。直後、AクラスのグループトークにPDFファイルが送信される。
「皆、端末を見てくれ。現在の参加者から相性・成績を軸に班分けを考えた。異論があれば聞こう」
送られたPDFは、指導役・生徒役に分かれたグループ表だった。抜けたメンバーの穴を埋めつつも、教えるのが上手い生徒がつくようになっていて、お互いの得意・不得意まで完璧にカバーされている。凄いな葛城。一瞬でこんなものを考えてしまうだなんて。
「あーあ」
「え?」
神室が珍しく苦笑まじりの声をあげる。どうしたのだろう。そう思っていると、葛城がこちらの方に近づいてきた。
「坂柳。お前には指導役を頼みたい。が、身体の負担もある。必要なら別の者と交代してもいい」
「お気遣いありがとうございます。しかし、ご心配には及びません。立ち続ける必要もありませんし、教えることに支障はありませんよ」
「そうか。だが無理はしないように」
坂柳の返事を聞くと、葛城は再び教壇へと戻っていった。
「先越されたな。姫さん」
橋本が少し肩をすくめながら坂柳に笑いかける。
「先越されたって…班分けのこと?」
「姫さんな、既に勉強会のグループ分け作ったんだよ。機を見て配布するつもりだったんだけどな。」
「えっ!?ご、ごめん坂柳!邪魔しちゃった!?」
そうだったのか!? 応援すると決めたはずが、結果的に妨害することになってしまった。せっかく頑張って作ったはずなのに申し訳ない。今からでも坂柳版の班分けを発表しないか提言しようと焦る俺に、坂柳は静かに微笑んだ。
「問題ないです。配置は2、3人ほど変わりますが、全体としてはほぼ同意見です。この程度の差に意見するなど、非生産的でしょう」
PDFを見ながら坂柳が説明してくれる。その様子をじっくり観察してみるが、本当に怒っているようには見えなかった。焦る様子もなく、何事もなかったかのように振る舞っている。
「随分熱心に話してたじゃない。坂柳」
神室が少しいじるように話しかける。しかし、坂柳は相変わらず飄々とした様子で応じた。
「ええ。楽しい時間でした。ただ…」
「ただ?」
すると坂柳から大量のPDFが届く。全て試験範囲内の問題集だ。
通知。通知。通知。通知。通知。
待て、通知音が止まらない。大量の問題が次々と送られてくる。
「少々予定が狂いましたので、その責任は取っていただきます」
トークの最後には、『明日までに全て解答してください』『もちろん、全問です』という文面。待って! こんな大量の課題、明日までは絶対に無理だって!
「……えぇぇぇ!」
本当にごめん坂柳。
◇
班分けが終わり、それぞれが指定された席へと移動し始める。教室のあちこちで椅子を引く音や教科書を開く音が響き、勉強会の空気が出来上がっていく。
先ほどの大量の宿題のことは一旦頭から消し去ることにして、自分の席へ向かいながら、俺は大きく息を吸い込んだ。
「皆、配置についたな。では始めよう」
「よろしくお願いします!!」
教室中に響き渡るような大声で叫ぶと、一瞬だけピタリと空気が止まった。全員の視線が一斉に俺へと集まる。しまった、少し大袈裟すぎただろうか。
というか、挨拶をしたのは俺だけだった。普通「始めます」と言われたら「よろしくお願いします」と返すものじゃないのか。
いや、そうだった。Aクラスって、静かで落ち着いた人が多いんだった。一カ月も経ったのにまだ慣れないな…。…よし落ち着こう。挨拶は滑った、でも今度はこれなら乗ってくれるはず!恥ずかしさをかき消すよう再び大声を
「……よーし! みんな頑張ろう!!」
「……運動部みたいな掛け声だな」
吉田に呆れ顔で突っ込まれた。と同時に、教室のあちこちからクスクスと小さな笑い声が漏れ始める。また悪目立ちしてしまった。ふざけたつもりは毛頭なかったのだが……。
パン、パン。
すると、ため息混じりに立ち上がった葛城が手を叩き、教室の視線を自分へと集め直した。俺をフォローしてくれたのだ。ありがとう、葛城。自己紹介の時のデジャブみたいだが、本当に助かった。
「では、改めて始めるとしよう。分からないことがあれば、すぐに質問をしてくれ」
葛城の言葉で、教室内に再び真面目なモードが戻る。しかし、その雰囲気は先ほどよりも少し柔らかく、温かいものに変わっていた気がする。
勉強会が無事に始まったのを見届けると、葛城が教壇を下り、まっすぐこちらへ向かって歩いてきた。
「水瀬、意気込みは評価しよう。だが小テストの結果を見る限り、お前が今回最も重点的に学ぶべき生徒だ。遠慮はしない。徹底的に叩き込むぞ」
「うん!葛城! 俺、みんなの足を引っ張らないようにたくさん勉強するよ!」
「……その意気込みだけは満点だな」
「本当に元気だね、水瀬くん……」
葛城や近くの湊が、苦笑しながら俺を見つめていた。
◇
「葛城!作ってくれたプリント、全部解けたよ!」
プリントを解き終えたので葛城に見せに行くと、すでに課題を終えていた戸塚に後ろから覗き込まれた。
「どれどれ……この戸塚様が見てやろう。……なんだ。結構解けてんじゃねえかよ水瀬」
覗き込んできた戸塚が意外そうな声を上げる。すると、近くに座っていた西川がくるりと振り返り、意地悪そうに目を細めた。
「伊達にAクラスの席を勝ち取ったわけじゃないってことね。ちょっと意外。声が大きいだけのお馬鹿さんかと思ってたけど……」
「ありがとう西川!」
「…褒めてないけど」
俺がキラキラした満面の笑顔で喜ぶと、西川は心底困惑して「なんだコイツ」といった顔で前を向き直してしまった。
「喜んでいるところ悪いが、水瀬。まだそこは基礎の基礎だ。ここから更に難しくなるぞ」
「うん!」
その後も勉強会は続いた。色んな人に教わりながら、少しずつ問題が解けるようになっていく。勉強は大変だったけど、不思議と楽しい時間だった。
……ちなみに、坂柳から出された大量の宿題は、その日の夜に徹夜をして辛うじて全て解ききった。
読んでいただきありがとうございます!
坂柳や葛城のセリフ・行動を考えるだけで凄い時間がかかりました…。変になってませんよね?もっと頑張らないと……。