ツクヨミに出会いを求めるのは間違っているだろうか   作:ウメバリス

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 いろP可愛くない?と思ったので投稿しました。
 よろしくお願いします。


ツクヨミに出会いを求めるのは間違っているだろうが

 仮想空間ツクヨミに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

 どこまでも広がる電子の世界。もう一つの現実。

 多種多様なキャラメイク。自分だけの最高のアバターを作り上げれば、ヤチヨに導かれていざログイン。

 視界に広がるのは幻想的な和の世界、そして多種多様なアバターのプレイヤーたち。

 

 時には武器を手に取り、プレイヤーと戦ってみたり。

 時には協力し、強力なボスに挑んでみたり。

 時には推しの配信を眺めてみたり。

 

 時には何をするまでもなく街を歩き。そして出会う、可愛いアバターの女の子。

 そうして芽吹く恋心。交流を繰り返して仲を深め、やがては現実でも会うようになり。

 そしてめでたくゴールイン。結ばれる二人。

 

 こんなラノベのような展開を思い描くのは、やっぱり中学生男子としての性なんじゃないだろうか。

 ツクヨミに出会いを、いや、ツクヨミに恋人を求めるのは間違っているだろうか?

 

 結論から述べよう。

 俺が間違っていた。

 

「……ツクヨミデビューから早半年。恋人ができるどころか、そもそも恋が始まらんのやけど。バグか?」

 

 そんな邪な考えを抱いてツクヨミデビューした俺、酒井龍一は半年の間、何一つの出会いもなかった。

 見込みが甘かったのだ。仮想空間広しと言えど、そう簡単に恋をしたい相手に出会うわけがない。

 

 ああ、あの時に戻りたい。高校に入学すれば入学祝いに買ってもらえたというのに、早く欲しいからと貯めてきたお年玉を全額使ってスマコンを買った俺をぶん殴ってでも止めるために。

 

「なんでもかんでもバグのせいにすんのやめな?ヤチヨが困ってまうやろ」

 

 そんなことを呟きながら学校の廊下を歩く俺の隣で、そんな正論をぶつけてくる少女がいた。

 

 名前は酒寄彩葉。俺の幼馴染。

 成績優秀で運動神経抜群、ピアノも弾けて人も好い。その上、街中ですれ違えば十人中九人が振り返るくらいには整った容姿をしている。男女問わず好意を寄せられている、スーパー美少女だ。

 

「しゃーないやん、なんかこう……思ってたツクヨミライフと色々と違ったんや」

「ツクヨミに変な期待抱きすぎや。そもそも、ツクヨミは出会いの場やあらへんよ」

「もうちょっと夢見させてや。まあ実際、運命の出会いなんてもんに憧れた俺がアホやったんかもなあ」

 

 実際、オンラインゲームのフレンドという関係から交際に発展してその後結婚、なんて話を聞いて勝手にツクヨミへの期待を膨らませていたのは事実。

 ヤチヨには申し訳ないことをしてしまったと心の中で手を合わせて謝罪する。

 

「……思うんやけどさ、なんでわざわざツクヨミで恋人探すわけ?現実でやればええやん」

 

 俺の言動を不思議に思ったらしく、怪訝な表情を浮かべて尋ねてくる彩葉。

 尋ねられた俺は首を横に振り、答える。

 

「現実は色々と厳しいんや。ツクヨミの方が、まだ可能性残ってる」

「いや、逆やない?」

 

 俺と彩葉がそんな話をしながら廊下を歩いていた、その時だった。

 

「酒寄!ちょっと時間ええか?」

 

 学校でも美人だと話題の先輩が彩葉に声をかけた。そして、隣にいる俺を見て複雑な表情を浮かべる。

 読み取れる感情は主に嫉妬。俺が邪魔だと、向けられる視線が語っていた。

 

「……はぁ」

 

 事情を察してため息を吐きながら、恐らく何一つとして分かっていないであろう彩葉に声をかける。

 

「先に校門行って待ってるわ。先輩、急いでるわけやないんで彩葉とゆっくり話してください」

「……そう。ほな、ちょっと酒寄借りるわ」

 

 先輩は俺の言葉にそう返すと、彩葉を連れて人気のない場所へと向かっていった。

 二人の背中が見えなくなるまで見送ってから、宣言通りに校門に向かって足を進めながら考える。

 

「……いやぁ、半年前に諦めといて正解やった。あの先輩、絶対彩葉のこと好きやん」

 

 これが俺が現実での恋を諦めている理由。俺の好きな人が大体、酒寄彩葉を好きになるからだ。

 

 そりゃあそうだと納得できる。

 

 彩葉は可愛い。それでいて成績優秀で運動神経抜群。時折見せるカッコ良さというギャップ。あんな魅力の塊がいたら、その側にいる俺なんて視界に入らない。

 しかも、今回のようなことは一度や二度ではない。十回はゆうに超えているだろう。

 

 失恋というものは辛い。だから失恋する度に、彩葉から距離を取ろうかと考える。

 しかし、無理だった。それをするには、酒寄彩葉との関係は居心地が良すぎるのだ。

 

 恋人は欲しい。けれど、彩葉の幼馴染ではいたい。

 この二つのわがままを叶える可能性のある手段が、ツクヨミで出会いを求めることだったというわけだ。

 

 さて、改めて問おう。

 

 現実での恋が叶わない俺が、仮想空間ツクヨミに出会いを求めるのは間違っているだろうか。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 改めて現実のクソゲー具合を確認したその日の夜、俺は出会いを求めてあるゲームをプレイしていた。

 

 俺がプレイしているゲームのタイトルは『KASSEN』といい、戦国時代をモチーフとしたフルダイブ型のアクションゲームだ。

 ここ数年のゲーム業界を席巻しており、プレイヤー数は国内外合わせてぶっちぎりのトップ。

 

 プレイヤー数が多いということは、それだけ多くの出会いがあるということだ。

 様々なプレイヤーと戦い、格好良く連勝。その中で出会った初心者の美少女プレイヤー好意を寄せられる……なんてこともあるかもしれない。

 

「……まぁ、現実はそう上手くいかへんけど」

 

 10戦ほど対戦した結果、全戦ともどうにか辛勝。対戦相手は全員ベテラン感漂う男性プレイヤーだった。

 

「アンタ、ゲーム上手いなあ!」

「どーも。そういうアンタもな」

 

 そう言って話しかけてくるのは、つい先ほどまで対戦していたプレイヤー。平安貴族の狩衣姿の男で、名前は確か……阿倍野みう氏とかいう名前だった気がする。

 

 ちなみに、俺のアバターはみう氏と違って現代チック。黒髪に赤い瞳、黒いパーカーに軽鎧、黒いズボンに茶色のブーツで、自分なりに格好良く仕上げたものだ。額には角も生えている。

 自分のこの姿を初めて見た時、正直めちゃくちゃテンションが上がったものだ。なんなら今もそう。

 

 プレイヤーネームは『リュウ』。

 速度と手数重視の短剣の二刀流で、とにかく動いて相手を翻弄し、その隙に連撃を加えるというスタイルだ。

 

「どうする?アンタが良ければもう一戦やりたいんだが」

「うーん……ありがたいお誘いやけど、遠慮するわ」

「そうか……まあ、無理は禁物だしな」

 

 みう氏にそう断りを入れ、俺たちは別れた。

 対戦ゲームで出会いを求めるのは難しいものだ。

 

 戦闘用のワールドから移動し、やってきたのは和の街並みが広がる平和なワールド。ここは様々な体験施設や休憩用のカフェがあるので、迷子になった初心者の女性プレイヤーと運命の出会いが……ないと思うけど。

 

「一応、一応な。出会いがあるかもしれんしな?」

 

 そんな言い訳をしながら街を歩き始め……十分後。

 

「……うん、疲れた」

 

 普段なら大丈夫なのだが、久しぶりの失恋で随分とダメージを負っていたらしく、体が疲れを訴えてきた。

 スマコンの長時間利用は目にも悪いし、そろそろ切り上げるべきだろう。

 

 明日こそはと意気込みながら、俺はスマコンを外そうとして……。

 

「うおっと!」

「うわあっ!」

 

 歩いていたプレイヤーと衝突した。

 声の高さ的に女性プレイヤーらしい。

 

「すんません、大丈夫で……」

 

 相手のプレイヤーに謝罪すべく視線を動かし、そして、俺は呆然と動きを止めた。

 

 目の前に現れたのは、可愛い美少女プレイヤー。

 青を基調としたストリート風の衣装で、着物にパーカーとベルトとブーツを合わせ、格好良い仕上がりに。

 頭には狐をモチーフにしたらしい獣耳。尻尾もある。

 

 紺色の肩まで伸びた髪は、とてと艶やかで。

 整ったバランスの良いスタイルに、十人中十人が振り返るであろう整った顔立ち。

 俺を見る瞳の色は、綺麗な深緑色。

 

「えっと……大丈夫、ですか?」

 

 そして、畳み掛けるかのように耳に響くは美しい声。

 

 やばい、死ぬ。マジで死ぬ。

 心臓が、かつてないほどの早さで鼓動する。

 

 半年ぶりの恋の衝動。いや、こんなにも心臓が高鳴っているのは生まれて初めてかもしれない。

 今までの恋とは比べ物にならないレベルの一目惚れ。

 

 非現実的な妄想は現実に。

 俺の心は今、目の前のプレイヤーに奪われた。

 

 

 仮想空間ツクヨミに出会いを求めるのは間違っているだろうか?

 

 

 最終結論。

 俺は、間違えてなどいなかった。




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