ルシフェルくんちゃんの王国日記   作:Revak

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第9話

 

 戦争後。

 帝国の首都アーウィンタール、その皇城にて。

 

「すまない、もう一度言ってくれ」

 

 執務室にて帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが引きつった笑みと共に帝国四騎士ニンブル・アーク・デイル・アノックに問いかけた。

 

「はい。王国の宮廷魔術師ルシフェルは無数の魔法陣を空に浮かべ、魔法陣から見たことない魔法を多数発動させ……五分も経たず帝国軍六軍を壊滅させました」

 

 先ほど述べたのと同じことをニンブルは述べた。

 

「フールーダはどこに行った?」

「それが、ルシフェルの元へ飛んで行き、そのまま帰って来てません」

 

 ジルクニフは空を仰いだ。

 空と言っても室内なので城の天井しか見えないが。

 

「フールーダ・パラダインが……あの魔法狂いがそんな行動をとるという事は、ルシフェルは最低でも第七位階を使える魔法詠唱者(マジック・キャスター)という事か」

 

 なんでそんな存在が魔法蔑視の王国になんて着いたんだ、とジルクニフは頭を抱えたくなった。

 ルシフェルについては多少調べがついている。

 

 王国の辺境の村、カルネ村に突如として現れ帝国騎士の格好をするスレイン法国の者たちを打倒しガゼフ暗殺の要である陽光聖典すら壊滅させた実力者。

 翼を持つ亜人種、あるいは異形種であり小柄な女である。

 享楽的な人間でカジノに行ったり適当にその日の気分で王国のどこかの街までその翼で飛んで行くこともある女だ。

 

「これからの我が帝国がとるべき行動は何か、忌憚のない意見を聞かせてくれ」

 

 ジルクニフのその言葉に執政の一人が口を開いた。

 

「降伏、ではないでしょうか。帝国軍を壊滅させられる強者が王国側に着いた上パラダイン様が王国側に行った以上こちらに勝ちの目はないと思います」

 

 正論だ。

 ジルクニフはあまりの正しさに満点を与えたくなったがそんなのを与えても意味はないので考える。

 

 その後も幾つかの意見が出て、議論が進む。

 最終的な結論を出すのに三十分かかった。

 

「表向きは属国化をする形にし、裏でルシフェルを帝国側に移籍させるよう動く。これでいいな?」

 

 ジルクニフが最終確認とばかりに真剣な瞳で言った。

 

 

 

 

 

 ■

 

 戦争から二週間後、リ・エスティーゼ王国王都、王宮の玉座の間にて。

 

「──により宮廷魔術師ルシフェルに侯爵の貴族位を与えるものとする。これより其方はルシフェル・イグノラ・デイル・サタナエルを名乗ると良い」

 

 ルシフェルは表向き神妙な顔をして膝をついていた。

 

「ありがたく頂戴いたします」

 

 そう笑顔を浮かべた。

 

 

 今、この王城ではルシフェル一人に対する勲章式を行っていた。

 例年ならば形だけでもポウロロープ候などに勲章を授与するが今年はルシフェル以外に貰う者はいない。

 何せルシフェルが一人突撃して五分も経たずに帝国軍を皆殺しにしたからだ。

 

 そしてそれに異を唱える者はいない。

 ルシフェルのあの魔法を見て、意見できる者などいなかった。

 

 魔法の後には爆発痕や切られた大地、熱の後などが今も残っているだろう。

 

「──そして……サタナエル候。其方が望むものを口にしてくれ」

 

 そうランポッサは神妙に問いかけた。

 

 その問いかけに式に出ていた他の貴族たちも唾をのんだ。

 

 王国の貴族は馬鹿だが、いざという時に何もできない馬鹿ではない。

 

 あの戦争に参加した者はルシフェルの力の強大さをいやというほどに知った。

 ルシフェルがその気になれば王都など一瞬で消え去るだろう。それだけの力をルシフェルは持っているのだ。実演されたのだからわからぬ馬鹿はいない。

 

 だからこそルシフェルを王国が制御できるのか、という不安が募る。

 レエブン候に至っては帝国が引き抜くか法国が持って行きやしないかと不安になっている。帝国は駄目だが法国が引き取ってくれないかとひそかに思っているが。

 

「それでしたら私に屋敷を一つと、魔法省に関して更なる予算を割り振って頂きたく存じます。あとは宮廷魔術師の地位の向上を」

 

 そうルシフェルは笑顔で言った。

 普段のルシフェルを知る者なら信じられない光景だろう。

 

「あいわかった。其方に相応しいだけの豪邸を与え、魔法省の予算を多く割り振ろう」

「ありがたき幸せ」

 

 こうして勲章式は続かなく終わった。

 

 

 

 

 

 

 これからもルシフェルは王国で活動し、ついには竜王国やドワーフの王国も救うことになるだろう。

 だがそれは別の話だ。

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