どうやら頼まれて向かった場所というのは獣人族の子供、ミュイの工房だったようだ。
「随分時間がかかったようだな」
頼んだ本人であるハカムさんもいる、
「何やら外で争いごとがあったようデスがお二人は大丈夫デシタか?」
「あ、あぁ。とりあえず怪我はないよ」
まさか争いごとの真っ只中にいた人物だなんて言えないな。
「争っていたのは亜人のヨウナ姿ヲした人達と聞いています。ですが争っていた人物の1人が回復魔術の使い手だったらしく、人々は事なきを得たとも聞いています」
「そ、そうだね」
リカバリーがあって本当に助かった。
「ところでハカムさん。これはもしかして」
俺はテーブルの上に置かれている半透明な石の塊を指差す。
「先日先行部隊が見つけた魔石のようなものだ。本物の魔石を見た君達に鑑定の手伝いを頼みたくてね」
なるほど。それで俺達が呼ばれたのか。
「それと獣人語の通訳も頼みたい。出来れば彼が共通語を覚えるまでは世話になれると助かる」
2人の様子を見るにミュイの共通語の勉強はあまり進んではいないようだ。
「それではミュイ、石を」
ミュイが石に手をかざすとそれは青い光を放つ。
「君達の目から見て、これは本物か?」
「確かに魔力を感じ取れます」
次の瞬間、石は六面体のクリスタルのように形を変えた。
「これは精製ね。本質を変化させることで魔力を引き出している。魔力触媒と言っていいわ」
「これはほぼ魔石と言っていいデス」
「フム。それだけ把握できれば問題ない」
大事なのは本物かじゃなく価値のほうか。
「後はアジャに任せることにして、私は王宮への報告があるので失礼させてもらう」
そう言い残してハカムさんは王宮へと戻っていく。せっかくだからあれも鑑定してもらおう。
「ミュイ、竜の鱗と竜の血というアイテムなんだけど、これも鑑定を頼める?」
「よく分かりませんが、見るくらいナラ」
アークドラゴンから受け取った2つを鑑定してもらう。すると意外なことが判明した。
「力が溢れてる。許可、契約?文字が浮かんでマスね。待ってくだサイ。これ自体に魔力があるのではなく、力が外から注がれていマス。ですが石の輝きが弱ってますネ」
アークドラゴン。もしかして何かがあったのか?
「マリー。急いでアレクセイに戻ろう」
アークドラゴンをどうこうできる相手がいるとは思えないけど、万が一ワンハンドが何かをしたとなれば心配だ。
町を後にした俺達はバイク、ロードゼロイダーに乗ると俺のスキルである旅路の案内者で一気に移動をする。
そしてアークドラゴンのいる遺跡に到着した俺達は中へと入ると親しいリザードマンからとある情報を聞き出した。それはドラゴンの卵が孵化したとの事だった。
もしや孵った小竜に何かあったのかとも思いつつ、アークドラゴンの下へと向かう。
「お主ら、来てくれたか」
「卵、孵ったんですね!」
話に聞いていた通りアークドラゴンの卵が孵化していて、彼女のもとには3体の幼い小竜がいた。
「うむ!小奴ら揃ってわんぱくでの、少々疲れていたのじゃ」
人型の分体を作ったアークドラゴンはそんな愚痴をこぼす。子育ての疲れであんな反応をしていたのか。どうやら心配は杞憂だったみたいだ。
「ここに来たということは例のモノを持ってきたということじゃろ?ほれ、勿体ぶらずに出すが良い」
「えと、あの」
お弁当を期待されてしまっているようだけど、どうしよう。今回は急ぎだったからここに持ってきてないんだよな。・・・うん、正直に言おう。
「すみません。心配で急いできたので今日は持ってきてないです」
「な、なんじゃと!?わしは子育てで苦労しているというのに!ぬしらは良いのう番が近くにおって。わしの旦那なんぞ長いこと帰ってきとらんぞ」
俺とマリーは番ではないけれど、それに関しては同情してしまう。
「わしも遊びたい!!せめて人里を襲いたい!!」
駄々をこねながらサラッと物騒な事を言ってくれる。
「可哀想とは思いますが、人里を襲うのは遠慮してください」
「遊びですか。俺達は週末に温泉旅行を計画していたんですけど、アークドラゴン様も良かったら一緒にどうですか?」
社交辞令感覚でアークドラゴンにそう話してみたのだが・・・これが思わぬ結果を招いた。
「行く」
そうそう断るよな。・・・え?今なんと。
「そうじゃ!この姿は分体にすぎん!本体で子育てをしつつ現で休息をとる。うむ、実に良い案じゃのう!よろしく頼むぞ人の子らよ」
こうしてアークドラゴンと約束をしてしまい、俺達は頭を抱えながら遺跡を後にする。
「社交辞令だったのに。まさか真に受けるなんて」
「竜相手に人間の社交辞令が通じるわけないじゃない!」
言われてみればご尤もである。
「そう言えばマリー。道中でこっちに戻ったら魔術師ギルドに報告と許可証を届けに行くって言ってなかった?」
「そうだったわ!急がないと遅れちゃう!」
「ならかわりに俺が届けてやろうか?」
「あなたは、スヴェン様!」
これが対魔特化魔術師のスヴェンとの初開口だった。
その後俺達はスヴェンと夕食を共にしたのだが、何処か怪しい雰囲気を警戒しつつあまり美味しくないコチラの食事の後にすぐ宿へと向かった。途中尾行されている気配には気づいたが、1度寝てしまえば関係ない。
「おやすみなさい」
宿で眠りにつき、意識が覚醒すると安定のゼッツルーム。コードゼロにサルノテとの戦闘を報告した俺はデイリーのガチャを回す。
「紫色のカプセムが2つか」
今回のガチャ結果は紫色のカプセムが2つ。それぞれ違うカプセムみたいだ。
【Wonder】
一つ目はワンダーカプセム。これは摩訶不思議な力が宿るカプセムらしいが、今まで以上に抽象的でよく分からない。
【Gravity】
二つ目はグラビティカプセム。名前の通り重力を操る力があるカプセムのようだ。
「マリーも」
「えぇ」
マリーが回した今回3度目のガチャ結果は、黄色いカプセムが出てきた。
「これは?」
【Plazma】
プラズマカプセム。電撃の力が宿るカプセムか。
『ほう、プラズマカプセムを引き当てるとは、君達の成長度合いが分かるね』
コードゼロはこのカプセムの事をよく知っているみたいだ。
『そのカプセムは一人前となったエージェントが引き当てるカプセムだ。それを引き当てたということは、君達は2人で一人前ということさ』
2人で一人前か。嬉しいような、複雑な気持ちだ。そもそもマリーはエージェントではないし、俺もエージェント訓練なんて受けてないんだから半人前扱いは当たり前といえば当たり前だが。
「そういえば気になっていたのだけれど、バクの世界でもこのカプセムの力は使えるの?」
使う必要もなければ、使う際の危険性を考えて試してなかったけれど、それは俺も知りたかった。もしそれができるなら現実でも変身できるってことになる。
『結論からいえば、使える。仮面ライダーゼッツへの変身も可能だ。とはいえ万が一にも一般人にCodeのことを知られてしまうのはリスクも多い。故に幾つかのセーフティがある』
現実で変身して戦うだなんてことはまずないとは思いたいけど、ワンハンドはオーロラカーテンシステムとかいう技術で世界を移動できる連中だ。存在が気づかれたら現実の世界にいつ来てもおかしな話じゃない。
「まぁ、向こうでゼッツに変身するだなんてことがないことを祈ってるよ」
そんな経緯もあっての現実世界。出社前にマリーと朝食を食べ始めた。
「アークドラゴンのこと、どうするつもりなの?」
マリーは日本へとアークドラゴンを連れてくる約束をした事を今なお気にしている様子だ。
「見た目は人間になれるといっても彼女は伝説級の竜なのよ。万が一のことを考えないの?」
まったく考えなかった訳では無い。
「たぶん大丈夫だと思う。一緒に来るのは分体だし、アークドラゴンにも理性はあるから、楽しませられていれば壊したいだなんて考えないはず」
そう判断する事にした俺とマリーはアークドラゴンも楽しめる旅行計画を考えていると、このタイミングで封筒が届いた。差出人は不明だがたぶんCodeからだろう。
コードゼロにはアークドラゴンの話もした。もちろんアークドラゴンも連れて旅行に行くという話もだ。ならばコードゼロも少なからず旅行のために少し動いてくれるだろうと考えてはいたが・・・。
「まさか旅行先のプランを複数組んでくれて、軍資金まで用意してくれるだなんて」
熱烈歓迎ムードなのか、万が一にもアークドラゴンを楽しませられずに町の破壊を許したらの考えなのか。
「まぁせっかくだからこのプランから考えるか」
元々旅行先と宿は決めていたけれど、プランまでは決めていなかったから実際助かる。
「あれ?そういやこの場所」
チラシに写る1つの場所の風景に薄っすらとだが覚えがあった。昔、本当に幼かった頃に誰かと一緒に行ったことがある。そんな気がしたからだ。
しかし俺は10歳よりも以前の家族の記憶を覚えていない。特に父親に関しては顔も思い出せない。
「もしかしたら父さんと行ったことがある場所だったりしてな」
父親との思い出の場所なのかもしれない。そう思った俺はせっかくだからその場所にも行ってみたいと考えて、旅行計画の行く場所に組み込んだ。
これは俺が知る由もない話。ワンハンド幹部達はこれまで俺を倒すに至らなかったが弱点は掴んだ事を議題にしていた。
「弱点なんて関係ないわ。真正面から力でねじ伏せてこその戦いよ」
「戦闘狂め。せっかく俺が弱点を掴んできたのだぞ。利用して戦え!」
「まあまあサルノテ。今回は僕が出向くつもりだから、僕が利用させてもらうよ」
自分がサルノテの見つけてきた弱点を利用すると告げたカラメテは出撃準備のために武器庫を開く。
「今回は現地民を利用するとして、現地民でも使えるであろうアイテムがいいよね。サルノテ、オススメはある?」
「レプリケミーカードなら人間の悪意に反応して姿を変えるから簡単に現地民でも使えるはずだぞ」
「悪くないけど悪意だけにしか反応しないからな〜。もっとこう欲望に直接くるようなのがいいかも」
「ならばこれならどうだ?」
サルノテは手に取った黒いスイッチをカラメテへと渡す。
「ゾディアーツスイッチか。いいね。これにしよう」
星座の力を宿すアイテム。ゾディアーツスイッチを現地民に使わせることを決めたカラメテは次に自分の装備を選ぶ。
「僕の装備は宇宙繋がりでこれにしようかな」
蜻蛉型の銃を手に取ったカラメテはオーロラカーテンをどの場所に接続するかを考え出す。
「確かに厄介な仮面ライダーを排除する事が僕らの計画には避けて通れない道だとは思うけど、だからといって計画を後回しにする理由にはならないよね。その過程で仮面ライダーゼッツを倒せれば御の字ってことで」
仮面ライダーゼッツを倒す事に固執しないで本来の目的を忘れてはいないカラメテはオーロラカーテンの接続座標をアークドラゴンのいる遺跡に定めて、異世界へと侵攻していた。
そしてこれもまた俺が知る由もない話。
「あの2人の気配は覚えた。間違いなくこの宿に入ったはずだ」
許可証を横取りしようと目論むスヴェンは俺達が泊まっている宿に乗り込み、俺達の部屋の前に立つ。
「この国にいる限り、俺の天啓から逃げることはできないぜ」
部屋の扉を蹴り飛ばすように開けたスヴェンと魔物の仮面をつけた小柄な少女は部屋の中へと乗り込んだが、そこに俺達の姿はなかった。
「アイツら!逃げやがったな!ちくしょう!おい、お前の死霊術なら気配がなくても追えるだろ!」
「は、はい!お任せください!」
小柄な少女は死霊術を用いて俺とマリーの居場所を探ろうとしたが、1時間経ってもまるでヒットしない。
当然だ。俺達は寝ることで肉体ごと世界を移動しているのだから。
「何処にもいねぇぞアイツら!」
そんな俺達を見つけられないスヴェン達は、怒り散らかしながら部屋を後にしたのだった。
「・・・あの男、コードセブン達と何かしら縁がありそうだね。もしかしたら利用できるかもしれない」
スヴェンに利用価値を感じたカラメテはさっそく接触しにかかる。
「君達、ここに泊まっている二人組に用があるんだよね?」
「あ?なんだお前は?」
「僕もあの2人に用事があったんだけど見当たらなくてね。せっかくあの2人に特別な魔道具を渡そうと思ってたのに」
「・・・魔道具だ?」
魔道具という言葉にスヴェンはピクリと反応した。
「よかったらこれを彼らに渡しておいてくれないかな?」
「・・・分かった。渡しといてやるよ」
「それじゃ任せたよ!それは赤いところを押したら起動しちゃうから気をつけてね!」
スヴェンがゾディアーツスイッチを受け取ると、カラメテは笑顔で手を振りながら去っていった。ご丁寧にそれの使い方まで教えて。
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