ツクヨミの天守閣にあるヤチヨの部屋で二人が話し合っている。
「オキ、来て貰って悪いけどヤチヨはもう少しかかりそうだ。また後で来るか?」
「FUSHIがよければ話しながら待っててもいいか?」
「もちろんかまわないぞ」
そういってウミウシの姿をしたFUSHIは胡座をかいて座っているオキの膝に飛び乗った。
「FUSHIは最近どうだ?かぐやが来るのもあって今年はかなり忙しそうにしてたけど休めてるか?」
「ボクをヤチヨや彩葉達と一緒にするなよ。しっかり休んでるし無理なんてしてないからな。ボクよりもヤチヨにいつも活動限界ギリギリまで起きてるのをやめるように言ってくれ」
呼びに行くたびに言っているけど聞いてくれないんだと言うFUSHIの言葉に悩ましげにあごに手をやる。
「俺もヤチヨに言ってた時期があったけど、あんなに楽しそうにしてるのを見ると何も言えなくなっちゃったんだよな。言うと悲しそうな顔をされるし」
「オキはヤチヨ達に甘すぎるぞ!無理しないように見守るのもいいけど、何かあってからじゃ遅いんだからな!」
ムッとして膝の上でピョンピョンと跳ねながら言うFUSHIに苦笑い。
「ヤチヨ達に甘い自覚はあるんだけど、どうしてもね。ヤチヨはようやく人と普通に話せるように、ライブできるようになって好きなことを思う存分して欲しいしさ。酒寄達はまだ子供だから色んなことを経験して欲しいし、やることに口を出して制限させるよりも自分で考えれるようになってほしいんだよね。もちろん注意はするけど、何かあったときには俺がすぐにフォローできるように動けるようにしておけばいいし」
「それに、本当にダメなときはFUSHIが止めにきてくれるだろ」
「そんなこと言っても騙されないぞ。ボクが止めるのとオキが甘いのは関係ないからな」
「これは手厳しい。でもみんなのことは信頼してるからさ。俺が何も言わなくたって大丈夫だよ。」
「オキが言うことに意味があると思うぞ」
そういうもんか?そういうもんだ。なんて話しているとヤチヨが用事を終えて戻ってくる。
「オキ久しぶりー!3日ぶりだね!」
「久しぶりって……毎日夜に会ってただろ?」
「ツクヨミで会うのとタブレット越しに会うのは全然違いま~す。二人でなに話してたの?」
「オキがみんなに甘いって話だ」
「ヤチヨに早く休んで欲しいって話だろ」
「なになに?私の話?オキの話?」
「ヤチヨが活動限界ギリギリまで起きてるのはやめて欲しいって話から俺がみんなに甘すぎるって話してたんだよ」
「俺もFUSHIもヤチヨに何かあったらって心配だからもう少し早く休んだらどうだ?ライブや人と話せるのが嬉しいのは分かるけど、かぐやが来てこれからが一番忙しくなるからこそ焦らず休みながらさ。俺も手伝うから」
「そうだぞ。彩葉に会えて嬉しいのは分かるし、かぐやが来て同じ未来になるか心配して焦るのは分かるけどヤチヨは一人じゃないぞ」
「会っていきなり心配されるとはヤッチョは果報者です。でも、8000年待った彩葉とのライブが目の前まで来てるんだもん。妥協なんて絶対にしたくないからライブが終わるまでは見逃して欲しいな」
「それに、オキはかぐやにばっかりご執心でヤッチョのとこに会いに来てくれなかったじゃん」
3日も会えなくて寂しかったのに。オキもおばあちゃんのヤチヨより若いキラキラのかぐやの方がいいんだ。オキだっておじいちゃんの癖に。なんていじけながら言ってくる。
「おい、FUSHI。赤ちゃんに嫉妬してヤチヨがめんどくさい彼女ムーブしてるぞ。何とかしてくれ」
「いやだ。オキが甘やかしすぎたのが原因だろ。自分で何とかしろ」
めんどくさいっていうなーー!もっとヤッチョにかまえーー!大事にしろーー!と騒ぐヤチヨをたしなめる。
「悪かったって。かぐやも大きくなったからずっと見ておく必要もなくなったからさ。ツクヨミに毎日ログインしてヤチヨに会いにいくし手伝うよ」
暴れていたのがピタリと止まりパァーと眩しい笑顔を向けてくる。
「ほんと!じゃあ今日は朝までずっと一緒にいてね!2日分だからね!」
「わかったわかった」
「あ!ヤッチョに毎日会いに来るのは絶対だけど、彩葉とかぐやのこともちゃんと見てあげてね!何かあったときだけ見るのはダメだよ!」
かぐやに振り回されてそんなことにはならないと思うけどね!と自信満々に胸を張って言うヤチヨ。
「急に注文が多いし、自信満々に振り回してましたアピールはやめな」
「えー!?オキだって嬉しそうだったよ~」
「嫌だなんて思わないよ。ヤチヨやかぐや、酒寄が楽しそうにしてると俺も嬉しいからね」
「オキ~!ヤッチョ達のこと大好きだもんね!」
「好きっていうか、大切に思ってる人には幸せになって欲しいって思ってるだけだよ」
もちろんFUSHIもな。そう言うとあれだけテンションが高かったヤチヨが照れてしぼんでいく。
「オキ、そういうとこだぞ」
「ヤチヨから振ってきたのに!?今までだって何回か言ってるし、これだけ長い間一緒にいるのに嫌いなわけなくないか?むしろ毎回その反応をするヤチヨが大袈裟なんだよ」
「大袈裟じゃないもん。そんな優しい顔と声で言われたら何回言われても慣れないし嬉しいんだもん」
「そうかねぇ。やっぱり大袈裟な気がするけど」
ムッとした後にいいことを思い付いた顔をしてヤチヨが話し始める。
「……ねぇ、オキ。私、オキには本当に感謝してるんだ。オキはまだ知らないけど、私はオキからたくさん楽しいことを教えて貰って、我が儘を聞いて貰って、これでもかってぐらい愛情をそそいで貰ったんだ」
「ドジって8000年前の地球に落ちちゃったときも彩葉とオキに会いたくて頑張ってきたよ。何もできなくて、一人だと寂しくて、どれだけ泣いても何も変わらなくて、生きるのに絶望しても死ねなくて、それでも二人にもう一度会いたくて。鎌倉でオキに会えたときはビックリしたけど、泣いちゃうぐらい嬉しかったんだ」
「彩葉ともう一度会えたのはオキがあれからずっと一緒にいてくれたからだよ。本当にありがとう」
ヤチヨの、かぐやの思いに触れて胸が熱くなる
「……オキ、照れてるでしょ~。ヤッチョの気持ち分かったかな~」
「急にそれはずるくないか」
「全部本当のことだもーん」
「そこまでのことはしてないと思うけど。……でも、感謝してるのは俺も同じだよ。鎌倉でかぐやと出会って自分の進む道が、やるべきことが分かったんだ」
「かぐやと出会う前は何をすればいいのか分からなくて死にながら生きてた。かぐやがいたからここまでこれたのは俺の方だ。だからありがとう」
「えへへ。これからもよろしくね」
2人でこれまでの感謝を伝えた後は3日間にあったこと、何でもない他愛のない話しを朝になるまで3人で笑いながら話しあった。
「それでね!彩葉が抱き締めてくれたの!ダメなことをしちゃって胸がキュッとしたけど嬉しくてポカポカもしてね!かぐやのことをかぐやって呼んでくれて名前をくれたの!」
彩葉に名前を貰ってから30分後ぐらいにおきが来てくれた!
心配して貰えたことと名前を貰えたことが嬉しかったことをおきに早く聞いて欲しくて急に飛び付いたら彩葉に危ないって怒られちゃった。
「それでね!おきが来るまでに彩葉がパンケーキ作ってくれたんだけどくそ不味かったの!昨日食べたのとは全然違った!」
「酒寄」
おきの低い声で呼ばれた彩葉は肩をビクつかせた後慌てたように早口で話し始める。
「いや!違うんですよ!三連休に買い物とか行けなかったから食材がなくてですね!今回はしょうがなくて!竹中さんに怒られてからは作ってなかったですよ!」
彩葉の作ったパンケーキの話をしたらおきが彩葉に怒ってる?
「おき、怒ってる?かぐや、何か悪いことしちゃった?」
「あぁ、いや。怒ってないし、かぐやは何も悪いことしてないよ」
「でも……」
「酒寄が約束を破って不健康な食事をしたから話を聞こうとしただけだよ」
おきは頭を撫でてくれながらそんなことよりと前置きをしてからさっきとは違って優しい声と笑顔で話し始める。
「かぐや、いい名前だな」
その優しい仕草に、その声に胸がギュッとなってポカポカが止まらない。
「うん!かぐやの宝物なの!」
「でも酒寄にあんまり心配かけちゃダメだぞ」
「もっと言ってやってください。凄い心配したんですから」
「はーい!彩葉に心配させるようなことはしない!」
「返事だけはいいんだから。ホントに分かってる?」
「分かってるもーん」
彩葉が身支度をしながら釘を刺してくるけど、かぐやだって胸がキュッとするのいやだもん。
彩葉はまだ納得してない感じだけど、これからについて話し始めた。
「かぐやについてなんですが、私の従姉妹の箱入り娘で、夏休みに家を飛び出して私の所まで遊びに来たって感じでどうですか?」
「そうだな。これから酒寄のところに一緒に住むし、箱入り娘で世間をあんまり知らない体にすれば多少の悪目立ちもご愛敬って感じになるかな」
「かぐやは彩葉と従姉妹?」
「そう。かぐやと私は親戚で……って言っても分かんないか。簡単に言うと家族に近い関係かな?」
家族!おじいさんとおばあさんと輝夜姫ってことだよね!
「彩葉と家族ならおきも家族だよね!」
「いや、私も竹中さんも近い関係ってだけで実際は違うからね?」
「俺は全く違うぞー」
「えぇ~。彩葉もおきも家族だよー!」
彩葉とおきはかぐやを育ててくれたんだから家族だもん。ずっと一緒なんだもん。
「従姉妹っていうのはそうじゃなくてって、もうこんな時間。私は学校行ってくるから続きは帰ってからね。竹中さんにあんまり迷惑かけないでね。竹中さんもかぐやのこと甘やかさないようにお願いします」
「いってらっ「ええー!彩葉どこ行くの!3人で出かけるんじゃないの!」
「私はこれから学校があるから一緒には行けないの」
「やだやだやだ!彩葉もいないとやだ~~!」
さっきはおきが帰っちゃって彩葉と2人だったから今からはずっと3人でいられると思ってたのに!
「彩葉とおきと一緒にいたい~~!」
「ワガママ言わない!私だって一緒に行きたいけど我慢してるんだから」
「それなら一緒に行こうよ!そんなに学校?が大事なの!?」
「かぐや、落ち着いて。かぐやは俺と二人で出かけるのは嫌?」
おきにちょっと悲しそうな顔で言われてよく分からないけど胸がキュンとなる。
「い、嫌じゃないよ!おきと一緒にいれて嬉しいけど……彩葉もいればもっと嬉しいんだもん」
「もう少ししたら彩葉の学校が休みになるからそのときに予定を合わせて三人で出かけよう。だから今日は俺と二人でもいいかな?」
「……分かった。次は絶対三人で出かけようね!約束ね!」
「竹中さん忘れないでくださいよ。絶対ですからね!」
「え、あぁ、うん。もちろん。酒寄も約束な」
「彩葉も約束!」
彩葉も一緒にいたいって思ってくれるんだ!
「遅刻すると行けないんで私はもう行きますね!」
「いってらっしゃい、気をつけてな。ほら、かぐやも」
「いってらっしゃい。彩葉、早く帰ってきてね」
「……いってきます!」
彩葉、笑顔で嬉しそうに行っちゃった。そんなに学校って楽しいのかな?
「学校ってどんな場所なの?」
おきは少し考えた後に話してくれた。
「学校っていうのは同じ年の子達が集まって勉強とか交流をする場所かな?」
「いっぱい人が集まる場所ってこと?」
「そうだね。勉強以外にも部活動っていう好きなことが同じ人が集まって活動をするとかもあるね。行ってみたい?」
「行ってみたい!すっごい楽しそう!だから彩葉もあんなに嬉しそうだったんだ!」
彩葉だけずるい!かぐやも学校行きたい!
「学校に通うってなると手続きとか中学までの勉強とかあるからすぐには無理かな」
「え~!?彩葉と同じ学校行きたい!」
「もし本当に行きたいなら俺も手伝うよ」
それと、と続けて話し出す。
「酒寄が行くときにあんなに笑顔だったのは学校っていうよりいってらっしゃいって言って貰えたのが嬉しかったんだと思うよ」
「?いってらっしゃいって言われると嬉しいの?」
「酒寄は一人暮らしだったから誰かに見送って貰えて、自分が帰る場所はかぐやのいるところって思えて一人じゃないって思ったんだよ」
「だから帰ってきたらおかえりって言ってあげような」
「分かった!彩葉が帰ってきたらいっぱい言う!」
「言うのは一回でいいよ」
なんて笑いながら話して、これから出かける準備しようか。何かやりたいことある?いろんな所見て回りたいし、美味しいもの食べたいし、料理もしたいし、なんてやりとりをする。
面白そうなものがいっぱいあって何やるか迷っちゃうな~
こういう誰かと二人で出かけるのをデートっていうんだっけ?
彩葉がいないのは凄く残念だけど、おきとのデート楽しむぞー!
最後まで読んでいただきありがとうございます。
評価や感想ありがとうございます。
リアルが忙しくてなかなか思うように更新できてませんが、完結まではゆっくりでも続ける予定なので気長に待っていただけると嬉しいです。