「これで俺も3児の父親か……」
厳密に言うと、これから謙信ちゃん、森さん、タッキー、千、明智の2人の6人も子供が産まれるので更に子供は増えるのだが……。
俺が種牡馬みたいな事をやることで織田家の士気が上がるのなら良いのかなぁ……。
「とりあえず、庄内川の治水工事が成功すれば信長様の権威は確固たる物になる。しかも信長様自身が領民達と一緒に働くことで、民衆の支持も得られることができそうだ。そうなれば史実で起こった尾張内紛も小規模で抑えることができれば……」
平和な時代だったら、ずっと信長様とイチャイチャしていられたかもしれないが、今の世の中は戦国時代。
美濃の斎藤家とは和議を結んだまでで、同盟には至ってないし、三河方面では今川と織田家で勢力争いの真っ只中。
(信秀様が亡くなるのは史実通りであれば1552年……今が1544年だからあと8年後……か)
3年……もしかしたら更に工事がかかれば、それだけ信長様が他の事を出来る準備が遅れることを意味する。
(朝廷への献金の方が良かったか? いや、しかし……)
ただ信長様による治水工事と街路の整備により、領民に大量の銭が流れ込んでいる状態だ。
物々交換主体だった村落にも銭が行き渡れば、新たな購買層に繋がる。
そして各村落で銭を求めて楽市や商人に産物の売却が発生することで経済が活性化する。
史実徳川幕府初期……日ノ本は好景気だったと記録されている。
それは戦乱が終了し、軍事費をそのまま開発費に転用できたからであるが、街路の敷設や治水工事による開発特需によって金の流れが村落まで行き渡ったから生まれた好景気。
現代史でも、戦後日本の経済成長は復興特需、朝鮮戦争による特需、高度経済成長期という感じで段階を踏んで発展していっているのがわかる。
結局のところ、税収を増やしたかったら、銭の流れを活性化させることが一番で、銭を扱う人の規模が増えれば増えるだけ、銭が世の中を巡る速度は速くなる。
まぁ現状関所から通行料、座から上納金としてしか徴収できない欠点はあるけどな……。
「信長様は銭の流れにより経済が活性化することも直感で理解されているからな。そこら辺は流石偉人だよなぁ……」
俺はゴロンと寝転んで、目をつぶる。
明日に備えて眠るのだった。
円匙ことシャベルを人婦として来る領民達に与えたのは大きかった。
作業効率が段違いだし、作業をしている農民達も、自分達の村でも活かせそうなことは真似する。
例えば水路を掘る際に水門を設置していくが、大きいのは真似できないが、小さい物であれば真似出来る。
他にも俺が考案した料理を真似して家で作る人も増えていた。
様々な料理が広まれば、それだけ食材の需要も高まるからな。
で、俺は忍び達が鶏を飼育して食べていた話に目を付けて、養鶏にも手を出した。
養鶏……鶏の飼育のメリットは短期間の飼育で一定量の肉と鶏糞、羽、そして卵を手に入れることができる点が大きい。
鶏は時を告げる鳥として重宝されており、食べられることは稀であったが、それは寺の坊主や貴族達権力者が自分の食べる分を維持するために、農民達に食べないようお触れを出したことが始まりであり、それが曲解されて皆食べなくなったのである。
ただ食べる地域は普通にあり、得に米作りが難しい東北や山で生活する人々は食べ続けていたのである。
肉や卵は栄養豊富だし、食べる文化が根づけば、これも商売として成り立つと思い、更に羽は矢をの軌道を安定させる矢羽として大量に必要だし、鶏糞は肥料に加工することで、植物の成長を促す素材にすることができる。
そう考えると、鶏って飛ばないのもあって、家畜として完成されているな……。
というわけで、せっかく領民に食事を提供しているのだからと、食文化を定着させるために動いたのである。
「この肉ウメェな!」
「この肉鶏らしいわよ」
「へぇ……鶏ってこんなに美味しいんだ……」
「信長様の家臣の方がヒヨコとその育て方を教えてくださるので、家でも飼育してみようかしら」
「鶏の卵ってこんなに料理の種類があるんだ……」
こんな感じでじわじわ広まりをみせ、工事をして稼いだ金でヒヨコを購入して、家に鶏小屋を建てて育てる家が増えたのである。
そして鶏糞による肥料の作り方と鶏の羽を矢を作る職人に持ち込めば金になると分かると、領民達は副業として養鶏に手を出す事に……。
そんな感じで鶏を食べていった尾張の女性達は農民達も肉付きが良くなり、筋肉が付いて、胸や尻が大きいガッチリとした女性が増えたり、栄養不足の子供が減って、乳児の死亡率軽減にも作用することになるのであった。
他にも領民が給金を貰えるようになって、大きかったのは、その金で鉄製の農具や副業に手を出せるようになっていた。
「商人さん、この服を買うわ! 幾らかしら」
「職人のねぇちゃん、うちこの農具買うわ。幾ら?」
領民達がお金をもらう場所の近くに商人や職人達が集まり、露店を開いて毎回即席の市場が出来上がっていた。
信長様はそれを叱るのではなく、警護を付けて保護や奨励したこともあり、即席の市場は常に賑わいを見せていた。
副業というのは、俺が領民達に金になる作物の育て方や家でできる工芸品の作り方だったり、養蚕のやり方を書いた書物安値で売り出し、それを買った領民達が空いた時間や場所、材料を使って、少しでも金になる物を作り始めたのである。
商人達もそういう副業をしたそうな人に目を付けて、教材や材料を売りつけ、領民達も稼ぐということに目覚め始めていた。
金が有れば更に美味しい物が食べられる、温かい服が着れる、便利な道具が揃えられる……それらは全て購買意欲を刺激する。
順調に経済が回り始めている証拠であった。
「よしよし〜お姉さんだぞ〜」
信長様の娘を謙信ちゃんがあやしていた。
「謙信は子供が本当に好きね!」
「ええ、赤ん坊は希望に満ち溢れているからね。将来どんな大物になるかと考えるだけにワクワクしない?」
「確かに……よかったなぁ信忠、謙信はお主を大物になるってよ」
「アウアウ」
長女は信忠と名前が与えられ、信忠も嬉しそうに手を振っている。
「謙信ちゃんもそろそろ出産か?」
「うん! お腹の中に池君の子供がね!」
「名前はどうするの?」
「景勝って名前にしようかな? でも1人で終わらせるつもりは無いからね!」
「謙信ちゃんもかよ……」
「当たり前でしょ! 10人は産むよ!」
「池! 謙信に余は負けんから11人産むぞ」
「じゃあアタシは12人!」
「はいはい、張り合わないの!」
そう言ったが、俺はその後彼女達に搾り取られることになるのだった。