剣丞の親友だけが外史に向かった話 作:まくろ
「……」
思っていたよりもでかいなぁ。
それが清州城の第一印象だった。一晩泊り、さすがの城というべきか和室に囲まれた客間に座っていた。そこで待っていると一人の女性が入ってくる。
「待ったか。旭。」
「待ってない。まぁ一泊城に泊めさせてくれるだけでもありがたいのに金銭的なものもちゃんと受け取ったからな。」
「うむ。」
小粒金およそ100枚。それが俺が桶狭間の戦いでやった褒美であった。一人当たり1枚は破格だが策の立案と実行。そしてあの今川を死者なしで追い払ったことに関しての褒美らしい。
まぁ士官すればさらに役職をくれるらしいが。麦穂様や壬月様にとっては未だ警戒しているのは知っている。だが実力は逃したくないのであろう。なお、一晩話、織田家のことについてある程度教えてもらった。
「それでなんだが、まずお主は何者か?」
「何者ね。まぁ、なんというか少しだけ難しいんだよなぁ。」
「ほう?」
「…まず答えるけど、たぶんでいうなら元の世界で神隠しにあってこっちに来たのかなって。」
「神隠しか?」
「元々をいうなら次元の混流が起こってこちらの世界に引きずりこまれたってことだけど、多分分からないよな。」
「…分かるように話せ。」
「正直厳しい。正直異世界や外史に詳しい家系でも説明が難しいんだ。そういう専門的な用語が含まれるからその知識がある。所謂文官だけに戦を勝てるようにしろって言ってるみたいなものだよ。」
「…ふむ。」
「簡潔に俺を表すなら元の世界で神隠しにあってこの世界に来たってことかな。だから俺はこの世界がどういう世界なのか知らない。この世界で初めてあった人が久遠なんだし。」
その言葉に久遠は頷く。話をしている際によく目を合わせてくる。それで嘘か真か判断しているのだろう。
「おけぇ。それでなんだが。」
「士官してほしいってことだろ?」
「話が早いな。」
「政治的利用もでき、織田家にとっても武力派の武将がいても欲しい存在だろ。でも、自分でも思うんだけどそれほど安くはないと思うんだけど。」
「本当に自分でいうのだな。」
「嘘分かるんだろ?俺昔からよく政治利用のために命を狙われていたから気配や視線に敏感なんだよ。だから目で嘘を判断しているのかなって。」
「…お前どういう幼少期を送ってきたのだ。」
「まぁそれなりに苦労はしてるよ。草紛れのことをしたことだってあるし、自分や家族のために人を殺したことだってある。」
「…」
「言っとくけど俺は善人ではない。ある程度野心もあって下心も持っている。自分の仲間と敵で区別することだってあるし、例え久遠にとって味方でも俺が敵だと思うなら容赦はしない。」
これに関しては嘘ではない。自分や仲間のためなら敵は殺すし、正直成り上がりたいとも思っている。
「…それは我であれか。」
「俺にとって敵ならな。まぁ、嫌だけど。」
「…そうなのか?」
「壬月様や麦穂様、そしてこの城内であった奴は久遠を慕っていたからな。それに一応俺にとっては恩人のわけだし悪い奴ではないのは分かるし、あの急軍で2000もついてくる兵がいるなら十分慕われてるだろ。」
「…そうであると嬉しいのだがな。」
久遠が少しうれし気に笑うのは初めてだった。正直俺がいなくても今後領地は発展していくのであろうとは思う。
「まぁ、お互いに腹のくくりあいはそれくらいにして、どういう条件を久遠はだせる?」
「…お主は。」
「いやさ、正直なところぶっちゃけ金とかは要らないんだよ。自分の力で手柄を上げれる自信はあるし。それなりに知恵もあるから。」
「まぁそうであろうな。」
「実際だけど多分これだろうなって思うことはあるんだけど。」
「…ほう?聞かせてみろ」
「誰か家臣団との婚約と予想している。妹とかいれば親戚みたいに扱うために婚約させるっていうのもありだろ。」
所謂政略結婚というやつである。人質を出すのはこの世界では普通のことだ。
「…婚約というのは、あっているが我とだ。」
「…は?」
「旭よ。我の夫となれ。」
俺は少しだけ思考の渦に潜める。いや、正直それくらいに価値があるのか。
「何で久遠の?ここまできたら正直にいこうぜ。」
「うむ。というのも簡単だ。織田家に貴様を使おうとしようとする動きがある。」
「…あぁ。担ぎあげる動きってことか。あ~。正直殿様も面倒くせぇな。」
「それを貴様がいうのか。」
「でも。それなら麦穂様とか壬月様でよくないか?」
「そうすると家老で貴様が入った方に勢力が傾くだろう。」
「うげぇ。結局派閥抗争になるのかよ。」
「それに派閥争いのさだかで我を押さえつけようとする輩もおる。そういったものを離すためにも貴様は都合がよい。」
「…それもそうだけどさ。」
「それに純粋に貴様に興味があるというのもある。もし貴様がよければ祝言を上げ、お主の子を成してよいぞ。」
「…意外と好印象じゃん。」
「それほどの価値が貴様にはあるのだ。さすがにやりすぎだ阿呆。」
ジト目の久遠に俺は苦笑してしまう。
これでやりすぎなんて言っていたら今後はもっと大変なことになりそうだけど。
「ん。じゃあ簡単か。いいよ。乗った。」
「…よいのか。」
「いいよ。どれだけの覚悟でいったのか分かるしな。まぁ一つだけ条件があるけど」
それにそれなら俺がやることはいうのは簡単でやることは難しいけど『この女の子を幸せにすればいい』
歴史上どんな道を選ぶとしても俺が久遠を支えていけばいいんだ。
「条件?なんだ言ってみろ。」
「ひよって少女を副官として欲しいって言ったらどうする?」
「ひよ?サルのことか。」
「俺が見る限り武は苦手だけどそれでも久遠の馬廻衆に抜擢してるくらいには優秀な文官か内政官候補なんだろ。ぶっちゃけ俺ができないことではないんだけど。内政方面では不安が残る。だからひよがほしいんだけど。」
「うむ。そのくらいなら別によいがもっと無茶なことかと思っていた。」
「さすがに久遠の旦那になったから無茶は言わないし、久遠の意思は尊重するからな。立場としては対等でいいよな?」
「それでよい。」
「なら、やっぱりひよかな。この世界であったことで今俺が知っている奴ならひよしかいないかな。」
「…うむ。まぁよかろう。ところで処遇だが。」
と一旦締結を結び俺と久遠は話始める。今後の対応とか政治利用のためとかいろいろあるけど、俺も面倒ごとを持ち込んだことは事実。
それは二刻ほど続き俺たちは話し合うのであった。
「旭様。どうなりましたか?」
「おはようございます。麦穂様。」
「びっくりしたであろう。」
「…二人は条件について知っていたんですかね?」
「まぁな。」
俺がその後のんびりしていると二人が部屋に訪問してくる。
お茶を煎れ少しの間談笑しようと二人に座布団を出す。
「しかし、いいんですか?久遠のこと。どこぞの馬の骨かに知らない奴に任せて。」
「それをあなたが言うんですか?」
「いやさ、昨日初めてあった男性と祝言を結ぶって。それも一国の大名が。前代未聞だろ。」
「それほどの危険性があるからだ。お主は。」
「酷くない?正直了承したけどこっちはいろいろと面倒ごとがありそうだなって。正直二人のうちの配下で適当に婚姻を結ぶとばかり思っていたし。」
「ほう?祝言を上げることは分かっていたのか?」
「ある程度は。人質として送るのは結構あるだろうし、俺は男だからな。女性武将が多ければ婚約を結ばせるというのは将来の婿確保というべきでもあり得るだろ。さすがに末代にさせるわけにもいかないし二人だって婚約結構条件厳しいのだろう?」
「まぁ、殿ほどではありませんが。」
「だろ?」
俺の言葉に少しだけ呆れたようにしている。そこらへんを答えてくれるとは正直思ってなかったが否定はされてないっぽい。
「まぁ、久遠の旦那になるのなら久遠を支えるのが旦那の務めだろうし。やることは手柄を上げて出世することだろ。」
「……ほう。」
「なんですか?」
「いや、意外に義理堅いのかと思って。」
「あそこまで覚悟を示されたらさすがにこっちも覚悟は決めてますよ。俺にどこまでできるかはわからないですけどね。」
まぁ色々な打算はあるだろうけど、子を成してとかもおそらく冗談で言っている言葉ではない。
だからこそ引き受けた意味もある。そうでもなければ妥協案をこっちから提供する予定だったし。
「……そういえば旭はどんなことができるんだ?」
「武術に関しては弓と槍以外は一通り使える。内政はやれないことはないけど、こっちの常識とかあまり分からないから困ってるって感じかなぁ。」
「常識ですか?」
「正直麦穂様には結構聞きに行くことになります。俺一人だけ文官もらえることになりましたし。」
「文官ですか。」
「一応ひよをこっち希望で俺のほうに来てもらうことになりました。多少なりも領地ももらえるらしいけど領地運営はできないので。」
「ひよ。あぁサルと殿が呼んでるやつで確かお主も桶狭間で一緒だったんだよな。」
「そうですね。」
と話しているとコンコンと音が聞こえる。
「し、失礼します。」
「ん?ひよか?」
「は、はい!!」
「いいよ。入ってきて。お客さんいるけど。」
「し、失礼します!!」
と入ってくるひよ。そして入ってくるや今や二人の顔を見て驚く
「えっ?壬月様と麦穂様!?」
「おはようございます。ひよさん。」
「おう。サル。」
「まぁ普通に桶狭間繋がりで話していただけだから。久遠から話は聞いた?」
「ひゃ、ひゃい。お殿様より木下ひよ子秀吉、本日より旭様の側室としてお殿様とご一緒にご奉公させて頂くことになりました。」
「「「……えっ?」」」
ひよの言葉に俺たち三人が固まる。
織田家の午前はまだ波乱が続きそうである。