クイーンとの決着はあっさりとついた。
クイーンの説得から帰って来たリバーレリオとレヴィから情報を聞いた各指揮官は揃って奇襲による完全消滅で意見が一致、準備を始める。
完全に消滅させるために確実に必要な最高威力の兵器、エデンの槍。
しかしエデンの槍は先のセイレーンの膜破壊に使用したため、圧倒的に充電不足であった。
そんな充電不足なエデン陣営にマウントをとりながらフォービーストは貯蔵していた電気をたんまりと蓄えたクリスタルをエデンの槍に使用、エデンの槍は完全に充電することに成功した。
奇襲方法は簡単、膜越しにレヴィがクイーンの座標を伝えて、エデンの槍で一方的に攻撃するという方法。
そしてこれは驚くほどあっさりと成功しクイーンは現在、地上に殆ど原型を残さず落下していた。
―――
クイーンの落下地点にやってきたフォービーストとカウンターズ、ヨハン率いるインヘルトは念の為エデンの槍の防衛の為にこの場にはいない。
原型が殆ど無いとはいえ、それでもかなりのサイズだったこともあり落下地点には大きなクレーターが出来ていた。
フォービーストはカウンターズに後方を任せ、先陣を切ってクレーターの中心に向かう、完全に機能停止していると思うが真っ二つから回復出来てしまうことを考えると油断は出来ない。
しかしそこには『回復をした形跡すら』ない塊があるだけだった。
シエンは塊はしっかりと確認する、隅から隅までまさに隅々と言った感じで小さいネジ穴の痕跡すら念入りに確認をする。
『どうした、シエン』
その様子を不思議に思い、後衛の配置を無視してシエンの元に駆け寄るカウンターズ。
特にそれを咎めることもせず、シエンは念入りに確認した『クイーンの居ない』ただの宇宙ステーションに、やられたと勝負事で相手が上手だった時の悔しさをシエンは感じながらカウンターズに状況を説明する。
囮だ、多分だがこの奇襲作戦を予測して先に地上に宇宙ステーションを放棄して単身降りたんだ、この塊に一切の修復跡がない、エデンの槍が当たる直前に緊急回避した、とかではないはずだ。
『………油断していた、リバーレリオにやられ、エデンの槍という兵器の存在も膜を破壊したさいに知っているんだ、自分なら間違いなく逃走を選ぶ』
指揮官達はクイーンという存在をラスボスか何かだと勘違いしていた、相手は機械ではあるが機械『生物』だ、感情があるのなら呑気に自分を倒せる存在や兵器があって大人しくしている方がおかしい。
レヴィ、エデンに座標を伝える時に何かが動いたのを確認出来たか?
「見てたら言ってるわよ」
だよな、ってことはリバーレリオにやられてからすぐに逃走に切り替えたってことか、敵ながら思い切りがよくて尊敬するね。
『探し出せるか?』
と、いうよりは見つけるしか無いだろ、これがただのラプチャーなら良いが、クイーンだ、宇宙ステーションという限界が無くなったなら放置すればするほど戦力を増やす一方だろうな。
シエン厄介なことになったとため息を吐きながらはおもむろに携帯を取り出して電話をかける。
バララララバララララ ピコン
「………どうしたの?」
電話先のリバーレリオが不機嫌そうな声音でなんで電話して来たかを尋ねてくる、寝ていたんだろうなと軽くシエンは謝りながらリバーレリオに事情を伝える。
ちなみにリバーレリオはクラウン国民にはならなかった、グループに属すのはもういいと現在は風来坊ならぬ風来嬢となって風の吹くまま気の向くままに地上を彷徨っている。
「………わかった、わたしの方でも探してみるわ」
ピコン
事情を把握したリバーレリオは心底面倒くさそうに言いながら電話切る。
『何故リバーレリオに電話を?』
何故って、1番広範囲の捜索に優れているからな、自分達はとりあえずアーク、エデン、クラウン王国周辺をしらみつぶしに捜索するから別の所にいるリバーレリオが丁度良いってのもあるが。
リバーレリオに電話後、ここに居ても仕方ないのでフォービーストとカウンターズは王国とアークへ帰還し、それぞれのやり方でクイーンを探し出す運びになり、この場は解散となった。
解散後、ジズに運ばれながらシエンはクイーンの行動に違和感を感じ、それに対して考えを巡らせていた。
カウンターズの指揮官の言うように慎重だったり無理をしないタイプならクイーンと同じ状況になれば逃走を選ぶ、しかしクイーンはその前にリバーレリオに一切の会話を行わず攻撃をし続けた、そんなことをする存在がやられたとはいえ、直ぐに逃走に思考を切り替えるなど可能だろうか?
逃走に切り替える何か、情報、こちらの戦力をエデンの槍とリバーレリオ以外にもあるという情報を知った?どうやって?いや、誰が教えたか。
考えは直ぐに答えを出す。
インディビリアやリバーレリオ、直系と呼べるヘレティックだけが知っているあまり表に姿を出さない存在。
ミラー。
いまだ姿を見たこともなければ直接話したこともないから絶対とは言えないが、逆にそれがこちらをしっかり警戒している証拠とも言える。
実体があるのかデータな存在かすらもわからないみたいだがそれすらも宇宙に居たクイーンに最速で情報を伝えれる可能性があると言える。
シエンは捜索は他に任せ、ミラーを調べることにした。
そうしないと面倒なことがさらに面倒になる気がしたからだ。
―――
シエンからの電話を切ったリバーレリオは面倒くさそうな態度をとっていたが、電話を切った直後から大気中の水を操り雨を降らして自身の発達した聴力を利用した雨の当たる音の違いで探しだす擬似ソナーを始めた。
面の皮が厚いことを自身でも理解しているリバーレリオではあるがそうだとしても流石に膜を破壊、クイーンの逃走のきっかけを作ってしまったという事実に若干の負い目を感じているので文句も言わずに捜索をする。
やらかしで言えば即刻死刑でもまだ足りないぐらいなのだが本人は負い目を感じ捜索を真面目に行っているこれをこなせばチャラになると考えているので自分自身が思っているよりもリバーレリオの面の皮は分厚い。
ただ、今回はその自由人っぷりが功を制す。
リバーレリオはある雨音の変化に気づく、それは微かな違いだが聞き覚えのある音だった。
フワフワとしかし急ぎめに音のした所へ向かうと、そこには生首が転がっていた。
その生首は生首であるが腐ってはいなかった、それはニケであることもそうだが直近までクイーンに取り込まれていたはずのものなため、唯一生物である脳も腐ってはいないだろうことは状態からわかった。
何故ここに?そんなことはリバーレリオにはどうでも良かったただリバーレリオの頭の中にあったのは。
盗んだ生首が戻ってきた。
しかもわたしの捜索能力で見つけた。
リバーレリオは負い目感じるどころかむしろ感謝されて何かお願い聞いてもらえるかもしれないなんて思いながら生首の脳が機能停止する前にクラウン王国へと持って行くことにした。
生首が生きていた頃の名前はリリーバイス。
最初にして最強のニケ。
最初のニケであること最強であること、どちらかだけでも価値は青天井なのにどちらでもあるならそれは天文的数字でも測れない価値がある。
クイーン、エデン、アーク、クラウン王国。
争奪戦の火蓋はこうして静かに始まった。
リバーレリオはまたやらかしながら鼻歌混じりに運んでいく、持っていったお礼にクラウン王国に専用のプールを作ってもらうことを考えながら。
もちろん、やらかしが酷いのでプールは却下された。
―――
リバーレリオがとんでもない物を置いて、プール作ってくれないなら用は無いわとそそくさとまた風の吹くままに何処かへ行ってしまった、こりゃ電話もしばらく出ないな。
「これって誰よ?」
レヴィが顔を眺めながら記憶を辿るが思い出せず、指揮官に聞く。
リリーバイス、ゴッデス部隊のリーダーだ。
「あぁ!ドロシーとかレッドフードが喋ってたわね!へぇこれが最初で最強のニケねぇ………え、なんでそんなのがここにあるのよ」
リバーレリオが見つけてくれたんだ、クイーンが取り込んでいたはずだがこれだけポツンと落ちてたらしい。
「………ラピと似たケースかな?」
やっぱりレヴィもそう思うか、ラピがレッドフードの力を過剰に使用したら逆に取り込まれレッドフードになったように、宇宙ステーションなんていう大型の補助ユニットを切り離し弱体化したクイーンを逆にリリーバイスが取り込もうとしてしょうがなくリリーバイスを切り離した。
「うん、十分ありえそう」
流石最強ね、そう言いながらレヴィはこの仮説が正しいか記憶を覗こうとするが、幾ら記憶の奥底を探しても記憶という記憶は無く、大きい棚に物が一つも入っていないような状態だった。
「記憶が無い、クイーンに取り込まれてたからかしら?それでもクイーンを乗っ取ろうとしたならとんでもない正義感というか本能ね」
それを聞いて指揮官はうーんと唸りながら悩む、リリーバイスの頭なんて持っていた所で何に使えば良いかわからなかったからだ。
もちろんアーク、エデンに対してこれあげるから何か頂戴と交渉すればタダで手に入れた物がとんでもない価値になるのはわかっては居るが、そうまでして欲しい物が現状無いので今直ぐ渡すなら無償になる。
………まぁいっか、アンダーソン副司令官と恋仲みたいなの聞いたことあるしこれを渡した時の表情を報酬とするか。
指揮官は早速渡しに行こうとリリーバイスの首を探すが。
………ない。
「あれ本当だ、さっきまでそこに置いてあったのに」
指揮官とレヴィは揃って部屋中を探すが全然見つからないことにだんだん冷や汗をかき始める、そんな最中部屋の外からベルの元気な声が聞こえる。
「あはは!ゆっくりだ!ゆっくり!ゆっくり………なんだろ!?」
冷や汗が滝のように流れ始めるのを感じながら急いで部屋を出て声のした方に指揮官とレヴィは揃ってバッと顔を向ける。
そこにはリリーバイスの頭を新しいオモチャのように嬉しそうにかかげて走り回るベルの姿があった。
「ちょっとベル!!?それはオモチャじゃないわよ!!」
レヴィがベルに止まるよう大声で叱るが、ベルに声が届くことはなく、そのまま外へと出ていった。
―――
「行くのだベヒモス!わたしの魔球を受けてみよ!」
ベヒモス達は揃って野球をしていた、インドアが多いクラウン国民にたまには運動も必要だろうとベヒモスが誘って今にいたる。
「へへッ、チャイムの玉なんて目をつぶっても打てそうだな」
「ならつぶるのだ!」
「え、いや言葉のあやじゃねぇか!」
「何を言うか!フォービーストに二言はないのだ!」
「いや、オレらそんな誠実さをもっとーにしてねぇぞ………」
「良いからつぶるのだ!」
「………たく、しょうがねぇなこの打席だけだぞ?」
「やったのだ!まずは1アウトなのだ!」
「堂々と言うなよ!?」
初回の打席から締まらない緩い野球だが、始まったのなら真剣そのものベヒモスは目をつぶりながらもチャイムの息遣い、足で地面に擦る僅かな音まで感じ取っていつでもホームランを打てる状態にする。
対抗するチャイムもそれに全力で答えるように片足を真上まで伸ばして一気に地面まで叩きつけるようにおろしてその勢いのまま玉を投げ………ようとして。
横からお姉ちゃん達にリリーバイスの頭を見せてあげようと走ってやってきたベルがステンと転んで。
リリーバイスの頭がベヒモスの正面へと飛んでいった。
「ベヒモス!打ってはダメなのだ!」
チャイムは人の頭というどう考えてもオモチャではないそれをベルが勝手に何処からか持ってきた物だと瞬時に気付きベヒモスに打たないよう声をあげる。
しかしタイミングが超絶悪かった、ベヒモスは今目をつぶっていてしかもそれはチャイムのワガママだ、なので。
「おいおい、流石にそこまではしてやれねぇな!………ここだ!!」
神経を尖らせに尖らせて捉えた玉、ではなくリリーバイスの頭はバットの中心の芯のど真ん中へと当たり。
カッキーンッッ!!
と、遥か彼方へと飛んでいった。
「どうよ!目をつぶって打ってやったぜ!………どうした?」
確かな手ごたえを感じながら目を開けて、凄いだろうとチャイムにドヤ顔を披露しようとしたベヒモスだが、いざ目を開けるとチャイムどころか皆んなやっちゃったなと憐れみの目でこっちを見ている。
「ベーヒーモースー!!」
「おぉレヴィ!レヴィも見たかオレのホームラン!」
「見たわよ………とりあえずそこに座りなさい」
「なんで???」
何で怒られることになっているか懇切丁寧にレヴィに怒られながら説明を受けてるベヒモスを見ながら、指揮官はベルを捕まえて膝の上に乗せる。
「うぅ、ごめんなさい」
何をしたかわかっていてよろしい、反省できそう?
「………………多分」
………しないなこりゃ、ラピとカウンターズの指揮官、どっちに似たんだか、それともこっちの教育が悪いんだろうか?
ベルを軽く叱りながら、頭が飛んでいった方を指揮官は見つめる、方角的にエデンの方だな、クイーン探しの最中に何してんだって言われてもやだし後でヨハンに連絡するか。
「あっちの方角なら賢いわたしが知り合いに連絡してやろう!」
バハムートが連絡するのか?嫌な予感がするけどまぁやらせてあげるか。
バララララバララララ ピコン
「どうしましたバハムート、あなたから連絡してくるなんて」
ブフォと指揮官は思いっきり吹き出してしまう、ベルにツバが飛んだことを謝りながら、場所もアークだしかける相手もネオンだから全然違うじゃないかと、さっさと止めようとしたが。
「リリーバイスの頭がそっちに飛んだ取りに行くから邪魔しないでくれ」
ピコン
………なんて早い連絡なんだ自分だから見逃しちゃったね………どうしよ、とりあえず。
リリーバイスってよく覚えてたな、偉いぞ。
「あぁ、写真を見せてもらって覚えていた、凄いだろ?」
皮肉だよ、バハムートはしばらくおやつ抜きだ。
「何故だ!?」
抗議するバハムートをほっときベルに飛んだツバを拭いてあげながら、クイーン捜索よりこっちの方が大変になりそうで指揮官は深いふか〜いため息を吐いた。
―――
エデンではリリーバイスの頭がこっちの方角に飛んで来たので探しにいくことをヨハンが連絡を受けて、リリーバイスのことなのでレッドフードとドロシーにそのことを伝えていた。
「探しに行きましょう!」
ドロシーがそう提案するがヨハンはもちろん。
「却下だ、クイーン捜索が第一に決まっているだろう」
当たり前のように拒否されてしまい、何か反論しようとするも既に亡くなっている人の遺体の一部を探すのと放置すればするほど脅威が増していく存在を探すのとでは論ずる必要がないのは明らかだ。
「………だから、ドロシーとイザベル、飛行可能なお前達2人はクイーンの捜索をし、他でリリーバイスの頭を探す」
ドロシーはポカンとした表情でヨハンを見る、ヨハンはそれに恥ずかしさを感じ、顔を逸らしてわざとらしく咳をしながらわかったらさっさと準備しろと促す。
「ヨハン、お前そんな気が効くこと出来たんだな!」
アハハと笑いながらヨハンの背中をバシバシとレッドフードは叩きながらドロシーに安心させるように言う。
「あたし達が見つけてやるからよ、お嬢様も頑張ってクイーンを見つけてくれよ?」
「えぇ………頼みましたよレッドフード」
ヨハンが優しさを発揮し、ドロシーがレッドフードを、エデンの皆んなを信頼しているからこそ起きたこと、本来はこうはならないだろう。
こうなった要因はエデンの優しさだけでなく、シエンの情報の伝え方にも問題があった、シエンは探しに行くことは伝えたがクイーン捜索を無視して第一優先で探している事を伝えていなかった。
ヨハンはこの情報伝達により自分達と同じように捜索能力の低い、もしくは少人数でオマケ程度にリリーバイスの頭を探すと勘違いしたのだ。
そしてこの誤伝達はアークでも起こっていた。
―――
『リリーバイスと言えば確か最初で最強のニケじゃなかったか?』
「そうなんですか?最強ということは火力も最強だったのですかね!」
「でも何で頭がエデンの方角に飛んでいくなんてことになるのよ?頭で野球でもしたの?」
「皆んな常識はあるし、流石にそんな狂気に満ちたことしないわよ」
しました。
バハムートの電話の誤解を解くためにシエンはカウンターズの指揮官にヨハンと同じように連絡をしてカウンターズの指揮官もその情報を皆んなに伝えていた。
『ま、わたし達がリリーバイスの頭の捜索をすることはないが風とかの影響で万が一アーク周辺に飛んでいる可能性も無くはない、一応気を配る程度はしようか』
そう、カウンターズに関してはとくにリリーバイスの頭を探す理由がないため、定石通りまずはアーク周辺にクイーンが潜伏していないか探そうとしていたが。
「すまないが、リリス………リリーバイスの捜索をしてくれないか」
クイーン捜索準備を済ませて、アンダーソン副司令官に直接、捜索開始の報告をしようとしたらそんなことを言われる。
レッドフードからかドロシーからかどちらから連絡を受けたかアンダーソンはリリーバイスの頭がエデンの方角に飛んでいったことを知っていた。
『何故ですか?』
アンダーソンはその言葉に苦い表情をしながら静かに短く理由を説明する。
「わたしが個人的にそうして欲しいからだ」
『………はい?』
カウンターズの指揮官は、そうは言っているが実はクイーン捜索よりも重要な何かがあるのかと思い、大量の質問をアンダーソンにするが、質問すればするほど本当にアンダーソン自身がそうして欲しいだけという事実が浮き彫りになるだけだった。
しかしカウンターズの指揮官は同時にリリーバイスに対する並々ならぬ愛情も感じ取れた、それこそいくら最初で最強という価値があるとは言えクイーンをほっとく程ではないことをほっといてまでお願いしてくるほどに。
『わかりました』
「………良いのか?断ってくれてもいいのだが」
『大丈夫です、アーク周辺ならカウンターズじゃなくても良いですし、遠くの捜索となるとエデンのイザベル、クラウン王国のジズのような飛行能力持ちが自分達にはいませんので焼石に水でしたし』
そう、運命が違えばラピがセブンスドワーフゼロという飛行可能な武器を持っているがそうではないためカウンターズは誰も飛べない状態だった。
これがリリーバイスの頭捜索に切り替える最後の一押しとなった。
「………すまない、感謝する」
いつも何処か余裕のあるアンダーソン副司令官ではなく素を感じさせる謝罪と感謝にリリーバイスのことが本当に好きなんだなと心の中で思いながらカウンターズの指揮官は部屋を出ていく。
―――
ヨハンもカウンターズの指揮官もある意味信頼しているのだクラウン王国の捜索能力を。
ジズという飛行能力持ちはもちろんのこと。
ベヒモスというクリスタルで電気を追跡出来る能力。
レヴィという広範囲にダークマターを広げ触れた存在を認識出来る能力。
チャイムの地形把握にクラウンとクラウンの操るトロンベ。
フラジャイルの逃走経路予測に、インディビリアのエブラ粒子による探知。
マリアンも巨大化すれば飛行可能でキロとタロスはその場でソナーやサーモグラフィーなどを制作可能。
リバーレリオも国民ではないが手伝うならかなりのものだ。
バハムートは………しれっと見つけそうだ。
一言、一言、オレらもわたし達もリリーバイス捜索を手伝うとシエンに言えば、流石のシエンも全力で頭捜索に力を注ぎはしなかっただろう、シエンも言ってしまえばヨハンとカウンターズの指揮官の戦力に甘えた結果の第一優先リリーバイスの頭捜索なのだから。
そう、今回の問題は報連相を怠ったことによって起きた問題なのだ。
後にベルは大きくなって自分が原因で大変だったと聞かされるがベルは自分のことより指揮官達に対してこう思った。
こいつら何やってんだ。
―――
クイーンは生えている4本の手で出来るだけ降下地点から距離を取っていた、ただただひたすらに。
リリーバイスを体外の排出したせいで完全に弱体化したクイーンはもはやラプチャーの生産と自身より階級が下である者を従わせる能力がある小型のラプチャーより少し強い程度の存在になってしまっていた。
だからこそクイーンはミラーから伝えられた隠れ家へと急いだ、そこへ行けば必要な物は揃っていると言っていた。
ペタペタと移動している最中あるものがクイーンの視界にうつる。
ダークマター。
自分を形作る物の一つで言葉通り自分の中に流れる血でもある、クイーンは先を急ぐにしてもある程度は回復をしようとダークマターに触れ自身に血として体内に取り込もうとして。
何かが急に近づいてくるのを感じた。
本能、まさに本能でダークマターから離れ、すぐさま木陰へと隠れた。
その数瞬の間に先ほど触れたダークマターから、リバーレリオと共にいた少女がヌゥっと現れた。
逆探知された!?
驚愕で一杯で声が出そうになるのを抑えてなんとか声を押しころし様子を見る。
「あっれー、おかしいな、確かにここからわたし以外が操作したのを感じたんだけど………」
お願い、バレないでと必死に祈る者もいないのに祈るクイーンに運は巡った。
「あ!別の所でも反応が!?もしかしてベル!!?もぉ!もうワープ覚えたのは凄いけど無闇に使っちゃだめって叱らないと!」
ヌゥと少女が再びダークマターに潜ったのを確認してゆっくりと隠れていた所から身を出して周囲を見渡す、そして今度はダークマターには目もくれず真っ直ぐに隠れ家へと向かうクイーンであった。
―――
あら、もう来たんですね、予想だともうちょっと遅いと思ったんですが。
ミラーの前には地上へと降下し自分の配下だから疑いもせず素直にミラーの隠れ家へとやってきたクイーンがいた。
「大丈夫でしたかクイーン、ささ、どうぞおやすみになられてください」
そう言ってミラーは巨体であるクイーンの寝場所を確保するため、『自分の手で物をどけて』スペースを作った。
そう、今ミラーはホログラムではなく実態で姿をクイーンの前に見せている、それは忠誠心によるもの。
ではもちろんない。
クイーンが寝床でやっとの安息を得ようとした瞬間、クイーンの背後から鋭い一刀がクイーンを真っ二つに切り裂き再生しないようにこと細かく斬撃をクイーンに叩き込み、息の根を止めた。
あっさりとしたクイーンの幕引き、薔花によってあんなに圧倒的だと思っていた存在が簡単に終わったことにミラーは笑いが止まらなくなりそうになる。
だがクイーンは終わらない。
ミラーはマリアンを自分の傀儡にすることで実質的なクイーンのポジションに着こうと最初は考えていた、それは自分がクイーンという存在に生まれなかったからに他ならない。
しかし、クイーンは生み出せることをフォービーストは証明した。
なら………奪うことも出来るはずだ。
「研究するだけして生み出せないというのはとても歯痒かったんですよ、なので貰いますね?」
ミラーは自身の手からダークマターを生み出し、細切れになったクイーンをまとめて一つの球状へと変化させる。
ゆっくりと球状のダークマターを手に取り、極限までお腹が空いた時の極上のご飯を見るような輝いた目をしながら。
一口でゴクンッと飲み込んだ。
「美味しいと思って味覚機能を有効にしてたんですが………不味いですね」
吐瀉物を処理した雑巾のような味がミラーの味覚を占領したので直ぐにオフにして無かったことにする。
しばらくするとお腹の下の辺りが暖かくなるのを感じ、異様な興奮と高揚感がミラーを包み込む。
「フフ、実際にラプチャーを生み出すのに妊娠するわけではないはずですが体が元クイーンと違って人間に近いからでしょうか?」
ミラーは隠れ家の中にある鏡を覗く、そこには表面的には何一つ姿の変わらない己の姿があったが、ミラー自身には何かが違って見えるのか嬉しそうに鏡に映る自分に酔いしれる。
「ついに、『ミラー』では無くなったんですね!!」
まさに絶頂と呼べる瞬間をミラーは味わった。
ただ一つ物足りなさもあった。
「リリーバイスを吐き出しているのは予想外でした、それほど元クイーンが弱っていたのか、リリーバイスが強かったということでしょうか」
どちらでも構いませんが、そう口にしながらミラーは自身の当面の目標を薔花に伝える。
「リリーバイスの頭を手に入れましょう!やはりあれがあるのと無いとでは大違いですから!」
純粋なラプチャーの時代はミラーの裏切りによりあっさりと終わりを迎えた。