シエンの持つ本はとんでもない魔導書で実はシエンは魔法使いでここからシエンの俺tueeeが始まる。
なんてことはもちろんなく。
なら実はデスノートやあらかじめ日記のような使うだけでチート級なアイテム。
なんてこともなく。
ただただちょっと表紙を革製にしたちょっとシエンが拘って用意したただの本だ。
だけど一つ誤りがある。
これは本ではなく分厚いノートだった、最初のページから最後のページまでぎっしりと数字や文字が書かれたノートだ。
もしこれを誰かが拾って読んだとしても何が何かさっぱりだろう、それもそのはずこれは配合の細かな組み合わせを書いた配合表であるが肝心な何を配合するかはシエンが覚えているため書いていないからだ。
何を配合するか。
ダークマターだ。
―――
ミラーによる常識改変により何の疑いもなくフォービーストを敵だと認識しているインヘルトとカウンターズ。
だが無闇に手を出したりはしない、フォービーストの誰もが触れたら厄介な能力を所持していると理解しているからこそフォービーストの動きを見てから対処しようとヨハンもカウンターズの指揮官も共通の認識だった。
シエンが動く。
何か来るッ!と身構えるミラー達だがミラー達の警戒を裏切り先ほどまで自身が拘束されて座らされていた倒れた椅子を起こしてそのまま座る。
何故?
隙だらけのその行為に何かしらの罠を警戒し、結局様子見しか出来ないミラー達だが、今度はレヴィがシエンの座っている椅子の背後にまわって座っていることで身長差が無くなったシエンに抱きついた。
詰み。
もしこれがゲームならきっと画面いっぱいにデカデカとそう書かれていただろう。
そう、既に勝ちの芽は潰えた。
僅かにでも勝てる可能性があるならそれを手繰り寄せられる、ヨハンとカウンターズの指揮官、インヘルトとカウンターズにはその力も知恵も運もあった。
だからこそ間違えた。
フォービーストの奥の奥の手は下準備がいる代わりに一度始まれば止められない類いでありその下準備とも呼べない予備動作はシエンが座り、レヴィが後ろから抱きつけば完了する。
力も知恵も運もある。
だが愚直さがなかった、メティスのヒーローのような愚直さが。
椅子に座ったシエンはゆっくりとノートを片手で開き、もう片方の手は前へ構えて指先から皮膚を突き破りダークマターが糸状になって現れてベヒモス、ジズ、バハムートへと繋がる。
『ネオンッ!撃てッ!』
「火力全開!」
流石にこれ以上様子見は危ないと判断し、カウンターズの指揮官が開戦と言わんばかりにネオンに先制攻撃を仕掛けさせる。
ギュオンッ!
戦車すらも凌駕する巨大な銃口から放たれる弾丸が物凄い勢いでシエンとレヴィ、その前にいるベヒモスへと跡形もなく吹き飛ばさそうとする。
ベヒモスはそれを指先一つで受け止める。
「う〜んやっぱり気分が良いなこの状態は、これ返すぜ」
指先で受け止めた弾丸をその巨大さから担ぎ直して砲丸投げのようにして投げ返す。
ネオンが発砲したときよりもさらに早く弾丸は飛んでネオンへと返ってくる。
『アニス!』
「わかってる!」
指揮官の命令を聞く前に既にネオンの前に立ち、投げ返された弾丸をアニスのエネルギー吸収により運動エネルギーを吸収して今度はこちら側が弾丸を止める。
「ちょっとちょっと!?一体いつからあんな超人みたいなパワーになったのよベヒモスは!?」
「確実にシエンとレヴィが悪さしているでしょうね」
ラピの推測は完全に当たっている。
シエンとレヴィがしていることはダークマターの配合である。
配合をすると何が起きるか、その一旦を既にミラー達は目撃している。
シエンの体内からフォービーストは現れた。
場所、空間、量、全てを無視した理論に完全に喧嘩を売る瞬間移動。
ありえないがありえなくなる理論を超越する現象を引き起こす。
ベヒモスの超人的な力も配合でベヒモス自身のダークマターを重ねて配合して何十倍にも増強したにすぎない。
そう『ベヒモス』のダークマターを配合し、それをベヒモスの着ているダークマターに送ることでパワードスーツのように力を増強させているのだ。
シエンとレヴィが配合をしているが材料はシエンが繋げた指先のダークマターからベヒモス、ジズ、バハムートのダークマターを抽出、そしてレヴィ自身のダークマターも存在する。
足す、引く、掛ける、割る、さらに掛け合わせる分量によっても効果は変化する。
そしてこれはもちろんベヒモス以外にも送ることが出来る。
「ッ!!アニス!しゃがんで!」
ラピに言われてすぐにアニスは頭を抱えるようにしゃがみこむと先ほどまで上半身があった箇所をジズがカウンターズが見たことある最高速度を初速から叩き出して通り過ぎていく。
「よ、避けられちゃった!で、でも良いの?それ拭かなくて」
何のこと?と疑問になってアニスは自分の体を見渡すと頭を抱えていた手の甲にドロっとしたダークマターが乗っていて。
乗った箇所からアニスの手は溶けて手の甲から手の平へと貫通しそうになっていた。
すぐさまアニスは手の甲のダークマターを強引に拭ってなんとか貫通する前に止めることが出来たが拭ったもう一方の手の服の裾はそこだけ最初からなかったように溶けていた。
もし頭を抱えずにそのまましゃがんでいたら今頃アニスの頭頂部に穴があき脳へ到達して即死だっただろう。
「なに………これ」
起きた現象にアニス含め、みんなが理解出来ていなかった、ジズは自分の翼の能力を利用して空間を削るそれがジズの戦い方のはず、こんなことが出来たなど聞いたことがない。
理解出来ずとも戦う他ない、ラピがベヒモスに手榴弾、ジズにアサルトライフルによる射撃を行いながらポジションを指揮官の近くからアニスをカバーが出来る位置に移動する。
再びジズが翼からドロドロと溶解ダークマターを垂らしながらアニスとラピに突っ込む、今度は外さないように先ほどよりさらに低空飛行で突っ込んでくる。
このままではカウンターズはやられるだろう、しかしこの場にはカウンターズ以外もいる。
ジズとアニス達の間に大きな盾が割り込む。
ドガァンッ!
およそ人型の衝突音とは思えない轟音を鳴らしながらジズの突進はノアの大盾によって守られる、しかしノアの大盾をジズの溶解ダークマターが表面を溶かし始め、さらにジズは翼を広げ盾を飲み込み削り取ろうとする。
バンッ!
だがそれをハランが許さない、ジズの翼の外側を撃ち抜き大盾を飲み込もうとする翼の軌道を変えて、さらにはウイルスを着弾地点から発生させてそのまま仕留めようとする。
ドバァ。
何を思ったのかジズは自身の翼から溢れ出る溶解ダークマターをさらに増やし全身に隙間なくかける。
自殺行為?いいや違う、どう配合しようとどんな効果になろうとも元を正せばダークマター。
ならばダークマターを操るフォービーストに自傷など発生しない。
溶解ダークマターに包まれたジズにウイルスが入る隙はなく、瞬く間にウイルスは完全消沈させられた。
ならばとハランはベヒモスに照準を合わせるが。
「賢いわたしを忘れてもらっては困るな」
厄介なハランを仕留めようとバハムートがポイッとハランの足元に手で方向を示すマークの形をしたダークマターを投げる。
マークは床にぶつかり数回小さく跳ねて、地面を指してピタッと静止した。
ブォンッ!
突然ハランは床に突っ伏し起き上がることすらまともに出来なくなる。
(お、重いッ!重すぎて口すらろくに動かせないわ!!)
「ハラン!あの矢印のせいか!」
レッドフードが瞬時に原因を把握して、スナイパーライフルで矢印を壊そうと射撃するが。
カァンッ!
「硬すぎんだろ!?」
貫通すらせずマークは弾が当たったことで勢いよく弾き跳び、再び床を数回今度は大きく跳ねて横を向いてピタッっと静止する。
今度はレッドフードがまるで何かに轢かれたように勢いよく壁に向かって飛んでいき激突する、しかしそれでは止まらず壁がひび割れながらレッドフードはどんどん壁へと埋まっていく。
だが急にレッドフードを潰そうとする重力が無くなった。
レッドフードが何故とマークを確認すると薔花がマークを一刀両断したからだ。
「助かったぜ薔花!」
「1人でも欠けたら負けちゃうでしょうからね」
常識改変により何の疑問も持たずレッドフードはお礼を言い薔花は軽口を言う、改変されているとはいえ、敵と敵が手を取り合い協力してさらなる強敵を討ち滅ぼす、感動的と言えるかもしれない。
無意味だが。
カァンッ!
この音はッ!と急いで薔花とレッドフードは音をした方を見ると真っ二つになったマークはそれぞれが切れる前の形に戻って一回目よりも二回目よりもさらに大きく数回跳ねてまたしても地面を向いてピタッっと静止した。
ブォォォンッ!
薔花とレッドフードが同時に地にふす、体はニケのボディで無ければとっくにペーストになりそうな程に軋み、痛覚を遮断していなければ痛みでとっくに意識を失うほどにダメージを受ける。
始まったばかりの戦いは既にフォービースト側の圧倒的力で終わろうとしているがカウンターズもインヘルトもまだ負けているつもりは全然なかった。
こちらには全てに適応する存在がいるのだから。
ミラーはダークマターを床一面に広げて必要な箇所へとラプチャーを生み出す。
二つになったマークを2体のラプチャーがそれぞれポカッと殴ると三回目よりもさらに跳ねて上向に静止してラプチャー2体は天井へ吹き飛びプレスされたかのように薄い板状に加工された。
床に溢れているジズの溶解ダークマターをちゅうちゅう吸っているラプチャーは吸いながら体を溶かし最終的には液体になった。
ベヒモスに襲い掛かろうとするラプチャーをベヒモスは鬱陶しそうに殴りつけると殴られたラプチャーは木っ端微塵に壊れて吹き飛んでいった。
あっけなく壊されただけ、しかし条件は揃った、それぞれのラプチャーが情報をミラーに送りミラーは再びラプチャーを生み出す。
重力の影響を一切受けずむしゃむしゃとマークを食べて無効化するラプチャー。
ちゅうちゅうといくら溶解ダークマターを吸い取っても溶けないラプチャー。
ベヒモスが本気で殴ってもびくともしない頑丈なラプチャー。
フォービーストが理論を超越する存在ならミラーは超越すらも理論の場へと引き摺り下ろす。
もう一度ベヒモスが全力でラプチャーを殴って見るがやはり全然効いていないことにベヒモスは思わず笑顔が溢れる。
「ハハッ!簡単に終わらない見たいで嬉しいぜ!!」
シエンが分厚いノートの1枚ページを捲る。
ベヒモスの3度目の全力殴打、先程と同じで何も効果がなく、むしろ2度目よりもびくともしてないっぷりが増している気すらする。
しかし、殴られたラプチャーは内側から殴られたかのように体をバギベコッと変形させてあっけなく壊れる。
さらに溶解ダークマターを吸引していたラプチャーは吸いながら体がどんどん石に変異していき最終的にただの石になって粉々になる。
続くようにマークを食べていたラプチャーはプクゥと風船のよう膨らんで浮かび始めて、ある程度浮かんだら膨らみすぎたのか破裂して壊れた。
適応したものが一瞬で壊されたことにミラー以外は冷や汗をかくが、ミラーには何の焦りもない。
壊されたラプチャーはさらに情報をミラーに送りミラーはさらに適応したラプチャーを生み出す。
こちらは無限に対してシエンのあのノートは分厚く大分ページ数があるがそれでも有限だ、ミラーはこの勝負完全にこちらが有利だとさとる。
……………………………………………?
情報が………こない?
急にブワッと汗を流しながらミラーは焦り始める、それはそうだ情報が来なければ適応した次の個体が生み出せないのだから。
どうして?
その疑問に答えるかのようにミラーの隣にいたノアに変化が起きる。
「な、なにこれ!?」
ノアの体の一部から突然クリスタルが生えてノアの体を侵食していく、そして瞬く間にノアは全身をクリスタルに包まれて行動不能となった。
一瞬の出来事に皆が理解出来ずにいると。
ラピ、アニス、ハラン、レッドフード、薔花が声を発する暇もなく同時にクリスタルに包まれて行動不能になる。
残っているのはプリンセスによってクリスタルに耐性があるネオンとクリスタルに包むと流石に死ぬのでやめたヨハンとカウンターズの指揮官、そして意図的に残されたミラーだけだった。
「レヴィ!もうちょっと楽しませてくれよ!!」
状況を正確に把握しているのはフォービーストのみ、そしてベヒモス、ジズ、バハムート、特にベヒモスが久しぶりの全力がもう終わろうとしていることに不満をたらす。
それに対してシエンに抱きついていたレヴィが気怠そうに片目を開いて軽く叱る。
「そう言ってどんどん適応させてこっちが困るぐらい強くするつもりだったでしょ」
「………そんなことねぇぞ?」
「今の間が答えでしょ」
目を泳がせてるベヒモスに呆れながらレヴィはどうせ目を開いたならとミラーの様子を確認する。
「クリスタルを使ったのでしょうけど、どうやって………」
情報が来ないこととクリスタルの攻撃が始まったことでクリスタルを利用して情報の送受信を妨害していることはミラーもなんとなく把握していたが肝心などうやってがわかっていなかった。
「クイーンであるあんたなら感じ取れると思ったけど、そうでもないみたいね」
「何故クイーンであることを知っているのですか!?」
ミラーは明確に困惑し始めた、シエンを攫ってから一度も自分がクイーンであることなど喋ってはいないからだ、知るとすればレヴィアタンの記憶を読みとる能力だがあれは触れるかダークマターで包まない限り使えないはずだからだ。
「えぇ、だから『包んでいるのよ』」
現行する思考すら読み取っていることにさらに困惑が増すミラーだがそれでも冷静な部分で考え答えに辿りつき答え合わせをするようにハランのウイルスに適応した時と同様にウイルスサイズのラプチャーを生み出す。
研究者気質のミラーは予想と検証が合っていた場合とても嬉しいが。
この時ばかりははずれて欲しいと願った。
だが結果は予想通りとなった。
細菌サイズのラプチャーは細菌サイズのはずなのに蝕まれるようにクリスタルが生えて侵食していき、最終的に皆んなと同じようにクリスタルに完全に包まれた。
細菌よりもさらに小さいクリスタル、そしてクリスタルを生み出すにはベヒモスが直接触れるか。
ダークマターしかない。
答えがわかった瞬間、思わずミラーは手遅れだとわかっていながらも口を塞ぐ、そしてそうさせられた存在であるレヴィアタンを睨む。
睨んだはずのミラーはその場から動かなくなる、クリスタルにやられたのか?違う。
ミラーは見惚れたのだ。
レヴィアタンは背中の異物感に軽くポジションを変える、変えた所で異物感は消えるはずもなく、必要なこととはいえため息を吐く。
レヴィアタンの背中から毛細血管と言えるほどに細く、細かいダークマターが生えてそれが部屋中に張り巡らさせれている、その細さはヒントを出されて目を凝らして見たミラーだけがやっと気づく程だ。
その微細なダークマターは枝分かれしたそれぞれの末端が最終的に空中で止まっていた、もちろんそこで終わってなどおらず、正確には空中でさらに微細に小さく細かく千切れ、空気中に漂っているのだ。
この空間内全てがダークマターで満たされている。
だけどミラーはその事実に見惚れていたわけではない。
偶然なのだろう、レヴィアタンが広範囲にダークマターを広げるため背中から扇状に伸ばしているそれはまるで黒い翼が生えているようで、その状態で憂いにも母性にも見える表情で座るシエンに抱きつく姿はまるで女神そのもので。
レヴィアタンという女神の寵愛を一身に受けるシエンもまた椅子に座り、本を開き読むその姿は下々の争いに興味がない男神に見えた。
女神と男神が同時に居る、どちらかではなくどちらも居る。
2人合わせて全知全能。
そう本能でわからされたミラーは見惚れながら動けずただ審判を待つ、ただの1人の個体へと成り下がっていた。
「ご、ごめ『逃げろ!ミラー!』ッ!?」
無様に赦しを乞おうとするミラーに生き残っていたカウンターズの指揮官が常識改変により大切な仲間だと思われているミラーを庇うように生身で立つ。
「何処まで足止め出来るか分かりませんがやるだけやってやります!」
カウンターズの指揮官に追従するようにネオンが牽制射撃を始める。
「指揮官が殿なんてどうなんだと思うが、仕方ない」
ヨハンも隠し持っていたスモークグレネードを投擲し、部屋を煙で覆い尽くす。
先程首を垂れたのが自身の本能なら今度はクイーンとして種の繁栄を生み出す者としての本能がその場から逃亡を選択させてヨハン達の行動に乗じて部屋からの脱出に成功する。
1分とかからずヨハン達は制圧された。
ミラーは審判を放棄した。
もし無様でも赦しを乞えばきっとシエンは許していたことだろう。
だが逃げたならもう答えは一つしかなくなった。
―――
ミラーは逃げていた、ただひたすらにがむしゃらに。
出来るだけシエン達から距離を取りたかった?
もちろんそれもあるが違う。
ミラーは逃げながら後ろを振り向く。
自分がいる。
ミラーがいるのだ。
なんで?なんで?なんで?
どうして自分が後ろにいるのか、どうして追いかけてくるのかわからなかったが、追いつかれたらマズイというのは嫌でもわかった。
ミラーは逃げながらラプチャーを出して追いかけてくるミラーを倒そうとするが。
追いかけてくる自分はラプチャーという障害物など存在しないかのように通り過ぎていき、ラプチャーもそこには敵など居ないといっさい攻撃を後ろの自分にしようとしない。
距離が段々と近づく、全力で走っているはずなのに一生懸命走っているはずなのに何処までも追いかけてきて距離を詰めてくる。
石につまずく。
ズサぁと顔面から転んでしまう、急いでミラーは起きあがろうとすると起きあがろうと地面を見ている視界の端に足先が見えた、それはどう見ても自分の足で恐怖にかられながらもミラーは顔をあげる。
そこには何から何までそっくりな、だけど生理的な嫌悪感を感じる何かが違う自分が立っていた。
それと目が合った、目が合ったそれは口を開いて初めて言葉を口にする。
「スワンプマンって知ってる?」
本物のミラーは言葉を理解する前に全身がダークマターに変異し、丸いダークマターの泥溜りになった。
そこに先程まで追いかけていたミラーが入り込み、何秒も経たないうちに出てくる。
引き継ぎは終わった記憶もクイーンとしての能力も全て引き継いだ。
全ては語弊があるかもしれない、悪しき心は不要なので置いてきた。
そう、置いてきたのだ、まだ意識はあるのだそこの泥溜まりは。
喋れもしない、動けもしない、体がないから死ぬこともできない。
これがフォービーストから逃げた答えだ。
―――
あれ………?わたしは気絶していたのでしょうか?
確かわたしは自分に追いかけられて………そこから記憶がありませんね、でも何も起きていないということは恐怖のあまり見てた幻覚だったのでしょうか?
まぁ、どちらにせよもうフォービーストには勝てないって分かりましたし、逃げるぐらいならいっそのこと素直に謝った方が良さそうですね。
ジズよりも豊満なボディですしシエンに需要はあるはずです、カウンターズの指揮官は諦めましょう複数に手を出すのはシエンの心象を損ねます。
ビチャッ。
?………恐怖のあまりお漏らしならぬダークマターを漏らしてしまったのでしょうか?結構な量漏らしてますね。
………………なんというかお漏らしと表現したせいでそう見えてしまいますね、取り込まず放置しましょう!
ミラーはどう謝れば良い感じにシエンを丸め込めるか考えながらフォービーストに会いに行く。
足元にあった泥は何も喋らない、動かない。
スワンプマン、何もかもが本物で記憶だって本物でそれは周りも本物だと答えるし、本人だって態々自分が偽物なんて疑いもしない。
だがこの思考実験はどう足掻いても最初の本物は死ぬのだ。
入れ替わった後が本物かどうかを論じようが当の入れ替わる前の人間は死んでいるのだから実際に起きたとしても永遠に答えの出ない問題だろう。
なら当人が生きてたら?
それに答えれる者もいないだろう。
だってそれはただの泥なのだから死んでいるのと変わらない、泥がどう思おうが誰にもその気持ちは届かないのだから。