シャーレの先生は化け物である 作:人肉の味を知りたいようで知りたくない
食あたりを起こしておもいっっっきり吐いてしまった……めちゃくちゃやばかった。
評価の色が赤に……ありがとうございます!!
「――くっっそ……アイツら…!!」
「リ、リーダー、大丈夫ですか?」
「平気だ……体はな、心は…正直荒れに荒れてやがる…!!負けた…あんな奴らに…!!」
アビドス学園から離れた場所にある誰も使われていない廃工場、そこは現在カタカタヘルメットがアジトとして使っている。
ヘルメットを取り頭を抱えながら苛立ちを隠せずにいるヘルメット団のリーダー。彼女は先ほど先生の作戦に見事ハマり、頭を撃たれそのまま気絶…気付いた頃には自分たちの家へと帰ってきており、そこで敗北を確信した。
「……あの作戦の指揮をとっていたのは、大人だったよな」
「は、はい。しかもシャーレの先生…? って言ってました」
「最近噂になっているアレか………私たちには縁のない話だったから完全に忘れてた」
彼女らにとって先生とは、『学園に所属している生徒達の先生』であるため、どこの学園にも所属していない彼女らにとって先生はただの他人で、関係のない大人。
「―あ、あのリーダー。なんならいっそのこと、私達も先生に頼っちゃえば…いいんじゃ…? そうすれば、もうアビドスを襲わなくたって…」
「……馬鹿かお前、頼ったところで何も変わらねえだろ――あの大人は生徒の味方なんだから」
リーダーの少女は仲間の1人の提案を鼻で笑い否定、不良で裏の世界に生きる自分達…それもアビドスを襲った自分達に対して先生が手を差し伸ばしてくる―そんなものはただの戯言。
「あの大人にとっちゃ私たちはただの邪魔者なんだ、きっと今頃私達のこの居場所をどう攻略しようか考えてる頃だ。――いいか、あの大人が優しく手を伸ばしてくるだなんてな、万が一……いや、億に一も!」
「リ、リーダァァァァ!!ここにアビドスとあの大人がぁぁ!!」
「 っきたか、お前ら戦闘準備―」
「話し合いをしにきたってぇェェェ!!!」
「………………………………えぇ?」
「億に一…ありましたね」
しかし、その戯言は……事実となった。
「……つまりは、アレか…私達をシャーレで雇う代わりアビドスの襲撃はやめろ…と」
「その通り。シャーレの財力なら君たち全員を雇うことは可能だし衣食住をしっかりと提供できる。君たちがその気なら、勉強を学べる時間や場所も用意するよ……どうかな?」
古びたソワァに互いに対面で座る先生とリーダー。それぞれの背後にはアビドスの生徒と他ヘルメット団のメンバー達が立っていた、どちらも銃を所持している。
「……なあ、大人の先生。それを…信じろって言うのか?私らはヘルメット団…不良だぞ。生徒じゃない」
「君達も大事な生徒だよ」
「違うね、私達には所属している学園が無い。だからアンタの言う生徒じゃ無い……それとも何か? キヴォトスにいる子供はみんな生徒ってか?」
「勿論――不良だろうとなんだろうと、学園都市キヴォトスに住む子供達はみんな……私が守るべき生徒なんだ」
曇りなき目、先生は一才の曇りのないその目ではっきりと告げた。学園都市キヴォトスは、その名の通り数多くの学園が集まりできた都市…そこに住む子供達は、学園に所属しているいない関係なく…生徒。先生はそう考えていた。
それを聞いたヘルメット団はどよめきはじめ、『もしや…』と思い始める。アビドス生徒達は『これならいけるかも…!』と希望を見出していた。
「へ……へぇ……それじゃあ、それじゃあ――これでも、そう言えるのかよ!!」
リーダーは懐から銃を取り出し、銃口を先生の頭に向けた。どよめきは違う方向へと変わり、アビドスの生徒達はさせないとばかりに銃を彼女に向ける。
「言えるよ」スッ
はっきりとそう口にしながら、先生はアビドスの生徒に目線を送る……『信じてくれ』と。アビドス生徒達はゆっくりと銃を下ろす。
「なんなんだよ…なんなんだよお前。これが見えてないのか…怖くないのかよ…!!」
「正直に言うと、あんまりね……武器を突きつけられるのには慣れてきてるから――あっ、えーと!今のは忘れてもらって……」
「ちょっと先生!? 今さらっと聞き捨てならないこと言わなかった!?」
セリカがすかさず銃口を下げつつも、鋭いツッコミを入れる。背後ではホシノが「うへ~、先生、一体どんな修羅場をくぐってきたのかおじさん興味津々だな~」と、のんびりした口調ながらも鋭い視線を向けていた。
「あはは……まあ、私の過去の話はいいじゃないか。それよりも、だ」
先生はわざとらしく咳払いをすると、向けられた銃口を恐れる風でもなく、穏やかな、けれど真剣な眼差しでリーダーの少女を見つめた。
「できれば私は、君達に裏の世界じゃなく、表の世界で堂々と生きていて欲しいんだ。シャーレに来てくれれば、無駄に戦う必要も物資を誰かから奪う必要も無い……どうかな」
「今まで散々やってきたんだぞ…? 今更…」
「ならこれから変わっていけばいい――君たちはまだ若い、今からならいくらでも再スタートできる」
「そもそもそんなこと、そこにいるアビドスの生徒が許すわけ…」
「……確かに散々襲われてきて、はい許しまーすって簡単にはいかないよー?でも…そだね〜、シャーレの雇われとして、アビドスの掃除とかお手伝いをしていってくれるのなら、話は変わってくるかもね〜」
「ん、同じく」
「私はみなさんがいいのなら〜」
「私も、同じ気持ちです…」
「アビドスを襲わないでくれるのなら……で、でもとりあえず!謝ってはもらうからね!!話は、それから!」
アビドス生徒達の言葉を聞き、揺らぐリーダー。目の前にいる大人を信用して良いものか、そもそもシャーレは満足に生きられる場所なのか……そう考えていると、先生が真剣な口調でもう一度話す。
「……時給1300円、土日は必ず休み」
「…!!!」
「業務内容は主にシャーレ内部の清掃や、受け付け、私の少しのお手伝い、必要な場合の戦闘。保険は適応される」
「…!!!……!!!」
「――朝昼晩、食事付き。1人一部屋あり、シャワー付き」
「っっっぐ…!!!!!!営業…時間は…?」
「君たちの自由に配慮して……朝の8時から午後15時まで、昼休憩は勿論あり」
「ペットは…!」
「可!!」
揺らぎに揺らぎまくるヘルメット団達、わざわざアビドスを襲って毎回毎回怪我をして帰ってきたり、しんどい思いをするよりも圧倒的に楽でありやりやすい場所。
――むしろ、逆に怪しく思えてくる。そんなにも都合のいい場所が、普通に暮らせる場所が、本当にそんな簡単に手に入るのかと。
「……シャーレはどんな生徒でも受け入れる、どんな生徒達にも寄り添い…どんな生徒の味方であり続ける。シャーレは、そんな場所だよ」
――かつて、先生には心の底から安心できる場所があった。どんなに酷い目にあっても、どんなに辛い時でも、その場所に行き……そこから出されている一杯のコーヒーを飲む。そこが彼にとっての安らぎの場所だった。
――そんな場所を、彼もつくりたいと…ずっと、ずっと考えていた。
「もう一度聞くよ――どうかな、シャーレに、来ないかい?」
「…………ちょっと、考えさせてくれ。仲間の意見を聞きたい…答えが出るまでの間、アビドスには何もしないって約束する」
「―ありがとう、そう決断してくれて」
先生は立ち上がり、胸元とポケットから名刺を取り出し、リーダーに渡す。
「答えが決まったら。ここに連絡してね……それじゃあ、行こうかみんな」
「ん。交渉、……一応成功?」
「と…とりあえずこれで、しばらく襲撃される心配はありませんね!」
「本当に、戦わないで解決しちゃった……」
「大人の人って…素敵ですね〜」
(――先生…本当に、何者なの…?)
先生とアビドス生徒達はヘルメット団アジトから去っていく。リーダーは受け取った名刺を見つめながら彼の言っていた言葉を思い出す。
『……シャーレはどんな生徒でも受け入れる、どんな生徒達にも寄り添い…どんな生徒の味方であり続ける。シャーレは、そんな場所だよ』
「……受け入れる……か」
リーダーは、少し息をついた後。仲間達の方へ顔を向け、ゆっくりと口を開ける。
「――話し、合おうぜ…これからのこと」