転生した推しゲー世界にドハマりしてたら、導師と呼ばれ優秀すぎる教え子たちに包囲されていた   作:暁刀魚

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第2話 へ、変態変態!

 ”ウォーカーズ・フロンティア”。

 通称ウォカフロは、さっきも言ったけどハクスラキャラビルドRPGだ。

 世界各地に存在する”迷宮”に挑むウォーカー達の物語。

 迷宮は時折フロンティアとも呼ばれ、だからこのゲームはウォーカーズ・フロンティアというわけ。

 複数の種族と得意武器を組み合わせて、更にはその種族や武器で得られるアーツでキャラをビルドする。

 例えば得意武器が「本」や「杖」だったら得られるアーツは魔術に偏り、更には種族を火精霊や水精霊にすると火や水のエキスパート……といった具合に。

 

 まぁこの組み合わせが非常に膨大で、更には冒険中で手に入る装備の類もビルドに大きな影響を与えてくる。

 これがビルドの強さにはどうしても格差があるけれど、ゲームクリアまで到達できない産廃ビルドがほとんどないことから、ウォカフロは多くのプレイヤーに愛されてきた。

 

 かくいう俺もその一人で、複数あるシリーズを何回も周回し、その度にいろんなビルドで遊んだものだ。

 そんな俺が、何の因果かウォカフロ世界に転生してしまった。

 こりゃもう、ウォカフロ世界を楽しむ以外に選択肢はないよね。

 何よりウォカフロ世界は、破滅的な世界の危機がないというのもありがたい。

 

 基本的にこのゲームは、プレイヤーキャラに特別な設定とかそういうものが存在しないゲームだ。

 いや、プレイヤーの中では個々にそのキャラへの設定を付与して、ロールプレイを楽しむプレイスタイルが結構主流なんだけど。

 要するに、重苦しい設定をプレイヤーキャラに付与して壮大な物語を展開したりとか、そういうのがないんだ。

 だから気兼ね無く、自分の楽しみを優先しても問題ないというわけ。

 

 もちろん、俺の楽しみといえば現実になったウォカフロで自慢のビルドを試すこと。

 ……なのだが、転生してこの世界の人間になった俺の体は一つしかない。

 種族と得意武器もすでに決まってしまっていて、ビルドの選択肢はかなり限られている。

 そこで目をつけたのが、ラノのようなビルドに悩むウォーカーだったのだ。

 いや、ラノを見つけたのは偶然だけどね。

 

 ビルドに悩むウォーカーは、ゲームが現実になったことでビルドの最適解がわからず、周囲から不遇扱いされていることが多い。

 そこで俺がビルドの仕方を教えると、まぁこれが面白い具合に()()()

 他人の成長って、あんまり興味をそそられないんだけど、自分の手で伸ばした成長は違うようだ。

 これがなんとも楽しかったのである。

 

 加えて、こうして誰かを教え導くことは客観的に判断すれば”善行”だ。

 これがまたよかった。

 俺は自分のビルドの関係で善行をある程度意識して積みたい。

 そんな俺の事情にもマッチして、俺はこういうムーブに取り憑かれていったのである。

 

 まぁ、ある程度育ったらさっさと次に言ってしまうんだけど。

 だって、相手はゲームのキャラクターではなく一人の人間だ。

 一人前になれば、後は俺がいなくてもなんとかなるだろう。

 しかしなぜか周囲からは、才能ある人間を目覚めさせてはヤりすてる変態みたいな扱いを受けてしまっている。

 だけど、しょうがなくないか?

 だって俺は、この世界でいろんなビルドをこの目でみたい。

 導師なんて呼ばれて、尊敬されたい訳じゃないんだから――

 

 

 +

 

 

「――”疾風(ハヤテ)”!」

 

 俺の眼の前で、ラノが先ほど襲われていた犬の魔物に、槍のアーツを叩き込んでいた。

 事前に積んだバフのおかげか、問題なく一撃で魔物を屠れている。

 いや、多分ラノのレベルならバフがなくても倒せるだろうけど。

 まぁ最初なので安全マージンということで。

 少しずつ減らしていって様子を見ればいい。

 

「……こんなにあっさり勝てるなんて、驚きです」

「おめでとう、これなら魔力消費もそこまで気にならないだろ?」

「あ、は、はい」

 

 俺が声をかけると、ラノはビクっと震えて振り返った。

 そんなに警戒しなくても……

 

「今までは魔力消費を気にするあまり、アーツを使わずに戦ってたんだな。でも、群れてる魔物を避ければ、こうして一撃で魔物を倒せるわけだろ?」

「……仮にこのイヤリングがなくても、一撃必殺で魔物を狩ってれば、いずれ魔素も溜まって強くなれてましたね」

 

 魔素は、魔物を倒すと周囲に溢れて、人間はそれを取り込み強くなる。

 ぶっちゃけ経験値のことだ。

 

「まぁイヤリングがあったほうが効率は段違いだが、一人で迷宮潜るなら、やり方はそう変わらんだろう」

 

 このゲームは、ロールプレイ的な一人旅を想定してか、プレイヤーキャラが一人で潜るとランダムエンカウントで登場する魔物が一体だけになる、という仕様がある。

 その理由は、一人で行動しているときは複数人で行動するときよりも魔物に見つかりにくいからだ。

 逆にこっちは一人で神経を研ぎ澄ませて探索しているから、単独で行動する魔物を発見できる、とかなんとか。

 ただし、ランダムエンカウントは単体だが、それとは別にシンボルエンカウントも存在し、こっちは普通に群れで出てくる。

 一人旅の場合は、そういった群れのシンボルエンカを避けるスニーキングゲーの側面も出てくるな。

 なお、ボスの強さはパーティで挑むときと同じ強さである。

 まぁ、ダンジョンのギミックで弱体化させることができるんだが。

 逆に、パーティでもこのギミックでの弱体化は可能だし、敢えて弱体化させずにソロで挑む縛りプレイもできる。

 ……話がそれたな。

 

「このイヤリング、すごいありがたいです。アドバイスに関しても、本当に感謝しています」

「うん」

「ですが……その……」

「……うん」

 

 で、こうやって話がひと段落すると、あることが気になってくる。

 それは先ほどから一言も言葉を発していない人物のことだ。

 いや、別に言葉は発してないわけじゃないんだけど。

 正確にいうと――

 

 

「ウヘヘヘ、導師様ぁ……導師様ぁ……」

 

 

 俺に抱きついて腰をヘコヘコさせてるのを、二人して必死に見なかったことにしているだけなんだけど。

 フィリナ……

 

「えーと、その……言いたくはないんですけど……いえ、いいです」

 

 あ、なんか俺のことを「へ、変態変態!」って顔を真っ赤にしながら罵ろうとしてる表情だ!

 でもって、「わ、私は騙されませんからね!」とかいうやつだ!

 これまでも何人かそういう子はいたから俺にもわかるぞ!

 

「わ、私は騙されませんからね!」

 

 あ、言った!




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