転生した推しゲー世界にドハマりしてたら、導師と呼ばれ優秀すぎる教え子たちに包囲されていた   作:暁刀魚

4 / 4
第4話 定番のイチャモン

 俺達は、迷宮を脱出して街に戻った。

 迷宮の階層出入り口は魔法陣になっており、入口か出口の魔法陣に到着すると階層の移動と外への帰還を選択できる。

 ゲーム的な都合によるところが大きいけど、設定的にはダンジョンは女神が作ったものだからユーザビリティに優れているのだ。

 

「………………やります」

「一緒に潜らないかって言ってから、いままでずっと唸ってたな……」

 

 そしてそんな移動の最中、ラノはずっと何やらウンウン唸っていた。

 何もそんなに悩まなくても……

 とは思うものの、ラノの事情を考えると致し方ないところもある。

 水晶花は一年のある時期にしか咲いていない。

 ラノはウォーカーになれる下限年齢になったのがつい最近で、水晶花を手に入れるための時間が圧倒的に足りていない。

 ここから水晶花の開花に間に合わせるには誰かしらの手助けが必須だろう。

 

「ところで、フィリナさんの姿がないのですが……」

「あいつ方向音痴で、気づいたらどっか行ってるんだ。置いて行かれたとか言ってるけど、大体の場合は本人が勝手に迷っただけだぞ」

「ええ……」

 

 まあ俺が意図して置いていくこともありますけど。

 それは全体の三割くらいだから。

 まだセーフのはずだ。

 

「とにかく、受けてくれるなら一緒に頑張ろう。よろしくな、ラノ」

「は、はい」

 

 なんて話をしつつ、俺たちは一度ギルドに向かう。

 一緒に迷宮の深層を目指すとなると、パーティ登録が必要だからな。

 さっさとああいう手続きは済ませておくに限る。

 なんて思っていると、不意に声をかけられた。

 

 

「おいおいラノちゃん、急にどうしたんだぁ? 男なんて連れてよぉ」

 

 

 下卑た声だ。

 見るまでもなくそういう輩だとわかる。

 カルマ値も高いんだろうな。

 振り返ると、ニタニタと笑いながら数名の男ウォーカーがこちらに視線を向けていた。

 途端、隣でラノが苦々しげに視線を鋭くさせる。

 

「おい見ろよこの男! Cランクじゃねぇか!」

「おいおい、俺たちみたいなBランクパーティがメンバーに誘ってやってるってのに、そんな雑魚と組もうってのか、ええ?」

 

 それからゲラゲラと笑う男たち。

 俺の首元に提げられているプレートを見て、ランクを判断したようだ。

 視線でこいつらはなんなのか、俺はラノに問いかけた。

 

「ウォーカーパーティ“暴食”の連中です。Bランクウォーカーのパーティなので実力はありますが、乱暴で周囲からの評価は低いです」

「ラノとの関係は?」

「……私がウォーカーになった時、パーティに入れてやろうって声をかけてきたんです。それを断ったら、嫌がらせをしてくるようになって」

 

 なるほどね、よくあるストーリーイベントって感じだな。

 ウォカフロは大きなストーリーはないが、細かいストーリーは色々ある。

 中には、旅の途中でウォーカーと出会い、そのウォーカーにまつわる事件に関わることができるのだ。

 まあ現実になってしまえばよくあるトラブルの一つでしかないが、ゲームだとこういうイベントってプレイヤーが見捨てるとNPCが碌な目に合わないんだよなあ。

 

「どこから来たか知らねえけどよぉ、そいつと組むのはやめた方がいいぜ? 何せ役立たずの獣くせぇ槍使いだ。他のウォーカーも声をかけねぇぞ?」

「俺たちみたいな親切なパーティに囲われるのが、そいつにとっても幸せなンだよォ」

 

 何せ、ゲームに出てくるNPCはだいたいラノのように訳ありだ。

 ラノの場合は猫獣人の槍使いというウォーカーとしては不遇なビルドと、声をかけてくるカルマ値高めなウォーカーの存在。

 こいつらに目をつけられてるせいで、ただでさえパーティを組んでくれるウォーカーがいないのに、現在ラノはギルドでほぼいないものとして扱われているらしい。

 これを放置するとラノはこいつらに食い物にされてしまうだろう。

 

「……相手にしないでいいですから」

「まぁ、そうなんだけどさ」

 

 今回はたまたまフィリナが迷子になっていたから声をかけられたが、フィリナがいればそうはならなかっただろう。

 とはいえここで対処しておかないと、継続的に嫌がらせを受けるのは間違いない。

 ただなぁ、幾ら不快な思いをさせられているからといって、それを排除するために暴力を振るうのはこの世界において正しい行為とは言えないのだ。

 いや、そんなものは個人の自由だし、ここで俺がこいつらを殴り飛ばしても誰かから文句が出ることはないだろうけど――

 ()()()()()に影響がある。

 ラノが相手にしなくていいと言うなら、ここはそれに従うべきだ。

 

「――つうかよぉ、何だぁ? お前のその情けねぇ魔素はよぉ」

「こいつ本当にCランクかよ。そのひょろっちょいスペックでどうやって魔物と戦うんだかねぇ」

 

 と思っていたら、こいつらの矛先が俺に向かった。

 いくらCランクで()()()()()()が大したことないからって、そう簡単に喧嘩を売るのは関心しない。

 なんとなくコイツらの考えが読めた。

 ここで俺を一方的に叩きのめして上下関係を叩き込むつもりだ。

 なら――

 

「行こう」

「……はい」

「おい待てよ、勝手にどっか行くんじゃねぇよ。ちっとは先輩ウォーカーのアドバイスを聞いてけって言ってんだ……よ!」

 

 俺がラノにうながしてその場を離れようと、男たちの横を通り過ぎようとする。

 そうしたら案の定、男の一人が俺に拳を振るってきた。

 狙い通り。

 向こうから仕掛けてきた喧嘩を返り討ちにする分には、俺のビルドは影響を受けない。

 

 だから俺は、迫る拳を片手でやすやすと受け止めてみせた。

 

「な――」

 

 男が目を見開く。

 他の男達も、想像していなかった状況に戸惑いが走る。

 だから俺はすかさず受け止めたその手を――

 

 ()()()()()()

 

「あ? ――あ、が、あ……あああああああああっ!?」

 

 一瞬何が起きたのか理解できなかったという様子の男。

 そんな男が、痛みを自覚し絶叫を上げた。

 周囲の視線が男に集まる。

 仲間の連中も、俺ではなく男に視線を向けて顔を引き攣らせた。

 

「な……Bランクのウォーカーを一方的に……どうして?」

「それはまた後で……今はここを離れよう」

「そ、そうですね……人が集まってきても面倒ですし」

「いやどっちかというと……この状況をフィリナに見せたらフィリナがこいつらを半殺しにしかねないから……」

「あぁ……」

 

 そこは疑問に持たないんだ……

 どちらかというと、俺がどうして格上のウォーカーをひねりつぶせたのか、そっちに意識が向いているようだ。

 確かに、俺のランクはあいつらより低い。

 これは別に俺が実力を隠しているわけではなく、ギルドがそう評価しているから。

 あいつらも、俺のことを自分より弱いと思っているようだった。

 なら、その差を覆すものとはなにか。

 まぁ、一旦ギルドに行って腰を落ち着けてから話をすることにしよう。

 




評価、感想、お気に入り等いただけますと励みになります!
特に9点以上の高評価が一番ありがたいです。
よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

戦う事が好きすぎるつよつよ中年冒険者おじさん vs剣の 『称号』を持つ激重感情の者達(作者:ハンノーナシ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

▼おじさんが強い女の子と戦って、戦った女の子達に多種多様なクソ重愛着を持たれるだけのお話。▼多分、ながい。


総合評価:29/評価:-.--/連載:2話/更新日時:2026年06月03日(水) 00:14 小説情報

男女比3:1でも貞操逆転世界なのに「もう少し大きくなったら結婚しよう」でとうとう引き返せなくなった奴(作者:陽波ゆうい)(オリジナルファンタジー/恋愛)

男女比3:1の世界に転生した。▼って、おいこれ、男がチヤホヤされる貞操逆転世界ってやつじゃねーじゃん!?▼野郎が多くなったら、寝取りが増えるだけだろっ。▼だから俺は、女の子にモテることを諦めることにした。▼※カクヨムでも掲載しています。


総合評価:3397/評価:7.98/連載:24話/更新日時:2026年06月01日(月) 22:22 小説情報

不老不死なら寿命を削る禁術も無限に使えるんじゃね?(作者:正義のヒーローA)(オリジナルファンタジー/コメディ)

正義のヒーローになりたかった。▼子供の頃から俺は、ずっと正義のヒーローに憧れていた。▼転生した時は、チートを手に入れていると思っていた。▼都合良く、最強の力でも手に入ってねぇかなぁとか思っていた。▼しかし、そんなものはなかった。▼必死に勉強した。▼必死に特訓した。▼でも、どれだけ頑張っても凡人止まりだった。▼そんなある日、俺はふとしたきっかけで不老不死の呪い…


総合評価:76/評価:-.--/連載:3話/更新日時:2026年06月14日(日) 07:31 小説情報

慢心で負ける系の体制側【中ボス】だけど、真剣に上を目指そうと思う(作者:どんぐりちょうだい)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 慢心ばっかだから敵味方全方位に嫌悪向けられたり舐められたりしてたけど、それ全部演技だったやつ。これからは徹底的にやります。


総合評価:88/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年06月01日(月) 03:08 小説情報

悪徳領主に転生して死亡フラグを折るために勇者パーティを育てたら、激重感情を向けられて逃げられない件(作者:激重大好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、プレイしていた百合RPGの「序盤のやられ役」である悪徳領主ルシアンに転生していた。▼しかも、すでに悪魔と契約済みであり、このままだと勇者に倒されなくても魔力タンクとして悪魔に殺されてしまう完全な『詰み』状態。▼どうしても死にたくない俺は閃いた。▼「原作開始前の勇者たちを見つけ出し、俺が育てて悪魔を倒す。これしかない!」▼悲惨な過去を背負うはずだ…


総合評価:2355/評価:8.26/連載:6話/更新日時:2026年04月02日(木) 18:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>