転生した推しゲー世界にドハマりしてたら、導師と呼ばれ優秀すぎる教え子たちに包囲されていた 作:暁刀魚
俺達は、迷宮を脱出して街に戻った。
迷宮の階層出入り口は魔法陣になっており、入口か出口の魔法陣に到着すると階層の移動と外への帰還を選択できる。
ゲーム的な都合によるところが大きいけど、設定的にはダンジョンは女神が作ったものだからユーザビリティに優れているのだ。
「………………やります」
「一緒に潜らないかって言ってから、いままでずっと唸ってたな……」
そしてそんな移動の最中、ラノはずっと何やらウンウン唸っていた。
何もそんなに悩まなくても……
とは思うものの、ラノの事情を考えると致し方ないところもある。
水晶花は一年のある時期にしか咲いていない。
ラノはウォーカーになれる下限年齢になったのがつい最近で、水晶花を手に入れるための時間が圧倒的に足りていない。
ここから水晶花の開花に間に合わせるには誰かしらの手助けが必須だろう。
「ところで、フィリナさんの姿がないのですが……」
「あいつ方向音痴で、気づいたらどっか行ってるんだ。置いて行かれたとか言ってるけど、大体の場合は本人が勝手に迷っただけだぞ」
「ええ……」
まあ俺が意図して置いていくこともありますけど。
それは全体の三割くらいだから。
まだセーフのはずだ。
「とにかく、受けてくれるなら一緒に頑張ろう。よろしくな、ラノ」
「は、はい」
なんて話をしつつ、俺たちは一度ギルドに向かう。
一緒に迷宮の深層を目指すとなると、パーティ登録が必要だからな。
さっさとああいう手続きは済ませておくに限る。
なんて思っていると、不意に声をかけられた。
「おいおいラノちゃん、急にどうしたんだぁ? 男なんて連れてよぉ」
下卑た声だ。
見るまでもなくそういう輩だとわかる。
カルマ値も高いんだろうな。
振り返ると、ニタニタと笑いながら数名の男ウォーカーがこちらに視線を向けていた。
途端、隣でラノが苦々しげに視線を鋭くさせる。
「おい見ろよこの男! Cランクじゃねぇか!」
「おいおい、俺たちみたいなBランクパーティがメンバーに誘ってやってるってのに、そんな雑魚と組もうってのか、ええ?」
それからゲラゲラと笑う男たち。
俺の首元に提げられているプレートを見て、ランクを判断したようだ。
視線でこいつらはなんなのか、俺はラノに問いかけた。
「ウォーカーパーティ“暴食”の連中です。Bランクウォーカーのパーティなので実力はありますが、乱暴で周囲からの評価は低いです」
「ラノとの関係は?」
「……私がウォーカーになった時、パーティに入れてやろうって声をかけてきたんです。それを断ったら、嫌がらせをしてくるようになって」
なるほどね、よくあるストーリーイベントって感じだな。
ウォカフロは大きなストーリーはないが、細かいストーリーは色々ある。
中には、旅の途中でウォーカーと出会い、そのウォーカーにまつわる事件に関わることができるのだ。
まあ現実になってしまえばよくあるトラブルの一つでしかないが、ゲームだとこういうイベントってプレイヤーが見捨てるとNPCが碌な目に合わないんだよなあ。
「どこから来たか知らねえけどよぉ、そいつと組むのはやめた方がいいぜ? 何せ役立たずの獣くせぇ槍使いだ。他のウォーカーも声をかけねぇぞ?」
「俺たちみたいな親切なパーティに囲われるのが、そいつにとっても幸せなンだよォ」
何せ、ゲームに出てくるNPCはだいたいラノのように訳ありだ。
ラノの場合は猫獣人の槍使いというウォーカーとしては不遇なビルドと、声をかけてくるカルマ値高めなウォーカーの存在。
こいつらに目をつけられてるせいで、ただでさえパーティを組んでくれるウォーカーがいないのに、現在ラノはギルドでほぼいないものとして扱われているらしい。
これを放置するとラノはこいつらに食い物にされてしまうだろう。
「……相手にしないでいいですから」
「まぁ、そうなんだけどさ」
今回はたまたまフィリナが迷子になっていたから声をかけられたが、フィリナがいればそうはならなかっただろう。
とはいえここで対処しておかないと、継続的に嫌がらせを受けるのは間違いない。
ただなぁ、幾ら不快な思いをさせられているからといって、それを排除するために暴力を振るうのはこの世界において正しい行為とは言えないのだ。
いや、そんなものは個人の自由だし、ここで俺がこいつらを殴り飛ばしても誰かから文句が出ることはないだろうけど――
ラノが相手にしなくていいと言うなら、ここはそれに従うべきだ。
「――つうかよぉ、何だぁ? お前のその情けねぇ魔素はよぉ」
「こいつ本当にCランクかよ。そのひょろっちょいスペックでどうやって魔物と戦うんだかねぇ」
と思っていたら、こいつらの矛先が俺に向かった。
いくらCランクで
なんとなくコイツらの考えが読めた。
ここで俺を一方的に叩きのめして上下関係を叩き込むつもりだ。
なら――
「行こう」
「……はい」
「おい待てよ、勝手にどっか行くんじゃねぇよ。ちっとは先輩ウォーカーのアドバイスを聞いてけって言ってんだ……よ!」
俺がラノにうながしてその場を離れようと、男たちの横を通り過ぎようとする。
そうしたら案の定、男の一人が俺に拳を振るってきた。
狙い通り。
向こうから仕掛けてきた喧嘩を返り討ちにする分には、俺のビルドは影響を受けない。
だから俺は、迫る拳を片手でやすやすと受け止めてみせた。
「な――」
男が目を見開く。
他の男達も、想像していなかった状況に戸惑いが走る。
だから俺はすかさず受け止めたその手を――
「あ? ――あ、が、あ……あああああああああっ!?」
一瞬何が起きたのか理解できなかったという様子の男。
そんな男が、痛みを自覚し絶叫を上げた。
周囲の視線が男に集まる。
仲間の連中も、俺ではなく男に視線を向けて顔を引き攣らせた。
「な……Bランクのウォーカーを一方的に……どうして?」
「それはまた後で……今はここを離れよう」
「そ、そうですね……人が集まってきても面倒ですし」
「いやどっちかというと……この状況をフィリナに見せたらフィリナがこいつらを半殺しにしかねないから……」
「あぁ……」
そこは疑問に持たないんだ……
どちらかというと、俺がどうして格上のウォーカーをひねりつぶせたのか、そっちに意識が向いているようだ。
確かに、俺のランクはあいつらより低い。
これは別に俺が実力を隠しているわけではなく、ギルドがそう評価しているから。
あいつらも、俺のことを自分より弱いと思っているようだった。
なら、その差を覆すものとはなにか。
まぁ、一旦ギルドに行って腰を落ち着けてから話をすることにしよう。
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