雪と星のゴジラのアカデミア   作:lambdazero

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個性把握テスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 各々打ち解ける面々。

 威嚇する爆豪は兎も角、出久の紹介で皆に唯を言う。

「彼女は星野唯ちゃん。僕とかっちゃんのええと……なんて言うのかな。生き別れの、幼馴染みなんだ」

 そもそも爆豪と出久が長い付き合うだと前提で説明する。

 彼女は十年以上ずっと行方不明だったのが先日の騒動で突然戻ってきた。

 それまでの経緯を聞くほど、このクラスメイト達はバカでは無い。

 何せ特別危険個性。国の指定する、排斥される個性の持ち主。

 理由があって隠れていたというぐらい、想像できた。

 見たであろう、廊下の反応。阿鼻叫喚。

 偵察に行った爆豪が無知のモブが、下らないと評する。

 その反応で済むなら良い。実際は酷いモノだ。

 居るだけで周囲がパニック状態になる有名人。

 大々的に報道されたヴィランより厄介な問題。

 二人は人と扱いたいと言う。出久然り、爆豪然り。

 だが本人が怪獣(ゴジラ)だと言っているのでどうしようもない。

 個性はいうまでもなく、ゴジラ。

 強烈で、強力。

 誰しもが風化した今でも咆哮を知るほどの恐怖する個性。

「別に、どうにも出来ないし? 異形の個性、そういう偏見とかなら、差別するなって言えるんだけど。実際私の身体ゴジラに食われて別物だしさ」

「……成長、じゃないんだね」

 聞く限り、どう見ても普通じゃない。

 怪獣王の個性は自身の上書きを真っ先に行っていく。

 最適化して、侵食する。塗り潰し、怪物に変える。

 そんなもの、成長ではない。

「まぁ、雄英にずっと居るんだけど。命令で出られないし。もし出たらオールマイトにぶん殴られて戻される。あ、あと皆。私の近くでスマホ使わないでね。使えないし、弄くると壊れるから」

 体質でスマホの電波を吸っているのと電磁気を常に纏うので、圏外状態で操作すると故障する。

 無意識でやっているので、何かの弾みで力むと周囲の電子機器全部壊れる。

 そこは迷惑かけるのでゴメンとだけ言っておく。

「なぁ、星野……で良いのか? 聞きてえんだけど」

 一人が尋ねる。こいつは……後々の女子の敵。

 峰田だった。

「お前、結局雄英に捕まってるって事だよな。監視下って、授業どうするんだ?」

「全部受けろってさ。便宜上クラスメイトだからね」

 初日の今日から、必要な事は同じだ。

 自由など無い。完全に檻の中。

「うわぁ、生活がキツそうだな……」

 あまりに素直で失礼な反応に近くの女子、耳郎響香が止めろと怒る。

 それは同情だ。相手に対して初対面でしていい態度では無い。

「……優しいね、ヒーロー科の皆は」

 呆れたように唯は言う。

 見れば殆どの生徒が紹介されても対処に困っている。

 重すぎる。想像よりもずっと辛い境遇だ。

 国から迫害される、親は縁切りで自由もなし。

 常にヒーローに監視下に置かれて、見張られる。

 これがゴジラというだけで受ける処置。

 明らかな人権侵害だと一人が言う。

 飯田天哉というメガネの男子。

「星野さんが暴走したのは俺も見た。緑谷君が、決死の思いで助けに行ったのも。コントロールが出来ないなら危険個性だと俺も思うが、これは剰りにも過剰すぎる」

「……分かんねえのかよ、メガネ」

 爆豪が皮肉に笑って言った。

 大人は、世間は、国は、唯を人間と思ってない。

 ゴジラという怪物だと思うからこうする。

 人権侵害? 怪獣に?

 これで妥協しているからと語ると飯田は絶句する。

 本来なら殺されている、つまり即時の死刑執行。

 焦凍がそう言うと、皆は言葉を失った。

 何故だ。唯が何をした。暴れただろうが街では無い。

 試験会場だった。なのに……これが、現実?

「なぁ……オイラ思うんだけど。これがオイラ達の目指す、ヒーローのやることか? 酷すぎねえ? 星野、袋叩きにされてるじゃん」

「ちょっと、峰田……!」

 響香がそういう言動は控えろというのに。

 笑って流す唯が良いという。

「峰田君とは友達になれそう。同情って事は、私が怖くないんだ?」

「可愛い女の子に怖いもクソもねえよ! よろしくな、星野!」

 サムズアップと笑顔で答える峰田。

 流石は女子の敵。性欲という欲望の権化。

 モテたい一心で最難関を突破した変態。

 周囲の女子が軽蔑したような目で見ていた。

「……峰田君、ありがとうね。何かあったら言ってよ。吹き飛ばすぐらいしか出来ないけど、力になるから」

 こう言う奴の方が、信用できる。

 苦笑いして言うと仰天の峰田。

「嘘だろ。オイラが女子に好意的に接して貰えた!? 中学じゃ有り得ないのに! 雄英来て良かった!」

「この方、軽薄ですわね……」

 八百万という女子がボソッと言ったが聞こえてはいまい。

 有頂天で握手を求め、よってくる。

 で、握手する。すると。

「冷てえ!? 何か堅い繊維質の感触する!?」

 触れて分かる、唯の異常性。

 見た目こそ人だが、中身は金属を含んだ植物繊維のような塊だ。

 これが唯なのだ。分かってくれたかと問う。

「星野は大変だろうけど、オイラはお前の事気にしないぜ!」

「君、女子なら何でも良いの?」

 節操の無い奴であった。

 それでも、友人と言える言動を取る。変態だけど。

 小柄で雪色のロングヘア、だぼだぼのジャージ。

 蒼い目はいつも昏いのに。

 ようやく、明かりが灯った。

「赤外線は兎も角電波吸うって事は、俺の帯電と似たようなもんか?」

 もう一人、興味で聞いてくる男子。

 如何にも陽キャの見た目、上鳴電気。

 電磁気を使うアースにその程度で似てるとは言い難い。

「自分で起こせる電磁気だから、微妙に違うよ? それに出力上げると非対称性透過フィールドが出来るから、電気君とは文字通りレベチだね」

「非対称……なんだって?」

 慣れている言葉でも通じないことに気付いた。

 出久が噛み砕いて語る、電磁気で起こす電磁バリア。

 自分の周囲に纏う見えない壁。

 非対称性透過とは、外部を全てシャットアウトして内部は通るという意味だ。

「要は無敵のバリアじゃん!? そんなん電磁気で出来るのかよ! マジでスゲえなゴジラ!!」

「スゲえで片付ける君も凄いよ」

 怖くないらしい。アホかこいつ。

 本質を理解している八百万など真っ青になっているのに。

 原作でもノリノリで軽快なキャラだったが、こういう奴ほど付き合いやすい。

「なぁなぁ、ゴジラなら熱線吐けるんだろ!?」

「うん、二種類」

「うおおっ! パねえ、かっけえ!」

 ……電気は単なるバカかも知れない。

 原作でもノリノリなキャラだったが。

 そういう単細胞の方が優しいことに気付く。

「うん。電気君には、電磁気同士の個性って事で」

「おう、よろしく!」

 笑って迎える。こいつら人が良すぎる。

 ……とはいえ。

 八百万、葉隠などは何かを考えている。

 全員が受け入れるという訳でも無いか。

 飯田はクラスメイトであるなら当然に接すると言う。

「あ、そういえば。君」

 思い出す。謝っておかないと。

 声をかける、麗日お茶子。

「うえ!? な、なに?」

 いきなり声をかける唯にビビる。

 彼女は仕方ない。襲おうとした。

「あの時はゴメンね巻き込んで。怪我とか無かったと思うけど」

「き、気にしてないよ! うん、事情聞いたらしょうがないって分かったから!」

 でも怖いのか、顔色は悪い。

 お茶子に嫌われるのは、内心ダメージある。

 A組の良心と癒しにこの反応はちょっと辛い。

「星野さんが苦しんでたのは、見てたから。一番辛いのは、星野さんだよね」

 ……そう、自分に言い聞かせるように言うお茶子。

 無理しなくて良いと言っておく。

 普通の感性に、ゴジラは恐ろしいものだ。

 電気や峰田が特殊なだけ。アホと変態。

「うちもこれはでもさ、文句も言いたくなるよ。どう見ても軟禁状態じゃん」

 不快そうに響香が腕組みしてぼやく。

 仕方ない、でも。やり過ぎだろう。

 星野唯という人物を、見ようとしない。

 皆が彼女をゴジラと呼ぶ。本人も諦めた。

「愚痴ぐらいなら聞くよ、星野。あんまりだもん」

「意外と君も優しいね」

 響香も、そう言うんじゃないと否定して言った。

 一般論であって、同情では無いから。

「ゴジラ……そう呼ばれてお前はそれでいいのか? 俺にはお前から強い諦めの空気を感じるぞ」

 不意に聞く鳥みたいな見た目の男子、常闇。

 さっきから黙って聞いていたが、そう言うか。

「諦めたよ。事実として、ね」

「運命に抗う事を、お前はそうしない。……何だろうな。聞いていて無礼だが、お前からはほの暗い絶望が見える気がする」

 絶望。もう、幼少期に味わった。

 そして、もう飲み干した。

「絶望? 絶望って、何だっけ」

「……やはり、無遠慮だったな。済まない」

 思い出すが、感覚が麻痺してわからない。

 気にしないで良いと言うが、常闇は謝罪する。

 そうこうしているうちに、扉の方から声がした。

「なんだ? 星野の紹介か。気が早いな緑谷」

 一同見る。あ、と唯は思う。相澤だった。

 変な格好で草臥れている雰囲気。

 いつの間にか誰か居る、という空気で皆が見る。

「おい、担任にその空気は何だ。俺が不審者みたいに見えるだろ。俺はお前らA組の担任、相澤だ」

 このいきなり来た不審者が担任? という懐疑的視線にイラッとしたのか、相澤は引き攣った顔で言う。

 お前ら今から個性の把握テストな、と。

 初日にあるのはガイダンスと入学式。

 全部素っ飛ばした、突然の提案。

 愕然とする一同。担任が、無茶振りしてきた。

 グラウンドに出ろと言われて、皆混乱しながら荷物を置いて、着替えに行く。

「星野、お前の個性の把握もする。……今までここで寝ていた訳では無いんだ。しっかりやれよ」

 見送る唯に相澤は告げた。

 使えというのか。この個性を。

 了解して、相澤と先にグラウンドに向かう。

 一同ジャージに着替えて後から揃う。

 相澤が説明する。要するに中学までやった一般的な体力測定。

 個性を推奨するという文言も加えて。 

 挙げ句に。最悪のことをぶっ込んで言った。

 成績が最低の生徒を初日で除籍する。

 そう告げたのだ。

 戦慄する生徒達。唯は欠伸をして聞き流す。

 そうして、皆はビクビクして始まった。

 最初は50メートル走だった。

 相澤がやってみろと言うので何と一番手で爆豪が選ばれた。

「ハッ、精々見てろよモブ共!」

 意気揚々と出て行って、スタートと同時に爆破でロケットのように吹っ飛んで加速、爆走。

 凄い記録が出た。

 自慢気に見下ろす爆豪。

 その後、皆が往々にしてやっていく。

 大体総合的に爆豪が上を取る。

 焦凍も悪くなく、皆の個性でそれぞれ特化した結果が出ている中。

 唯は、特例で最後だった。

 ……全部最低限の該当者は、真っ青になっている。

「……」

 出久だった。焦っている。

 結果は今の所全部最低ライン。

 このまま行けば、除籍される。

 恐怖と焦燥を浮かべて、冷や汗を流していた。

 ……仕方の無い主人公だ。そう思う唯が、近寄る。

 測定中の中、片隅でガタガタ震えている彼に言う。

「出久君、深呼吸して。そういうの悪い癖だよ」

「唯ちゃん……?」

 情けない声で、こっちを見る。

 真相を知る彼女は、言った。

 嘗ての自分と同じ、制御が出来ないんだろう? と。

「気付いて……!?」

 見抜かれて思わず出久は怯むが、落ち着けと言う唯。

 深呼吸、それからリラックス。これが重要。

「出久君、個性の使い方が分からないんでしょ? 大丈夫、私もそう。でも、私は訓練したからもう出来るよ」

「……」

 土壇場でやれと言われて賢い故に絶望するのは分かる。

 でも、と。唯は指摘する。

 出久の個性の使う場面、思い出せ。

 常に緊張とプレッシャーで圧をかけて、神経質になっていただろう。

 他のメンツに出遅れるのはわかる。

「出久君の個性、凄いパワーだよね? でも私を助けたときに、反動受けてたよ」

「うん……。まだ、制御できないんだ。だから迂闊に使えない」

 だろうなと思う。然し、使わないと成長しないし方法も模索できない。

 答えを先出ししよう。

「出久君、個性使ったらどうして壊れると思う?」

「ええと……」

 パワー系の個性でも、出久は利口で頭の回転も速い。

 鍛錬不足というと違うと否定する。

 答えは過剰なエネルギーを、一箇所に集めるから。

「一箇所に集める……?」

「そう。オールマイトにその個性は似てるよね。でもオールマイトだって常時フルパワーで生活してないでしょ。私がやらかしたとはいえ」

「確かに……」

 知らない振りをして、適切にアドバイスする。

 オールマイトは劇中、感覚だと雑に言うから成長が遅れた。

 こう言うのは、知っている唯の役目。

 先ず、落ち着いて。個性は結局身体の一部。

 不具合があっても、調整できるのだ。

「出久君、お風呂に入ってるイメージしてみて。だらぁってなるよね」

「あー……。気が緩んで脱力して弛緩する、的な?」

 風呂に入ってリラックスして、余計な力を抜く。

 緊張とプレッシャーで焦るからダメ。

 ちょっと気を抜こうと言って、出久は何とか落ち着いた。

「パワーは、一箇所に異常に集めるからぶっ壊れる。もっと気軽で良い。個性を全部出さないで、適当に手加減しよう? 全力投球するからああなるんだよ。ずっと気持ちに余裕がないの、出久君は」

「……余裕」

 そう、余裕だ。

 既に色々背負っているだろうが、一歩は自分は大丈夫という余裕。

 だから、励ます。

「ゆっくり、全身に、確実に個性を流すの。血流みたいに。お風呂入って気持ちいいよね? あんな風かな」

「お風呂に入って……リラックス……」

 張り詰めた状況でやればミスるし失敗する。

 やってみ? というので、ビビらずに個性を使う。

 そもそもモーションに合わせて個性を流すから壊れる。

 根っこはゴジラと一緒だという唯。

 垂れ流せ。適度に蛇口捻って。

 だらぁと個性を全身に流す。

 ゆっくり、確実に、丁寧に、手加減して。

 すると……。 

 バチバチ、と出久は僅かに緑色に放電する。

 パワーの放出は出来た証拠だ。

「そのまま。それを、落ち着いて纏うの。どっかの野菜の宇宙人みたいに」

「アレって手加減してないよね?」

「ゴメン、例えが悪かった」

 アレが行きすぎのパターン。

 もっとこう、柔らかい感じで。

 個性を丁寧に扱おう。

 強引にフルパワーで振り回すのでは無く。

 振るう、ではない。衣服のように纏う。

 揺蕩う自然のオーラ的な?

「……なるほど!」

 これで通じるオタク出久。

 ゆっくり、全身に回していく。

 深呼吸。リラックス。

 出久の個性は纏うモノだと言う唯。

 オールマイトを意識しすぎで、ぶん回すイメージが強すぎるのだ。

 あんな大雑把にすれば反動受ける。

 自分という人間を見て、適切に、仕様と用途をお守りくださいと説明する。

「うん……こうかな?」

 軈て紅いラインが、顔と四肢に浮かび上がる。

 そう、これが正しい使い方。

「出久君、これが正解。この個性は、一箇所に集めるものではなく、全身に着こむ、或いは流して纏うパワーという流動体。そういうイメージで動くと楽だよ」

 片隅で激変する出久と付き合う唯を。

 知らぬ間に、相澤がジッと見ていた。

(指導をしているのか、あいつが? 暴走を経験して制御を嫌でも覚えたからか。……ふむ)

 次の種目、出久の番だった。

 この状態を維持したまま、ゆっくりと歩いて行く。

 ボール投げ。

 爆豪が死ねと叫んで、700を超える距離を出す。

 お茶子が無重力にして、彼方に飛んでいって無限になる。

 出久は、ボールを持って、見下ろす。

 リラックス。パワーという流動体をオーラで纏う。

 つまりは、

「これで、どうだっ!」

 一投目、振るう。

 普通によく飛ぶボール。

 但し、さっきとは段違いで。

 400という記録が出た。

「はぁ!?」

 爆豪が驚きで吠えた。

 さっきより桁違いの有り得ない数値が出た。

 野郎今まで手抜きしてやがった、と爆豪は思った。

 出久は試験会場で唯を助けるべく、個性らしきモノを使ったという。

 その時点でおかしいとは思っていた。

 アレほど無個性を悔いていた出久が、急に個性を開花させた。

 唯を救うために土壇場だったらしい。

(んな奇跡あったら誰も苦労しねえよ!!)

 とは思ったが、あとで検査したら長年無かったと思っていた個性の発現を確認。

 異常なパワー系というよくわからない個性だった。

 本人もしどろもどろで後で詰め寄った爆豪に言っていたが。

 自滅を恐れて、使っていなかったのか。

 唯が居ることで不安が取れてメンタルが安定した?

 安心というフィルターで、コントロールを得たとでも?

「クソナードォッ!!」

 結論、最初からビビらずに使え。

 雄英で舐めプすんなクソナード。

 怒鳴って飛びかかる爆豪。

「かっちゃん!?」

「使うなら最初から使えやボケェッ!! 唯に甘えてるなクソナード!!」

 ホッとしたのも束の間、ギョッとする出久に爆破で接近。

 すると。

 

 ――ッ!!

 

 背後で、あの独特の金属を擦り合わせるような咆哮。

 ゴジラの、遠吠え。

 全員が反射的に竦み上がった。

 墜落する爆豪。ビックリする出久。

 相澤が咄嗟に向き直り、

「星野ッ!!」

 直ぐに唯を睨んで個性を消す。

「かっちゃん、止めよう。折角、出久君がコントロールのやり方分かったのに。別に怒らなくてもいいじゃない」

 個性を消されても、ゴジラの残響が響き渡る。

 耳を塞ぐ生徒達が、笑っている唯を見る。

 これが、ゴジラ。本能に刷り込まれた、恐怖。

 皆が刹那、脳裏に思ったこと。

 死ぬ。

 この鳴き声がするとき、自分達は死ぬ。

 相澤がダラダラと冷や汗をかいていた。

 殺気が無いのに、それなりに修羅場を知るプロだというのに。

 死を、脳が容易く連想した。

「気軽に個性を使うな! 吠えただけでもお前がやれば周囲は大混乱になるんだぞ!」

「いや、かっちゃんこうしないと止まらないし」

 ケラケラ笑って、個性を消されても吠えるだけなら出来ると言う唯が、もう一度咆哮する。

 

 ――ッ!!

 

 二度目は、各々反応する。反射だった。

 焦凍が突然、氷の津波を作って唯に押し寄せる。

 飯田がエンジンでダッシュし間合いを詰めて、唯を蹴り飛ばす。

 電気が放電して、唯に浴びせる。

 響香がイヤホンジャックで音撃を唯に叩き込む。

 それぞれが何故か個性で反撃した。

 唯は蹴りを簡単に防御して受け止め、投げ飛ばして。

 氷の津波やら一斉攻撃を諸に受ける。

「おい、お前ら!!」

 怒鳴る相澤。生徒が唯に攻撃した。

 個性を抹消しているのに、一方的に。

 ハッとした一同。思わず、やってしまう。

「おいおい、みんなどうしたんだよ!? 星野が死んじゃうだろ!?」

 峰田や八百万、葉隠は何もしていない。

 腰を抜かした程度だったのに。

 峰田が混乱して騒ぐ。

「唯ちゃん!?」

「バカ野郎、何してんだお前!」

 慌てて二名が駆け寄って氷の壁を爆破で吹っ飛ばす。

 出て来た唯は、苦笑していた。

「いやぁ、そういう事か。今のは私に恐怖心を持つ人の生き残る為の反撃だね。これは予想外。痛いなぁ、もう」

 総攻撃食らって無傷。笑っている。

 脱出すると、謝った。

 鳴き声は身体の機能なので抹消でも意味が無い。

 その気になれば、響香のように声を音波の振動で攻撃できるけども、と言う。

「……俺が、星野に怯えている、のか」

 唖然とする焦凍。一番手に攻撃した。

 つまり、最も速く唯の脅威を理解できていたという証拠だと唯はナイス判断と褒めるが。

(これが……オールマイトとやり合うゴジラ? 何だよ、これ。人が本能で動くなんて、本当にこいつは……)

 言葉が出ない。戦慄した。

 これが、特別危険個性の最上位。

「笑っている場合か! 無傷を誇るな! 少しは自分の被害を考えろ!」

 怒られる唯だが、まあこんな感じがゴジラだと見せつけて。

 個性把握テストは、続く。

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