かつて東京が世界に輝く大都市だった頃、高層マンションが多数建設されていた。高層マンションの所有者達はさまざまな方法で経済リスクを低減させていたとされる。
まずは土地そのものは買わない、あくまで部屋の使用権だけを買ったり、借りたりする。改修費用は住人が等分する。そして最悪のとき、資金が必要になれば部屋を売る。ただそれだけでリスクは低減されているように見えた。
さて実態はどうだろうか?2050年頃には問題が表面化していたようである。単純な説明として人口減少がこのリスク低減サイクルに致命傷を与えたと言っておこう。
人がいなければ売れない。人がいなければ改修費用も按分されない。なにより解体のことまで誰も考慮に入れてなかった。
人がいなければ解体する人もいないのだ。政府中枢のある国会や霞ヶ関の付近は解体と再建設が進んだが、それ以外の場所ははっきり言って手付かずだった。
そうして、2079年の南関東大震災の発災により南関東は初動で大量の餓死者を出し、人も減り、まさに廃墟と化したのである。
そんな廃墟の国の浦安スラムには何人かの少年少女がいた。
「B子、C太、行こうぜ。道なら覚えてるから。」
彼らはスラムの3人組、今日は特別な冒険の日だった。
「昔、レキシカが言ってた東京○○○○○ランドってところに行くんでしょ?遠くないの?」
「遠くない、むしろ30分くらいで着くよ」
B子の疑問にA介は答えた。嘘だ、本当は1時間かかる場所だ。でも1時間って言ったら来てくれないだろうし、仕方ないよね。
「レキシカは色んなことを知ってたよね。もっとお話し聞きたかったなあ。でもママたちは話しちゃダメって言うからね。」
レキシカもとい在野の歴史研究家はこのあたりでは少し有名だった。この時代において学を保持して広めようとするのは、その善良さからの行ないであった。その行動はこの時代の常人とは感性の違うことだったので、大人からは不評であった。
「まあ、とりあえず行こうよ。どうせすぐ戻ってこれるからさ。」
とA介は言う。そうして彼らはひたすらに跡地へと向かうのであった。
彼らは昼時に地元を経った。途中で道を間違えたりして、最終的に2時間かかって跡地に辿り着いたのである。
「これが跡地かあ。」
「デカいゲートだね。」
「そろそろ時間ヤバくないか?」
三人はそれぞれ思い思いに言葉を発した。A介とB子は旧時代の力に驚いた。C太はA介を疑い始めていた。
「今から帰っても、門限はすぎる。ここまで来たんだから少し探索しようぜ。」
「そうか、はぁ、わかったよ。」
A介に呆れながらも、C太は同意した。そうして彼らは跡地を探索した。かつてのテーマパーク跡地なだけに、他にも三人組と同じような目的で跡地に来ていた人々がいた。
ある人達は子供三人の姿に驚いたが、とりあえず出身地を聞いて気をつけて帰れよと述べた。ある人達は廃墟を占領して「国」を作っていた。またある人達は邪な考えを巡らせていた。
帰り道、三人はトボトボとゲートから出て行った。
背後から来る大人三人が静かにB子を捕まえた。B子も当然騒ぐので大人達は腹に一発の殴りを入れて黙らせた。A介もC太も気づく、だが恐れをなして彼らは逃げた。
A介とC太は地元に帰った。親に全てを打ち明けるとA介とC太の一家は口裏を合わせることにした。
その日、スラムからB子が消えた。B子の仲の良い友人であるA介とC太は彼らの家で遊んでいて有効な目撃証言を得ることができなかった。B子の家族はただ涙を流した。
B子は後悔した。その後、十年近く物として扱われることになった。かつての少女は今や物となった。しかし旬は過ぎた。瞳の中に見える、あそこに少女がいる。そうだ、そうだ…。