機動戦士ガンダム 閃光とハサウェイ~マフティーに足りないもの~   作:フラペチーノ

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Q.マフティーに足りないものって?


2 テイク・オフ

 反連邦組織であるマフティーは地球連邦政府の要人をMSによる暗殺を実行するという過激な手段を取っていた。

 地球連邦政府の間違ったことをゲリラ放送で流し、そして本当にまずい法律などを提出しようとしている大臣などを何人も殺していた。

 その過激な方法と、スペースノイド・アースノイド問わず誰かの救世主となるべく行動をしているマフティーはその支持率を上げていた。MSによるテロという派手さも人々を惹きつけたのだろう。

 不当な法律が秘密裏にできあがろうとしているとマフティーは民衆へ知恵を差し出し、そして実行力を見せるようにMSによる暗殺で口だけではないことの証明を見せつけていた。

 これらの活動からマフティーは生き返ったシャア・ダイクンなのではないかという噂が流れるほど。彼が腐敗した地球連邦に鉄槌を下しているのだと、面白おかしく情報屋が書いたことを信じる民衆が多数。

 マフティーが何度も暗殺を実行しているのに、腐敗は一向に良くならない。そんな中でマフティーに勧誘されたイブリースは月にいた。

 月にはアナハイム・エレクトロニクスの本社がある。フォン・ブラウンとグラナダの支部に別れており、地球圏のMSの開発拠点と言われればここだった。連邦軍もジオンもここへ発注をかけるために、MSの製造を担っているどころか独占していると言っても過言ではなかった。

 イブリースは地球連邦政府に恨みを持っている。二度に渡るネオ・ジオン戦争でコロニーや隕石が落ちたのは政府の腐敗が原因だという。政府高官の甘い考えでロンド・ベル以外の戦力を用意しなかったためにフィフス・ルナ落としという電撃戦を防ぐことができず、それで新生ネオ・ジオンは目的を完了したと見誤ったために小金のためにアクシズを売却するという、擁護のしようがないほどの失態をしでかした。

 そして外敵もシャア・ダイクンの後にはいなくなり、反連邦活動も小物ばかりなためにMS部隊を出動させればすぐに制圧できてしまったため、腐敗は続く一方。

 マンハンターによって地球を追い出される人間が増えて、地球に住む人間は特権階級を翳して贅沢三昧。マフティーの地球環境云々はイブリースにとっては割とどうでも良く、同じような人間を生み出さないために彼女は地球連邦政府の正常化を祈っていた。

 政治は政治で良くすべきだが、そんなチンタラしていたらまたジオンが武装をした時に対応できなくなる。そうクワック・サルヴァーに言われてイブリースはマフティーに参加した。

 彼女は貴重な、実戦を経験しているMSパイロットだ。そのため組織でも重宝され、専用のMSもグラナダ支部で開発されるほど。

 その受領したMSの最終調整と、マフティーのリーダーであるハサウェイ・ノアが乗るΞガンダムを地球に届けるためにカーゴピサへ格納しているところだった。

 乗る本人は、殺す人の顔を見たいというイブリースからすれば訳のわからない理由で地球連邦政府高官が乗るシャトルのハウンゼンに乗って先に地球に向かってしまった。

 そのせいで二機のMSとその武器を搭載しているためにカーゴピサはかなりの大きさになってしまった。カーゴピサを搭載したアナハイムの輸送艦のドッグは丸々隕石のようなもので埋まっている。

 ある程度地球に近付いたら、連邦軍の監視がないところで適当に放出。あとはカーゴピサ側で落下軌道を合わせて地球に突入する手筈となっている。アナハイムの輸送艦は適当なコロニーに向かってもらい、送り届けたというアリバイを作ってもらう。

 途中までは輸送艦の中で快適に暮らした後、イブリースはカーゴピサに乗り込んで放出された。あとはコンピューターが勝手に入射角などを計算してオーストラリアへ運んでくれる。

 適度に睡眠などを取ってもうすぐ地球に着くというところで先にオーストラリアに向かっているはずのマフティーの面々と暗号通信を実施したところ、月で聞いていた状況とは違っているらしい。

 

「ノアがやらかした?はぁ?ガンダムの空中受領?海面は捕捉してきた連邦軍が展開している?」

 

 何をやらかしたのか、詳細な情報はなかった。文量が多かったら逆探知されかねない。そういうわけで短い文章でイブリースは事態を説明されて彼は乗機に乗り込んで、落下地点をフィリピンの洋上へ変更して地球に飛び込むしかなかった。

 紺色は別に彼女のパーソナルカラーではないのだが、今回の機体も何故か紺色に塗られた。今度は地球での活動なのだから紺色にする理由も薄いのだが、もう塗られてしまったのでどうしようもない。

 ガンダムと同程度の、三十m級のMSに乗り込む。その異様はどちらかというとMAに近しいかもしれない。

 カーゴピサに向かってくるギャルセゾンとメッサーへ座標を送り、彼女も出撃の準備に移った。

 

 

 大気圏に向かってきたギャルセゾンからメッサーが射出される。地球に落ちてくる、100m近いカーゴピサに、エメラルダが操作するメッサーが取り付いた。

 本来であれば彼女がここまでくる必要はなかった。海上に落ちたピサにハサウェイが乗れば良かったのだが、それでは集中砲火を受けてガンダムが海に沈むと考えて空中受領となった。

 そしてエメラルダが取り付く前に中のイブリースが動き出せば、ハサウェイがガンダムに辿り着けない。それがわかってイブリースは動かなかった。ピサの中の通信でハサウェイがガンダムに辿り着いたのを確認して、ガンダムの後方のピサの扉が開いた。

 

「先に行ってるよ、ノア。ズービンもこの開いた方に入り込んで。後で回収に来るからね」

「任せたよ、イブ」

 

 大気圏を抜けたところで、イブリースの紺色の機体が海へと一直線に落ちていく。SFSもなしに落ちていくなどMSの常識ではありえないが、彼女の機体にもミノフスキー・クラフトが搭載されている。

 だから彼女の機体も空を飛べる。ガンダムではないが、大空の支配者だ。その機体名の通り、鳥の如く彼女は戦場へ飛び込んだ。その飛び込みの際には音が静かだったのだが、加速し始めると「チチチ」と鳥が囀るような音が段々と響いていく。

 イブリースはミノフスキー・クラフトが搭載された両肩の大型バインダーを開く。これによって空力を得て、連邦軍のMS、グスタフ・カールへ大型のビームライフルを向けた。

 連邦軍のパイロットも、その異音とセンサーが捉えた熱源から上空の存在に気付いた。SFSから上へモニターを向けると、そこには士官学校時代に教本代わりに見たとある戦争の総帥機に似た紺色の夜鳴鳥がいた。

 だが、地球の側で暴れ回っていたかの機体とは違う部分も多々あった。腰の下から伸びている腰部の突起は外されて通常のスカートに長さを変更。背中の後ろにつけられた大型のプロペラントタンクは大気圏内での活動ということで外されていた。

 その代わりに両肩のバインダーに大型のスラスターを増設。それはΞガンダムの背部と似通っていて、兄弟機と言っても良いような形状をしていた。

 紅から紺色に変わったものの、そして若干の変更点はあるものの、その異様なMSをベテランパイロットほど見間違えるはずもない。

 NT専用機。ダイクンの意思を象徴する、ジオンそのものを体現した機体。

 ジオンの亡霊がオーストラリアの夜空に舞い降りた。

 

「ば、バカな⁉︎ナイチンゲールだと⁉︎まさかマフティーは、本当にシャア・ダイクンの亡霊だとでも……!」

 

 シャアの反乱に参加したベテランパイロットだからこそ、彼は視線を固定化してしまった。それを見逃すイブリースではなく、ビームライフルから緑色の閃光が解き放たれる。

 ギュワーン!と音を立てるとグスタフ・カールの頭頂部から綺麗に真っ二つ。SFSのケッサリアも共に爆散し、海上で核爆発が盛大に起こる。

 マフティーと連邦軍の戦闘は時間稼ぎの意味もあって拮抗していたのだが、その一撃で一気にマフティーは攻めに移る。グスタフ・カールとメッサーではそこまで性能差がなく、その爆発を反撃の狼煙として弾幕が形成される。

 彼女が来たということはカーゴピサが地球に落ちてきたということ。そしてそのピサからガンダムがやってくるということ。ピサの回収のためにも、露払いをしなければならない。安全に回収するためにも、敵戦力は撃滅するに限る。

 マフティー側でもその機体の到着は通達されていたために、戦場の女神が来たと士気を上げる。

 

「お姫様がやってきたぜ!地球での稼働も問題なさそうだな!」

「これだから男は……。イブとあたしらで何が違うわけ?」

「そりゃあ実力さ、ハーラ。それに実戦経験者なんて今のマフティーでは貴重だ」

 

 メッサーで迎撃に出ているハーラが愚痴るが、それをゴルフが笑う。旧世紀の戦争では女性士官は皇族扱いを受けたこともあり、女性のエースパイロットはお姫様と呼ばれることが多い。

 特にイブリースは初陣で五機以上を落とした、正真正銘のエース。それも戦闘機や戦車などではなく、MSだ。シャアの反乱で活躍した彼女はその境遇もあってマフティーではかなり優遇されていた。

 イブリースは拠点が知られないように、常に上空を維持するように位置取りをして音速に近い速度で飛び回って回避を続けてビームライフルによる確実な一撃をお見舞いしていた。

 SFSで飛んでいるMSなど、そのゲタを破壊してしまえば、海に落下するしかない。MSを狙って多少外れようと、継戦能力を落とせればいい。

 久しぶりの地球の重力に身体が引っ張られ、若干射撃を外すものの彼女はSFSかMSのどちらかを撃ち落としていく。そこに追撃を加えるメッサーたち。

 ネオ・ジオンの総帥機。ナイチンゲールが夜空に紛れるように音速でかっ飛びながら連邦軍のMSを落としていく様はまさしく悪夢だろう。

 グスタフ・カールを全て掃討して、ホバリングをしながらイブリースはゴルフに通信を送る。

 

「こっちが大変そうだったから来たけど、もしかしてエースはノアの方に向かった?」

「らしいな。敵のガンダムだけは別行動を取っていやがった。でもハサもピサにちゃんと辿り着いたんだろ?」

「もちろん。……あ、激しくやってるね」

 

 だいぶ遠い海上だが、ビームライフルと一緒にいくつかのミサイルが爆発する様子が見られた。ハサウェイは連邦軍のミノフスキー・クラフト搭載ガンダムであるペーネロペーに人質として乗っていたガウマンを回収した後は、落ちてくるカーゴピサから離れてペーネロペーと戦っていた。

 ピサには多数のΞガンダムとナイチンゲールの予備パーツと武装が搭載されている。別便で予備の兵装も送り届けられる予定ではあるが、ただ海に沈めるのは勿体無い。マフティーはそこまで潤沢な組織ではないのだから。

 MSによる暗殺がウケたのか、スペースノイドからの出資も増えた。とはいえ、MSはお金がかかる。最新機のΞガンダムに、リバースエンジニアリングを施したナイチンゲールMk-IIはフラッグシップ機として開発されたために、バカみたいな予算をかけている。

 それらの維持費など、お金なんてどんどんと消えていく。予備パーツなどを無駄にする余裕なんてなかった。

 イブリースが増援を警戒して上空で待機。その間に無事な面々でカーゴピサを回収。迎えの水上艦ヴァリアントへ牽引していった。

 

「ノア、苦戦してるな……。NT……じゃない。強化人間……。そう、連邦はまだ、私たちを諦められないんだ。カウンターNTのための強化人間。毒を持って毒で制す、なんて嘘っぱちだ……」

 

 ガンダム同士の対決は、ハサウェイが水上で予備ブースターを囮に爆発したことで背中を取って、そこにミサイルを大量にぶつけたらしい。それでペーネロペーが海に沈んだようだが、撤退を優先して撃墜までは確認しなかったようだ。

 イブリースもそこまで感知能力が高いわけではなかったので、パイロットの生死まではわからなかった。

 惜しむべくは魚雷などの水中用の武装がなかったこと。水中ではミサイルやビームなどはかなり減衰される。連邦軍のほとんどを撃退したこともあって、この場は撤退を優先した。

 ヴァリアントにΞガンダムとメッサーを、護衛艦シーラックにナイチンゲールを格納する。三艦編成でまずはオエンベリを目指すマフティー一行。

 久しぶりの地球で、パイロットスーツを脱いだことで開放的になっていた。イブリースは無理な手術などが祟ったのか、身長は140cmほど。銀色の髪もすっかりと色褪せて燻んだ白髪になっていた。瞳も無理な強化のせいで瞳孔が左右で大きさが違う。片方は綺麗な空色をしているのに、もう片方は色素が抜けてほぼ白色に近いオッドアイになっていた。

 薄手のシャツに動きやすいツナギの下を履いているだけの、色気のない姿。だというのに同じパイロットのゴルフは口笛を吹きながら彼女へ水の入ったペットボトルを投げて褒め称えた。

 

「姫様、今日もイカしてたぜ!ほら、ちゃんと水分摂れ。不調になられたら困るからな!」

「ありがと、ゴルフ。……さっさと苗字教えなさいよ。名前で呼ぶの、好きじゃないの」

「それを言ったらイブだって苗字ないだろ?似た者同士だって!」

「私は名乗らないんじゃないの。……思い出せないの」

 

 ゴルフから貰った水に口をつけるイブリース。彼女の境遇は大半の構成員に通達されている。元連邦兵の、強化人間。その境遇から何が地雷かわからないため、彼女に接触するのは最低限の人間だった。

 それでもパイロットのゴルフや、メカニックたちは彼女に積極的に話しかける。

 

「ホント、ひでえ話だよな。んで、どうよ?この鳥の乗り心地は?」

「性能って意味では問題なし。ファンネル・ミサイルは試せなかったけど、サイコミュはちゃんと私に追従してる。……けどさあ、クワック・サルヴァーも酷くない?連邦もジオンも嫌いな私に、ネオ・ジオンの総帥機なんて渡してさ……」

「シャア・ダイクンの代弁者。その象徴としてはこれ以上とない機体だからな。ガンダムとナイチンゲールが肩を並べて戦う。アムロ・レイも本当はこんな光景を目指して戦ったのかもしれないぜ?」

「……どうかね。連邦の英雄様は、父親になれなかったただの不義理な人よ」

「NTもただの人ってこった!もちろん、おまえさんも、ハサもな」

「私は普通じゃない。強化人間なんて、あなたたちと一緒にしちゃダメなのよ」

 

 それだけ言って、メカニックにナイチンゲールの整備について少しだけ注文をつけて自室に向かった。彼女の部屋は用意されていて、一人部屋だった。彼女は残ったペットボトルを冷蔵庫に入れて、用意されていたご飯をレンジで温めて食べる。

 食べた後に、机に置いてある薬が目に入った。クワック・サルヴァーが用意した、精神安定剤。強化人間には必須の、戦場で兵器として生きていくための薬。

 それを口につける気が起きず、シャワーも浴びないままベッドに横たわった。

 

「ノアが知らない女の匂いを纏わせるから……」

 

 クェスではない。直前まで一緒だったエメラルダでもない。ましてや恋人だと言われているケリアでも、ハサウェイに好意を抱いているミヘッシャのものでもない。

 おそらくマフティーではない女。地球連邦政府高官の関係者か、ダバオで知り合った行きずりの娼婦か。強化人間として最低限の感能力しかないイブリースは、嫌に鼻に付く女の色香がたまらなく不快だった。

 女らしいところなんて外見だけで、どうにか人間になろうと伸ばしている肩口まで伸びた髪くらいしか女らしさなんてなくて。機能的には女として既に落第な、MSのパイロットという部品になってしまったイブリースは腕で目を塞ぎながら思考する。

 

(ノア、クェスの呪縛に勝って。デースでダメなら、その女でも良い……。けど、迷っちゃダメ。男の影に怯えてる……?それは、死人だよ。……その人は、ガンダムに乗ってしまっただけの、ただの人だよ……)

 

 夜明けになって日が昇っても、彼女の活動限界は関係なかった。睡眠欲に勝てず、彼女はそのまま閉じられた部屋で寝息も浅いまま眠りにつく。

 イブリース、20歳。マフティー所属のMSパイロット。

 搭乗機、ナイチンゲールMk-II。

 求められる役割。対外的なシャア・ダイクンの影武者。

 




A.ジオン(シャア)要素と連邦の闇(強化人間)要素と、ロリ(成人済み)要素。
ハサウェイやられた時点で終わる組織なんて、せめてエースがもう一人はいるよなぁって。
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