キルケーの魔女を見ての殴り書き。

小説版のネタバレあります。
ベルトーチカ・チルドレンです。その他もごちゃ混ぜ。

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10話で終わる予定です。


1 第二次ネオ・ジオン抗争

 グリプス戦役。UC0087に起こった、地球連邦軍の内輪揉めとも言える内紛だ。

 タカ派のティターンズと反連邦軍を掲げるエゥーゴの激しい戦いによって地球連邦軍の戦力は一気に落ちた。一年戦争末期から研究が続けられていた人工的なニュータイプ、強化人間もかなりの数を消費した。

 そして続け様に起きた第一次ネオ・ジオン戦争。ハマーン・カーン率いるジオンの名前を騙った連中が一年戦争と同じく、ダブリンへとコロニーを落としたことで地球連邦政府は再びスペースノイドとの確執を確かなものとした。

 奴らは自分たちの住居を、連邦政府が施した生きるための術を兵器に転用するのだと。

(これはコロニーレーザーを作っていたティターンズにも刺さるので大きな声で言えないが、ティターンズは敗軍である。地球連邦政府は賊軍扱いしているため、その時の所業は忌まわしき悪業としている)

 この戦争がきっかけとなり、連邦政府は対ジオン戦力としてロンド・ベルを設立。ジオン残党は地球にも宇宙にも大量にいることからアムロ・レイとブライト・ノアを招集してジオンと共倒れになるくらいの戦力として武装集団を作成。

 そして、連邦政府としても正規軍として別の戦力を用意することにした。アムロ・レイというファーストニュータイプが離反した時のために、ロンド・ベルを打ち倒せる戦力の確保に走った。

 この理由としては、エゥーゴ当時、アムロはジオンの忌み子としか言いようがないキャスバル・レム・ダイクン、赤い彗星シャア・アズナブルと共に戦った経歴の持ち主だ。正確にはアムロはエゥーゴの支援組織であるカラバに所属していたが、彼はダカールで確実に共闘しているため、NTとして秘密裏に繋がっているのではないかと危険視する連邦政府高官も多かった。

 エゥーゴに所属していたシャア・ダイクン、当時は連邦軍のクワトロ・バジーナを名乗っていたが、その時はティターンズの暴虐を訴えてティターンズを討伐するために名乗りを上げた。そのシャアが、第一次ネオ・ジオン戦争では消息不明となったのだ。

 当時の乗機が回収されて、コックピットも無事だっため十中八九生き残っているという推測がされた。アムロ・レイはそんな彼を追って木星くんだりまで行ったが、特に成果はなかったという。

 コロニー落としをやったのは、ミネバ・ザビという幼い少女を掲げてネオ・ジオンを名乗った、ザビ家に連なる者ではある。だがニュータイプの概念を広めたのはジオン・ダイクンであり、その息子とニュータイプの体現者が共闘したことから二人揃っての連邦政府への反発はありえた。

 そもそもニュータイプなんていう胡乱な力の持ち主が何をやってくるかわからないのだ。新人類を名乗って新天地を目指すならまだしも、今の政府に楯突くとなったら、そんな戦場でのスペシャリストに対抗するための力がいる。

 そしてニュータイプなんてすぐに見付かるわけもない。ならどうするか。人工的に産み出すだけだ。

 幸い、地球には不法在住の住民がかなりいた。それらをマンハンターに摘発させて、素養のある人間は在住権がないことを逆手に取って強化人間育成プランへ組み込んだ。

 そうして摘発された人間が何人もいる中で、時は流れてUC0093。

 シャアの反乱と呼ばれる短い戦争が起こった。

 

 その少女はオーガスタ研究所から乗機と一緒にマスドライバー施設がある基地へ移動していた。シャア・ダイクンが率いるネオ・ジオンがフィフス・ルナを地球に落とした後に地球連邦と交渉をしている時に、交渉に向かった能天気な派閥とは別派閥の、それこそスペースノイドを病的に嫌っている派閥の人間が、秘密裏に備えていた強化人間の部隊へ出動命令を出していた。

 彼らは基本的にスペースノイドを、そしてニュータイプというものを信用していない。隕石を落としてきたような連中がお金を積んで更にアクシズという資源衛星を連邦から買い取るなど、何をイカれた妄言を言っているのか、という感じだ。

 アクシズを地球に落とされたら、アクシズに積み込まれた核によって一気に寒冷化が訪れて地球は終わるだろう。そう予測した者たちが強化人間の部隊を一気に宇宙へ送った。最初のフィフス・ルナは間に合わなかったが、今度こそは間に合わせるためだ。

 宇宙に上がった強化人間は一中隊分。それだけしか実戦に対応できる数が残っておらず、MSもそれだけしかなかったと言える。強化人間という兵科は未だに確立した技術ではなく、実験途中で廃人になることがままあった。そもそも能力が基準値に乗らずに廃棄処分になった者もいるという、闇が深い事業だ。

 彼ら強化人間たちが宇宙に上がった時には、やはりネオ・ジオンがアクシズを地球に落とすべく、軍隊を展開していた。連邦政府からアクシズを譲り受ける時に、停戦協定を裏切って連邦艦隊を撃滅し、そのままアクシズを核パルスエンジンを点火させて地球へ落とそうとしていた。

 少女、イブリースに与えられた機体はジェガンのカスタム機。強化人間用に一般量産機からかなりのチェーンアップをされており、加速力などは強化人間でもないと耐えられないほどコックピットにGがかかる代物となっていた。ジェガンは素体そのものが優秀であり、拡張性に優れていたためにガンダムタイプと共に専用機としてオーガスタ研究所でかなり弄くり回されていた。

 それが全身紺色に塗られている。まるでティターンズを思わせるカラーリングだが、その紺色こそ宇宙に溶け込む秘密部隊らしさを醸し出していた。

 そして戦場に出て、彼女らは奮闘した。

 ガンダムに乗った研究所の中で一番優秀な強化人間がネオ・ジオンの巨大MAと戦って討死にしたものの、ロンド・ベルのジェガンがMAを倒すことのアシストとなる。他の強化人間もジェガン・カスタムに載ってネオ・ジオンのザクの発展機、ギラ・ドーガやNT専用機であるサイコ・ドーガを倒す一助となっていた。

 そしてイブリースはエース級と戦うことはなかったが、アクシズにいたネオ・ジオンの機体をとにかく落とした。驚異的な先読みと機体性能によって一般兵を振り回し、背後や側面を奪って的確にコックピットにビームライフルを打ち込んでいた。

 彼らだってアクシズの護衛を任される程度のベテランパイロットではあったのだが、イブリースの方が上手だった。それほどの力を、彼女は強化手術によって得ていた。

 彼女がアクシズ周辺で戦闘を行ったのは、ロンド・ベルの旗艦であるラー・カイラムがアクシズへの上陸作戦を実行しており、内部からの粉砕作業をしていると知ってそれの援護に徹したのだ。

 

「ジオンのイカれた連中が!何度も何度も何度もぉ!地球の人間を虐殺する、悪魔が!」

「じ、ジーク・ジオン!」

 

 ギラ・ドーガを落とした時に、シャア・ダイクンを、もしくはジオン・ダイクンを盲信しているようなパイロットだったためか、恨み言ではなくジオンの行く末を願った者がいた。

 その言葉は彼女にとって到底受け入れられるものではない。そんな盲信の結果、彼女のダブリンの日常は消え失せたのだ。

 そうしてロンド・ベルの援護をしてアクシズが半分に割れた後。半分は地球直撃コースを外れたが、もう半分は地球の重力に引かれているようだった。

 それがわかった途端、オーダーが下される。どうなっても良いからアクシズの落下を止めろという内容が母艦から怒鳴るように伝えられる。イブリースは小さい手を必死に動かして操縦桿を操作し、持っている火器の全てをアクシズの内部に叩き込む。

 それでもアクシズが割れることはなかった。たかがMS一機の火力では人が何千万人も住んでいた資源衛星を粉砕する火力なんて出ることはなく、今更核パルスエンジンを破壊したところで焼石に水だった。

 あとは何ができるか。いくつかのMSがアクシズの下へ取り付き、そのスラスターで押し返そうとしている。その中には青色のガンダムの姿もあった。

 イブリースに帰る場所はない。研究所では薬を打ち込まれて、八歳児に行うようなものではない訓練という名のしごきが待っており、そしてひたすらにMSに乗って戦闘訓練。

 気が付いたらそうなっていた。そうして生きてこられたのは、ネオ・ジオンのハマーン・カーンによるコロニー落としで両親が殺されたから。たまたま生き残ったイブリースはNTとしての素養があったために連邦軍に保護されて、強化手術を受けた。

 この記憶が正しいものか、彼女はもう覚えていない。ただ思い出すのは、両親と手を繋いで歩いたダブリンの美しい街並みだけ。映画にでも出てくるような、優雅な昼下がりの静かな、もう二度と取り戻せない昔日の記憶だけ。

 そして今や、復興が進まず突き刺さったコロニーの残骸が残るダブリンの荒れ果てた終焉の地しか見ることはできない。落ちたコロニーの残骸が突き刺さっており、それの撤去作業が完了しなければ街並みを復興するわけにもいかず、コロニーの解体作業に時間がかかっており、ダブリンは未だに廃墟のままだ。

 そんな世界にしたのは誰か。ジオンだ。ジオンを名乗る馬鹿どものせいだ。そういう風に強化された彼女は、ジオンを恨むのと同時に、あのダブリンと同じようなことが起きていいのかと幼いながらにも芽生えた正義漢で彼女はスラスターを吹かした。

 アクシズの下に他のジェガンや、敵のはずのギラ・ドーガと一緒になって張り付く。そしてマニピュレーターで表面を押し出し、スラスターを限界まで踏み込む。

 この行為に意味があるのかはわからない。大人がやっているから彼女もやっているのか、それともこの宙域に漂う自分よりも歳上だがまだ幼い少年少女の嘆きを感じ取ったからか。それともアクシズが落ちようとしている中、諦めていない大人たちがいるからか。

 機体がオーバーロードを起こして爆発する。スラスターが切れて投げ出される。そうして何機もの機体が離れていく中でもイブリースはまだ踏み込む。

 重力に引かれて大気圏が近くなる。コックピットの保護機能が追いつかないほど中の温度が上昇する。それでも操縦桿を握って踏ん張り、できるだけフットペダルを押し込んだ。大汗をかこうが、計器が異常を示すアラートを鳴り響かせようが、彼女はこうするのが正しいと信じてアクシズを押し返すのをやめない。

 これが無駄な行為でも、こうして頑張れば両親が褒めてくれるような気がしたから。この頑張りで一人でも避難が間に合うかもしれないから。そんなことを考えたのか、それとも無意識か。彼女はサイコミュを全開にして機体のできるだけの力を振り絞った。

 このジェガン・カスタムは強化人間用にバイオセンサーが組み込まれている。グリプス戦役でも不可思議な現象を引き起こした、サイコミュの一種。それが何かに感応し始める。

 それは青いガンダムと。青いガンダムが握ってアクシズに押し付けている赤い球体状のコックピットブロック。

 そして緑色に光るT字の何かだった。

 

(-------------------)

「え……」

 

 イブリースは声を聞いた。それは声なのかわからない。男なのか女なのかもわからず、それどころか自分よりも幼い何かのように感じた。

 女の人の奥から届く声。それがT字の何かを通してクリアにイブリースに届く。

 その赤子の拒絶する声に、ガンダムが反応をする。一気にガンダムから広がる緑色の光がアクシズに取り付いた機体を引き剥がしていく。

 サイコミュを持ったイブリースのジェガン・カスタムも、例外ではなかった。

 

「待って!ダメ、この暖かさは、何かが違う!」

「アムロ大尉ーーーーー‼︎」

 

 隣のジェガンに乗る三十代の男性の叫びもクリアに聞こえながら、ジェガン・カスタムは制御を失って地球に落ちるわけではなく、むしろ上に弾き飛ばされた。どんどん熱はなくなり、何回転もしながらイブリースはその奇跡を目撃する。

 さっきまで大気圏に落ちようとしていたアクシズの半分。それが緑色の光に包まれて地球から逸れていくではないか。

 壊れるわけでもなく、それは移動していく。半分になった資源衛星はどちらとも地球の後方へと流れていく。地球寒冷化という未曾有の危機が去ったからか、撤退信号が地球連邦、ネオ・ジオン問わず宇宙に放たれる。

 そうして終結を迎える戦争。

 イブリースは母艦に戻る前にT字の何かに惹かれた。スラスターがなくなったらしき隣のジェガンも手で引いてその先に向かう。

 そこにあったのは足や手をいくつか失った、ZガンダムタイプのMS。イブリースは見たことのない機体だったが、隣のジェガンのパイロットがその機体に見覚えがあったらしい。

 

「リ・ガズィ⁉︎誰が乗っているんだ……?ケーラの亡霊というわけでもあるまい……」

 

 イブリースは中が危険だと思ったので、コックピットを開いてジェガンから降りてリ・ガズィのコックピットに近寄る。ジェガンのパイロット──ボッシュ少尉もコックピットから降りてきて、明らかに小さいノーマルスーツを見て訝しむ。

 

「こんな子供が戦場に……?」

「このコックピットの中を開けられますか?中の女性と、赤ちゃんが危ない」

「女性と、赤ちゃん?……まさか、ベルトーチカ⁉︎」

 

 ボッシュは自分の母艦であるラー・カイラムの機体だったためにリ・ガズィのコックピットの電子キーを知っていた。外部から開けて、その中で涙を流しながら気絶している金髪の女性を見て、予想していた人物がコックピットにいたことに驚いた。

 彼女はパイロットではない。技術士官だ。カラバ時代から一緒に何度も戦場を練り渡った、戦友の最愛の女性。この最後の出撃の前に妊娠していることを知り、彼は戦友と共に帰ってくることを誓ったのだ。

 なのに、その相手のガンダムは近くにいない。彼女が待っていた人物ではない。それでもアムロがいないのなら、ボッシュが彼女を守るしかなかった。

 

「彼女と赤ちゃんが危ないというのは?」

「なんか、そう感じたから。サイコミュが、うるさい」

「この機体にはサイコミュがないはず。まさかサイコフレーム……?君、ロンド・ベルのラー・カイラムへ通信を行えるか?私のジェガンも、このリ・ガズィもまともに動けん……」

「わかりました。ちょっと待ってください」

 

 イブリースはミノフスキー粒子も薄くなった状況で、ジェガン・カスタムから通信を行なった。生き残りを探していたようでそこまで時間がかからずラー・カイラムと合流。助け出されたベルトーチカは医務室へ搬送された。

 イブリースも母艦へ帰るまでラー・カイラムにお世話になった。そこで悲しみの感情を隠せない少年がいて、その人物が戦場でも悲しんでいた少年だとわかったものの、イブリースは何もできなかった。

 彼女には最低限の会話ができるほどの学習は施されているものの、落ち込んでいる人間を慰められるほどのコミュニケーション能力は保持されていなかった。

 艦長であるブライト・ノアへ部隊証を見せてオーガスタ所属の秘密部隊であることを伝えた。その場にはボッシュもいて、八歳ということもわかり、彼らの顔は歪むことになる。

 ブライトはグリプス戦役で何度か強化人間を見ている。その時も女性だった。その女性を助けようとして苦しんだNTの少年のことを思い出し、彼が無事かと考えてしまう。

 ガンダムのパイロットは戦争を終わりへ導くが、その末路はいかがなものか。今も彼にとっての戦友であるガンダムのパイロットがアクシズと共にMIAになっている。

 

「強化人間……。こんな幼い子が……」

「秘匿事項?とかみたいです。他の部隊にお世話になった際には、こちらも見せるように言われてます」

 

 そう言って他にも資料を見せる。それは連邦軍でもかなりの強権が使える派閥の人間の名前が記載されており、彼女らについて他言無用であることが書かれていた。

 ブライトたちロンド・ベルも似たような権力は持っている。緊急時には連邦政府からの要請がなく動ける部隊だが、イブリースたち強化人間たちは軍と連邦政府から認可されている正規軍だ。

 これに異を唱えることはできない。ちょうどブライトも息子が勝手にMSを使って戦場に出ているという瑕があるのだ。その瑕を突かれないためにも、素直にイブリースを母艦まで帰すしかなかった。

 イブリースはそのまま母艦に戻り、そしてまたオーガスタ研究所に戻った。それから十年以上大きな戦争もなく、彼女が駆り出されたのはジオン残党や反連邦勢力のクーデターへの鎮圧行動だけ。

 連邦政府や連邦軍の顔ぶれも変わり始め。大きな戦争もなかったために強化人間という兵器の出番もほぼなく。特に非人道的な研究が多かったオーガスタ研究所は予算分配の都合で取り壊しになり。

 一部の施設を除いて強化人間計画は白紙に。イブリースはその頃になると連邦軍に正式に所属していたためにそのまま軍人として生きていくつもりだったが。

 ヤブ医者、クワック・サルヴァーと出会ったことで、彼女は連邦軍を退役。

 表向きは殉職扱いとなり、彼女はマフティーという秘密結社に所属することとなる。

 


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