機動戦士ガンダム 閃光とハサウェイ~マフティーに足りないもの~   作:フラペチーノ

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5 ディパーチャー フロム ダーウィン

 ヴァリアントの部隊はビノエ・ハーバーに立ち寄っていた。ヴァリアントがいる状態では最後の補給だ。特務機であるΞガンダムとナイチンゲール用の装備の他、メッサー用のパーツがいくつも補給される。

 メッサーは同型機なので共有されるパーツが多いのは当然だが、Ξガンダムもナイチンゲールも武装は似通っていたために補給パーツは多くが共有化されていた。最悪の場合はプラモデルのパッチワークのようになってしまうが、お互いの腕などをつけることもできるようになっていた。

 アナハイムのグラナダで生み出された機体という共通点があり、グラナダ支部ではガンダムを作るなんてと微妙な気分だったが、フォン・ブラウンのものよりも高性能の機体を作れることと、ナイチンゲールをブラッシュアップできて再生産できると知って双手を振って作成した。

 その出資者に、密かにジオン共和国もいるというのが笑えない。自治権が連邦政府に返上されてただのサイド3になったはずだが、ジオン共和国の名前でネオ・ジオンの象徴のリバースエンジニアリングに協力するという狂気の沙汰。この事実が連邦政府にバレたらどうなるのかとか考えていないらしい。

 そしてそれこそがジオンという国の本質なのだと知り、イブリースはナイチンゲールに乗りながらジオンという宗教を一層嫌いになった。

 Ξガンダムとナイチンゲールを作成する際にジョイントポイントなどは共通化することで整備性を上げることに成功。結果として見た目はだいぶ異なるものの、兄弟機と言っても差し支えなかった。

 入江で補給をしつつ、オエンベリで知り合ったファビオたちがいた。彼らはクワック・サルヴァーに正式に接触してマフティーの傘下になることにしたのだ。そうでもしないと武器をまともに調達できない状況に陥っていた。

 今まではキンバレー部隊から武装や食糧などをかっぱらっていたが、それはキンバレーの杜撰さがあってのもの。ケネスに変わってからはそうはいかなくなった。まだケネスはダバオでのマン・ハンターへの興録などもあってオーストラリアに入っていないようだが、方面軍への指示は徹底しているらしい。

 キンバレーの時とは確実に軍の動きが違うようだ。

 だから彼らはマフティーになることにしたのだ。

 ファビオたちへSFSを二つと、携行武器をいくつか貸し与えることでダーウィン空港へ強襲をかけることと、アデレートでのスタッフを貸し出してもらうことを交換条件にした。ダーウィン空港を強襲することでマフティーはコワンチョウを狙っていると相手に思わせるためだ。

 ダーウィン空港はオーストラリアの北側の玄関口。南半球から飛び出て北半球に向かうなら確実に使用する空港だ。軍とも懇意にしているために、襲撃する価値はある場所。

 Ξガンダムがコンテナなどを動かしている様子を見ながらファビオはその提案を了承。ハサウェイとイラム、それにヴァリアントの艦長であるウェッジが差配をしている時に、ファビオはハサウェイがガンダムを動かしているものだと思っていたので、誰かが動かしているガンダムが気になったらしい。

 

「マフティーさんよ。あのガンダムはアンタの機体じゃないのかい?」

「ああ、マフティーの象徴ではある。だが僕に何かあった時のために、動かせる人間は多い方が良い。マフティー・ナビーユ・エリンは僕個人ではなく、組織だ。そういう、完熟訓練だよ」

「その割には、だいぶスムーズじゃねえか?よっぽどの凄腕だな?」

「我らが誇るエースパイロットだよ」

 

 ハサウェイがそう言うパイロットは一人しかいない。イブリースだ。彼女は月でもガンダムを操作していたが、もしもを想定してガンダムの重力下での操作も試していた。

 人生は何があるかわからない。それこそハサウェイが暗殺される可能性もある。そうなったらナイチンゲールよりもガンダムで主義主張を述べるべきだ。ガンダムこそこの世界で最も知られるMSであり、反連邦運動でも活躍したフラグシップ機。

 ナイチンゲールではジオン色が強すぎる。どちらかしか出せないのであれば、ガンダムが優先される。そのためイブリースはΞガンダムの操縦を試しつつも、逆にハサウェイはナイチンゲールを操作しなかった。

 ハサウェイにとってその機体は、初恋の女の子を奪っていった憎き男の機体だからだ。シャア・ダイクンの思想に賛同しても、彼という人物そのものには反発していた。だからこそ彼はガンダムに乗っている。

 それは父親が地球連邦軍であることと、アムロ・レイというファーストニュータイプの存在が大きいからだろう。

 そうして準備を進めていき、オエンベリ軍も動き始める。ヴァリアントとも別行動だ。アデレートでの会議が差し迫っていることもあり、ハサウェイたちは先にエアーズロックへ向かう。シーラック二隻も別行動で、そちらにはガウマンたちが乗って移動した。

 イブリースとハーラ、それにロッドはヴァリアントでの待機を続けた。エアーズロックに向かうまでΞガンダムたちのメイン部隊と、イブリースたちの海上からギリギリまで詰め寄るチームに分かれている。シーラックも含めれば三方向からの進軍だ。

 戦力の分散は本来避けるべきではあるのだが、Ξガンダムとナイチンゲールならば各個撃破できるだろうということと、できたら海上からの増援を阻止したいこともあって別ルートを進む。ヴァリアントは西よりの航路、シーラックは東寄りの航路を取って万全の補給をするための別行動をしていた。シーラックは海路での最後の補給物資を受け取るための行動だ。

 ビノエ・ハーバーを出て海を進み三時間ほど経った頃。ヴァリアントへ近付くMS部隊があった。それをキャッチしてすぐ待機組はMSに乗り込んだ。検閲などをしなければ民間船を落とすことになるために、相手の臨検の態度を待ってから出撃するつもりだった。

 だがそれよりも前に彼らが先手を打ってくる可能性もあったために、ナイチンゲールは海へ落とされた。ミノフスキー粒子も散布していないためにMSが動いていることは相手にもバレる。だったらさっさと出撃して先手を取る。メッサーもギャルセゾンに乗せられて一気に出撃する。

 連邦の戦力はケッサリアに乗ったグスタフ・カールが計四機。そしてペーネロペーがいた。

 

「ガンダム……!こっちに残ったのは正解だったね!」

 

 イブリースは一気に機体を上昇させて海から飛び出て、虎の子のファンネル・ミサイルを放つ。これによってグスタフ・カールが乗るケッサリアを全て爆破させて、空を飛ぶ手段を失わせた。ペーネロペーはミサイルを放つことでミサイル同士を爆発させて回避、グスタフ・カールも一機を除いてケッサリアから飛び退いたことで誘爆から避けていたが、土台がなくなったことは事実。

 そこへイブリースが、そしてギャルセゾンからメガ粒子砲が放たれてグスタフ・カールは壊滅した。

 

「くそ!マフティーめ、こっちが正規軍だからと奇襲なんて!」

「お生憎様!数で劣るテロリストは、こうでもしないと正規軍とやり合えないんだよ!」

「女っ⁉︎」

「女だってパイロットになるだろ!時代遅れめっ!」

 

 ミノフスキー粒子も撒かれていないので、通信がよく通る。レーンは相手パイロットがシャア・ダイクンの代わりをしているか、本当に小さい確率だったがシャア・ダイクン本人だと思っていたためにイブリースが女性で一瞬だけ動きを固くした。

 だが、即座に戦闘に戻れたことは、この動乱の中でパイロットとして成長したということだろう。

 同じミノフスキー・クラフト搭載機ということもあって空中で高機動戦が始まる。メッサーの二人にはアシストよりもヴァリアントの避難を優先させて、他の増援を気にさせた。

 いくらSFSがあるからといって、そこまで空中戦で自由が効かない。だったらミノフスキー・クラフト同士の争いが優先される。

 ビームサーベルでの鍔迫り合いで出力でのゴリ押しをする。ナイチンゲールは大型機なこともあって出力は同世代の機体よりも相当高い。ミノフスキー・クラフトを積んでもメガ粒子砲を積み込めるほどの出力があるので、通常のビームサーベル以外にもビームトマホークも装備しているほどだ。

 ドッグファイトがヴァリアントから離れた場所で行われていく。その何度かの接触で、イブリースは目の前のガンダムに乗るパイロットがご同輩かつ、そこまでコストのかけられていない後輩だと気付いた。

 ダバオ近くの洋上でも感じていたことだが、こうも直に接触すればその事実が鮮明に判断できた。

 

「強化人間が、連邦に利用されて……!そうやって連邦に与して、未来はどこにある⁉︎根本を変えないと強化人間(私たち)がいつまでも、宇宙で増え続けるNTに対抗するために生産されるだけだってわからないのっ⁉︎地球に固執した頭の固い人間は、宇宙の自由さを本当の意味で理解していない!」

「そんなジオンの寝言を!そうやってNTが自由を求めて戦争を引き起こしてきた歴史がある!NTがその自由を履き違えるから、対抗する力が必要なんだろっ!」

「くっ、安定してる……!というか私はジオンじゃない……!マフティーだ!」

「そんな機体に乗っていて、戯言をっ!」

 

 ペーネロペーのパイロット、レーン・エイムはだいぶ若いと感じるイブリース。大きな戦争があったのは十二年前。それ以降大きな戦争がなかったために、実戦を経験している人間は少ない。それこそジオン残党や、反連邦思想のテロリストを制圧した程度だろう。

 イブリースと同年代とすると、同僚でもない限り最近の強化手術がされたタイプだ。そちらの方が精神が安定しているとして、過酷な強化は施されず、最低限のサイコミュ兵器を使用できるだけの水準に、純粋な身体強化が施されているだけの安上がりな強化人間が最近は多い。

 過酷な強化は長持ちせず、強い強化人間になったとしても、相手が残党では使い所も少ない。そしてお金をかけたとしても、絶対はないために残党に負ける強化人間もいた。

 ジオンが大人しくなったことで連邦の敵がいなくなったと思ったのか、連邦軍は強化人間を金食い虫としてコストカットを施した。安上がりで長持ちする最低限のカウンターとして細々と強化人間を若干数作る程度で、大金をかけたハイエンドの強化人間は切り捨てられてきた。

 その一人がイブリースだ。

 そんなイブリースだって、ハサウェイという天然のNTには勝てない。結局兵士として訓練を積んで、失敗率の高い手術を乗り越えて、無茶な投薬もされて。そうやって脳を弄られて、部品として完成した頃には戦争という舞台がなくなっていた。

 どうせもうすぐ死ぬ身だ。ならば自分が産まれた意味を、後世に残したいとマフティーへ参加した。自分のような強化人間が今後産まれないように、連邦政府は一度解体されるべきだ。その一心で彼女は今も操縦桿を握る。

 それがあの時、アクシズを押し返そうとして死ねなかった兵器の末路だと信じて。次代を産み出せない女として、せめて意義や主張だけは継いでくれる存在が産まれてくれることを願って。

 実際、ペーネロペーはナイチンゲールとそこまで性能は変わらないはずだが、ナイチンゲールが終始押していた。それはパイロットの差だ。レーンも大空を飛ぶことで機体の本質を理解し始めたのか、だんだんと操縦の腕は上がっていたが、小さな経験値だけでは覆せないほどイブリースとの実力差は大きかった。

 八歳当時、シャアの反乱に参加したエースパイロット。無茶な強化が長年続けられて、性能を求められ続けた一つの終着点。

 明日を願えない彼女は一戦一戦が最後の戦場だった。ここでいきなり機能停止に陥るかもしれない。だから相手のエースを落とそうと必死に機体を動かす。

 頭部から緑色の光が漏れているなんて気付かず、彼女はビームライフルをペーネロペーの左マニュピレーター付近に打ち込んだ。外装として接続されているペーネロペーユニットのビームバリアによって本体は無事だったが、外装ユニットの左半分が融解することとなる。

 そもそもビームバリアも未完成のものを実装されている。大気圏内での航行のために、加速を減衰しないために実装されているが、本来の目的では使用できないが、防御面では優秀だと判断されて搭載されていた。

 それがあったおかげで、高威力のビームライフルの直撃を受けても外装の左側が消し飛ぶくらいで済んだ。ビームバリアがなければ撃墜されていただろう。

 そしてミノフスキー・クラフトの機能を有しているのは外装のペーネロペー・ユニットだ。半壊したことで大空の支配権を失っていた。右側だけで重量のある機体を支えることができず、スラスターを目一杯踏み込んでも、重力のしがらみには勝てなかった。

 

「しまった!」

「終わりだ、後輩!」

 

 自由落下していくペーネロペー・ユニットを無くしたオデュッセウス・ガンダムに向かってトドメのビームライフルを叩き込もうとした時に、彼女の脳裏に殺気が届いた。

 すぐさま反転するようにその場を離れると、三条のビームがさっきまで彼女の居た場所を通り過ぎる。その方向を見ると、戦闘機の形をしたMSがマウントしたビームライフルの銃口を彼女へ向けていた。

 Zガンダムタイプの可変機。それが八機。これこそがヨーロッパから納入される追加戦力だろう。運び込まれるタイミングで戦闘があったためにスクランブルで出てきたというところか。

 昔の空を支配していたZタイプ。だが時代は変わったのだ。

 一機は背中にオデュッセウス・ガンダムを乗せて離脱。他の七機はフォーメーションを組んでマウントされたビームライフルをお見舞いしてきた。

 ナイチンゲールを一気に上昇させる。高高度を確保して、あちらが機首を上に向けるのを待つ。上へ向けてくれれば彼女は対応する手段があった。

 彼女も連邦軍の軍人だったのだ。そしてグリプス戦役で苛烈な結果を残したZタイプは細々と生産され続けた。整備性こそ問題はあるものの、宇宙に大気圏内にと、さまざまな場面で活躍できる万能性。そしてエースを乗せれば一騎当千の活躍をしてくれるということもあり、UC0100を迎えた記念としてZタイプのガンダムが式典でフライトを見せるほど連邦軍の脳を焼いているMSでもある。

 そんな有名な機体に、イブリースも乗っていた。だからこそ弱点もわかる。

 上空へ上昇しようとしてきたところを狙ってファンネル・ミサイルを一斉掃射。残りの全弾を打ち込んだ。それは横から急にサイコミュで曲がるミサイルとなり、上昇するために機体制御をしようとしていた彼らに避けられるわけもなく。

 上昇に遅れた三機以外が爆散する。残った三機にはビームライフルをお見舞いするが、そこはZタイプを渡されるベテランパイロット。華麗に避けて編成を組み直していた。

 レーン・エイムを乗せた機体は既に離脱している。ここで落としておきたかったが、逃げられては仕方がない。せめてもう三機は落とそうとした時に味方のビームが戦場に追加される。

 メッサーから放たれたビームライフルが直撃し、もう一機が爆散。ギャルセゾンに乗ってハーラとロッドが参戦していた。

 

「ナハティガル!ヴァリアントは戦域から離脱したわ!援護する!」

「助かる!」

 

 流石に数でも負けたからか、Zタイプの二機は撤退していった。その引き際は見事であり、追うのは手こずることと、エアーズロックを目指すことが優先ということで深追いはしなかった。

 ペーネロペー・ユニットがまた接続されて襲ってきても困るのだ。こっちはたった三機しかいない。

 だが、増援のほとんどを叩けたのは大きいだろう。

 ヴァリアントがどの辺りに行ったのか、ギャルセゾンからデータリンクをされて、これなら大丈夫だろうと判断してそのまま三機でエアーズロックに向かうことにする。

 

「ごめん、自動操縦にして少し眠るね。接敵しそうになったら起こして」

「ギャルセゾンに入らなくて大丈夫?仮眠するならそっちの方が良さそうだけど……」

「そこまでは気を抜けないよ。行こう」

 

 そうして彼女はシートに身を預けて、ギャルセゾンを追尾するように設定をしてエアーズロックに向かう。本当だったらもっと先で出発する予定だったが、当初の目標の、増援を叩くということはほぼできた。それにペーネロペー・ユニットの半壊も戦果としてはかなり大きいだろう。

 アデレートまでの会議まで時間があまりない。その短時間で修理が間に合うか。外装さえ破壊してしまえば空を自由に飛べないというデータが手に入ったのも大きい。

 イブリースが仮眠をしている間に、エアーズロックに辿り着いた。ハサウェイたちも基地からの見回り部隊と接敵したものの、敵を撃滅。小破判定くらいの負傷はしたものの、人的被害は0でエアーズロックに辿り着いていた。

 合流してからは補給はジュリアなどの先行部隊のメカニックたちに任せて、テントの中で得たデータを映像付きで話し合っていた。

 

「そうか。随分異形だとは思っていたが、外装パーツにミノフスキー・クラフトを積んでいるのか。中身は普通のガンダムなんだな?」

「性能はまるでわからないけどね。けど外装をつけることを前提としているなら、基本スペックが高いだけのオーソドックスな機体の可能性が高い。特別な兵装が付いているようには見えなかった。映像からも確認できないよ」

「ガンダムとして開発されている以上、グスタフ・カールよりは高性能だろうが、飛べなければな。それに増援のZタイプを叩けたのも大きい。ここまで人的被害が0でここまで進めたのはかなりの戦果だ。助かったよ、イブ」

「これくらいしかできないからね。ここまでのルート再計算とかはモーリー任せだったし」

 

 士官学校に通うこともなく、ただの一兵卒としてしか訓練されていないイブリースは簡単な方位を調べることくらいはできるが、基本は戦場まで戦艦で連れて行かれて、そこで暴れることばかり。作戦立案などの士官がやるようなことは教育されていなかった。

 そのため、彼女の最終的な階級は少尉止まりだ。強化人間なんてそんなものである。

 シーラック組もオエンベリ軍も合流して、新人パイロットたちとメッサーが数機にSFSのギャルセゾンも追加された。補給で脱落した者もおらず、司令官に就任したばかりのケネスは広大なオーストラリア全体へ指揮命令系統がまだ機能していない状況だったために基地ごとの簡単な見回りくらいしかされていないのが現状のようだ。

 それらの集まった情報を元に、現在の状況と最後の進路を話し合う。

 オエンベリ軍のダーウィン空港襲撃は、成功の部類だろう。おそらくダバオからやってきた連邦軍の輸送機の内、二機を撃墜。残りの一機は着陸せずにそのまま飛び立ってしまったために落とせなかったが、積み込まれたMSごと爆破させて戦力を減らせたようだ。

 それにダーウィン空港にもダメージを与えたことで当分の使用は不可能という見立てだ。

 アデレートの会議は明後日に始まることで確定だという。つまりもう一日猶予がある。それだけあれば十分だと判断し、補給と監視を任せてパイロットたちは安らかな休暇を得ていた。

 イブリースはテントの中で、ギリギリ大丈夫そうだという漠然とした予感があった。彼女はNTとして欠陥品であっても、そういう天啓を得るような閃きが何度かあった。脳裏に緑色に光るT字の金属を見る時は、だいたいその予感が当たる。

 眠りながらもそのT字が夢に現れたので、彼女の予感は当たるだろう。そうしてエアーズロックに夜の帳が落ちていった。

 

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