機動戦士ガンダム 閃光とハサウェイ~マフティーに足りないもの~   作:フラペチーノ

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6 ダメージ イン ダークボトム

 アデレートからまだ遠いアリス・スプリング。ダーウィン空港で強襲を受けたケネスとギギたちはだいぶ都市化されたこの街に降り立っていた。本来であれば三機で来るはずだったのに撃退されて一機で来るしかなく、アデレートに向かうまでに人員もMSも足りないということで一度この街に寄っていた。

 マン・ハンターと政府高官を乗せての移動だったのに、何人かの役人と多数のマン・ハンター、それにMSの被害が出ている。

 ケネスとしても本拠地はダバオであり、オーストラリアはホームではない。それでも司令官に命じられて戦力を調達し、マン・ハンターというイケすかない連中と不本意な共同作戦を実行して。

 アリス・スプリングで聞いた被害状況は、燦々たるものだった。

 ダバオから移動してきた戦力。これは自分の目で見ているためにどれだけの戦力を失っているかは理解していた。どれだけ役人が殺されて無能と言われようが、その時々の最善手を打ってきたと言える。マフティーの行動が連邦軍の動きを完全に把握して先手を打ってきているという奇襲がメインなために被害を0に抑えるということは不可能だった。

 それも言い訳と言われてしまえばどうしようもないのだが。キンバレーが無能と政府にも軍にも思われていたが、実際に相対してみてマフティーの上手さに舌を巻くケネス。最初のダバオ襲撃以外は全てしてやられている。ハウンゼンの出来事だってマフティーの偽物であり、鎮圧したのもハサウェイの手柄あってのもの。

 新型ガンダムにナイチンゲール。NT専用機を複数用意してそれに乗れるエースパイロットもいる。テロリストにしては上等すぎる戦力だった。そしてケネスは元々MSパイロットだったこともあり、戦場のNTの恐ろしさも知っていた。一般兵では相手にならない理不尽な相手。それがNTだった。

 だからMS戦で負け続きなのは、報告書の数字で見るより納得が上回った。だが、いくらなんでもマフティーの行動があまりにも的確すぎて髪を掻きむしる手が止まらなかった。

 マフティーの作戦艦をレーンたちが見つけたが、待機していたナイチンゲールと交戦して撃滅。ペーネロペー・ユニットが半壊し、グスタフ・カールが全滅。ここまでは良い。

 近くのルートを通っていたヨーロッパからの援軍。いくらなんでも連邦軍も連邦政府も良いようにやられすぎていることを重く見たキリマンジェロが派遣した、虎の子のZタイプMS二個小隊。UC0100には可変機フラグシップ機として一つの完成を見せて、エースパイロットのみが受領できる連邦軍でも尊敬される機種。

 増員のリストを見ても、ジオン残党などに歴とした戦果を見せていたベテランたちばかり。そのベテランたちが乗ったZタイプが、半壊。戦闘途中からの参戦かつ、レーンを逃すことを優先したとはいえ、かのナイチンゲールはほぼ一人で全てを打ち倒したというレポートが出ていた。

 

「冗談じゃない……!本当にシャア・ダイクンの亡霊じゃないだろうな……!」

 

 そんなことを愚痴りたくなるほどの戦果。MS撃墜数はここ数日だけで十機は確実に超える。エース・オブ・エースと言ってもいい戦績だ。このジオンの象徴に加えて、ペーネロペー・ユニットの更新機である新型ガンダムもいるというのだ。

 戦力が足りなすぎると、痛感した。

 シャア・ダイクンの亡霊が出てきたのならアムロ・レイでも帰ってこいと嘆きたくなったが、彼はMIAのまま。そんな奇跡に縋るわけにはいかなかった。

 そして報告の続きに、ナイチンゲールのパイロットが幼い少女であることが記載されていた。声から判断したとのことだが、レーンの感覚的にも自分より歳下の少女であり、声の高さからハイティーンくらいではないかとのことだ。

 ハイティーンの少女がマフティーという反連邦運動に参加し、ダイクンの名前を嫌でも彷彿とさせる機体に乗る。

 シャアという男は正式に結婚していたわけではなく、子供の情報もない。だが彼の年齢から逆算してハイティーンの娘がいてもおかしくはない年齢だった。それに女性遍歴はよろしくなかったという情報もある。婚外子、なんて言葉までケネスの脳裏には浮かんでいた。

 もしくは、シャアの妹の子という線も考えた。もう一人のダイクンも今や妙齢の女性のはずで、娘がいたらハイティーンでもおかしくない。

 そんな、敵パイロットの素性というどうでも良いことに頭を回さなければ受け入れられないほどの情報が彼の前にはあった。最後のトドメとして、キンバレー部隊が行ったマフティーの鎮圧の様子。鎮圧とは名ばかりの虐殺の様子を映したビデオが宇宙のロンデニオンに渡り、それがコロニー中の放送に乗ってしまったのだという。

 その火消しをマン・ハンター長官のハンドリー・ヨクサンと大臣たちが行っているらしい。その映像を一応検閲したが、マン・ハンターそのものの、愉悦が混ざった非道な殺戮の証拠でしかなかった。部隊を示す部隊証に、マン・ハンターを示す連邦軍とはまた異なったシンボルがありありと映ってしまっている。これはハンドリーが対応をするわけだと納得した。

 キンバレーはマン・ハンターと随分随意な関係だったようで、出兵に関することでは大手を振るってできていたらしい。過去に許可したマンハンターの親玉たるハンドリー長官は今頃、過去の自分を殴りたくなっている頃だろう。

 マフティーに翻弄されて無能扱いをされていたキンバレーを憐れんでいたケネスも、この映像の流出には庇う気持ちが全て消し飛んだ。いくらマフティーが反乱を企てていようと、MSの手足で人間をミンチにしたり、無抵抗の逃げている人間を後ろからカモ撃ちにしたり、それこそ女性を犯すような姿を見せつけていては人間の理性を疑われる。

 これではまた連邦政府の支持率は下がるだろうと、政治家でもないのにケネスは考えていた。自分たちのお上がやらかして民衆から反発を受ける。そうしてまたマフティーのような組織が台頭し、その尻拭いをさせられるのは自分たち軍人なのだ。

 マフティーを止められなければ無能の誹りを受ける。まともにやり合うのがバカらしく思えてきた。潮時ではないかと、何もかもを投げ出したいと思ってしまっても仕方がない不運と不祥事の連続だった。

 アデレートへの防備の指示。部隊の再編、ペーネロペー・ユニットという敵のガンダムとナイチンゲールと唯一やり合える装備の修復。明後日の閣僚会議までにやることは山積みだった。

 防衛用のビームバリアの配置のためにアナハイムへの交渉。そちらの構築準備などで工兵も動かしているのに、防備体制はどうかと政府高官に何度も確認される。評価を落としているのは重々承知の上だが、高官が何を言ったところで防備の状況が早くなるわけでもない。

 自分の身が大事なら金を出せと、叫びたいくらいだ。

 キンバレーのやらかしの映像がロンデニオンで流れたことをきっかけに、ハンドリーと何人かの大臣がロンド・ベルへ出撃要請を出したようだ。突貫で宇宙から部隊を降ろしてくるなんて大変だなと思いつつ、ケネスはロンド・ベルの司令官が誰かに思い当たる。

 

「ブライト・ノア大佐……。ハサウェイの父親じゃないか」

 

 その運命にいささかの運命を感じた。息子をパイロットとして欲していたら父親が増援としてやってくる。ハサウェイ自身は軍属ではないために徴兵するのは難しいとは思っていたが、貴重な実戦部隊、しかも連邦軍でも上位の練度を誇るベテランたちだ。

 本来であればジオンを警戒するために宇宙を拠点としているが、今回のマフティー騒動をよっぽど問題視したのか。それともナイチンゲールなんていうもろにジオンのMSをマフティーが運用しているためにジオンだと認定されたか。

 何にせよ力強い増援ではあった。

 ロンド・ベルは戦艦をいくつも用立てて降下してくるようだ。本物のニュータイプ部隊。司令官であるブライトもニュータイプだと噂される、あのアムロ・レイが所属していた連邦軍の切り札。

 彼らがいなければ今頃地球はアクシズ落下により、まともに住むこともできなくなっていただろう。そんな地球の英雄である彼らを召還するということは、連邦政府はマフティーを許すことはないのだろう。

 大臣や秘書などを含めて、どれだけの役人が殺されたことか。連邦政府は腐っているからこそ、自分たちの保身に必死だ。つまりマフティーは目立ち過ぎてしまったということ。

 そうまでしてやり遂げたいことこそが連邦政府打倒なのだろう。

 アデレートの状況、会議の開催日程。マフティーの予測進路。それらを纏めている際に、別の資料が出てきた。今回の作戦には全く関係ない、ケネスの私物だ。とはいえ部隊編成のための書類で連邦軍の人事リストではあるので、完全に私物とも言い切れない資料だった。

 今回の作戦には関係ないので、データで残っていたものをひたすらダウンロードしたことが原因だろう。襲撃が多すぎたために、データのバックアップなどは過剰にしていたことから、ファイルをそのままに出力されていた。

 それはペーネロペーのテストパイロットのリスト。候補も含めて様々な人間がリストアップされていた。

 ミノフスキー・クラフトを搭載したために、コックピットにかかるGに耐えられるほどの肉体と、MS適性。それにファンネル・ミサイルを搭載していることもあって強化人間かNTである必要が出てきた。性能を求めるとどうしてもそうなってしまう。

 ガンダムとは、NTの少年たちが乗ってきた傑作機・試作機だ。そしてどの人物もNTではあった。だからかまた新しいNTと出会えないかと思って、そしてファンネル・ミサイルの有用性からアナハイムの口車に乗ってサイコミュ兵器を載せることにサインを書いてしまった。

 目の前のリストはそんな候補たちの名前と能力表だ。

 選んだのはケネスだけではない。NT用のガンダムを作るとなったら連邦政府も慌てたのか、様々な介入があった。結局レーン・エイムという青二才でNT能力もそこそこの安定した、杓子定規の強化人間が来たことでケネスはブライトになれなかったわけで。

 誰だったらアムロとブライトのようになれただろうかと、そのリストに目を通してしまった。ペーネロペー・ユニットは予備も含めて今の分が最後になるが、中身のオデュッセウス・ガンダムの予備パーツは余っている。そしてペーネロペー・ユニットと一緒に開発した他の外装ユニットはあった。

 それを着けさせて出撃させることもできるが、残念ながら今の部隊にNTはいない。ギギはNTらしき存在だが戦場など向かない一般女性だ。ハサウェイも同じ理由で除外。

 機体はあってもパイロットがいない。そんな戦力を求めてしまった逃避行の確認。連邦には存外NTがいるのかと思っていたが、リストのほとんどは研究所出身の強化人間ばかりだった。そう都合良くNTが志願をしないかと思っていたところに、赤字で書かれた人物がいた。

 リストには上がってきていたのに、殉職となっている人物。そんな人物がいたのかとその人物のデータを見た。

 イブリース大尉。悪名高いオーガスタ研究所出身で、強化のしすぎで殉職扱いになっていた。存命時の階級は少尉。パーソナルデータも残っていたが、身長が140cmで強化のしすぎで色素の変化が身体のあちこちに出ているという注意書き。

 そして八歳の時にシャアの反乱に従軍し、ギラ・ドーガを七機撃墜という戦果が書いてあった。その時には既に強化人間として施術されており、強化人間仕様のジェガン・カスタムに乗って暴れていたという。

 ケネスもシャアの反乱には参加していた。あの地球を守るための短期決戦に、彼女もいたのかと認識をしてしまう。

 幼い少女へ、適性があったからと施した強化手術。そして少年兵と呼ぶにも若すぎる年齢での出兵。そして大人以上の戦果。

 シャアの反乱の後の、従軍歴。どんな戦場にいたのか、乗ってきた機体は。そうしたパーソナルデータを一通り見て、彼女は連邦軍の兵士として戦い。

 最後は薬物反応に身体が耐えきれず、荼毘に伏したと書かれていた。

 

「……やるせないな。これが連邦のやり口か。全く、こんなかったるい階級章なんて捨てちまいたいぜ」

 

 詰襟の近くにある大佐の階級章がうざったく思い、連邦のやり方や方針に反発を抱いていることがわかった。

 そして政府のことを何も知らないのだなと。今度のアデレート会議も、何かの法案を通そうとしていることは知っているが、内容には詳しくない。政府が要請して軍が受諾した。そういう、ある意味従順だからこそ守っているものの内容に気付いていなかった。

 それも調べるべきかと、また増える仕事に辟易とした。結局すぐに呼び出せるエースパイロットの当てになることもなく、ただ時間を潰して自分たちの上に反発を抱いただけだった。

 今日は徹夜だなと思っているところに、部屋の扉がノックされる。やってきたのはギギだった。

 伯爵の下から逃げてきたギギ。ハサウェイに会いに来たのだが、そのハサウェイは研修に出てしまって数日会えないということで先にケネスに会いに来た。そして折角だからとオーストラリア観光をした後にハサウェイに会いに行こうとしたところでダーウィン空港での襲撃だ。

 ギギの一言のおかげで緊急離脱をしたことでダーウィン空港では首の皮が一枚繋がった。だからケネス的にはギギに恩義がある状態だ。彼女には何かがあるとハウンゼンで予見し、その幸運にあやかりたかった。

 ダバオではマフティーの構成員を捕縛し、洋上戦ではミノフスキー・クラフト搭載機二機という不利な状態でもレーンは生き残った。オーストラリアに入ってマフティーの洋上母艦を見付けられたことも、幸運に含んで良いだろう。戦果に見合わないだけで。

 とにかく、そんな幸運の女神じみた彼女だが、アデレートをマフティーが襲うのだと知って民間人の彼女がアデレートに向かうことはケネスとしても避けたかった。幸運で言い訳をするのはここまでだろう。だから彼女がエアーズロックに向かいたいと言ったのは好都合だった。

 ハウンゼンの客室乗務員で、政府高官の対応者として香港から呼び出されたメイス・フラゥワーを強引にでも帰らせたのは、何かの勘が及んだからなのかもしれなかった。

 彼女をエアーズロックまで送り届けることを決める。マフティーが潜伏している可能性があったため、彼女を送り届けた後に周囲を警邏しながらアデレートに戻ってきてもらうつもりだ。彼女をエアーズロックに放り出すことになるが、あそこは観光名所。電波も繋がり、付近の街から直結のバスなども出ている。一人で置いて行っても帰る手段はいくらでもある。

 それでも良いかとギギに確認し、本人も承諾。明朝にエアーズロックへ向かわせることにした。

 ケネスは部隊を引き連れてアデレートへ。防備の最終チェックは生の目で確認しなければならない。そうして彼と彼女は、別々の道を歩き出した。

 

 

 

 エアーズロックで夜の帳が消え去ろうとしていた頃。襲撃を探査していた面々が、レーダーで接近する機体をキャッチした。

 SFSのケッサリアが一機。その上にグスタフ・カールが二機乗っているという状態だった。

 エアーズロックで休むというのは、マフティーでも困惑される場所と方法だった。地球の臍と呼ばれるほどには大きな目立つ観光地ではある。そして陸路も整っているので物資を搬入するには申し分ない立地だ。とはいえかなり目立つので、こんなところにMSを何機も隠しておくと考える者は少ない。それほど大胆な隠れ場所だった。

 そんな大胆な案を看破したのか、それとも警邏の定期便か。なんにせよ、見付かったのは事実。そして少数だったこともあって、連絡される前に落とすことと即座の離脱を決断できた。

 一番早かったのはイブリース、次いでハサウェイだった。SFSのエンジンをかけてMSを乗せて、という行程をしている間にミノフスキー・クラフトの機体は火を入れた後にすぐ出撃できた。

 

「ナハティガル、陽動をかける!速攻だ!」

「了解!」

 

 何故かケッサリアから降りて別々の方向に向かうグスタフ・カール。動き出しているハサウェイたちに気付いていないのか、それとも逃げ出そうとしている面々に気付いたのか、左右に分かれるどころかケッサリアは戦場に近付かないように後ろに控えているようだった。

 Ξガンダムの性能を知らないのか。それともある程度MSのジャンプ力でどうにかできると思っているのか。

 もしくは、本当にマフティーがいると信じておらず、ケッサリアには後生大事にすべき何かがあるのか。ハサウェイは直感的にケッサリアを落としてはダメだと悟った。

 

「できればケッサリアを無傷で捕らえたい。わざわざ空のアドバンテージを捨てる何かがありそうだ」

「フーン?私は何も感じないけど、リーダーがそう言うならやるよ。右は貰うね」

 

 イブリースは即座に右手のグスタフ・カールへ襲いかかった。ベテランパイロットが乗っていたのか、何度かイブリースの射撃を避けていたが、マシンスペックが違いすぎる。結局は上空からのビームサーベルの突きによって核融合炉が爆発。

 ハサウェイも避難している面々やケッサリアを誤射しないようにビームサーベルで仕留めた。MSを失ったからか、ケッサリアへビームライフルの銃口を向けたらすぐにその速度を落とした。

 

「降伏を勧告する。着陸しろ。言うことを聞かなければ、ビームライフルで撃ち抜く!」

「放射能が怖いんだ!こちらはノーマルスーツの用意がない!」

「妙な真似をしたら二機で落とすからな」

「クソ、テロリストが……!」

「言うことを聞きなよ!本当に殺されるよ⁉︎」

 

 SFSにはかなりの人数が乗っていたのか、意見の食い違いがあったのかそんな声が届く。その一つのうら若き少女の声を、ハサウェイは聞き間違えなかった。

 ギギの、熱を帯びた生の声だった。

 この数日、ギギを何度も感じたことがあった。彼女を抱きしめていた時の肉感を思い出して恥じていたほどに、彼女を欲していた。だから連邦軍のSFSから彼女の声を聞いた時には幻聴ではないかと疑ってしまったほどだ。

 爆発をした場所から離れたところに着陸する輸送機もどき。そこから軍服だけを着て確かにノーマルスーツを着ていない人間が何人も降りてくるが、その中でも一際おかしな少女がいた。黄色いワンピースドレスを着た、軍人には思えない人物。

 バスケットを持っている、兵器から出てくる人間には思えない出立ち。その姿を見たイブリースも呆れて声も出ないようだ。

 ギギはガンダムへ目線を向けると、メガホン越しに自分の言葉を伝えた。

 

「あたしを人質にして」

「ああ?ああ……」

「価値はあるのですか?リーダー」

「とても軍人とは思えない。そうだな、ここへ向かう途中で手にした被害者、なのではないか?軍人も落ちたものだ」

「そういう解釈ですか。わかりました。少女の警護はリーダーに任せます」

 

 ギギを可哀想な少女と認定したことで、イブリースは残った軍人に情け容赦なくビームライフルの銃口を向けた。そうして物理的に距離ができたことでギギはΞガンダムの左マニュピレーターに登る。

 コックピットを開けるなんて不用心だとイブリースは思うものの、それだけの少女ということだろう。錯乱した軍人が、いや、錯乱していなくてもマフティーのリーダー格を殺せると思ったら銃くらい抜くだろうと思ったイブリースはしっかりと足を動かしてMSの重量を見せつけつつ、連邦軍人を退かした。

 そんな演出もあり、ギギはガンダムのコックピットに収まる。

 

「SFSは破壊する。巻き込まれたくなかったらすぐにどけ!」

 

 ハサウェイがそう脅して数秒後、ケッサリアにビームサーベルを突きつけた。そして二機とも上空へ飛び上がる。爆発に巻き込まれた軍人がいないことをセンサーでしっかり確認してからミノフスキー・クラフトで手の届かない天空へと舞い上がった。

 予想外の船出となったが、朝日が眩しく照らしていた。それはまるで少年少女の出会いを祝福するかのようだった。

 それはどういう感覚だったのかと、イブリースは昔を思い出す。そして十二年前の、シャアの反乱で感じた少年少女の嘆きに似ていると感じたのだ。

 

(そうか。ロンド・ベルにいた少年……。あれはノアだったのか。そういえば父親が艦隊司令だったか?)

 

 そんな昔のことを思い出したイブリース。ミノフスキー粒子下でもないのに、ガンダムの中で交わされている二人の会話がまるで聞こえない。外部スピーカーを意図的に切っているのだろう。

 他のマフティーの面々になんて言い訳をするのか。イブリースも少しだけ助言することにした。

 何せ彼女はニュータイプを超える、もっと別の何かのようだったから。

 

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