機動戦士ガンダム 閃光とハサウェイ~マフティーに足りないもの~   作:フラペチーノ

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7 カモフラージュ アグレッシブ

 ケネスたちがアリス・スプリングからアデレートに移動したその日。何日かに渡るアデレート会議が始まる前日。

 アデレートでは中央閣僚会議に参加する全員が無事に集まっていた。ハウンゼンで、ダバオで、ダーウィン空港で殺された者も多数いたものの、すぐさま同じポストに入り込む人員がいたために補充は完了。今のポストになれた者など、マフティーに感謝している愚か者さえいた。

 ケネスはアデレートでの準備をしつつ、エアーズロックに向かった連中がロストしたと知る。ギギを乗せた偵察部隊だ。まさかエアーズロックにいたのか、それとも向かう途中のコースにマフティーがいたのかわからないが、とにかく全機撃墜されたようだ。

 ギギもおそらく殺されただろうと、ケネスは残念に思う。彼女だけが無事だとは思えなかったのだ。

 悲しいことは知人を失ったことだけではなかった。ダバオから先行させてアデレートで準備をさせていたはずのメインザー中佐の報告では、ビームバリアーの設置は遅々として進んでおらず、その上多大な犠牲を払っている部隊の被害状況も把握しておらず、マフティーのガンダムとナイチンゲールがミノフスキー・クラフトで飛んでくるということさえ把握していなかった。

 散々情報を送っておいたのに、それを見ていない中佐に問題があるのか、遠距離通信に何か妨害がされていたのか。それともマフティーのスパイがいて情報操作がされているのか。兎にも角にも防空体制が全く足りておらず、それらの準備も加わった。

 中佐側も色々とケネスがやってくれるだろうと甘い見通しだったのだろう。ケネスはこの作戦が終わったら中佐のことを更迭すると決める。

 そうして準備を進めていく中、通信がジャックされる。マフティーがたびたびやる配信ジャックで、襲撃の前や重大な発表の時にはやるものだ。

 映像の逆探知を指示し、その映像でマフティーが何を主張するのか見ていく。新型のガンダムと紺色のナイチンゲールが並んでいて、その前に演説台があって、そこで演説をするために顔が隠された男性がいた。その人物がマフティーなのだろう。

 だが、合成映像だとケネスには一目でわかった。こんなところで正体をバラすバカもいないだろう。音声も同じく、加工されて個人を特定できないようになっていた。

 

 マフティーの主張はアデレートで地球汚染を再開するような法律を通そうとしているからだ、というもの。ケネスは相手を知るためにもそれに聞き入る。

 会議の予定を知っていたこと、そして全人類は宇宙に飛び立つべきであること。それらの主張をしてアデレートを襲撃すると言ってみせたのだ。会議の日程が決まったのは昨日の夕方であり、それらを即座に知ることができた立場というのは、随分と連邦政府の奥深くにマフティーが入り込んでいる証拠だった。

 そして今回可決しようとしている悪法を要約した内容には、さすがのケネスや良心的な連邦士官は驚いてしまった。正規の土地の所有者であり、地球への在住資格を持っていようと、連邦政府が命じて土地を明け渡すように指示を出したら、強制的に土地を徴収されて同じ価値のあるスペース・コロニーの土地を譲るという法律のようだ。

 それはつまり、宇宙棄民を増やし、ただ自分たちのような特権階級が地球を独占したいという内容。まだ地球環境は治っていないが、その特権階級の人間が参入しようとすれば業者や身内などを沢山呼びつけて居着くという、いつまでも地球環境が良くならないという結果を招く。

 ここで問題になっている地球環境だが、一年戦争から続く争乱のせいで一向に良くなっていないどころか、悪化の一路を辿っている。複数のコロニー落としに、隕石の落下。それ以外にもMSが爆発して起こる核融合炉の破壊による放射能の散布。

 それ以外にもメガ粒子砲による森の焼却、数々の火器による土地や海の破壊。連邦政府が環境保全プラントをいくつか作っても焼石に水であり、実際現在の連邦首都であるダカールは街のすぐそばまで砂漠が迫っている。その環境が嫌で、自然豊かなアデレートに首都を遷移させようとしているのだ。

 首都遷移計画は本決定ではないものの、アデレートは最有力候補ではある。アデレートが閣僚会議の舞台に選ばれたのはそういう理由も大きい。

 マフティーはその傲慢さを、痛快に責め立てた。

 いつかは人類も地球に戻れるようになるが、その前に特権階級たちが既得権益を全て掌握するか、彼らがいつまでも文明を捨てられずに地球を汚染させたままにするか。そのどちらかだと簡単に予測できるという。

 それでは一世紀前の宇宙棄民と何も変わらない。人類は一歩も前に進まず、地球と共に衰退していくだけだというのがマフティーの主張だった。

 地球環境保全のためにも、そして腐敗する連邦政府高官を粛清するためにも、マフティーは二時間後にアデレートを襲撃すると宣言した。市民の避難を促し、二時間後以降に街の外から出ようとする人間は誰であろうと粛清の対象とすることを告げて、放送ジャックは終わった。

 その映像を流している場所の逆探知も終わっており、爆弾処理班などに丁寧に処理させつつ、ケネスは警戒態勢を宣言。政府高官たちもこの会議を潰されたら面子が保てないということでこのまま会議は続行すると宣う。

 マフティーの行動を止められなかったケネスを責め立てて、自分が死ぬ番になったら直前になって慌てふためく。そんな役人たちの態度と言葉が、ケネスへより一層反発心を芽生えたせた。今すぐこの議場にミサイルでも落ちてきた方がマシだと思ったほどだ。

 それか、防衛のミスで戦闘機から誤射でミサイルを撃ち込ませるか。守る対象が全員死んでしまえばマフティーも街を襲うことはなくなる。そっちの方が建設的ではないかと、ケネスは防衛の最終段階になって護衛対象と改めて会話をしたことで、地球に巣食う害虫という存在を認識した。

 

(ケッ、シャアやマフティーに共感するなんて、俺もヤキが回ったかね?市民を守るとか、地球を守るってことならあれだけ燃えたのに、今は怒りの方が大きい。……俺が目を背けていた、連邦政府の実態ってやつか。この戦いが終わったら辞表を出そう)

 

 そんなことさえ思うケネス。

 市民をシェルターに避難させ、防空網を敷いて、秘密兵器であるビームバリアの準備を急がせて。

 二時間なんて時間はあっという間に過ぎ去っていった。

 だが、二時間が経っても襲撃は来なかった。それどころかアデレートから遠い場所でMSらしき何かが爆発したという報告が複数ある始末。

 それらの調査の結果、連邦軍のMSではない何かが爆発したということは確定できた。MSの残骸は海の深くへ落ちたか、爆発四散したためにメッサーかどうかも判別が付かなかったが、とにかく何かがあったということだけはわかった。

 そうして二時間が過ぎてもアデレートへの襲撃はなく。キルケー部隊も官僚も警戒をしたまま陽が落ちていき。

 市民たちは襲撃がなくなったと安堵したり、この隙にと街を脱出したり。

 不穏な空気のまま、閣僚会議の朝を迎えた。

 

 

 時を戻して、マフティーがエアーズロックから脱出した後。ハサウェイは事前に撮っていた映像を加工させてアデレートに流し、アナハイムから譲り受けた失敗作のMSもどきを海で爆発させるという陽動作戦を実行した後。

 最後の隠れ家であるアデレートの近郊、アンクシャス湾に面した洞穴でMSは地下シェルターに隠し、本人たちもテントで休憩していた。

 ハサウェイとイブリースが連れてきたギギだが、マフティーの面々から反発が大きかった。連邦軍に一時的にとはいえ身を寄せていた人物だ。スパイかもしれないと疑う声は多かった。特に女性陣。

 だがそこで反論したのはハサウェイでもギギでもなく、イブリースだった。

 

「こんなハウンゼンに乗っていたような女の子がスパイだなんて、映画の見過ぎだよ。というか、身体検査はもうやってる。通信機器も持ってないし、今更決行前で情報なんて渡らないよ。もしこの子がノアを殺したら、私がマフティーをやる。ここに彼女を連れてきたのはノアなんだし、それで殺されたら自業自得ってことで」

「いや、そのハサが殺されるっていうのを警戒してるんだけど……。貴重なエースパイロットでマフティーなんだよ?」

「じゃあ強化人間の直感。その子はそういう子じゃないよ。以上」

「いつもはNT扱いするなって言うのに……」

 

 もう一人のエースパイロットで女性のイブリースが言ったからか、ギギの帯同は許可された。明日の襲撃のための、最後の休息だ。機体の整備はもちろん、思い思いの夜を過ごしていた。

 ハサウェイとギギは特別に、四人用のテントを二人で使っていた。ハサウェイが連れてきたのだから監視は自分で行えという、押し付けという名の融通だった。ギギという少女のことはある程度共有されていたために、作戦前夜ならばこそ二人きりにしてあげようという気遣いだった。

 そこで話されるハサウェイの過去、シャアの反乱からマフティーになるまでの道のり。

 それを聞いて、ギギは彼の心の奥底に、クェスという殺してしまった少女がいることを知った。その少女の幻影を未だに見ることや、こうするしかなかったという精神病を抱えた人物特有の嘆き。

 ハサウェイは頑張りすぎだと、ギギはそう言ったが、ハサウェイは静かに首を横に振る。

 

「僕なんてまだまださ。イブに比べたら、僕はとんと恵まれている。彼女は、ギギとそう年齢は変わらないはずだ」

「あの鳥のMSの子でしょ?強化人間とは聞いたけど……」

「彼女は四歳からオーガスタ研究所にいる。口にするのも憚られるような人体実験を受けて、NTを殺すための部品にされてきたんだ。初実戦は八歳。……シャアの反乱だ」

「シャア・ダイクンの反乱……。あなたの、転期ね。それに彼女も関わっていたの?」

「シャアを恐れた連邦軍の、虎の子の切り札として出撃して、ジオンのMSを五機以上撃墜したらしい。アムロさんと一緒にそうしなくちゃいけないって思って、あのアクシズを押し返そうとしたらしい。そこで死ぬつもりだった、なんて何回聞いたことか」

 

 イブリースは強化人間、NTの出来損ないという自覚があったからか、ハサウェイとはそこまで親密になっていないつもりだった。だがハサウェイはエースパイロットでマフティー。同じく戦力として求められたパイロットであり、Ξガンダムのテストも一緒にやった仲だ。

 月で存分に話す時間があった。

 彼女は月では随分と饒舌だった。強化人間として実験を受けていた頃の話はあまりしなかったが、おそらく残っているダブリンでの両親との生活や、それこそシャアの反乱であったことは彼女の中でもかなり記憶に残っているようでよく話してくれた。

 受領したジェガン・カスタムは全員分にバイオセンサーが搭載されていたこと。フィフス・ルナの落下から連邦軍が慌てて彼女たち強化人間の宇宙への派遣を決めたこと。母艦が地球から出た頃には既にアクシズは地球にだいぶ迫っており、即応するしかなかったこと。

 強化人間に連携なんて求めるものではなく、全員がスタンドプレー。イブリースも一人で迎撃に出てエースに遭遇しなかったものの、獅子奮迅の活躍をしたようだ。そうして最後、半分に割れたアクシズが地球に落ちるとわかった時にはどうなっても良いからとアクシズを押し返そうとしたらしい。周りの皆もそうするのが当然だと思ったのか、賛同者は多かったらしい。

 そこには敵のはずのギラ・ドーガもいたのだと、彼女はおかしいよねと言いながら笑っていた。

 そうしてアムロの乗る青いガンダムから放たれた光がアクシズを包んで、奇跡が起こったのだと。その時のイブリースはあの光は奇跡の賜物と言いつつも、ガンダムを犠牲にした、赤子やあの場にいた、もしくは地球にいた人々の祈りでありつつ、呪いだと称していた。

 

「祈りで、呪い?」

「あの場にいた僕の感覚だが……。実際にあのアクシズ・ショックは何かがおかしかった。彼女も言っていたけど、敵のギラ・ドーガまでもが落とそうとしていたアクシズをどうにかしようとするなんてどうかしている。僕はショックで呆然としていたけど……。あれはナニカに導かれていた。そうしたのが人々の祈りなのかわからないけど……。事実として、奇跡は起こった。あの時のアクシズは確実に地球へ落ちるコースを辿っていた。それは父さんも確認していたから間違いない。地球が救われてハッピーエンド、でも良かったんだろうけどね。それで帰ってこなかった人がいる」

「……アムロ・レイ」

「そう、帰ってくるべき人。ファーストニュータイプ。父親になることができなかった、可哀想な人。奇跡であり、母子にとっては呪いだと。イブリースは言うんだ」

 

 ハサウェイもラー・カイラムにいたために、彼の恋人であるベルトーチカが妊娠していたと後から知った。だが無事に産まれた子は父親のことを地球を救った英雄であるとしか知らずに生きていく。

 そんな悲しいことがあってはいけないと、彼女は悲しそうに呟いていた。

 脳を弄り回され、寿命を削って。倫理も何処かに捨て去られて戦場を駆け回った少女が誰かの当たり前の幸せを祈って、自分にできることは戦うことだけだとパイロットをやっている。

 彼女の残りの寿命を鑑みても、ハサウェイはだいぶマシな方だろう。

 イブリースの昔話を聞いていて、ハサウェイは戦争が終わった直後のことを思い出していた。クェスを殺し、無断出撃をブライトに叱責され。戦争の終わりへ向かう、サイコ・フレームがもたらす妙な暖かさが気持ち悪く。

 何もかもがどうでも良くなっていた頃に、彼はイブリースに会っていた。戦艦にいるには不相応な小さなパイロットスーツを着た少女。その少女のことをちゃんと見たわけではなかったが、その頃はNTとして敏感だった時期でもあり、彼女の存在を認知していた。

 それがイブリースだったと、彼女が話すことで繋がったのだが、シャアの反乱で会っていたなんて話すことはなかった。彼女との関係はエースパイロット同士。頼りになるパイロット。それくらいの距離感が良かった。昔のことを掘り起こして、それも直接会ってもいないのにあの時同じ場所に僕も居たんだよ、と伝えて何になるのか。

 そんな独りよがりのことを、話せないままだと呟く。

 ハサウェイの独白を聴き終わった後、ギギはハサウェイの手へ自分の手を重ねていた。

 

「彼女のことも悲しむことはわかるわ。けど、それとハサウェイが大変なことは別だよ。……私、ハサウェイが好きだよ。その負担、少しでも取り除けないかな?」

「走り出した車は、目的地まで走らせないと、可哀想じゃないか」

「そうやって背追い込む。今はマフティー・ナビーユ・エリンじゃなくて良いんだよ。ここは誰も見てないテントの中。ハサウェイ・ノアと、ギギ・アンダルシア。年若い男女が一緒のテントにいるだけ」

「ギギっ⁉︎」

 

 そんな理論武装をして、ギギはハサウェイを押し倒す。MSパイロットとして身体を鍛えているハサウェイを押し倒すことなど、細身のギギでは難しいはずだが、すんなりと倒すことができた。

 そういうことだろうと、ギギは借り受けていたジャケットのジッパーを下ろす。

 

「独りよがりだったらごめん。ちょっと前まで伯爵の愛人をやってた私が穢いと思うなら、払い除けてくれていい。けど、ハサウェイ。……今夜だけ、夢を見させて」

「……ギギ……」

 

 そのまま迫り来る湿った唇を、ハサウェイは拒むことができなかった。防音もしっかりしていないテントの中で、灯りも消した少し広い空間で、二人の影が重なる。

 ここまで悩んできた肉欲。久しぶりに感じる、誰かの体温。

 ニュータイプだと煽られて、曲がりなりにもサイコミュ兵器を使って。一人の女の子を無断出撃で殺してしまったことで悩み続けた、一人の少年は。

 この時、英雄の子でもなく。ただの人殺しでも、大義を背負った秘密結社のリーダーでも、エースパイロットでもなく。

 ただの年相応の青年に、戻っていた。

 

 

 女性用のテントの中で、早めに休んでいたイブリースは日付が変わる前に目を開けていた。お昼の欺瞞活動も終わってやることがなかった彼女は早めに休みをもらっていたからか、変な時間に起きていた。

 同じテントにいたハーラは、目を覚ましたイブリースに目線を向ける。

 

「起きちゃった?水いる?それとも薬?」

「……この感じ……。サイコ・フレーム?」

「はぁ?何の話?」

「ナイチンゲールもガンダムも、動いてないよね?」

「どっちもアンタとハサウェイのバイオメトリクスしか登録されてないでしょ。アンタもハサウェイもテントの中。そもそも決戦前夜にエース機を勝手に動かすバカはいないって」

 

 イブリースは変な感覚があって、上半身だけ起こす。ハーラに水を貰い、それを飲みつつ機体が動いているわけではないと確信した上で、何に自分が反応したのか、少しだけ感覚を引き延ばす。あまり優秀ではないが、これでもNTの出来損ない。感知能力もなくはない。

 その感知能力のおかげで、自分がナニに反応したのか察した。

 

「あー……。ハーラ、クワック・サルヴァーから連絡が来るのって朝の七時でしょ?今何時?」

「十時過ぎってとこ。寝ておいた方が良いと思うけど、出撃前に薬を飲むのって良くないんでしょ?」

「うん、薬は飲まないよ。……決戦前夜だからねえ。ズービンもか。ハーラ、何読んでるの?」

「明日の決戦用の追加装甲のマニュアル。何であたしとガウマンだけ、FA仕様に変更なのよ……。こんな突貫の追加装甲でジュリアも怒ってた。ガウマンの方は補給ついでに昨日の内に変更してたみたいだけどさあ。ぶっつけ本番は酷くない?」

「ガウマンのは元々ネイキッド仕様のメッサーしかあの時は用意できなかったからね。それに技量の意味では納得。相手のガンダムもファンネル・ミサイルを使ってくるってわかったからこそ、装甲は硬くするべきだよ」

「ビームが当たったらほぼおしまいでしょ。一応アンチビームコーティングもしてるみたいだけど、気休めね」

 

 この装甲の追加も先程終わったために、変わった重量での実機操作などはしていないためにハーラは不安だったのだろう。ガウマンは今日動かしていたために、もう一人との差が出て余計に不安がっているようだ。

 かといって、今からMSに火を入れることはできない。アデレートまで目と鼻の先。ここで探知されれば全てが水の泡だ。

 そのため、どう変わったのかの簡易チェックしかできていなかった。決戦前に愛機の状態が変わるというのはパイロットとして不安になるのも仕方がない。同じパイロットだからこそ、彼女の不安がイブリースには手に取るようにわかった。

 

「そんなに不安なら、ノアに慰めてもらったら?」

「は、はぁ⁉︎何でそこでハサウェイ⁉︎」

「いや、流石に隠せてないでしょ。鈍い私でもわかるって。スガと一緒に寝込みを襲ったら?」

「…………エースパイロットに余計な負担をかけられないでしょ!」

「葛藤したね?一応ノアの女らしいデースは任務を優先してここに来てないっていう、パートナーとして失格なことをしてるんだからさ。女としてすることしてもバチは当たらないんじゃない?あれで恋人を名乗ってるデースが悪い。最後の決戦が不安だとか、適当に理由をつけてテント行っちゃいなよ」

「……確かに、ケリアもいないし、明日どうなるかもわからないんだし……?」

 

 もう少し押せばいけるかと企むイブリース。ハサウェイのテントが今どうなっているか、わかっているのに他の女性を当てがおうとするのは悪魔としか言いようがない。

 何でそんな人の心がないようなことができるのか。彼女も明日の決戦が不安なのかもしれない。

 それとも。

 

「〜〜〜〜〜なしなし!そういうのは全部終わって、ケリアを蹴っ飛ばして正々堂々やるべきでしょ!」

「真面目だなぁ。明日で全部終わるかわからないのに。多分ただの一区切りにしかならないよ?明日の作戦は意思改革の一助になれば良いけど、政府としてのていは一気に他の人間を大臣職につけておしまい。長年続く闘争の最初の一撃ってだけだよ」

「……まあ、そうなるわよね。でも、だからこそ。ここでハサウェイに変な罪悪感を与えたくないの。恋人を裏切った罪悪感で明日判断が鈍ったら、あたしのせいだもの」

「そういう考えも好きだよ。ま、こんなの刹那的に考えちゃう私のサガってことで」

「……アンタも、もっと未来のことを考えなさい。まだまだ紛争は続くの。その時アンタも一緒にあたしたちと戦うのよ、イブ」

「りょーかい。打倒連邦政府まで、倒れられないからね」

 

 そう告げて、イブリースは寝転がる。ジュリアも帰ってきて、女子だけのテントで決戦前夜が過ぎていった。

 

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