機動戦士ガンダム 閃光とハサウェイ~マフティーに足りないもの~ 作:フラペチーノ
アデレート郊外でΞガンダムとペーネロペーのドッグファイトは続いていた。エース同士の対決で、ここでガンダムを落として、残ったマフティーをアデレートで用意しているビーム・バリアで一網打尽にする。そういう作戦だからこそレーンは絶対条件として目の前のガンダムを倒さなければならなかった。
ビーム・バリアの建設はまだ終わっていない。今日の夕方までかかる想定のものを無理矢理に用意している段階だった。だからその時間稼ぎの意味もあってミノフスキー・クラフトで飛ぶガンダムをアデレートに近付けさせるわけにはいかなかった。
そして武装を更新して、装備の不調もないペーネロペーで、今までと違うところを見せつけるために新装備を解き放った。
「いけ、リフレクタービット!」
有線で飛び出す、ビームを反射する放熱板のようなもの。ここへビームを当てることでビームが乱反射し、その波状攻撃で敵機を落とすためのオールレンジ兵器。
これの調整のためにサイコミュの調整を続けてきたのだ。
リフレクタービットの初出はジオンの武装ではない。サイコ・ガンダムMk-Ⅱという連邦軍がジオングを元に作り出した、当時を考えればオーバースペックな機体に搭載されていた。腕を有線で飛ばすなど強化人間用に作られた超大型MS。それに搭載されていたものをアルゴス・ユニットに搭載していた。
出てきたビットは四個。そこに武装として増やしていたビーム・ガトリングで一斉に掃射。ビームが空から地上に無数の雨のように降り注いだが、それはΞガンダムが一気に加速したことでビームの雨から逃れていた。
イブリースはオーガスタ研究所出身だ。そして最終目標はサイコ・ガンダムMk-Ⅱに乗れることを前提とされていた。それこそが連邦軍が産み出したサイコミュ搭載型のガンダムだからだ。
シャアの反乱ではあんな巨大MSを宇宙に上げる余裕がなく、結果としてジェガンに乗っていたが、彼女より優秀だった強化人間はサイコ・ガンダムに似通ったガンダムに乗っていた。その機体にもインコムやリフレクタービットがあったために、彼女からすれば既知の兵装だ。
空を自由に飛び回り、そこにサイコミュ兵器が使われるというのは厄介だが、理不尽ではない。レーンのNT能力がそこそこなのか、それとも彼の人格が真っ直ぐすぎるのか、狡猾さが足りていなかった。
Ξガンダムを飛び上がらせて、ファンネル・ミサイルを二発だけ放つ。それはイブリースのサイコミュに反応してリフレクタービットを見事に破壊。
戦闘という意味では彼女の方にNT能力では軍配が上がっていた。
「グゥ!狙いが正確すぎる!これが私と、マフティーの差なのか⁉︎」
有線から伝わる衝撃に耐えつつ、レーンもフットペダルを踏み込む。間に合わせの兵器だが、これだけで圧倒できるとは思っていなかった。ガンダムと戦うのは二度目で、ダバオ以来だが、初戦で圧倒的にやられたために敵パイロットの腕は自分よりも上だと冷静に判断していた。
今はパイロットが違うと、彼のNT能力ではわからなかった。それほど腕には差がないからだ。というより、重要な決戦で乗機を入れ替えるなんて馬鹿な真似をしてくるなんて、パイロットとしての常識がその考えを頭の中から追い出していた。
イブリースも追加装甲で何が増えたのかと考えあぐねていたので、サイコミュ兵器が増えたのかと知れたのでヨシとする。
(大気圏内で使用するならリフレクタービットだよね。あとはインコムくらいだろうけど、もしかしたらファンネルもある?ビームも減衰するし、重力のせいでそこまで正確に動かせないけど、オールレンジ攻撃は普通に厄介。追加装甲で遅くなったかと思ったら、推力を上げてるからか前より速いし。向こうもそれだけ本気ってこと)
イブリースは冷静に判断しつつ、ペーネロペーを落とすための隙を探す。総合能力ではガンダム同士、大差はないだろう。それにアルゴス・ユニットが一番外回りに来ているために、ペーネロペー・ユニットを壊して墜落させるというのも難しそうだ。
そして彼女が考えるのは勝利条件。この戦闘でマフティーが勝ったと言えるのはフェスティバル・センターを崩壊させて政府高官を抹殺すること。敵エース機であるペーネロペーの撃破ではない。
これまでの戦闘でΞガンダム及びナイチンゲールに勝てるMSは確認できなかった。アデレートという首都候補なために他のガンダムなどが配備されている可能性もあったが、それらが出撃したような予兆はない。
ならば、この郊外で時間稼ぎをすればいい。ハサウェイならやってくれると信頼してペーネロペーの兵装を丁寧に落としていくことにする。
イブリースのG耐性は無茶な強化のおかげでかなり高い。ビーム・バリアの未完成品しか積んでいないペーネロペーよりも加速が効く。その超高機動によってレーンの動体視力を超える動きをアデレートの空で展開した。
レーンの目は必死に動くものの、センサーも彼の目も感性でも、Ξガンダムを捉えることができない。人体を超えた動きをされては強化人間でもどうしようもなかった。そして捕捉できないということは、いかに優れた兵装があろうと攻撃が当たらないということ。
もちろんイブリースにもデメリットはある。無茶な加速によって彼女は喀血していた。強化された身体でも、耐G性能を高めたパイロットスーツを着ていようと、軽減できるものにも限度がある。音速を超えた戦闘機動は強化人間であっても厳しいことだ。
あの速度で再びアデレートに突っ込まれたらどうしようもない。そう考えたレーンもできる限りの最高速を出して彼女に追いつこうとする。自身の感能力を全開にして、どうにか彼女を捕捉しようと足掻く。
そう願ったからか、アルゴス・ユニットに隠されたサイコ・フレームが反応を引き起こす。純粋な祈りに、そしてNTに反応し、遠く飛び去るΞガンダムの背中を捉えた。
(これなら、行けるっ!)
彼は掴んだ感覚を見失わないように、全力でフットペダルを踏み込んだ。まるで自分の意思に反応してくれて応えてくれたかのような万能感に包まれて、彼はΞガンダムを追いかけた。
十二年前の奇跡。アクシズ・ショックと呼ばれる、不可解な物理法則を捻じ曲げた事象。それの解析は連邦政府も長年費用を費やして実施してきた。強化人間も使い潰して超常の結果を得ようとして──尽く失敗した。
一度もアクシズ・ショックを再現できず。似たような事象も、超常的な物理現象も何も起きず。そもそも緑色の発光も観測できなかった。
資源衛星の半分を強引に退かせるという、欲を持った人間が追い求めるに相応しい結果を見せつけた。だからこそ費やせるだけの財力を投じて研究を進めたのに、何も成果は出なかった。
サイコ・フレームが何か不備があるのか。それともアムロ・レイやシャア・ダイクンのような最高峰のNTが必要なのか。結局何もわからないまま、サイコ・フレームは死蔵していった。ガンダムにいくつか搭載してみても何も変わらず、今までのサイコミュ増幅装置であるバイオセンサーなどと変わらない結果しか出せない。
ヨーロッパでも研究がされており、倉庫で埃を被っていたサイコミュ兵器と一緒に、強化人間がいるからと送りつけたのだ。それがアルゴス・ユニットに用いられていた。
だが、そんな知識もなく適当に増加されたサイコ・フレームではなく、Ξガンダムには正規のサイコ・フレームが搭載されていた。そもそもサイコ・フレームはネオ・ジオンのシャア・ダイクンが作成し、それをグラナダ支部に持ち込んで自身の乗機であるナイチンゲールに組み込んだ。
マフティーのフィクサーたるクワック・サルヴァーが戦力を求めて、彼が知る限り最高のNTが二人もいた。そんな人物たちのMSにサイコ・フレームを搭載するのはある種、当然の流れだった。
クワック・サルヴァーもシャアの反乱で色々と思うところがあった人物だ。確実に作戦を成功させるためにサイコ・フレームさえも利用するのは出資者として当然のこと。
ペーネロペーが淡くもサイコ・フレームの共振を起こしたために、Ξガンダムのサイコ・フレームも反応した。レーンはコックピットだけが切り取られた緑色の謎の空間に呼び出されて、はるか遠くにいるパイロットスーツを着た人物がどこまでも飛んでいく幻想を見る。
バイザーを降ろしたままの人物が、レーンの方を振り向く。その人物は、肉声ではなくノイズの走った合成音声のような声で呼びかける。
【力に飲み込まれるな。これは戦いに用いる力じゃない。誰かの祈りを掬い上げて、誰かを守りたいと思った、純粋さだけを抜き取る。それに代償も大きい。──君はまだ若い。こんなところで命を無駄にするべきじゃない】
【お前は誰だ⁉︎この力のことに詳しいのか⁉︎】
【祈りも、全ては叶わない。助かってほしいと願った母子の想いも叶えられなかった、偽物の願望機もどきだ。こんなものに頼らず、敵くらい自分の力で倒せ!】
そう、イブリースはサイコ・フレームによってできたNTの共鳴空間を取り払った。
彼女からすればサイコ・フレームによるサイコミュの増幅なんて、一度だけ奇跡を起こしたものの、たった一人を救えない偽物の救済システムだ。地球を、そして人類の多くを救ったかもしれないが、万能の願望機には程遠い。
人類は自分の足で、意志で歩かなければならない。サイコ・フレームなんていうインチキで歩くのは間違っている。
あくまでサイコミュ兵器のために使うくらいがちょうどいいのだ。
いきなりのNTの共鳴だったからか、ペーネロペーの制御が中途半端になり、空中でふらつく。その隙を見逃さなかったイブリースは持っているファンネル・ミサイルを全弾発射し、リフレクタービットとアルゴス・ユニットを破壊しようとした。
サイコ・フレームで敏感になっていたのか、すぐにレーンは回避行動を取ろうとする。だが、イブリースのNT能力が高く、避けようとするレーンへ追従するかのようにミサイルの軌道が折れ曲がり、リフレクター・ビットは爆散した。
だが、それでやられるレーンではない。アルゴス・ユニットに搭載された、もう一つのサイコミュ兵装を射出した。
「動け、サイコミュ・ハンド!」
アルゴス・ユニットから二つの腕が飛び出る。ジオングやサイコ・ガンダムMk-Ⅱから受け継ぐ、推進器を付けた巨大な腕だ。
それが指の先からメガ粒子砲を拡散させる。ビームの網による防御を行ったことでファンネル・ミサイルは全て爆散。その結果を見たイブリースは舌打ちを隠さなかった。
全て彼女が知る武装。それはまだ連邦軍がサイコ・ガンダムMk-Ⅱという圧倒的な暴力に魂を惹かれているという証左だった。強化人間を産み出し、かの機体を戦場に放り込めば多数の戦果を上げてくれる。Iフィールドもあるために防御面も優れていた。
アルゴス・ユニットとはつまるところ、ダウンサイジングを施したサイコ・ガンダムを外付け装甲で嵌め込むことにより、強化人間による圧倒的な暴力の群れを作るための実験ということ。往生際の悪い、強化人間によるNTへのカウンターを諦めきれない人たちの妄執の果てがそこにはあった。
だが、実際のところかなり強い装備ではある。自由に空を飛べて、その上でサイコ・ガンダムという一種のオーパーツの火力を叩きつけてくる。ビームによる圧倒的な火力と、ミサイル系統の実弾兵器も併せ持つ、防御面も小型化したIフィールドが備わっているという、とんでもないパワーアップを果たしていた。
音速に近い速度で飛び回る、オールウェポンフリーのサイコ・ガンダムと思えばその厄介さは伝わるだろうか。
だが、その猛威もそこまで続かない。ファンネル・ミサイルにサイコミュ・ハンド。いくらサイコ・フレームが搭載されていてある程度能力を補ってくれるとはいえ、かなりの精神を消耗する。簡易的な、最低限の強化しか受けていないレーンでは脳の処理に限界があった。
両方のサイコミュ兵器を同時に使うことはできないとわかったイブリースは、高速機動を心掛ける。いかに強力な武器であっても、当たらなければどうということはないのだ。
サイコミュ・ハンドを出したのは良いが、その制御に手一杯になっているレーン。ファンネル・ミサイルどころか、他の武装も使えずに飛ぶことしかできていない。それが一夜漬けの限界でもあった。一気に彼に近付き、ビームサーベルを使ってサイコミュ・ハンドの片腕を叩っ斬った。
それに即応するようにもう片方の腕から拡散ビームが飛んできたが、Ξガンダムのシールドで強引に受け止めてもう一方の腕も斬り割いた。
接近してくれたΞガンダムに、レーンは突っ込む。彼自身もサイコミュ・ハンドは持て余していたのである意味使い捨てにした形だ。質量では確実に勝っているペーネロペーでぶつかって、そのまま接近戦に持ち込む気だった。
体当たりを半壊したシールドで受け止め、ビームサーベルを突き入れようとしたイブリース。だがそのサーベルはIフィールドによって減衰されてまともに突き入れられなかった。それはペーネロペー側も同じなので、彼は全てのファンネル・ミサイルを自爆覚悟で叩きつける。
「そこまで覚悟が決まっているのか⁉︎」
イブリースは驚きながら、スカートに内蔵された隠し腕で外装ユニットの内側にいるオデュッセウス・ガンダムを壊そうとビームサーベルを突き立てる。
ファンネル・ミサイルとビームサーベルによる爆発。アデレート近郊でガンダム同士の戦いに決着が着こうとしていた・
・
一方、マフティーたちはキルケー部隊と一進一退の攻防を繰り返して、目標であるフェスティバル・センターを撃滅した。強固な建物ではあったが、もはや原型を残さずに火の手が上がっている。地下シェルターに逃げ込んでいても、そこへミサイルも叩き込む徹底っぷり。
MSの核融合炉の爆発も合わさってシェルターの中身が見えるくらいの崩壊っぷりを見せていた。目標が沈黙したことでマフティーの部隊は敵部隊の撃滅から撤退へと移行していった。完全な防衛目標の壊滅に、ようやく通信施設を復旧させていたケネスは完敗だと悟る。
ギャルセゾンが残っている者はそれに乗り移って、足になるものがないMSはスラスターで飛んで東西南北を選ばずに個々で撤退を始める。唯一単独で飛べるナイチンゲールは味方の撤退支援をしているようだった。
キルケー部隊の生き残りと、そして東南アジア方面軍から支援に来てくれたギャプランやジムⅢなどの部隊がマフティーだけは逃すかと、守るべき対象を失ったからこそ弔い合戦のように逃げようとする彼らに弾幕を張るが、それはほとんどがナイチンゲールによって堰き止められる。
もちろん背中を見せていることで撃墜される不運な者もいたが、基本はベテランパイロットが撤退支援をしたためにどんどんアデレート市内から脱出していく。
「ビーム・バリアの設置状況は⁉︎」
「市内での戦闘の影響で電線ケーブルがやられています!復旧まであと30分はかかると……!」
「マフティーが逃げるんだぞ⁉︎一矢報いるためにも、死ぬ気で急がせろ!」
間に合わないとわかっていても、ケネスはそう叫ぶしかなかった。アデレート会議に参加しようとしていた閣僚は全滅したことだろう。その責任を誰が取るかと言われたら、防衛を担っていた司令のケネス以外あり得ない。
連邦軍を辞めようと思っていても、こんな大失態をしでかして無事に辞められるとは思えなかった。せめてもの戦果がなければ上層部は納得させられない。たとえ無理な話でも、せめてマフティーの首級くらいは手に入れなければならない。
それはどちらか。ガンダムか、ナイチンゲールか。そのどちらかに乗っていないということはないだろうと推測していた。ガンダムはレーンが倒すことだけを祈って、この場に残るエースを落としたかった。ただそんな戦力はないので、ビーム・バリアに頼るしかないのが現状だ。
30分は長すぎる。そんなに持ち堪えられる戦力はこちらにはない。東南アジア方面軍が送ってきた戦力も、手助けしたというポーズを取るためだけの旧型機ばかり。ジェガンさえもいない状況で増援だと言われても納得はできない。
もうダメかと思ったが、仮置きの司令部に粒子通信が届く。ミノフスキー粒子散布下ながら連絡を取る手段がないかと連邦軍が開発を続けてようやく形になった通信手段。とはいえ、それも少しの情報しかなかった。
それでも通信兵が伝えた内容は、福音としか言えなかった。
「『オーストラリアの空に、鐘は鳴り響く』?まさか、間に合ったのか⁉︎」
ケネスがその通信の内容を把握した途端、アデレートから逃げ帰ることを許さないかのようにビームの嵐が郊外に降り注ぐ。その威嚇射撃だけでも精度の高さに、味方のケネスも、敵のハサウェイもその脅威を認識した。
上空からオーストラリアへ降りてきた戦艦の群れ。活動拠点は宇宙ながらも、その実戦経験の豊富さから地球へ降下して戦闘支援を行うように命令が下された、カウンター・ジオン、反地球連邦政府活動の取り締まりのために設立された第13独立艦隊。
ラー・カイラムを含む連邦軍最強の部隊がオーストラリアの上空を支配していた。
「……父さん……」
際立ったNT能力によって、ハサウェイはラー・カイラムにブライトがいることを感知していた。ロンド・ベルの司令であり、旗艦がやってきたのだからNT能力がなくてもわかるはずだが、彼はその事実を認めたくなかった。だが、鋭すぎるNT能力が事実を突き付ける。
反連邦活動をしている時点で、いつかはこんな日が来るのではないかと思っていた。その一方でロンド・ベルは地球に降りてくることはないだろうともタカを括っていた。
こうしてロンド・ベルが艦隊を引き連れてオーストラリアに間に合ったのは、何もマン・ハンターの親玉たるハンドリー長官が大臣に掛け合って要求したから、だけではない。
マフティーは殺しすぎたのだ。ハウンゼンより前にも暗殺は実行され、ハウンゼンでは偽マフティーによってやはり被害が出て、ダバオでも死に、ダーウィン空港でも死んだ。
法律を止めるために、そして世論を味方につけるために、派手に、大量に殺しすぎた。その結果、次の番が来る前にと臆病者たちが宇宙の彼らを動かしたのだ。ハンドリー長官の要請は遅すぎて、既に彼らは地球に向かって飛び立った後に二重の要請が届いたためにブライトもとうとう連邦政府は寝ぼけたかと首を傾げたほどだ。
マフティーの情報もあったために、メッサーと思われるMSが逃げる前にビームによる威嚇射撃を敢行した。マフティーがかなりの戦果を上げようと、彼らは弱小組織。今も閣僚暗殺のためにそれなりに数を減らしている。
一方、地上には東南アジア方面軍の増援も含めたキルケー部隊に、上空には五隻以上で編隊を組んだベテランしかいない最強の部隊。MSも40機を超えている。
今までは戦力比を覆してきたといえども、この数の差は六倍以上。そして連邦政府のお偉いさんがたも怒り心頭のようで、処刑にするからできるだけ捕えろという無茶なオーダーだ。
できるだけ努力したというポーズの意味もあって、最初は外すように火器管制とMSパイロットには言い聞かせた。
ラー・カイラムのブリッジで、いきなり戦闘に入ることになったブライトたちは最大望遠でモニターに映された紺色のMSに胃が痛くなってくる。色が違って、マイナーチェンジはされているものの、それは間違いなくナイチンゲールだった。
「これは連邦政府も本気になるはずだ。ネオ・ジオンの隠れ蓑だと考えられてもおかしくはない」
「次はトゥルー・ジオンでも奴らは名乗りますかね?」
「マフティーで良いだろう。そこに拘っていない連中らしいからな」
そんな冗談も副官と交わしながら、ブライトは気を引き締める。あの機体はアムロがかなり苦戦した、シャア・ダイクン最後の機体。
そのナイチンゲールに、息子が乗っているなんて露とも知らず、艦隊司令として、歴戦の艦長として、彼は号令を出した。