皆さんは、この会話を聞いたとき、どのような印象を抱くだろうか?
「全く良い性格をしていますね」
ユト「ありがとうございます。その言葉、そっくりそのままお返しします」
とあるテイルズオブシリーズのクロスオーバー作品で出た発言である。
文字面だけを見れば、バチバチの皮肉をぶつけ合う知的な応酬に見えるだろう。
普通はそう思う。
しかしこの会話は、ボイスをonにすると見事に印象が変わるシーンのひとつだった。
ユトの声色が明らかにおかしい。
なんか、すごく柔らかくて穏やかなのだ。
しかも、よく聞くと少しだけ照れている。
嫌味を鮮やかに切り返した者の声ではない。
思いがけず人格を褒められ、どう返せばよいのか迷いながらも、少し嬉しくなっている者の声である。
TOZ-Rをプレイした人ならおそらくわかる。ユトは別に煽っていない。
「ありがとうございます。貴方も性格の良い人ですよ」
と言おうとしているのである。
言葉選びが終わっている。
スレイ「今の、喧嘩してたのか?」
ユト「いいえ。互いの人格を肯定的に評価しました」
ミクリオ「少なくとも相手は肯定していなかったと思うぞ」
ユト「『良い性格』と明言していましたが」
エドナ「言葉って、辞書に載ってる意味だけで使われてないのよ」
ユト「では、私の返答も誤って解釈された可能性がありますか」
ロゼ「可能性じゃなくて確定でしょ」
ユト「訂正した方がよいでしょうか」
ザビーダ「今から『本当に性格が良いと思った』って追いかけたら、煽りが二段階になるからやめとけ」
後で公式から台本の一部が公開された時、ユトの欄にはこう書いてあった。
「※相手の発言を皮肉だと理解していない。本気で褒められたと受け取り、感謝と好意を込めて返す。柔らかく穏やかな声で。」
刺していない。
刺されたことにも気づいていない。
むしろ褒められて照れていた。
そこに知的な皮肉合戦など、最初から存在しなかったのである。
一人が嫌味を言い、もう一人が友好的な会話をしたつもりになっていただけだった。
***
ユト絡みのスキットではこういう「その言葉選びはまずいだろ」というシーンが時々ある。
ユト「この事業は、アリーシャさんが以前から手にかけていたものですね」
アリーシャ「手がけていた、です」
ユト「意味に大きな差はありますか?」
ミクリオ「ある。今の言い方だと、アリーシャが事業を殺したみたいに聞こえる」
ユト「事業は生物ではありません」
エドナ「比喩の問題よ」
ロゼ「作品を殺すな、みたいなやつ」
ユト「事業と作品は別の概念では」
ザビーダ「そこを詰めてるんじゃねえんだよ」
アリーシャ「今後は『手がける』を使用してください」
ユト「承知しました」
***
ユト「ロゼさんは、以前からあの子供に目をつけていましたね」
ロゼ「気にかけてた、ね。あたしを誘拐犯みたいに言わないで」
ユト「実際に犯罪行為の経験はありますが」
ロゼ「いやそうだけどさ。あんな小さな子供を標的にしないって」
***
ユト「スレイさんは本日、戦力外でいてください」
スレイ「休めってこと?」
ユト「はい」
ミクリオ「なら最初からそう言え」
ユト「休養によって戦力から一時的に除外するため、意味は同じです」
ミクリオ「聞こえ方が違う!」
ユト「役に立てない状態でも、スレイさんの価値は低下しません」
スレイ「ありがとう……でいいのかな?」
ミクリオ「最初に『役に立てない状態』と言う必要はない」
***
ユト「アリーシャさんは、王族としては現場で使いやすい方です」
アリーシャ「道具のように聞こえます、ユト様」
ユト「身分に固執せず、柔軟に行動できるという評価です」
ザビーダ「最初から『融通が利く』って言えよ」
***
ユト「死なないでください。貴方が死亡すると、私が困ります」
ミクリオ「言われなくとも」
ユト「同等の代替要員を確保できる可能性が低いためです」
ミクリオ「後半いらなかったな」
ユト「ですが、代替不能という評価は高い評価では?」
ミクリオ「人を部品扱いしながら褒めるな」
***
ユトは、文章が読めないわけではない。
むしろ幼少期から、多くの本に触れてきた。
ただし、彼が読んできたものの多くは、法律書や規則集、契約に関する文書だった。
それらは、言外の意味を読み取らせるための文章ではない。
誤解を避けるため、条件を定義し、責任の所在を明記し、複数の解釈が生まれないように書かれる。
そのためユトは、言葉の辞書的な意味には強い。
一方で、人々が言葉へ暗黙のうちに付与してきた皮肉、遠慮、比喩、温度には弱い。
書かれていない意味は、確定した情報ではない。
ユトは、おそらく長い間そう考えてきた。
文章は読める。文脈は読めない。
ユトはそういう男である。
正確には、ユトは文脈を認識できないわけではない。
声色が違う。
表情が硬い。
返答までに妙な間がある。
周囲の者が困った顔をしている。
そうした情報が存在することは、彼にも分かる。
ただし、それらは明文化されていない。
「この声色は皮肉を意味する」と、誰かが定義したわけでもない。
同じ言葉が、別の場面では本当に褒め言葉として使われる可能性もある。
だからユトは、曖昧な付随情報より、実際に発言された言葉を優先する。
「良い性格」と言われた。
ならば、人格を肯定された。
彼の中では、そう処理される。
法律や契約の文章では、書かれていない条件を勝手に追加してはいけない。
だが日常会話では、書かれていない――口にされていない意味を補わなければ、会話そのものが成立しない。
ユトは、前者の読み方を後者にも適用してしまう。
しかし、ユトはただ文脈が読めないだけの男ではないことは補足しておく。
読めなかった文脈について説明されれば、律儀に記録し、次から対応できる。
次があればの話だが。
あなたはゼスティリア原作を(読者層確認用です)
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好き
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知らない
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傘のスペアを発注する