スクライド憑依転生オリ主もの
主人公がカズマさんにボコられる話。


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ここに至るまで物語を作りたかったのですが、自分の実力では無理みたいなので、カタチとなったものを投稿します




ファクティス・バレット

 崩落していく足場を、カズマはただ見下ろしていた。

先ほどまで命を削り合っていた相手。――だが、彼らも元は自分たちと同じ、このロストグラウンドの人間だったのだ。

それが最期に自我を取り戻し、自ら命を絶った。

思うことは山ほどあった。彼らを意思なき傀儡に仕立て上げた本土側への激しい怒り。命まで捨てる必要があったのかという割り切れなさ。

だがそれ以上に、カズマは彼らが最期に見せた意地と生き様を、その目に刻みつけておきたかった。

 

そんな時だった。

 

「先に行っちまったのか……」

 

乾いた瓦礫の音の向こうから、聞き覚えのある声が響く。カズマは弾かれたように、その声の方へと振り向いた。

そこに立っていたのは、彼らと同じ元ネイティブの男。そして――在りし日、兄貴分であるストレイト・クーガーのもとで、共に牙を研いでいたかつての兄弟分だった。

 

「てめぇは……っ!」

 

カズマの拳が自然と握り締められる。

クーガーが行方をくらましたことをきっかけに仲違いし、半ば喧嘩別れした男。

どこか自分に似ていて、だからこそ反吐が出るほど気に食わなかった。だがそれ以上にカズマが苛立っていたのは、こいつの瞳だ。こいつはいつも、自分(カズマ)を見ているようで、その実、自分ではない「別の何か」を見つめているような気がしてならなかった。

 

再会は、すべてが嫌になって国外へ逃げ出そうとしたあの時だ。

本土側の刺客として現れた寺田あやせが命を落としたあの場所で、向こう側の扉を開くために、あやせの死を侮辱した無常矜持。激昂したカズマを「無常の刺客」として迎え撃ったのが、他ならぬこの男だった。

 

カズマはギラついた視線で男を睨みつけ、吐き捨てるように言い放つ。

 

「相も変わらず、無常の犬やってんのかよ……!」

 

「そういう契約だからな」

 

男は――丹羽は、悪びれる様子もなく淡々と答えた。

 

「契約だぁ!?」

 

「あぁ、ただのビジネスさ。奴の言う事を聞く代わりに、力を得る。ほら、単純な話だろ?」

 

「……で、てめぇはそんな借り物の力を見せびらかしに、わざわざここに来たのか?」

 

カズマが口元を歪め、皮肉たっぷりに吐き捨てる。

 

「てめぇが何を考えてやがるかなんざ知ったこっちゃねぇ! だが、こっちの邪魔をするつもりなら……!」

 

ギリ、と音を立てて拳を握り締め、カズマが吼えた。

 

「容赦しねぇ!!」

 

背中のプロペラ状の推進機が爆音を上げて回転する。凄まじい推進力で宙へと浮き上がり、カズマは一直線に丹羽へと突進した。

 

一方、迎え撃つ丹羽もまた、自身のアルターを発動させる。

その全身を奔流のような虹色の粒子が包み込み、またたく間に赤と橙色の分厚い装甲が構築されていく。それは西洋の美しい騎士甲冑を彷彿とさせながらも、どこか禍々しく歪な印象を与える異形の姿だった。

 

「――イグニッション」

 

丹羽の静かな言霊(ことだま)がトリガーとなる。

装甲のあらゆるスリットから、激しい怒濤のような炎のエネルギーが、一気に噴き出した。

 

カズマが右腕のシェルブリットを振り抜く、まさにその刹那。

突進の慣性を完全に殺した丹羽の身体が、すでにその懐深くへと潜り込んでいた。

 

「なっ……!?」

 

カズマが驚愕に目を見開いた瞬間、下から突き上げられた丹羽の左拳が、その顎を正確に撃ち抜く。

融合装着型の特性で肉体の頑強さは増すとはいえ、脳を直接揺らされればなす術もない。

 

衝撃にカズマの意識が一瞬だけ飛ぶ。だが、丹羽の猛攻はここからだった。

顎を跳ね上げられたカズマの無防備な胸元へ、吸い込まれるような右ストレートが炸裂する。ドッ、と重い衝撃波がカズマの背中へと突き抜けた。

 

さらに息つく暇もなく、丹羽は踏み込んだ勢いのまま、至近距離での肘打ち(エルボー)を腹部へと叩き込む。そしてコンビネーションの仕上げと言わんばかりに、軸足を滑らせての鋭い回し蹴りがカズマの脇腹を捉えた。

 

ドゴォッ!!

 

骨の軋む音と共に、怒濤の四連撃を受けたカズマの身体が、派手に吹き飛ばされた――が、カズマは背中のプロペラ状の推進機を強引に逆噴射させ、引きずられるようにしてどうにか体勢を立て直した。

 

「こんなもんで……行く道引いてられっかっ!!」

 

己の五臓六腑を、そして魂を鼓舞するようにカズマが吠える。

 

再度、右拳を振り上げ、カズマは猛然と突進した。もはや戦術もクソもない。次に見切られようが、どんなカウンターを合わされようが、ただ目の前の敵を無理やり殴り飛ばしてやる――そんな野生の気概だけが、カズマの身体を突き動かしていた。

 

「シェルブリットォォ――――ッ!!」

 

対する丹羽もまた、赤橙の炎を爆発させながら左拳を振り上げる。その口から、あの、あまりにも聞き覚えのある言霊が解き放たれた。

 

「衝撃のぉぉ――――ッ!!」

 

二人の距離がゼロになる。

互いのすべてを乗せた拳が、真っ向から突き出された。

 

「バァァァーストッ!!」

「ファーストブリットォ!!」

 

 

 

激突の余波で、周囲の空間そのものが悲鳴を上げて軋む。

カズマが放つ黄金の輝きと、丹羽が纏う紅蓮の炎。二つの破滅的な熱量が正面から噛み合い、激しく鎬を削り合う。

 

ほんの一瞬の拮抗。――だが、力の天秤は、じりじりと丹羽の方へと傾きつつあった。

本土の技術によって精製され、強化されたアルターの力が、カズマの右腕をじわじわと押し込んでいく。カズマの足が、強大な圧力に耐えかねて後方へと滑った。

 

だが、カズマという男が、それで引き下がるはずがなかった。

 

「見下してんじゃねぇぇぇ――――ッ!!」

 

魂の底からの咆哮。

カズマはシェルブリットをより一層輝かせ、理屈の限界など知るかとばかりに、強引にその拳を振り抜いた。

 

ドゴォォォォォンッ!!

 

臨界点を突破した二人のアルター能力が、互いの力を真っ向から打ち消し合う。

直後、生じた凄まじい斥力の爆風に弾かれるようにして、二人の身体は大きく後方へと引き離された。

 

「殲滅(せんめつ)の――」

 

立ち込める激しい噴煙の向こうから、丹羽の声が響く。

 

カズマが反射的にその声のした方へと視線を向けた、まさにその時だった。

 

「――セカンドブリットォッ!!」

 

上空。すでに丹羽の身体は遥か高みへと跳ね上がっていた。

紅蓮の炎を激しく纏いながら、重力に従って一気に急降下してくる。狙いはカズマの脳天――すべてを叩き潰すような、苛烈な強襲の踵落とし。

 

だが、カズマの辞書に「退く」の二文字はない。

 

「おおおぉぉぉぉぉっ!!」

 

カズマは獰猛に歯を剥き出し、迫り来る炎の質量を真っ向から迎え撃つべく、その右拳を天高く振り上げた。

 

二度目の激突。

 

ドオォォォォォンッ!!

 

凄まじい衝撃波が巻き起こり、カズマの足元の地面が蜘蛛の巣状に陥没していく。

上空からの質量を乗せた丹羽の踵が、カズマの右拳を強引に弾き返した。

 

だが、カズマの捨て身の迎撃は無駄ではなかった。

本来の標的(脳天)から僅かに軌道をずらされた丹羽の踵は、カズマの髪をかすめて空を切り、そのまま背後の床を爆砕した。

 

完全に体勢が崩れた丹羽。その眼前に、決定的な隙が生まれる。

 

カズマはその一瞬を、絶対に見逃さなかった。

 

弾き返された右腕を強引に引き戻し、カズマは渾身のシェルブリットを真っ向から振り抜いた。

 

鈍い音と、確かな手応え。

 

カズマの拳は丹羽の顔面を捉えていた。だが、フルフェイスに覆われた強固な装甲を、完全に破壊するまでには至らない。

 

「なっ……!?」

 

衝撃に耐えた丹羽の手が、カズマのシェルブリットをがっしりと掴む。

そのまま身体を滑り込ませ、一本背負いの要領でカズマの身体を強引に投げ飛ばした。

 

「ぐっ……あぁっ!」

 

短い呻き声を上げ、カズマの身体が床へと激しく叩きつけられる。

 

だが、丹羽は一瞬の猶予も与えない。

倒れたカズマの脳天めがけ、容赦のない足刀が上空から突き刺さる。カズマは死に物狂いで床を転がり、その一撃を紙一重で避けた。

 

ドゴォッ!!

 

カズマが先ほどまでいた床が、丹羽の足刀によって激しく爆砕される。

 

「その程度か……向こう側を覗いたお前の力は?」

 

倒れたカズマを見下ろし、挑発するように丹羽が言う。

 

「がっかりさせるなよ。せっかくお前との決着のために、俺は何もかも捨ててここに来たってのに……!」

 

言葉と同時に、影が迫る。体勢を立て直すよりも早く、丹羽の容赦ない蹴りがカズマの腹部へと叩き込まれた。

 

「ガハッ……!?」

 

衝撃に息を詰まらせ、カズマの身体がボロ雑巾のように床を転がる。

だが、カズマはまだ死んでいない。這いつくばったまま、右腕のシェルブリットを強引に床へと突き刺し、その支柱を頼りにギチギチと身体を押し上げた。

 

口内に溜まった血を吐き捨て、カズマはギラついた眼光で丹羽を睨み据える。

 

「……勝手なこと、抜かしやがって……!」

 

分かっている。生半可な攻撃では、あの精製され強化された丹羽のアルターを貫くことはできない。

奴をブチ砕くには、小細工なしの、正真正銘、全身全霊の一撃でなければならない。

 

(……上等だ、やってやるよ!)

 

カズマは右拳を、壊れるほどの力で握り締めた。

拳を握りしめ、この魂ごと乗せた渾身の一撃で――目の前のクソッタレを、跡形もなく打ち砕く!

 

「イグニッション!!」

 

咆哮と共に、丹羽のアルターがかつてないほど烈しく燃え上がった。

丹羽が放つのは、3発目にして最後の弾丸。それはストレイト・クーガーの『衝撃のファーストブリット』から枝分かれした、彼だけの必殺の一撃。

 

「シェルブリットォォォ――――ッ!!」

「塵殺(おうさつ)のぉぉぉ――――ッ!!!」

 

お互いの命を削るような雄叫びが、崩壊しかけたフロア全体に激しく響き渡る。

 

「バァァァーストッ!!」

「ターミナルブリットォォ――――ッ!!」

 

黄金の輝きを纏い、限界を超えて突撃するカズマ。

文字通り烈火のごとく、すべてを狂わせる炎を迸らせながら突進する丹羽。

 

三度目の、そして本当の、最後の激突。

 

全てを焼き尽くさんとする勢いの紅蓮の炎が、カズマの全身を呑み込もうと包み込んでいく。

だが、カズマは負けじと、さらにシェルブリットの輝きを爆発させた。

 

「ぐぅぉぉぉぉ――――ッ!!」

 

生身を焼かれる激痛に呻きながらも、カズマは地獄の業火の中を真っ直ぐに突き進む。

突き出した右拳が丹羽の胴体に突き刺さるが、あまりに強固な炎の圧力が、まるで分厚い壁のように立ちはだかり、その前進を拒んだ。

 

全身を炎の弾丸として撃ち出す、丹羽の最期の一撃が、カズマの拳をじりじりと押し戻していく。

 

精製され強化された丹羽の執念を打ち砕くには、今のシェルブリットだけでは、まるで足りない。なら、どうする?片手で足りないなら、両手で殴る。答えなんて、いつだって単純明快だ。

 

「まだまだぁ――――ッ!!」

 

カズマは叫び、左腕を強引にアルター化させ、天から叩きつけるように振り下ろした。

 

二連装のシェルブリット。

 

それが丹羽を守る炎の壁を真っ向から突き破り、完全に無防備となった胴体へと容赦なく突き刺さる。

 

ドゴォォォォォンッ!!

 

空間そのものを歪めるような、凄まじい破滅の打撃音がフロアに鳴り響く。直後、すべての炎を吹き飛ばされ、丹羽の身体は瓦礫の向こうへと派手に吹き飛んでいった。

 

カズマは丹羽が吹き飛んだ方向へと視線を据えたまま、ゆっくりと、確かな歩みを続けた。

 

立ち込める爆煙の向こう、瓦礫の山に沈んだ丹羽の身体は、アルターを限界まで酷使したせいか、肉体は元に戻らず、崩壊していた。

 

「……ッ!?」

 

カズマが息を呑んだ、その時だった。

 

「よぉ、驚いただろ? ……これが、俺が払った代償ってやつさ」

 

丹羽は、まるで何でもないことのように、軽い口調で語りかけてきた。

 

「俺は、お前に憧れた。どんな理不尽な状況だろうと、悩むことなく、ただ前へ前へと突き進み、どんな困難であろうと自慢の拳で打ち砕いて乗り越えていく姿に、画面の外から焦がれていた」

 

その声は、どこか遠くを見つめるように淡々としていた。

 

「そんなお前に、俺の全力をぶつけて……確かめたかったんだよ。俺が、どこまであの憧れに迫れるかってな……」

 

前世の記憶。画面の向こうの輝き。このロストグラウンドで過ごした日々。そのすべてを懸けた男の独白を、カズマは静かに聞き終え、静かに問いかけた。

 

「……で、てめぇの望みは叶ったのかよ?」

 

「……半々ってところだな。でも、――満足は、したさ」

 

その言葉を残して、最初から存在しなかったのかのように丹羽は虹色の粒子に還った。

 

「…なんだよ、それりゃ」

 

カズマは顔を俯かせ、ぽつりと呟いた。勝手に現れて、勝手にすべてをぶつけて、満足して消えていったかつての兄弟分。そのあまりにも不器用で、熱すぎる生き様に、胸の奥が熱くなる。

 

だが、カズマはすぐに顔を上げた。

 

まだ、終わっていない。すべての元凶である無常矜持は、今もこの奥で健在なのだ。こんなところで立ち止まっている暇はない。あいつの想いも、あやせの無念も、すべてを背負って、あの無常の野郎にきっちりと落とし前をつけさせなければならない。

 

拳を今一度、固く握り締める。一歩、また一歩と、しっかりとした確かな足取りで、カズマは再び前へと歩み出した。

 

 




 自分の脳内の妄想をようやく、カタチにできたので良かったです。
小説どころか、きちんとした文を書けない自分にとっては精一杯がこれでした。
皆様の暇つぶしなれば幸いです。
ちなみにタイトルは主人公のアルターの名前です。

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